「イライザさん、左です!」  
 レムスが叫ぶと同時に、イライザは左腕を振り回して剣を薙いだ。  
 一刻おいて、イライザに迫っていた怪物の体から緑色の血液が噴きだした。鈍い断末魔をあげな  
がら、怪物の体は溶けていき、地面の土と同化した。  
 血溜まりから煙が立ち昇り、腐敗臭があたりに漂う。だがイライザは、息をつく暇もなく、手に  
持つ剣を構えなおした。  
「イライザさん、今度は右です!」  
「分かったわ!」  
 レムスの声にイライザはすばやく反応し、右腕の剣を水平に薙ぎ払った。体長1メートルほどの  
怪物の体が真っ二つに割れ、地面に転がり落ちた。  
 イライザは両腕を振り、剣に付着した血を払い落とした。そして呼吸を整えながら、再び構えを  
取り直した。  
「レムス。敵はあとどれくらい残っているの?」  
「あと2体ってところです」  
「2体か……やっと終わりに近づいたわね」  
 険しかったイライザの顔に、微かな笑みが浮かんだ。  
 イグレジアス王国に入った一行は、王都イスケンドロスを目指して旅路を急いでいた。しかし、  
あまり人数が多いと目立ってしまうという理由から、二手に分かれて進み、王都で落ち合うことに  
したのである。レムスはイライザと二人で行動していたのだが、その途中で魔物と遭遇してしまい、  
戦闘へ突入したのだった。  
 
 当初、怪物は10体ほどの群れだった。数の上では圧倒的に不利なレムスとイライザだったが、  
二人は身の軽さを生かして巧みに動き回り、次々とに敵を討ち取っていった。一体、また一体と敵  
を倒し続け、ようやく残り僅かというところまでたどり着いたのだ。  
「レムス、後ろ!」  
「分かってます!」  
 レムスは全力で弓の弦をひき、矢を解き放った。直後、矢はバシッという音と共に、怪物の体の  
中心を貫いた。体を串刺しにされた鳥型怪物は、ギャアギャアと力なく喚きながら、地面に落下し  
ていった。  
「……よし。これで、残りは1体だけですね」  
「そうね。さあ、どこにいるのかしら?」  
 二人は全神経を耳に集中させ、敵の気配を感じ取ろうとした。できるだけ死角が少なくなるよう、  
イライザはレムスに身体をすり寄せ、背中合わせの体勢を取った。  
 二人の肌が触れ合ったとたん、イライザの身体の温もりがレムスに伝わった。チラッと目を向け  
ると、露出した胸の谷間が桃色に染まり、表面に汗が浮かんでいるのが見える。その美しさに、レ  
ムスは自分が戦闘中であることも忘れ、頬を赤らめた。  
 
(イライザさんって、やっぱり美人だな。こんな綺麗な人が仲間にいるなんて、まだ実感が沸かな  
いや。イライザさんとはずっと、一緒に旅を続けていきたいな……っと、いけない。今は戦闘に集  
中しなきゃ)  
 レムスは首を振って、雑念を追い払った。そして再び、臨戦態勢を取った。  
 レムスもイライザも、残る一体の敵の気配を感じ取っていた。しかし、いくら目を凝らしても、  
その姿はどこにも見えない。木の陰に身を潜めているのか、それとも複雑に絡み合う枝葉に隠れて  
いるのだろうか。  
 物音一つ聞こえない、不気味な静寂が辺りを支配した。  
 ……と。どこかでカサッという音がしたかと思うと、枝の一部が大きく揺れ動いた。その一瞬後、  
何者かが木の枝をかき分け、二人めがけて飛び出してきた。  
「! 危ないっ!」  
 叫ぶと同時に、イライザはレムスに飛びかかり、その身体を押し倒した。  
 直後、何かが二人の頭上をものすごい勢いで飛び去った。イライザの髪の毛が数本、鋭い刃のよ  
うなものに切り裂かれ、宙を舞った。  
 
「な……なに?」  
 体勢を立て直したイライザは、数メートルほど離れたところに何者かが立っているのを見た。  
 それは、身長2メートルほどの、一体の怪物だった。全身が赤紫色で、昆虫のような頭部を持っ  
ている。長細い両腕は、カマキリの鎌を思わせる鋭利な刃物となっている。さっきイライザの髪を  
切ったのは、おそらくあの両腕だろう。その醜い姿に、イライザは思わず眉をひそめた。  
(やれやれ、なんて醜悪な姿なのかしら。美的センスの欠片も感じられないわね。こんな奴は、さっ  
さと倒すに限るわ!)  
 気を取り直したイライザは、先手必勝とばかり、怪物に向かって疾走した。そして手が届く間合  
いに入ると、両腕を振り上げて剣を振るった。  
 だが、怪物は胸の前で両腕を交差させ、イライザの剣を受け止めた。キーン、という甲高い音が  
響き渡り、二本の剣と二本の腕が重なり合った体勢で、両者は動きを止めた。  
 間近で見ると、怪物は本当に醜い姿をしていた。不自然に大きな両目、尖った口、痩せ細った胴  
体……今までいろんな敵と戦ってきたイライザだが、その中でもこいつはトップレベルの醜さだ。  
 その姿を見ているうちに、イライザはだんだん腹が立ってきた。自分はどうして、こんな奴と戦  
わなければならないのだろう。こんな容姿の奴が、こうして生きて動いてるってだけでも、吐き気  
がしてきそうなのに。メイフィールド家の令嬢である自分が、暗い森の奥で、こんな化け物と戦っ  
ているなんて……!  
 
「……ああ、もう! 鬱陶しいわね! さっさとやられなさい!」  
 イライザは右脚を振り上げ、怪物の腹めがけて蹴りを繰り出した。イライザのつま先が鳩尾に食  
い込み、怪物はくぐもった声を上げながらよろめいた。  
「もらった! ええいっ!」  
 一瞬の隙を見逃さず、イライザは両腕の剣を怪物の頭上から振り下ろした。  
 剣は怪物の両肩に食い込むと、そのまま地面に向かって真っ直ぐに落ちた。怪物は悲鳴を上げる  
間もなく、三つの部分に分割され、ドスンという音とともに地面に倒れた。  
 切り裂かれた怪物は、不気味な色の体液を流したまま、無残な屍を地に晒していた。どうやら再  
生機能は持っておらず、生命活動は完全に静止したようだ。イライザは軽く息を吐き、額に浮かん  
だ汗を拭いとった。  
「ふん。不意打ちなんて卑怯な真似をするから、こういう目にあうのよ……あら?」  
 剣を片付けようとしたイライザは、怪物の死骸から赤紫色の煙が出ているのに気が付いた。煙は  
見る見るうちに宙に広がり、辺りを赤紫色に包み込む。呆気に取られたイライザは、気が付くと全  
身を奇妙な煙の渦に包み込まれていた。  
 と、次の瞬間。  
「えっ……? な、何……?」  
 突然、身体が痺れるような感覚を受け、イライザはその場にしゃがみこんだ。  
 全身が、炎に包まれたように熱い。心臓が激しい鼓動を打ち、息が荒くなっていく。視界が狭ま  
り、意識がだんだん遠のいていく……。  
 
「何なの、これ……身体が……熱い……!」  
「イ、イライザさん! どうしたんですか、いったい?」  
 イライザの異変に気付いたレムスが、慌てて駆け寄った。  
 うずくまるイライザの両肩に触れると、そこは異様なまでの熱を帯びていた。普段は雪のように  
白い肌も、紅色に染まってきている。どう見ても普通の状態ではなった。  
「イライザさん、大丈夫ですか! しっかりして下さい、イライザさん!」  
「ううっ……レ、レムス……」  
 イライザは顔を上げ、レムスと顔を合わせた。  
 ……と。雲の切れ間から、丸い月が顔をのぞかせた。  
 満月の明かりを浴びて、イライザの顔が浮かび上がる。その表情を見た瞬間、レムスは自分の心  
臓が大きくドクンと脈打つのを感じた。  
 イライザの顔には、今まで見たことのない表情が浮かんでいた。目は虚ろで、頬は赤く上気し、  
肩は上下に揺れている。半開きになった口からは荒い息が漏れ、真っ赤な舌が揺れ動いていた。そ  
の様子は例えようもないくらい艶やかで、大人の色香に満ちていた。  
 突然、イライザは両腕を開いたかと思うと、レムスに飛びかかってきた。避ける間もなく抱きつ  
かれたレムスが、ドスンという音と共に背中から地面に倒れた。  
 
 何事かと困惑するレムスの耳に口をあて、イライザはそっと囁いた。  
「レムス……抱いて。私を抱いて……」  
「な、何を言ってるんですか! 目を覚まして下さい、イライザさ……!」  
 イライザの身体を押しのけようとしたレムスは、ハッとなって言葉を止めた。  
 イライザの吐息から、微かな異臭がする。花の香りを凝縮したような、あるいは甘い砂糖菓子の  
ような香り。その香りを感じ取ったレムスは、どこかで同じ香りを嗅いだことがあるような気がし  
た。  
(思い出した、これは媚薬の香りだ。少し嗅いだだけで、たちまち中枢神経が麻痺されて、急激に  
性的欲求が高まる薬だ……そうか、あの怪物の体内には、媚薬の成分が含まれていたんだ。イライ  
ザさんはそれを吸ったから、こんな状態になってしまったんだ……)  
「んんっ……レムスぅ……」  
 イライザはレムスの両頬に手をあてて、自分の方へと引き寄せた。互いの息がかかりそうな距離  
にまで顔が近付き、レムスの心臓は早鐘のように鼓動を打った。  
「お願い、早く私を抱いて。私もう、我慢できない……」  
「駄目ですよ、イライザさん! そんなこと、僕にはできません!」  
「何よ、私ってそんなに魅力ない? それともあなた、私のことが嫌いなの?」  
「いえ、そんなこと……イライザさんは、とても魅力的な女性です……」  
「だったらいいじゃない。ほら、早くしてよ。女に言い寄られて拒絶するなんて、そんなの男じゃ  
ないわよ。さあ早く、私を抱いて……」  
「イ、イライザさん……!」  
 妖艶な表情を浮かべながら迫ってくるイライザの色っぽさに、レムスは唾を飲み込んだ。  
 
 堅苦しい傭兵部隊の出身とはいえ、レムスも15歳の健全な少年である。異性との色恋沙汰にも  
興味があるし、性的な欲求だって持っている。ましてイライザのような、美人でスタイルのいい女  
性に対し、邪な欲望を抱かないはずがない。枕を並べて野宿をしたときには、よからぬ妄想を繰り  
広げて眠れぬ夜を過ごしたこともあった。もしかしたらレムスは、自分でも気付かないうちに、イ  
ライザにほのかな恋心を抱いていたのかもしれない。  
 だがしょせん、レムスはしがない一人の傭兵にすぎない。良家の令嬢であるイライザと結ばれる  
可能性なんて、ほとんどゼロに近い。イライザだって、レムスのことはただの仲間としか思ってな  
いだろう……レムスはそう考えることで、無理に自分の感情を抑え付けてきた。  
 しかし今、イライザは向こうから身体を摺り寄せている。今なら「媚薬の毒を解消させるため」  
という大義名分を掲げることもできる。後で何を言われるか分からないけど、うまく言い繕えば許  
してもらえるかも知れない。今ならイライザを抱ける。ずっと心の内に秘めてきた欲望を吐き出す  
ことができる……。  
(ああ、もう……どうにでもなれ!)  
 レムスの頭の中で、何かが弾けた。  
 レムスは両手でイライザの肩を握り締め、その身体を地面に押し倒した。  
 きゃっ、と小さな悲鳴を漏らすイライザの唇を、自分の唇で塞ぐ。すでに半開きになっていたイ  
ライザの口の中に、レムスは舌を差し入れた。  
 イライザの口内を味わうかのように、口壁に、歯に、そして舌に、自分の舌をなぞらせていった。  
イライザの口はとても柔らかく、今まで感じたことがないほどの温もりを持っていた。  
 
「んんっ……んっ……!」  
 いきなり舌を入れられたイライザは、大きく目を見開き、ギクッと肩を震わせた。だがすぐに気  
を取り直すと、また目を閉ざして、自分でも舌を動かした。イライザは、自分の口の中からレムス  
の舌を押し出すと、自分から舌を絡ませた。  
 二人の顔の間で、互いの舌がもつれ合う。レムスとイライザの唾液が混ざり合って、舌が動くた  
びに隠微な音を立てた。二人は夢中になって、互いの唇をむさぼりあった。  
 レムスは、イライザの背中に回していた手を動かし、前のほうへと滑らせていった。そしてイラ  
イザの胸の膨らみに届いたところで、手に力を込め、ギュッと握り締めた。  
「ああ、あっ……」  
 イライザは声を上げながら、唇をレムスから離した。混ざり合っていた唾液が細い糸となって、  
二人の口を紡いだ。  
 レムスが予想していたとおり、イライザの胸はとても豊かだった。普段から胸の大きさを誇示す  
るような服を着ている彼女だが、実際に触れてみると、見た目以上のボリュームを持っている。し  
かも信じられないほど柔らかくて、レムスの指を動かすたびに、弾けるように動いた。そしてレム  
スが手を離すと、すぐに元の形に戻っていった。  
 レムスが手を動かすうちに、イライザの胸を覆う布地の一部が、つんと突き上がった。ピンと膨  
らんだ胸の果実が、薄手の服を盛り上げているのだ。敏感になった乳首が服と擦れあい、その痛み  
が快感となってイライザの身体を包み込んだ。  
 
「レムス、服を脱がせて……」  
「は、はい」  
 レムスはイライザの背中に手を回し、ファスナーを下ろした。そしてイライザの身体を覆ってい  
た衣服、靴、そしてタイツを剥ぎ取ると、イライザの肢体が露わとなった。  
 おぼろげな月明かりを浴びるイライザの身体は、宝石のように輝いていた。豊かに盛り上がった  
胸、細くくびれた腰。すらりと伸びた脚、絹のように滑らかな肌……それら全てが、完璧とも思え  
るほど美しかった。女性と付き合った経験もないレムスにとって、その光景は例えようがないほど  
刺激的だった。  
 レムスはイライザの胸に顔を埋め、固く尖った果実に唇を付けた。鳥が餌をついばむような仕草  
で、胸に何度も口付けし、ちゅっと吸い上げた。  
「ああ……はあっ……」  
 喘ぎ声を上げながら、イライザはレムスの背中に回した腕に、いっぱいの力を込めた。  
 レムスはイライザの乳房に口付けをしながら、もう片方の乳房に手を伸ばしていた。巧みに手を  
動かしながら、二本の指の先で乳首を挟み、きゅっと絞り上げる。その瞬間、イライザはビクンと  
背中を反らし、豊かな胸を突き出した。その反応を見たレムスは、ここが感じる部分だと悟り、集  
中的に攻めた。ときおり唇で吸い上げ、歯を突きたてながら、舌で何度も転がしまわした。  
 
「い、いやっ……そんな、転がさないで……!」  
 泣きそうな声でイライザは訴えたが、レムスはそれを無視し、乳首に舌を這わせ続けた。  
 イライザの胸は大きいだけでなく、感触も素晴らしかった。しっとりと汗ばんだ乳房は、手を置  
いただけで掌に吸い付き、絹のような肌触りを持っている。レムスは赤ん坊のように、イライザの  
胸の感触を何度も味わった。  
「ああっ……む、胸を触られてるだけなのに……こんなに気持ちいいなんて……!」  
 イライザは、レムスの背中に回していた腕をほどき、地面に下ろした。  
 レムスの指が乳房をまさぐるたびに、イライザは過敏に反応し、地面に指を食い込ませた。指と  
爪の間に土が入ったが、そんなことはもう気にならなかった。左右に首を振りながら、瞼をぎゅっ  
と閉ざすイライザの表情は、今まで見たこともないほど可愛らしく、レムスの欲情をさらに熱く滾  
らせた。媚薬に侵されたイライザを助けるという当初の目的など、もうとっくに忘れていた。  
 レムスは片方の手で乳房を弄びながら、もう片方の手を動かした。汗で蒸気ばむイライザの肌を  
なぞりながら、ゆっくりと下のほうへ動かしていき、最後に残った一枚の下着に指をかけた。  
 そこは布地の上からでも分かるほど、じっとりと濡れていた。いやらしく湿ったその部分は、布  
ごしに薄毛が透けて見えていた。  
「取っても、いいですよね?」  
「……うん」  
 消え入りそうな声で答えながら、イライザは首を倒した。それを見たレムスはイライザの身体を  
浮かし、最後の一枚を脱がせた。  
 何も身に着けていない、生まれたままの姿のイライザが、レムスの眼前に横たわった。  
 
 さすがに羞恥心が生まれたのか、イライザは両手で股間を隠そうとした。だがその前に、レムス  
は腕を伸ばしてイライザの股間に手をあてた。適度に生えた恥毛と、イライザの身体の温かさが、  
レムスの手から伝わってきた。  
 ヘアをかき分けながら、レムスは両手の指を使って、亀裂を押し広げた。そこは火照ったように  
充血していて、奥から透明の液が溢れ出ていた。  
 レムスは亀裂に顔を近付け、そっと口付けをした。指先で亀裂を開いたり、中へ入れたりしなが  
ら、敏感な部分に唇を触れさせる。二度、三度とキスをしてから、レムスは舌先で亀裂をなぞった。  
甘酸っぱい味と香りが、レムスの口いっぱいに広がった。  
「あっ……ああっ……!」  
 レムスが舌を動かすと、イライザは今まで以上に敏感に反応した。  
 甲高い喘ぎ声を発しながら、汗で湿った身体をくねらせる。全身をわななかせるたびに、豊かな  
胸の膨らみが激しく上下に揺れ動いた。よほど感じているのか、レムスの舌を触れるたびに、透明  
の蜜がとめどなく溢れ出てきた。  
 夜中とはいえ、近くを人が通る可能性がないわけではない。屋外であられもない姿になり、男と  
絡み合っている場面を誰かに見られたら、メイフィールド家の名前にも傷が付くかもしれない。だ  
が、今のイライザには、そんなことは気にならなかった。全身を媚薬に侵された彼女の頭にあるの  
は、胸を焦がすようなレムスへの情熱と、もっと悦楽に浸りたいという欲求だけだった。  
 
 イライザの太股に手をあてながら、レムスは飽きることなく花芯を刺激し、溢れる蜜を味わい続  
けた。それに対し、イライザはされるがままでいたが、いきなりレムスの頭を掴むと、その顔を上  
げさせた。  
「どうしました、イライザさん? 止めて欲しいんですか?」  
「そうじゃないわ。レムスの指も舌も、すごく気持ちいいわよ。ただ、私もレムスに……その……」  
「……分かりました。そういうことですね」  
 ニッ、と意地悪そうに微笑むと、レムスはファスナーを下ろし、ズボンと下着を脱ぎ捨てた。そ  
して身体の向きを180度回転させ、屹立した己の分身を、イライザの顔の前に差し出した。  
 初めて異性のものを見たイライザは、さすがに戸惑ったような仕草を見せた。だが、すぐに気を  
取り戻し、両手を伸ばして静かに指を添えた。触れた瞬間、イライザは目を蕩けさせて恍惚の表情  
を浮かべた。  
「レムスのここ……すごく熱くわ。女の子のような顔をしているくせに、ここはこんなに立派だな  
んて……ああ、なんて素敵なの……」  
 イライザは唇を開き、レムスの分身を咥えた。口の中で柔らかい舌が蠢き、固くいきり立ったも  
のを優しく包み込んだ。  
「ううっ……!」  
 レムスは背中をのけぞらせ、声にならない声を発した。  
 身体の一部を触れられているだけなのに、イライザの口や舌の温かさが、全身を駆けるようだっ  
た。こんなに心地よい感覚は初めてだ。あまりの快感に、脳が麻痺してしまいそうだった。  
 
 失いかけた自我を何とか保ちながら、レムスは再びイライザの股間に顔をあてた。指先を亀裂の  
奥へ沈めながら、せわしなく舌を這わせる。イライザも喉を鳴らしながら、レムスのものに舌を絡  
ませ、先から滲み出る液体を舐め取った。ぴちゃり、ぴちゃりという淫靡な音が、静かな森の中に  
響き渡った。  
 しばしの間、二人は本能に身を任せ、互いの敏感な部分を刺激しあった。しかし、イライザは急  
に口の動きを止めると、顔を上げてレムスと視線を合わせた。  
「レムス……お願い」  
「はい」  
 静かに頷いたレムスは、再び身体を反転させて、イライザと同じ向きになった。  
 固いままの分身を握り締め、イライザの股間へとあてがう。充分に潤っていることを確認してか  
ら、レムスはイライザの膣内へ先端を沈めていき、力を込めて一気に突き入れた。  
 イライザの体内で、何かが破れたような感触が伝わった。  
「あふっ……ああ、あっ……」  
 イライザは身体をのけ反らせ、甘美な悲鳴をあげた。  
 異性を受け入れるのは初めてのはずなのに、痛いという感覚がほとんどない。たぶん媚薬に犯さ  
れて、頭が麻痺しているせいだろう。だがそれは、イライザにとって幸運と言えるかも知れない。  
お嬢様育ちである彼女が、純潔を破られたときの激痛に耐えられるかどうか、分からないからだ。  
 
「動いてもいいですか、イライザさん?」  
 レムスの問いかけに、イライザは無言で頷いた。それを見て、レムスはゆっくりと腰を前後に動  
かし始めた。  
 レムスが動くたびに、溢れ出る蜜が流れ落ち、チュクチュクという粘っこい音を発した。透明の  
愛液が潤滑油となって、すべらかな動きを為している。レムスが一突きするたびに、痺れるような  
感覚が脳天まで響き、イライザは喘ぎ声を発した。  
「ああっ、レムスのが、私の奥に届いてる……か、身体が、自分のものじゃないみたい……!」  
「僕もです……イライザさんのが、吸い付いてきて……すごく気持ちいい……!」  
「お願い、もっと動いて……私を、メチャクチャにしてっ……!」  
 その言葉を聞いたレムスは、イライザの身体を自分の身体の上に乗せ、騎乗位の体勢にした。下  
からイライザの身体を突き上げながら、両手を伸ばして二つの乳房を鷲づかみにする。汗で濡れた  
乳房に指を食い込ませ、ピンと立った乳首を弾くと、イライザはさらに大きな声を上げた。快楽に  
身を任せ、首を激しく揺り動かすたびに、美しい黒髪が大きく乱れた。  
 イライザは上半身を倒し、レムスと唇を重ねた。同時に開かれた二人の唇から、真っ赤な舌が差  
し出され、絡み合う。突き上げられる膣、握り締められる乳房、そして弄ばれる舌……それらの刺  
激がいくつもの波となって重なりあい、一つのうねりと化してイライザを包み込んだ。頭の中は真っ  
白になり、何も考えられない状態で、ただ身体を揺さぶり続けていた。  
 
 唇を離したイライザは、上半身を起こして首をのけぞらせた。途切れ途切れに喉の奥から発せら  
れる声が、次第に甲高くなっていくような気がした。  
「だ、だめ……私もう、耐えられないっ……!」  
「僕ももう……限界ですっ……!」  
「ああっ、来て、来てえっ……ああっ、あああああっ!」  
「イ、イライザさあんっ……!」  
 二人の頭の中で、ほぼ同時に白い電流のようなものが走った。  
 内壁に包まれたレムスの分身が、大きな鼓動を打つ。それと共に、イライザの膣が収縮し、分身  
を圧迫した。直後、レムスの放った情熱の証が、イライザの体内に飛び散った。射精は一度では収  
まらず、二度、三度と続き、永遠とも思えるような繰り返しの後に、ようやく止まった。  
「ああっ、ふうっ……」  
 絶頂に達した後の疲弊感に襲われ、レムスは地面の上に仰向けで倒れこんだ。イライザも体勢を  
崩し、レムスと身体を折り重ねるように倒れた。二人はぴったりと身体を触れ合わせたまま、荒々  
しく息を吐いた。  
 しばらくの間、二人は呆けたように視線を宙に泳がし続けていた。そして呼吸が整い、胸を焦が  
すような情熱の炎が収まると、レムスは口を開き、言った。  
 
「……イライザさん。一つ、確認してもいいですか?」  
「え? なに?」  
「イライザさん、途中で正気に戻っていたでしょう?」  
「………!」  
 イライザはギクッと肩を震わせ、両目を大きく見開いた。無表情だったその顔に、戸惑いの色が  
浮かぶ。  
 しかし、今さら隠しても無駄だと思ったのか、すぐに小さく息を吐いて、クスリと微笑んだ。  
「……どうして分かったの?」  
「途中から、イライザさんの目の色が変わりましたから。声もちょっと落ち着いたような感じでし  
たからね。イライザさん、どうして言ってくれなかったんですか? 言ってくれれば、途中で止め  
ることもできたのに」  
「バカね。あそこまで燃え上がっておきながら、途中で止めるなんて、できるわけないでしょ。そ  
んなことしたら、欲求不満になるわよ。それに……」  
「それに?」  
「私……レムスにだったら、あげてもいいかな、って思ったのよ」  
「えっ?」  
 いきなりの告白に、レムスは顔を真っ赤に染めた。その反応を見たイライザは、口元に手を当て  
て、クスクスと笑った。  
 
「私ね、前からレムスのことを可愛いって思っていたの。レムスなら、私の最初の人になってもい  
いかなって、ずっと考えてた。だから私、怒ってなんかいないわよ。むしろレムスには感謝してい  
るわ。私の願いを叶えてくれたんだから」  
「だけど……僕たちには、クレヴァニールさんやヴァレリーさんという仲間がいるじゃないですか。  
あの人達の方が、僕なんかよりよほど強いし、魅力的だと思いますよ?」  
「確かにあの二人は強いけど、ちょっと気が利かないところがあるでしょ? ああいうタイプを見  
ていると、クリストファーを思い出しちゃうのよ。その点、レムスは優しいし、他人思いだし、何  
より可愛いし……とにかく私、あなたの全てが大好きよ」  
「イライザさん……」  
 顔を見合わせた二人は、声を上げて笑った。夜の帳が下りた静かな森の中で、二人の笑い声だけ  
が響き渡った。  
 ひとしきり笑い終えると、二人は静かに微笑みながら、互いの顔を見合わせた。そしてそっと目  
を閉ざし、どちらからともなく、唇を重ね合わせた。  
 改めて感じるレムスの唇は、女の子のように柔らかくて、暖かかった。気の済むまでレムスの唇  
を味わったイライザは、自分の口をレムスの耳元にあて、小さな声で呟いた。  
 愛してるわ、レムス。この世界の誰よりも、ずっと、ずっと……。  
 

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