相手は貴族の娘。
おそらく侍女たちからの話のみで構成されているであろう彼女の性知識。
デートのたびに彼女の目をみていれば、その内容がどんなものだか知れるというもの…。
おそらく「好きな人と一つになれる」とか、「とにかく気持ちがいい」だとか。
期待と恥じらいの混ざった眼差しで暗にベッドへと誘おうとする彼女を見るたび、俺は暗い気持ちになるのだ。
できることならば声を大にして叫びたい。
いいか!お前は処女なんだぞ!
初めからんな気持ちいいわけないだろう!!
…しかし、悲しいかなそこは惚れた弱み。
しっかり、彼女の理想の“初体験”のために俺はこうして経験豊富そうな親友兼先輩のもとへと足を運んでいたりする。
「…ああ、ウェインか」
俺がアーネストの私室に行ったとき、彼は部屋中を飛び交う書類と戦っていた。
そのあまりのすさまじさにたじろいで
「あ〜…。邪魔、だったかな?」
「かまわない。丁度終わったところだ」
「そうか、良かった。実は…あの。相談があるんだ」
「ほう。…珍しいな」
俺の言葉にアーネストは手にしていた書類を置いて、改めて俺に向き直った。
こうして真摯な態度を自然に取れるところが部下の信頼を得るポイントなんだろうなと納得しながら、知らず強張っていた体を深呼吸で収め、アーネストの瞳を見つめた。
「…しょ…処女と…ヤッ…ても、痛がらない方法を教えてくれないか?」
「は?」
「だから…しょ…じょ…と…」
少々の恥ずかしさは覚悟していたが、さすがに繰り返し連呼すると恥ずかしいものがある。
未だ理解のできていないような顔のアーネストに、3回目の“処女”を言おうとしたところで、彼は一人でさっさと理解してくれた。
「…つまり、相手が痛がらないセックスの仕方を教えてくれと言う訳か?」
あまつさえ、要約までしてくれた。
「ま、まあそういうことなんだ…」
「そうか…」
「その相手がえらくセックスに幻想を抱いてるんだよ。できれば、それをそれを叶えてやりたいな…って思ってさ」
「…別に難しい事じゃない。前戯をしっかりしてやれば、処女でもそんなに痛みもないだろう」
なんてことないと言うアーネストに、しかし俺の気持ちは晴れなかった。
「…出来るかな…」
思わず不安が口に出る。
アーネストはそんな俺を見て眉をひそめた。
「…お前、まさか童貞か?」
「――――っ!!な、な!!」
「…図星か…」
淡々と言うアーネストの言葉に、俺は思い切り頭に血が上った。
「わ、悪いか!!そうだよ、初めてだよ!!だから余計に自信がないんだよ!!」
「…落ち着け。別に悪いとは言っていないだろう?…ふむ」
アーネストはまたもや一人で納得しながら、机の中から何かを取り出す。
そして、立ち上がり出かける用意を始める。。
「ようは技術と経験。俺たちの仕事と同じようなものだ。てっとり早く経験をつむぞ」
「え!?ま、まさか…」
そ、そんな・・・。
確かにあの場所には興味があるけど、でもインペリアル・ナイトが見回り目的じゃなく、施設利用目的で行くなんてまずいんじゃないんだろうか…?
「…お前が何を考えているのか手に取るように分かるのが情けないな。あんな場所の女よりずっと上等な女を紹介してやる。おまけに処女だぞ」
「え…?俺にはシャロが…」
アーネストの知る女で処女といえば、間違いなく貴族の娘とかだろう。
そんな女を抱いてしまえば、即結婚という事態もあるのではないか?
そこまでいかないにしても、狭い貴族社会。いつクラウディオス卿の耳に入ってもおかしくはない。
俺がそう言うと、アーネストは机の中から先ほど取り出した何か…香水の瓶のようなもの…を俺に見せながら、余裕の笑みを浮かべる。
「大丈夫だ、全部問題ない」
「そ、そうなのか?でも、どうしてそんな都合のいい…」
未だ決心のつかない俺の背中を叩いて、アーネストは外へと促す。
部屋の鍵をかける音に混じって、アーネストの「身体で償ってもらうだけだしな」という呟きが少しだけ気になった。
なるほど。
確かにこれは上等だなあ…。
俺は目の前の騒動を他人事のように眺めながら呟いた。
口をつけた、客人…俺達をもてなすための紅茶は、もうすっかり冷めてしまっている。
「アーネスト…。これ、どういうこと?」
「さっきお前の紅茶に入れた薬の効果だ」
「そういうことを聞いてるんじゃない!!」
ドンと、この家の主であるオスカー先輩がテーブルを叩いた。
合わせて、揺れた。
置かれた紅茶の表面と。
…先輩の胸が。
「仕方ないだろう?まさかナイツを国が認めていない娼館に連れて行くわけにはいかないからな」
「だからって僕にウェインの相手を!?冗談じゃない!!さっさと男に戻してよ」
「あのな…」
延々と続きそうな言い争いに俺はため息をついた。
…しかし、まさかアーネストがあんなことを企んでいたとは…。
俺は、これまでの経歴を、ぼんやりと思い返した。
先輩の家を訪れてしばらくは、不思議がる俺を放っておいてなんてことはない世間話をしていた。
だが、先輩が僅かな間席を立ったとき、アーネストが件の瓶を取り出し、中身を半分ほど先輩のカップに注いだのだ。
俺を見やっての意味不明な笑いに首をかしげていると、先輩が帰ってきた。
そして、先輩がコクン、と一口紅茶を飲んだのを見届けると、アーネストは先ほど俺がアーネストに話した内容をそのまま先輩に伝えて。
「へー」と興味深げに俺を見た先輩の青い瞳が焦点を失ったのはその直後だった。
しばらく苦しげに呻いたかと思えば、そのまま床に倒れた先輩。
慌てて駆け寄り抱き上げた俺の右手は、そこにあってはならないものを触ってしまっていた。
「せ、先輩!?オスカー先輩っ!?」
「う…うぅん…」
思わず声を荒げて先輩の名を呼び、その意識を取り戻させる。
それでも…それでもその感触はなくならなかった。
先輩の胸元に置いた俺の右手が感じたのは…。
まごうことなく、女の乳房の柔らかさだった。
「…お前、あの時言ったよな。『どんなことでもする』と」
「あれは…。だって、まさかこんなこと…」
「少し我慢すれば良いだけだろう?それであれはなかったことにしてやる」
「………」
「可愛い後輩のためでもあるわけだしな」
「………」
「…いいな?」
「分かった、分かったよ。教科書にでもなんでもなるよ…」
俺が過去に思いをはせている間に、どうやら交渉はまとまったらしい。
うな垂れる先輩の横で、対照的にやや性質の悪い笑みを浮かべてアーネストが俺を呼んだ。
「ウェイン、オスカーが快く協力を引き受けてくれた」
「は、はあ…」
快く…とはどうしても見えない先輩の顔を見ながら曖昧に頷く。
そんな俺の内部葛藤を察したのか、不意に先輩が顔を上げて俺の手を握る。
「なっ…?」
「…寝室は、こっち。早く、行こう…」
一言呟いて、先輩はそのまま歩き出す。
少し早めな歩調で進む俺達の後を、アーネストが少し遅れてついて来た…。
案内された寝室は、俺が思っていたよりもずっとシンプルだった。
飾り気のない…まあそれでも高級感はあったが…大きなベッド。
そばには一人がけのソファーと、テーブル。
部屋にはそれだけしかなかった。
「…で、アーネスト。僕はどうすればいいの?」
辺りを見渡す俺の手を離して、先輩は後から入ってきたアーネストに問いかけている。
柔らかな声にどうしても怒りが滲むのは仕方ないだろう。
「別にお前は何もしなくて良い」
「そう…」
「ウェイン」
アーネストの呼ぶ声に俺は振り返る。
アーネストは先輩の肩を押し、俺の方に寄せながら、まるで訓練の時のように真面目な口調で俺に告げた。
「ウェイン。これをお前の恋人だとしよう。まずは何をする?やってみろ」
なにを…って、普通、キス…だよな?
思った俺は、薬のせいか俺より小さくなった先輩を見下ろして、二の腕を一言「すみません」と断って掴む。
そして…。
・
・
「…アーネスト…。本当にやるのか?」
俺は困ってアーネストを見上げた。
「なんだ?オスカーじゃ相手役には不足か?」
「不足って…そんな…」
言いながら先輩の方へ改めて視線を向ける。
元々先輩は、そのままでも女として通用しそうな顔をしている。
少し伏せられた青い瞳を長い睫毛が飾り、健康的な白さの肌は、この距離で見ても僅かのたるみも皺も見当たらない。
おまけに今は、男の身で女として抱かれるというたまらない屈辱を小刻みに震えながらじっと堪えている様が、拍車を立ててその美しさに磨きをかけている。
…欲情しないわけがない。
俺が気にしているのは、もっとメンタルな面でのことだ。
本人が了承したとはいえ、先輩を、俺が…。
「…いいから。ウェイン…」
思い悩んでいる俺に、か細い声。
「いいんですか?先輩…」
「僕だって男だよ。…今はこんなんだけど。決めたことくらい守るよ」
笑顔も言葉の内容にも微塵も弱さを見せない先輩の、しかし声だけはそれを裏切り震えていた。
「先輩…」
「大丈夫だって、減るもんじゃなし」
その言葉に俺は小さく頷くと、覚悟を決めて目の前の薄い唇に自分のそれを押し当てた。
触れた瞬間、先輩の体が強張るのが掴んでいる二の腕を、触れる柔らかな胸元を通じて俺に伝わる。
だが、ここで離しては恋人をベッドに誘う前のキスではないだろう。
本で得た知識を総動員して、俺は先輩の唇を舌先でちょん、と突いた。
「――――っ!」
先輩の体がさっきよりも大きく跳ねた。
俺は、自分の手を二の腕から背中へと回し、細い先輩の体を腕の中に収める。
「先輩すみません。力、抜いてください…」
「う…ん。ごめん…」
少しだけ唇を離して告げると、先輩は頬を赤く染めながら小さく深呼吸。
吸って、吐いて…。
薄く唇が開いたその瞬間を見計らい、俺は素早く口付け、僅かな隙間をぬって舌を差し込んだ。
「んぅ!…っ…」
他人の口の中を舐めるのはさすがに抵抗があったが、先輩の口の中は想像していたよりもずっと気持ちが良かった。すべすべと暖かくて、ほんのり甘い。
そういえば先ほど飲んだ紅茶に先輩はかなり砂糖を入れていた。おそらくそのせいだろう。
生理的な抵抗感もなくなった俺は、より大胆に先輩の口腔を蹂躙した。
戸惑うようなぎこちない動きの舌を絡めとリ、上顎のでこぼことした粘膜を軽く擽る。
身長の関係で下を向いて先輩に口付けているから、唾液はすべて先輩の口の端から滑り落ちている。
先輩の眉間が苦しそうに寄ったのを確認した俺は、唇を離し、その滴りの跡を舌で舐めあげた。
「はぁ…はぁ…はあっ」
「第一段階合格、だな。・・・と言ってもここからが肝心なわけだが」
軽い酸欠状態なのか、幾度も荒い息をつく先輩を俺の腕から離し、アーネストが言う。
柔らかな女体が腕の中から消えた喪失感を感じながら、俺は生徒として、彼の言葉を待つ。
「次は運搬。ベッドに上手く運べるかどうかも男として大切だぞ」
「分かった」
俺は、アーネストから急いで先輩を取り戻し、嬉々としてその体を抱きしめた。
ベッドはかなり造りがしっかりしているのか、俺と先輩とアーネストの3人が乗っても小さな軋みすら聞こえなかった。
「まずは確認だ」
「あ、ああ…」
先輩の背後に回っていたアーネストは、先輩を挟んで向き合う俺に言う。
そして先輩の胸元に手を伸ばすと、シャツをたくし上げ、乳房を外気にさらす。
弾みで揺れる乳房は、本などよりもずっと作り物めいた綺麗な曲線を描き、俺は思わず喉を鳴らしていた。
大きさは俺の手で包み込めるか、少し余るか・・・・といったところだろう。
上向きにつんと尖る乳首はピンク色で、左の乳首は乳輪の中央に埋もれている。
「いいか、経験がない女は壊れ物だと思え。過剰なくらいの優しさが大事だ」
背後から手を伸ばしたアーネストは、むに、と乳房を掴んで揉みしだきはじめる。
歪に変形する乳房を、俺はただ呆然と眺めていた。
「痛い・・・・アーネスト・・・・やめ・・・・」
「な?」
「あ、ああ・・・・」
小さく悲鳴を上げた先輩の頭を軽くなでた後、アーネストはズボンのボタンを外しにかかった。
片足だけ裾を抜くと、先輩の膝を曲げさせ俺の前でM字に開脚させる。
「うわ・・・・」
「ほう・・・・」
「―――っ」
思わず俺とアーネストの上げた声に、先輩の顔が羞恥に染まった。
初めて見る女の中心。もっとグロテスクな様を想像していたが、先輩のそこは薄いピンクと、クリーム色の肌だけで構成され、可愛いとは思うが、生々しさはまったく感じなかった。
おそらく、そんな秘部の様子に多大な貢献をしているのはつるりとした無毛の丘だろう。
「先輩・・・・綺麗です・・・・」
思わず呟いた俺の横で、アーネストが頷く。
「ああ、綺麗だな。綺麗すぎる・・・・薬の所為か。・・・・とにかくウェイン。これは例外中の例外みたいなものだからな。お前の女もこうだと思うなよ」
「分かった・・・・」
「そうか・・・・じゃあ、とりあえず教えるぞ・・・・」
アーネストはそう言って、先輩の割れ目へ指を伸ばして行った・・・・。
「わかったな?」
「あ、ああ・・・・」
頷く俺を見ながら、アーネストは先輩の服を整えてゆく。
先ほどと同じシャツだが、下肢を覆うそれだけは本物に近づけるためと、先輩の侍女のスカートになっていた。
アーネストがベッドから降りると、支えを失った先輩の脱力しきった身体は軽い音を立てて仰向けに倒れてしまう。
「とりあえずやってみろ」
そんな言葉を受けて、俺は不安そうに見上げてくる先輩の服に手をかけた。
男物のそのシャツは、大きな膨らみに今にもボタンが弾け飛びそうで。
案の定、胸元のボタンはちょっと動かしただけで勝手に外れてしまった。
「あ・・・・」
ふるんと、仰向けになっても形の崩れてない乳房が揺れながら現れる。
その頂点にある小さな乳輪と乳首は、先程より色を濃くし、口付けに火照る先輩の唇と同じ色をしていた。
「えっと・・・・し、失礼します」
「・・・・」
形だけの了承。
その魅惑的な丘を乱したくて、たまらなくて。
俺は、先輩の返事が返ってくるよりもはやく、そっと乳房に手を伸ばした。
「え・・・・?」
その瞬間、思わず声を上げていた。
「どうした?」
ソファーに座ってこちらを無表情に眺めていたアーネストが問い掛けてくる。
「い、いやなんでもない。ただ、思ったより硬いな、って・・・・」
そう、先輩の乳房は、俺が想像していたよりもずっと硬かった。
溶けてしまいそうな頼りない柔らかさ・・・・。
そう、思っていたのだが、目の前の丘は皮の袋に限界近くまで水を入れたような、そんな感触だった。
指で触れば確かに従順にそれを受け入れ形を歪めるのだが、気を抜けばぷるんとその指を弾き飛ばしてしまいそうなほどだ。
「まだ未熟だからだろう」
アーネストの言葉に曖昧に頷いてみせながら、俺はすっかりその感触に酔っていた。
最初は恐る恐る片手だけでだった愛撫が、今では先輩の腹のあたりに膝立ちになり、両手で手の平全体を使って揉んでみたり、キュッと縮こまるように硬くなった乳首を親指と人差し指で摘んでみたりを繰り返した。
「ん・・・・っ・・・・あぁ・・・・」
声を出すことが恥ずかしいのか、切れ切れの不自然な声が先輩の口から漏れ出してくる。
本当は俺の手なんて振り払ってしまいたいに違いない。
だが、苦しげに眉を寄せ、快楽を払うように首を振りながらも、腕だけは俺の邪魔にならぬように横に置いたまま、シーツを乱してゆくその姿が劣情をそそる。
「先輩・・・・感じてます?」
「―――!」
尖りきった乳首を摘みながら聞くと、全身をヒクつかせながら俺を視界に収める。
その表情は、隠し切れない色をにじませ、またそれを恥じるように。
複雑な、そしてどうしようもないほど的確に男の本能をくすぐる表情に気をよくし、俺は先輩の横に身体をずらすと、手を胸元から下肢へと滑らせて行った。
「や・・・・」
ズボンと違い、あっさりと露になる秘部。
丘をくすぐりながら、谷間に指を差込む。
「んぅ・・・・あ・・・・ウェイン・・・・」
差込んだ指は、たちまち熱い蜜に包まれ、指を僅か動かしただけできゅちゅきちゅと濡れた音があたりに響く。
「先輩・・・・すごく・・・・濡れてますね・・・・」
「そんなことないっ!!」
指摘された恥ずかしさのあまりか、今まで装っていた従順さをかなぐり捨てて先輩が叫ぶ。
力のこもっていない、まったくの無力な腕が、俺を引き剥がそうと幾度も肩を、胸を叩いた。
「違いませんよ・・・・ね、先輩」
何かが、ゾクゾクとした感覚が腹の底から湧き上がってくる。
それは、無力な獲物を見つけたときの獣の本能。
俺は先輩の両手を掴んで頭上で縫いとめると、指を割れ目に沿わせ上下に往復させながら、濡れた音をさらに引き出していった。
「ね・・・・先輩、聞こえます?」
「聞こえないっ・・・・」
「嘘です、聞こえるでしょう?ほら・・・・」
一番上のこの場所には、女が一番感じる肉芽があるはずだ。
俺はアーネストの言葉を思い返しながら少し膨らんだそれを強く押してみた。
「はんっ!あ゛、い・・・・ぁぅ・・・・」
先輩の体が大きく跳ねる。
溢れる蜜はさらに量を増し、シーツにシミまで作っているほどだ。
俺はそんな先輩を追い詰める笑顔を浮かべながら、その唇を奪った。
キスの技巧はまだまだだったとおもうが、それでも先輩の快楽を驚くほど煽ることができらしい。
やがて抵抗は収まり、先輩はどこもかしこも赤く染めながら、キスの合間に大きな声で喘ぎ、下肢を嬲る俺の手をその太ももで挟み込んで、もっともっととねだるように腰を突き上げてくる動きさえ見せた。
「嫌ぁ・・・・恥ずかしいの・・・・嫌なのに・・・・」
「・・・・俺は嬉しいですよ。先輩が俺なんかに感じてくれて」
そう告げた俺の声は、明らかな欲望に弾んでいた。
『・・・・シャロとまともなセックスが出来なかったらどうしよう・・・』
思わずそんな不安が頭をもたげてくるほどに、加虐心をくすぐる先輩の痴態に興奮してしまう。
もっと、もっと乱れさせてみたい。もっと、辱めてやりたい・・・。
『・・・・って、先輩相手に何考えてるんだ!!』
不意に我に返った俺は、隠れていたSっ気の業の深さを心中で嘆きながら、先輩の足首を掴み左右にそっと広げた。
先輩も自身の役目を思い出したのか、もう抵抗することもなく、俺のされるがままになっている。
足を開かせると、それに伴って中心の肉弁が濡れた音を立てながら開いていく。
立ち上る甘酸っぱい女の匂いは先ほどまでの比ではなく、俺はその芳しい香りに目眩すら覚えた。
それでも、視線は先輩の中心に釘付けだった。
性的な興奮に充血しているのか、
先ほどよりも赤味を増した先輩の中心は小刻みに震え、
アーネスト曰くの『男を受け入れる箇所』は、
小さく開いたり閉じたりを繰り返しながら、そのたびに透明な雫を零して、
その上・・・・俺がさっきまでいじっていた肉芽はつんと天を向き、
アーネストに教えてもらったときは指を使って剥いた包皮は勝手に剥けて、白っぽい肉真珠が剥きだしになっている。
俺は口に溜まっていた唾液を嚥下すると、恐る恐るその真珠を唇で挟んでみた。
「―――っ!!ひゃぁ!!い、だめっ!!それ、ああっ!!」
ビクビクッ!!
守る殻なしの直接の刺激がたまらないのか、先輩の身体が本日一番の反応を見せる。
気を良くした俺はさらに舌で舐めたり突付いたり、軽く噛んでみたりした。
「だめ・・・・ソコ・・・はぅ!!感じすぎて、おかしくなる、からぁ!!」
・・・・こんなものかな?
先輩が限界に近いのを見て取って、俺はそこから口を離した。
アーネストに言われていたのだ、快楽のピーク一歩手前・・・・すなわちイク直前ならば、多少の痛みも快楽に取ってくれる、と。
強烈過ぎる愛撫が収まったことに脱力する先輩の膝の裏を手で押して、足をさらに大きく開かせて俺の身体を間に割り入れる。
「先輩、入れますよ・・・・」
「ん、くんぅ・・・・」
絶頂間際まで追い詰められていた先輩に答える余裕はないのか、子犬のような声を上げて俺を見上げているだけだった。
そんな先輩に笑いかけ、ズボンの前を寛げて自身を取り出し濡れた秘裂に押し当てる。
「ぅ・・・・あぅ・・・・くぁ・・・・」
2度3度、先輩の蜜に滑ってあさっての方向を突付いていたそれも、狭い口に先端を押し当てると少しずつだが先輩を拓げていくことに成功する。
「あぁ・・・・熱い・・・、うぁ・・・ぁ」
「っう・・・・」
やがて、自身の先端が何かにその侵入を阻まれる。―――これが処女膜か?
俺は先輩に視線を投げる。先輩は俺の熱にうかされるように喘いではいるが、痛みは感じていないらしい。
そう、理解して、先輩の腰を掴むと俺は一気にそのバリケードを破り胎内へと侵入する。
「―――!!」
ブチッ!!
肉の裂ける音が振動で伝わってくる。
挿し込んだ肉棒の体積の分中に溜まっていた液体が噴出してくるのに、朱色が混じって、シーツを染める。
「あ・・・・ああ・・・・」
「先輩・・・・大丈夫・・・・です、か・・・・?」
気遣いの言葉をかけられたのは自分でも奇跡だと思う。
初めての女の胎内は、言葉に表せないほどに心地よく、理性やその他、何もかも吹っ飛んでしまいそうだった。
「・・・・思ったほど痛くない・・・・から・・・・」
表情を歪ませながら告げる先輩に一言謝罪しながら、俺はゆっくりと抽挿を開始した。
奥に挿し込むたびに、破瓜の血が溢れ出てくる。
そのぬめる感触すらたまらなく気持ちいい。
「先輩・・・・すごく、いいです・・・・」
「あ・・・ん。僕も・・・・なんか・・・・あぁ・・・・気持ち、いい・・・・かも・・・」
やはり慣らしていたとはいえ、初めて受け入れる男に痛みは感じるらしい。
痛みに負けそうな不確かな快楽を手繰り寄せようとする先輩の表情を読みとって、俺は片方の手を先輩の胸に伸ばし、腰を叩きつける動きに合わせ揉みしだく。
「ひぅ!?あ、や・・・・ウェイン!」
「先輩も・・・・気持ちいいほうがいい・・・・でしょ?」
「・・・・」
俺、本当に危ない道に踏み込んだかも?
快楽を探して一生懸命だったくせに、与えられると戸惑う。
そのくせ、拒むかと思えば問い掛けるとこんな風に素直に頷いて快楽に身を任せようとする。
・・・・可愛くて仕方ないなんて思ったら・・・・戻れないんだろうな。
分かってはいるが、それでも・・・・。
「あ、あぁ!ひゃぁん!!」
あの先輩が、俺に胸を揉まれて突っ込まれてよがってる。
普段からは想像もつかない頼りなさに"可愛い"と思ってしまいそうになる。
「先輩・・・・」
「ウェイン・・・・?」
体重を支えながらの抽挿と、胸への愛撫に腕がにだるさを覚えた俺は、先輩の手を取り背中を支え、繋がったまま後ろに倒れる。
「うぁぁ!!ウェイン、やだ、これ・・・・深いよぉ・・・・」
騎乗位で繋がると、人一人の体重が全て結合部にかかり信じられないほど奥深くまでささるらしい。
先輩の無毛の割れ目が限界まで口を広げ、根元まで俺を飲みこんでいるのが見える。
その上で惜しげもなく曝された肉真珠は、男の性器のように硬く勃起しヒクヒクと震えていた。
「先輩、すみませんけど・・・・ココ、は自分でお願いしますね」
「あぅ・・・・ん・・・・」
俺は先輩の胸元に手を伸ばすと、親指と人差し指で乳首を擦り上げながら残った指で膨らみを揺らした。
「あ・・・・だめ・・・・あぁ・・・・」
その熱に浮かされたように呟きながら、先輩は俺の下腹部に両手をついて拙い動きで円を描くように腰を動かし、肉真珠を俺の下腹部に擦りつける。
先輩自身の快楽を追求するその動きは、繋がった俺にもすさまじいまでの快楽を与えた。
「くっ・・・・」
今までとは比べ物にならない激しい射精衝動に、二の腕に挟まれますます張りをました乳房を握り締めたまま、ベッドのスプリングの力を借り下から細い身体を思いきり突き上げる。
「ひゃぁ!あ・・・・あぐ・・・・」
突然の攻撃に先輩の膣が激しく収縮し、俺をきつく締め上げる。
それに耐えきれず、絶頂に向かい俺の動きがますます速くなっていく。
もう先輩に愛撫など施している余裕は無かった。
乳房に当てていた手を腰まで下ろし、上下に揺さぶる。
弾む乳房を見ながら、俺は腰を使いつづけた。
「だめ・・・・ウェイン、ああ―――!」
幾度目かに最奥まで挿し込んだ瞬間、先輩の身体が硬直する。
今まで以上のきつい締め付け。痛みを感じるほどの処女の締め付けに思わず肉棒を体内から抜き出す。
その瞬間、限界まで溜まっていた欲望が弾けた。その勢いはすさまじく、絶頂に戦慄く先輩の身体だけでなく顔にまで白い彩りを施していくほどだった。
「あ・・・・」
温かな液体に溶かされるように、硬直していた先輩の身体から力が抜け、仰向けにぐったりと倒れこむ。
精液にまみれた身体をヒクつかせながら、薄く目を開いて荒い呼吸を繰り返すその姿は尋常ではなく、俺は慌てて先輩を抱き上げた。
「先輩!」
「・・・・気を失っただけだろう」
取り乱した俺とは対照的に、ずいぶんと落ちついた声が後ろから聞こえる。
・・・・あ。そういえばアーネストもいたんだっけ・・・・。
すっかり忘れていた・・・・という思考が表情にもばっちり出ていたらしい。
「気にするな。我を忘れる・・・・性行為とはそういうものだろう?」
アーネストは何でも無いと言ったように、相変わらず淡々と告げた後、珍しい笑みを俺に向けた。
「それより。これならば本番も大丈夫だろう」
「あ、ああ・・・・たぶん」
「心配ならば後少し練習していくといい。薬の効果は一晩くらいもつ」
アーネストの言葉に、俺はしっかりと頷いていた・・・・。