「ふうっ。」  
 
ローランディア王国宮廷魔術師のサンドラは自宅の自分の部屋で寛いでいた。  
対バーンシュタイン戦も終盤に差し掛かり、息子達も友軍と合流して数日後のバーンシュタイン城突入に備えていた。  
 
ガタッ・・・  
「えっ!」  
 
突如音がしたと思うと背後から抱きしめられていた。  
今この家には自分しか居ないはずなのに・・・。  
 
「久しぶりですねサンドラ。」  
「ガ・・ガムラン!」  
 
背後からサンドラを抱きしめていたのはバーンシュタインの特殊部隊シャド−・ナイツの長であるガムランだった。  
 
「なんでいまさら・・・それより今まで何を」  
「このまま行けば私は散る運命にありますからね。最後に貴方に会いに来たんですよ。」  
「そっそれはどいう・・・んむっ!」  
 
問い続けようとしたサンドラの唇をガムランは自らの唇で塞ぐ。  
そのうちにサンドラも抵抗を止めガムランの背中に手を回して抱きつく。  
その状態が暫らく続いた後、唇を離したガムランにサンドラは泣きそうな顔で問い詰める。  
 
「そんな・・、ではあの子は・・・ルイセはどうするんですか。まだ言ってないんですよ。」  
「仕方ないでしょう。こんな腐れ外道が実の父親なんて知りたくもないでしょうし。」  
 
2人の会話からとんでもない事が判明する。ルイセの父親はなんとガムランだったのだ。  
 
 
十数年前、まだSナイツに入って間もない頃のガムランはローランディアに密偵として潜入していた。  
市民として生活しながら情報網の構築などを担当していたのだがそんな時に出会ったのが宮廷魔術師団に正規配属されて間もない頃のサンドラだった。  
最初はガムランも情報収集目的でサンドラに近づき巧みな話術や経験などで彼女と付き合う事に成功する。  
だが恋人として過ごしそして何度か肌を重ねていく内に本気でサンドラに惚れてしまった。  
その後2人は同棲し、結婚も確実かと思われた・・・・。  
だが突然ガムランに本国帰還命令が出てしまった。情報網構築が評価され失踪した前マスターに変わり昇格が決定したのだ。  
本気でサンドラを愛していた、手放したくは無い。だが命令は命令である。  
そこでガムランはやむを得ず自分の素性をサンドラに告白し別れを告げる。  
当然の如くサンドラは困惑し、別れを嫌がった・・・自分も連れて行ってくれとまで言った。  
しかしガムランの必死の説得により落ち着いたサンドラは用意していた婚約指輪を彼に手渡す。  
それを交換し合い再開を誓い合うとガムランを見送った。  
だがこの時サンドラのお仲の中に新たな生命が宿っていた事を2人は気付いていなかった。  
その数ヵ月後、サンドラは元気な女の子を出産した。それがルイセだったのである。  
 
 
続く。  
 

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