「いよいよ明日か……」  
 とある安宿屋の一室で、スレインは独り言を呟いた。  
 ここはシェルフェングリフ帝国の都市、リンデンバーグ。シオンが拠点としている  
ジェームズ城から最も近い場所に位置する、大都市である。キシロニア連邦国家から  
旅を始めたスレインは、幾多の戦いを経て、とうとうここまでたどり着いたのだった。  
 明日はついに、シオンとの戦いに挑むことになる。きっとこれが、スレインにとっ  
て最後の戦いになるだろう。一大決戦を前にして、スレインは気を高ぶらせていた。  
 スレインは愛用の剣の柄を握り、顔の高さまで持ち上げてみた。月光の明かりを浴  
びて、刃が金色の光を放った。  
 ダークロードであったシオンは、人間の範疇を遥かに超えた力を持っている。スレ  
インはこれまで、数え切れないほどの強敵や怪物と戦ってきたが、シオンの力は彼ら  
とは比べものにならないほど強大だろう。おまけに彼の元には、クライヴやバーバラ  
という手強い手下がいる。彼らと同時に戦って、果たして勝てるのだろうか……?  
 
「……あー、面倒くさい。やめた、やめた」  
 スレインは唸るように声を上げた。こんなことをいくら考えたって仕方がない。ど  
うせ明日になれば、全ての結果が出るのだ。あれこれ考えをめぐらせたところで、ど  
うなるものではない。スレインは剣を壁に立てかけ、手を離した。  
 こういうときは、早めに眠って身体を休めるのが一番だ。スレインはベッドの上に  
寝転んで、瞼を閉ざそうとした。  
 と、そのときだった。  
「スレインさん、起きていらっしゃいますか?」  
 扉を叩く音と同時に、柔らかな女性の声が部屋の向こうから聞こえてきた。  
「ああ、弥生さん? どうしたんだい、こんな時間に?」  
「ちょっと寝付けなくて……申し訳ありませんが、お邪魔してよろしいでしょうか?」  
「ああ、いいよ。鍵は開いてるから、入ってきてよ」  
「では、失礼いたします」  
 弥生は扉を開きながら、スレインに向かって軽くお辞儀をした。扉を閉め、スレイ  
ンの元へ歩み寄った弥生は、あらためて深々と頭を下げた。  
 
 弥生は、おしとやかという言葉を具現化したような女性だった。仕草の一つ一つが  
とても丁寧で、見ている者に安らぎを与えてくれる。弥生は東方の国から来たという  
が、その地方の女性はみんなこんな感じなのだろうか。だとしたら、その地方へ移住  
するのも良いかもしれない、とスレインは考えていた。  
「いよいよ明日に迫りましたね」  
 椅子に腰掛けた弥生は、スレインに向かってそう言った。  
「きっと明日の今頃には、勝負が付いているでしょうね。そのとき生き残っているの  
は、私達でしょうか。それとも、シオンでしょうか……?」  
「不安なのかい、弥生さん?」  
 スレインが問いかけると、弥生は無言で頷いた。  
「シオンの力は強大です。シモーヌやクライヴも、優れた精霊使いです。彼らを敵に  
回しての戦いは、今までにないほど厳しいものとなるでしょう。たとえ勝てたとして  
も、二度と歩けないほどの傷を負うかもしれない……そう考えると、不安に押し潰さ  
れそうになるのです」  
「大丈夫だよ、弥生さん。オレ達は負けない。自分のことしか考えていないような連  
中に、世界を救おうとするオレ達が負けるはずないじゃないか。そんな深刻に考える  
必要はないよ」  
「そうかもしれません。でも、やっぱり不安なんです……どうしようもないくらいに」  
 弥生はそう言うと、両腕を伸ばし、スレインの右手を握り締めた。突然、弥生の温  
もりを感じたスレインは、少しだけ顔を赤らめた。  
 
「スレインさん。何かあったら、あなただけは生き残って下さい」  
「……どういうこと?」  
「あなたはこの世界に必要なお方です。万が一のことが起こったら、あなただけは生  
き延びて下さい。私はこの命に代えても、あなただけはお守りいたします」  
「弥生さん……!」  
 スレインは弥生の目を見つめた。温かい眼差しではなく、キッと鋭い視線で。  
「ダメだよ、そんなことを考えたら! どうして死ぬことを考えるんだ! どうして  
みんなで生き抜こうって考えないんだ!」  
「ス、スレインさん……?」  
「戦いを前にして不安になるのは仕方ない。でも、初めから死ぬことを考えて戦って  
も、シオンに勝てるわけがないだろ! 弥生さん、オレ達は死ぬために戦いに行くん  
じゃない。シオンに勝って、生き抜くために戦うんだ! そんな気弱な心構えでいる  
のなら、今すぐオレの仲間から外れて、帰ってくれ!」  
「………!」  
 弥生は押し黙った。いや、スレインの迫力に圧され、何も言えなくなった。弥生は  
両手をグッと握り、唇を噛み締めた。  
 
 しばしの間、奇妙な沈黙が部屋の中を支配した。そしてしばらく経ってから、弥生  
は顔を上げ、言った。  
「……申し訳ありません。私、考えが間違っていました」  
「いや、オレもちょっと言い過ぎたよ。弥生さん、今日はもう眠りなよ。徹夜なんか  
したら、弓を引く力も出せなくなるぜ」  
 スレインはそう言って、自分のベッドに戻ろうとした。  
 だがシーツに手をかけたところで、スレインの動きが止まった。弥生が両腕を広げ、  
後ろからスレインに抱き付いてきたからだ。背中にぴったりとくっついた弥生の胸の  
膨らみの感触が、スレインの背中に伝わった。  
「な……なに? 弥生さん?」  
「スレインさん、お願いがあります。聞いていただけますか?」  
「ああ、オレにできることなら。で、お願いって何?」  
「私を……抱いていただきたいのです」  
「ええっ?」  
 スレインは、裏返っているのが自分でも分かるような声を発した。  
 スレインは後ろを振り返り、弥生の両肩に手を置いた。弥生は、何かを必死にこら  
えているかのような切ない眼差しで、スレインを見つめていた。  
 
「幼い頃からお社で修行をしていた私は、外の世界をほとんど知りませんでした。だ  
から、男の方を好きになったことなど、一度もありません。この先生きていれば、恋  
に落ちる機会を持てるかも知れませんが……もしかしたら、今夜が私の人生にとって、  
最後の夜になるかもしれません。だから最後の思い出に、スレインさんに抱かれたい  
のです」  
「何を言ってるんだ、弥生さん! たった今、死ぬことなんか考えちゃいけないって  
言ったばかりじゃないか! もう忘れたのか!」  
「もちろん、忘れてません。でも万が一、私が命を失うことになれば、きっと後悔し  
ます。どうして恋愛の一つもしなかったんだろう、って……そうならないためにも、  
一度だけでいいから、心の底から愛し合いたいのです」  
「だ、だけど……!」  
「お願いです、スレインさん。私のわがままを、聞き入れて下さい」  
 弥生は腕を伸ばし、スレインの両手をしっかりと握り締めた。  
 弥生の目からは、今にも涙が溢れそうだった。自分はとんでもないことを口にして  
しまった、と思っているのかもしれない。しかし、悔やんでいる様子はない。ここま  
で来てしまったら、もう行きつくところまで行ってしまおう、と考えているのかもし  
れない。  
 
 スレインは左腕を弥生の背中に回し、そっと抱き寄せた。  
「分かった。じゃあ、弥生さんの言うとおりにさせてもらうよ」  
「ありがとう、スレインさん……」  
 弥生は軽く微笑みながら、両目の瞼を閉ざした。  
 スレインはそっと顔を近付け、唇を重ね合わせた。弥生の唇は柔らかく、温かくて、  
そして震えているようだった。  
 スレインは一度、唇を離した。そしてもう一度重ねると、口から舌を差し出し、弥  
生の唇をこじ開けた。そして弥生の口の中を味わうかのように、ゆっくりと舌を動か  
し回した。  
「ん……あ、うんっ……」  
 スレインの両肩に置かれた弥生の手に、ギュッと力が込められる。恋愛経験がなく、  
もちろんキスすらしたことのない弥生にとって、こんな気持ちになるのは初めてだっ  
た。全身が震え、胸の奥に火が付いたようになった。  
 弥生はしばらくの間、スレインにされるがままだった。しかし、互いの舌と舌が触  
れあうのを感じた弥生は、自分の思うままに舌を動かしてみた。  
 弥生の口の中で、二人の舌が蛇のように動く。舌を絡ませあうごとに、二人の胸に  
情熱がたぎり、理性がとろけていくような気がした。  
 自分の右手を弥生の頬に添えていたスレインは、その手を下の方へ動かした。そし  
て着物の合わせ目から手を滑り込ませ、乳房の上に手をやった。民族衣装に隠れて分  
からなかったが、弥生の胸は予想していたより大きく豊かで、柔らかかった。  
 
 手を動かすと、胸の果実が指先に触れた。胸を触られただけで感じてしまったのか、  
そこは既に固く尖っていた。  
「あ、ああ……スレインさん……!」  
 身体が痺れるような感覚に、弥生は唇を離した。差し出された二人の舌先を、銀色  
の糸が紡いだ。  
 胸に触られて、指先で乳首をつねられるたびに、全身から力が抜けていく。弥生は  
スレインの背中に手を回した体勢で、立っているのがやっとという状態になっていた。  
「弥生さん……見せてもらってもいいかな?」  
「ええ。スレインさんになら……構いません」  
 弥生が頷くのを見たスレインは、着物の結び目に手をかけ、左右に広げた。  
 真っ白で美しい弥生の胸が、露わになった。スレインが手で感じ取ったとおり、弥  
生の乳房は豊かで、形も美しかった。弥生が荒々しく呼吸をするごとに、乳房が上下  
に揺れ、果実がヒクヒクと震えた。  
 スレインは弥生の胸に顔を寄せ、ツーッと舌を這わせた。その瞬間、弥生は全身に  
電気が走ったような感触を受けた。ビクリと肩が揺れ、スレインの身体を抱く腕に震  
えが走る。胸を触られて、舌でなぞられているだけなのに、その感触が全身に伝わっ  
てくる。  
 
 興奮と暑さのためか、弥生はうっすらと汗を浮かべていた。しっとりと濡れた胸の  
膨らみに手をやると、そのまま吸い付いてしまいそうな感触を受ける。片手では収ま  
りきらないほどの大きさの乳房は、スレインが指を動かすたびに、その形を変えていっ  
た。  
「あ、ああっ……!」  
 弥生は身体を崩し、両膝を床に付けた。顔をうつむかせ、露わになった胸に手を当  
てながら、苦しそうに肩を上下させる。  
 それを見たスレインは、身体を屈めて弥生の肩に手を置いた。  
「苦しいかい、弥生さん? 何なら、この辺で止めておこうか?」  
 スレインの問いかけに対し、弥生は首を横に振って答えた。  
「いいえ……最後まで続けて下さい」  
「本当にいいの?」  
「はい。覚悟はできていますから」  
「……分かった」  
 スレインは弥生の体を抱きかかえ、ベッドの上に横たわらせた。  
 裸の胸に手を添えながら、腰の紐をほどいていく。下半身に着けているスカート状  
の衣服に指をかけ、剥ぎ取ると、弥生は下着一枚だけの姿となった。  
 
 最後の一枚に手をかけたところで、スレインは弥生の顔を確かめた。  
 弥生は顔を真っ赤に染め、困ったような表情を浮かべていた。だがスレインと目を  
合わせた弥生は、静かに首を縦に振った。スレインは無言で頷き返し、下着の紐をと  
いて、最後の一枚を取り去った。  
 何も着けていない、一糸まとわぬ弥生の姿が露わとなった。  
 弥生の身体は、雪のように真っ白だった。体つきは華奢で、腕や脚は意外なほど細  
い。このスレンダーな身体のどこに、あんな巨大な弓を引く力があるのだろうと思う  
ほどだ。そしてそのか弱さが、胸の膨らみやウェストのくびれを、いっそう強調して  
いた。  
 弥生は無言のまま、顔をそむけていた。しかしスレインと視線が合った瞬間、頬を  
真っ赤に染めて、両手で顔を覆った。  
「いやっ、スレインさん……見ないで下さい……」  
「どうして、弥生さん?」  
「だって……恥ずかしい……」  
「どうしてそんなことを言うんだい? 弥生さんの身体、こんなに綺麗なのに」  
 そう言ってスレインは、右手の人差し指と中指とで、陰部の亀裂をなぞった。そこ  
は既に濡れていて、うっすらとした恥毛が薄明かりを浴びて光っていた。  
 
 スレインは二本の指の先を、亀裂の中に挿入してみた。そのとたん、弥生の内壁が  
スレインの指に絡みつき、温かく包み込んだ。少し指を動かすだけで、奥から蜜が滲  
み出て、指にねっとりとまとわり付いた。  
 スレインは弥生の股間に顔を近付けて、亀裂を舌でなぞった。蜜の香りを鼻で感じ  
ながら、丹念に味わっていく。亀裂に指先を触れさせ、舌を這わせるたびに、奥から  
新たな蜜が溢れ出てきた。  
「ああ、んっ……あ、はああっ……!」  
 スレインの頭に両手を沿えながら、弥生はベッドが揺れるほどに身体を動かした。  
 慎ましい性格ゆえか、弥生は必死になって喘ぎ声を抑えているように見えた。だが  
いくら耐えようとしても、喉の奥から声が溢れてくる。まるで、自分でない何者かが、  
自分の身体を操っているかのように。  
 そのうちに弥生は、頭がボーッとしてくるのを感じた。全身がビクビクと震え、息  
が詰まりそうになる。スレインの頭を押さえる両手に、いっそうの力がこもった。  
「ああっ……な、何なの、この感覚は……?」  
「もうイクのかい? いいよ、イッてしまいなよ」  
「い、いやっ……ああっ、あああっ!」  
 豊かな胸を張り出した体勢で、弥生の身体が硬直した。  
 亀裂の奥から大量の蜜が溢れ出し、スレインの口に吹きかかる。  
 生まれて初めて絶頂に達した弥生は、全身の力を失い、ベッドの上に倒れこんだ。  
 
「はあっ……はあっ、はあっ……」  
 額に手を当てたまま、弥生は大きく息をついた。身体じゅうに大粒の汗を浮かべ、  
気だるそうに手足を伸ばす。身体の硬直が解けるまで、かなり長い時間を要した。  
 弥生は数刻間、無言で横たわっていた。だがいきなり起き上がると、両腕を広げて  
スレインのいる方へ身体を伸ばした。  
 何? と考える間もなく、スレインはベッドの上に倒された。弥生はスレインのズ  
ボンに手をかけ、もどかしげな仕草でベルトをはずす。ズボンを脱がし、下着をおろ  
すと、硬直したスレインの分身が露わとなった。  
「弥生さん、何を……?」  
「私だけが攻められるのは不公平です。今度は私にさせて下さい」  
 そう言うと弥生は、いとおしげな表情でスレインの分身に指を添えた。それは充分  
に固くなっていて、先端が赤く充血していた。  
「ああ……素敵です、スレインさん。固くて、逞しくて……」  
 弥生は舌を差し出し、そっと舐めあげた。  
 二度、三度と舌を這わせてから、弥生はスレインの分身を口の中に入れた。その瞬  
間、たとえようのないくらいの温かさと心地よさが、スレインの身体を包み込んだ。  
慣れない仕草ながら、弥生は懸命に舌を動かし続ける。決して上手とは言えないが、  
弥生の情熱が伝わってくる動きだった。  
 
 そうこうしているうちに、弥生の息がますます荒くなってきた。奉仕しているのは  
弥生のほうなのに、口を動かしているうちに、言いようのない興奮がこみ上げてくる。  
全身が性感帯と化したかのように熱くなり、陰部がヒクヒクと疼いた。  
 弥生はスレインの分身から口を離した。そしてスレインと視線を絡ませあいながら、  
言った。  
「スレインさん。私と一つになって下さい」  
「……本当にいいんだね?」  
 スレインの問いかけに、弥生は無言で首を縦に倒した。  
 スレインは弥生の身体を抱きかかえ、ベッドの上に寝かせた。そして、ぴったりと  
合わさっている太股を左右に開き、弥生の亀裂を露出させた。すでにしっかりと濡れ  
ているその部分に、スレインは自分の分身の先端をあてがった。  
「それじゃ、いくよ」  
「……はい」  
 弥生は大きく息を吸って、身体の力を抜いた。  
 スレインは少しずつゆっくりと、自分のものを弥生の体内へ沈めていった。そして  
半分ほどが入ったところで、一気に腰を突いて、全てを挿し入れた。スレインと弥生  
の陰部が、ぴったりとくっついた。  
 
「うあっ……あああっ……!」  
 弥生は苦痛に満ちた表情を浮かべ、シーツを力いっぱいに握り締めた。  
 純潔を失った弥生を儚むかのように、一つに繋がった部分から赤い血液が滴り流れ  
る。それは弥生の太股を伝ってからベッドに落ち、シーツを赤く染め上げた。  
「大丈夫かい、弥生さん? 痛くない?」  
「だ……大丈夫です……」  
 弥生は薄目を開けながら、必死になって笑い顔を作ろうとした。  
 しかし、弥生が痛がっているのは明らかだった。充分に潤っていたとはいえ、生ま  
れて初めて異性のものを受け入れたのだ。平気であるはずがない。にもかかわらず、  
スレインに心配をかけさせまいとするその姿は、とても愛らしく、いじらしかった。  
 スレインはゆっくりと腰を動かし始めた。それと同時に、硬直した弥生の身体が少  
しでもほぐれるよう、胸に、腰に、脚に手をやりながら、優しく揉みしだいていく。  
スレインの手が自分の身体に触れるたびに、弥生は全身を震わせ、喘ぎ声を発した。  
 そんな行為を続けていくうちに、弥生の身体から固さが消えていった。顔に浮かぶ  
表情にも、苦痛の色はない。スレインが、焦らずゆっくりと愛撫を続けてくれたおか  
げで、痛みがやわらいでくれたようだ。一つに繋がった部分では、溢れる蜜がクチュ  
クチュと音をたてていた。  
 
「あっ……はっ、はあっ……!」  
 弥生の口から、声が漏れた。さっきまでの、苦痛に満ちた声ではない。全身で心地  
よさを享受しているときに出る、艶やかな喘ぎ声だ。  
 さっきイッたばかりだというのに、弥生はまた新しい興奮に襲われていた。しかも  
今回のは、さっきとは比べものにならないほどの心地よさだ。目に見えない快感が渦  
を巻き、弥生の全身を包み込もうとしているかのようだった。  
「ス、スレインさん……私、どうかなってしまいそう……!」  
「弥生さん……オレもだよ……!」  
「ああっ、スレインさん、スレインさんっ……!」  
 しなやかな身体がうねるたびに、大粒の汗が飛び散り、弥生の声が甲高くなってい  
く。あれだけ感じていたはずの痛みは、もうどこかへ消え去っていた。今の弥生にあ  
るのは、絶頂へ達したいという欲望と、スレインへの献身的な愛だけだった。  
 弥生の頭は空っぽになり、理性はとうの昔に無くなっていた。五感が麻痺し、何も  
考えられなくなる。薄れゆく意識の中、本能のおもむくままに動きながら、弥生は察  
した。自分もスレインも、限界に達しようとしているのだと。  
 
「ああっ……も、もうダメ……!」  
「オレも……弥生さん、オレと一緒に……」  
「スレインさ……あんっ、あっ、ああああああっ!」  
 弥生の声が部屋中に響き渡り、裸体がピーンと張り詰めた。  
 弥生の身体の中で、スレインのものが大きな脈を打つ。先端から情熱の証がほとば  
しり、弥生の内壁に飛び散った。一度だけでは飽き足らず、二度、三度と震え、弥生  
の身体を汚した。  
 二人の身体が、ベッドの上で折り重なるように崩れた。  
 絶頂に達した後にくる疲労感に、身体をぐったりと倒れさせる。二人は荒々しく息  
をつきながら、身体をぴったりとくっつけて、抱き合った。  
 しばらくの間、二人は放心状態のままベッドに寝転がっていた。虚ろな目で、互い  
の顔を見つめあいながら。  
 それから数刻後、弥生は何の前触れもなく起き上がった。無造作に脱ぎ捨てられて  
いた寝間着を身に着けると、床に両膝を付いて両手をそろえ、スレインに向かって頭  
を垂れた。  
 何だ? と首を傾げるスレインに向かって、弥生は言った。  
 
「スレインさん。私の想いを聞き入れて下さり、ありがとうございました」  
「えっ……? いや、その……」  
「明日は私の持ちうる全ての力を出し切って、シオンと戦います。そして必ず、生き  
残ってみせます。そして、戦いが終わったその後は……」  
 弥生は顔を上げ、言った。  
「スレインさん。私と一緒に、東の大陸へ来ていただけませんか?」  
「ああ、いいとも。弥生さんと一緒なら、どこへでも行くよ」  
「嬉しいです、スレインさん……」  
 弥生は立ち上がり、再びお辞儀をした。そしてドアノブに手をかけ、扉を開きなが  
ら、もう一度スレインに向かってお辞儀をした。  
「それでは、おやすみなさいませ」  
 バタン、という音と共に、弥生の姿は見えなくなった。  
 一人残された部屋の中で、スレインは衣服を着け始めた。そしてズボンをはいたと  
ころで、机の傍らに置いてあった剣を手に取り、持ち上げた。  
 金色に輝く巨大な刀身に、上半身裸の自分が写っている。今は鏡のように美しいこ  
の剣も明日は血に染まることになるだろう。その血はシオンのものか、それとも自分  
のものだろうか……?  
 スレインは首を振った。自分はついさっき、負けることなど考えるなと弥生に言っ  
たばかりじゃないか。気持ちで負けてしまっては駄目だ。今はただ、勝つことを考え  
ていればいい。勝って、弥生と一緒に暮らすことを考えていればいい……。  
 スレインは窓を開き、夜空を見上げた。空には無数の星がちりばめられ、満月が淡  
い光を放っている。その月を見つめながら、スレインは心の奥で呟いた。  
 自分は弥生さんを守る。何が起こっても、愛する人を守ってみせる……と。  
 

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