十二回目の休暇の二日目に、コムスプリングスをカーマインは選んだ。  
ヴェンツェルへ秘石制御装置を使うかどうかの選択を、ローランディアの王が渋ったためだ。  
こんなことをしている間にも、彼の体調は悪くなってきているというのに。  
苛立ちを洗い流そうと、私は初めて公衆浴場へと足を向けた。  
 
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「俺はもうあがるが、無理はするなよ。」  
夕刻、俺は公衆浴場の男風呂に向かう。  
もともと入る気はなかったが、ジュリアがこちらに向かったと聞かされてしまえば、いらぬ期待がもたげる。  
入れ違いのウォレスに苦笑されながら、温まるよりも先に、俺はふらふらと例の洞窟へと歩き出す。  
暗い闇のなか、手探りで一筋の光を目指す。  
アリオストの時と違い、賑やかな女たちの話し声はまったく聞こえない。  
水音がする。  
願望と予感が入り混じった煩悩を抱きながら、以前覗き損ねた女湯に続く小さな穴に目を当てた。  
白金に近い髪を結い上げて、広い女湯でひとりジュリアが入浴していた。  
やや薄暗いなりはじめているが、まだ明りが燈らない時間。  
浅い白い石底は日中とは違い、沸き立つグローシュ光を反射して、見事な女体を浮かびあがらせている。  
うなじのおくれ毛を、うっとおしそうにジュリアが整えるたびに、タオルからもれた上向きの豊かな乳房が湯より露出する。  
俺は食い入るように、その湯気に見え隠れする光景を見つめた。  
 
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この気配は……!  
私は息を呑む。  
男湯との間を隔てる岩山の一角から彼の気配を感じとったのだ。  
まさか、あのカーマインが……覗きを?  
 
私は何を考えているのだろう。  
もし彼じゃなかったら、いや、そこに気配がするのは単なる気のせいだったら。  
そう思いながらも、私は前にたらしていたタオルをはがすと、そっと側の手すりに置いた。  
彼に……もっとよく見えるようにと、さりげなくその気配のする方向に、私の体を向けてみる。  
乳房をそっと見せつけるように、両手で寄せてはお湯より持ちあげてみた。  
 
「ん……。」  
ちょっと恥ずかしかったけど、あのグランシルの夜の彼の行為を思い出して、乳房を揉んでみる。  
彼に触れて欲しい。また抱いて……欲しいと、体がうずきだす。  
下半身に指先を伸ばせば、恥部は濡れていた。  
彼を思い浮かべるだけで、私の体は炎に包まれているかのように熱くなる。  
あの夜の痛みは次の週には消えていたけれど、この体に植えつけられた欲情は、深く根をはり蝕み続けている。  
 
ちりりと与えられたあの刺激を求めて、ぼんやりと流されるまま、乳首を弄り続ける。  
だけど、これは彼にしてもらった快楽とは程遠すぎる虚しい行為。  
途中で意識を失ってしまったけれど、あの感覚がいわゆる絶頂というものなのだろう。  
どうしようもない気分になり、乳房からそらすと、か細い滝が目に映った。  
寝転がりながら、体のつぼを刺激するために設けられているもの。  
私はその滝に行く。  
 
「あ……んん。」  
思わず声をあげる。  
流れ落ちる水が、心地よく恥部を叩きつけては刺激する。  
あの夜カーマインにそうされたように、私は素直に足を開いて、滝に向かって尻を突き出してより快楽を求める。  
容赦なく恥部をえぐり続ける水圧に、次第に理性が麻痺してゆく。  
 
「う……く、あ、んっ。」  
彼に抱かれたい。  
またあの逞しい腕に、優しい吐息に包まれたい。  
熱い唇を這わせて、荒々しくその舌でこの体を舐め回して、私を蕩けさせて欲しい。  
彼のモノで私の体を内側から、女の性の扉を撃ち破って欲しい。  
 
パーティに参加を促されて期待していたものの、彼と二人きりになるチャンスは巡って来なかった。  
カーマインは誰かといつも一緒にいて……違う、彼は話しかけづらい雰囲気を漂わせていた。  
明らかに避けていた。私はやはり彼の目にはかなわなかったのだろうか。  
初めての女は扱いにくい――  
後でバーンシュタイン王城で偶然、下士官兵たちの猥談を耳にして、背筋が凍ったのを覚えている。  
男ならやはり喜ばせてくれる、手管を覚えた熟女を欲しがるもの――彼もその類だったのだろうか。  
 
「あああ……!」  
そのまま頂点を迎えて、私はうなだれた。  
同じ絶頂でもなんて違い。惨めさだけが私を覆う。  
馬鹿みたいだ。  
 
こんな浅ましい事をしているのを見て、カーマインはどう思っただろう。  
後で合流しても、彼はきっとこの話題には触れない。  
何事もなかったかのように皆の点呼をすませて、ローザリアに帰るように指示するだけだろう。  
私は落胆の溜め息をつくと、浴場を後にした。  
 
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これは……儲けモノ……なのか?  
打たせ湯で、激しく身を震わせて悶えるジュリアの裸体が、俺の脳裏に生々しく焼きついている。  
解けた腰元まである髪が、呪縛の様にその体にまとわりついて、彼女が俺に差し出された生贄のようにすら見えた。  
彼女の艶めき上気した肌を、蛍火のように妖しく照らしては消えていった、グローシュが見せた幻。  
ジュリアは多分俺に気づいていた。  
俺のほうを意識していたのが、はっきりと分かる姿勢だったからだ。  
この壁を魔法で壊せば、俺のモノは彼女を望みのままに貪ることは出来ただろう。  
 
覗くべきじゃなかった。  
これから先、俺はいつまで生き、この葛藤に耐え続けねばならないのか。  
切り捨てられない男の本能を、未練たらしく壁に向かってぶちまけた。  
 
fin  
 

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