夜の中、モニカはふと目を覚ます。一瞬、前後不覚になる。  
記憶を検索するより先に視線を彷徨わす。  
網膜に焼きついたのは白い人影。  
いや、月光を思わせる白い髪をした青年だ。  
その名をスレインという。元は闇の精霊使い。そして現在はモニカの恋人  
であり、旅の相棒でもある。  
彼は半裸で窓の外の月を見ていた。そして自分が全裸だったのを思い出し、  
毛布を手繰り寄せる。  
 
彼と身体を重ねるようになって、どれほど経ったものか。未だに気恥ずかしさ  
を覚える時がある。例えば今、こんな瞬間だ。  
 
行為そのものにはだいぶ慣れたのだが・・・  
先刻まで、甘い悲鳴をあげながら、彼のしなやかな肉体にしがみついていた。  
思い出すと赤面する。普段、あまり感情を表に出せない(というか出さない)が  
故に、一度爆発すると収まりがつかない。  
例えば、彼との別離しなければならなかったあの時とか。  
結局、彼は別の肉体を手に入れ現世に留まったのだが。  
やはりはずかしいので赤面する。  
 
男の癖に綺麗な身体だ。  
モニカはそう思う。  
そして想像もつかないほどに彼は強い。  
モニカは知っている。  
 
悪しきダークロードに真っ向勝負で打ち勝ち、世界を救ったのは他ならぬ  
自分の恋人なのだ。  
 
それに引き換え自分は・・・  
 
細い手足。発展途上の胸。少年のような臀部。  
綺麗だよ、と彼は言ってくれる。  
その言葉を証明するように、彼は自分を優しく抱いてくれる。  
もっと強くしてもいいのにな。  
時折そう思うぐらいにひどく繊細な愛し方。  
不安なのかも知れない。壊してしまうかもしれない。  
彼のことだ。それぐらいは思っているかも知れない。  
もう少しどうにかならないか。彼が、というより自分の体型が。  
もう少し時間があれば、彼の情動の全てを受け入れられる肉体になれる  
のだろうか。  
なにより、その時まで彼は傍にいてくれるだろうか?  
なんのことはない。自分も不安なのだ。  
モニカは既に気づいている。  
己の存在を手放しで受け入れてくれる数少ない存在。  
その筆頭たる彼を失うのが。喪うのが。居なくなるのが。  
たまらなく不安なのだ。  
身体が震える。寒いからではない。この震えをとめられるのは一人だけだ。  
「スレイン」  
恋人の名を呼ぶ。自分にとっての唯一無二を。  
 
どうした? と、彼が瞳で問うて来る。  
寒いの、とモニカは答えて、彼に手を伸ばす。  
本心を言うのは恥ずかしすぎる。  
躊躇せず、彼はその手を握る。硬い手だ。勇敢な戦士の手だ。  
何よりも、やさしい男の手だ。その腕に抱かれ、身体に縋り付く。幼子が  
父親にそうするように。彼は腕にゆっくりと力を篭め、額に軽く口付けを  
してくれた。うれしいけれど、足りない。もっとして欲しいと思う。この  
気持ちをどうやって伝えようか? いやらしく思われたくない。  
それはエゴだと自覚するが、どうしようもない。  
モニカ・・・  
耳元で囁かれ、心と身体が熱くなる。もっと暖めて欲しい。  
彼の熱を感じたい。  
 
「抱いて・・・」  
唇から物凄く率直な言葉が滑りでる。言ったのは自分だ。  
そうしないと伝わらないから。抱きしめられるだけでは、きっと足りない  
から。死ぬほど恥ずかしいけれど、この震えを止めたいから。彼が傍にい  
ることを実感したいから。  
 
唇と唇が重なる。最初は軽く触れ合うだけ。やがて啄ばむように。  
吐息と吐息が重なり編み上げられる。じゃれる様に舌と舌が絡まりあう。  
先刻の余韻の所為か、それだけで身体が反応している。端的に言えば受け  
入れる準備が出来上がっている。  
唇が肌を滑る。喉を、鎖骨を、胸を。お臍を舐められるのはゾクリとする。  
背筋がしなる。スレインは背中にも口付けをする。たまらない。  
 
背中の羽。飛べない翼。小さな羽根。純血のフェザリアンではない証。  
それを、慈しむ様に撫でてくれるのは彼だけだ。  
 
膝の上に抱き上げられ、位置を定める。彼がモニカの翼を気遣うが故に、彼が  
モニカを組み敷くことはない。初めての契りのときもそうだった。  
この辺も、モニカが彼に悪いな・・・と思うことである。  
偶には普通にさせてあげたいのだが。  
 
期待と緊張の入り混じった瞬間。ゆっくりと腰を落とす。  
膣を貫かれ、一瞬脳内が空白になる。深奥から零れ出る甘い悲鳴。  
「くぁっ・・・あうっ、ああっ、ああっ!!」  
この体勢だと、動きが少ない分繋がっているという感覚がはっきりと  
している。深く、より深く。  
いつしかモニカは腰を振る。ここは気持ちいい。ここはキモチイイ。  
何処に当たっても快感であった。  
羞恥など何処かへ消えた。いまこの瞬間には関係ない。翌日は知らないが。  
「モニカ、いいよ・・・」  
端正な顔を快楽に歪ませ、スレインが呻く。  
モニカはうれしかった。一方的な奉仕などではなく、快感を共有できるから。  
自分にも彼を喜ばせることができると確信できるから。だから身体を重ねる。  
「スレイ・・・スレイン・・・!」  
きゅうと、膣が無意識に締まる。限界が近い。  
来る。待ち望んでいたものが。  
「いくよ・・・」  
やがて訪れるその瞬間。胎内の深奥で、熱いものが弾ける。  
どくんどくんと注がれる、彼の情欲の証。同時にモニカも意識を飛ばした。  
 
夜の中、少女は歌う。少女の名はモニカ・アレン。  
彼女は闇の精霊使いで、スレインの恋人で、旅の相棒だ。  
己と似ているようで違う色彩の髪は短めだが、最初に逢った頃よりは伸び  
ている。身長も初対面のときより、少しだけ伸びている。  
そして、本人が気にしているらしき身体つきも、少しずつ女性特有の丸みを  
帯びてきている。  
「次は何処へいくの?」  
「そうだな・・・この辺は大体廻ったしな」  
スレインは少しだけ思案する。本当は、彼女と一緒なら何処へでも構わない。  
思っても口には出さないが。  
「東へ行ってみるか? 弥生さんが暮らしてたっていう国」  
「遠いんじゃないの?」  
「旅の醍醐味だろ?」  
「そうだけど・・・じゃあ、色々準備しないとね」  
 
旅は続く。何処までも。少なくとも彼女がやめようと言わない限りは。  
あるいは、この仮初の肉体が朽ち果てるその時までは。  
 
そしてとある夜の中で。  
「ね、スレイン」  
「ん?」  
「あのね、初潮、きたみたい」  
「え・・・」  
いままできてなかったのか。いや、なんとなくそんな気はしていたが。  
今まで彼女に聞かなかったし、聞くのも憚られたわけだが。  
 
「ふふふ、これで、子供を産めるわけね」  
未だかつてないほどの笑顔を見せるモニカは、確かに大人の女性の雰囲気を  
纏っていた。  
                            END    
 

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