とんとんとん、とんとんとん。  
 規則正しくリズムを刻む包丁の音がひとりきりの厨房に響き渡る。  
 オレンジ色のドレスに身を包んだ少女は、銀杏切りされた果実を一切れ摘んで口に入れた。  
 しゃきっとして甘く、少し酸い。  
 戦争が終わるまでは二度と口に出来ない最後の果実。  
 その果実を、バターを熱した鍋に入れ、砂糖などを足して煮詰めてゆく。  
 鍋を見守りながら、イライザは愛しいあのひとのことを想う。  
 煮詰まった果実を生地に流してオーブンで焼いている時もずっと、フレーネのことを想い続けていた。  
 頃合いを見てオーブンから取り出す。美味しそうな、こんがりきつね色。  
 フレーネが、喜んでくれるといいな・・・。  
 
 
「おいしいです」  
 笑顔で答えてくれたフレーネの言葉に、イライザは胸をなでおろした。  
 フレーネの部屋で過ごす昼下がりのひととき。  
 先日、ひどく望郷の念に駆られた自分に故郷を見せてくれたフレーネへお礼がしたくて、イライザは彼女のためにアップルパイを作った。  
 現在、彼女達がいるのはマーキュレイ国内。一年を通して温暖なため、ここでアップルパイの材料である林檎が育つことはない。  
 しかし、イライザの故郷ファンデルシアは寒冷な気候のために林檎がよく採れ、イライザは幼い時から林檎をよく口にしており、特にアップルパイは大好きなお菓子であった。  
「本当?ありがとう。最後の林檎で作って良かった」  
 イライザはミルクティーの入ったカップを手に取った。  
 
「最後・・・」  
 フレーネはフォークを皿の上に置き、耳に引っかかった言葉を繰り返す。  
「ええ。最後なの。林檎はイグレジアス国内でしか採れないから、ここではもう食べられないわね。ポラックさんのお店を通じて林檎を取り寄せていたの。だけど戦争の影響でお店にも林檎が入らなくなったからね」  
 カップに口をつけ、ミルクティーを少し喉に通す。  
「そんな大切なものをわたし一人で食べてしまっていいんですか?」  
「いいのよ。この前のお礼っていうこともあるけど、貴方に食べて欲しくて作ったんだから。・・・それに、貴方の喜んでくれる顔が見られるだけで十分だから」  
 頬をミルクを入れる前の紅茶のような色にさせながら、イライザはミルクティーを飲み干した。  
「ふふふっ、ありがとうございます」  
 フレーネは再びフォークを手に取り、アップルパイを一口サイズの大きさに切ってからフォークを刺し、それをイライザの口元に近づけた。  
「やっぱり、2人で食べませんか?わたしがイライザさんに食べさせてあげますから、口をあけてください」  
 イライザがカップをテーブルに置いて口を少し開くと、フレーネはアップルパイを口の中に進めてきた。噛むと、パイ生地のさくさくっとした感触と、少し溶けかかった林檎の感触がする。口の中に林檎の甘い香りが広がる。  
 作った自分が言うのも変だけど、おいしい。そして懐かしい。  
「今度は私が食べさせてあげる」  
 イライザはフレーネの手からフォークを取って、さっきフレーネがしてくれたように食べさせてあげた。  
 大好きなアップルパイを食べながらすごすティータイム。  
 大好きなフレーネが隣にいることがイライザをさらに心地よくさせてくれていた。  
 
「最後の一切れですね」  
「そうね。貴方が食べて。私はもういいから」  
 イライザはそう言ってフレーネの口元にフォークを差し出した。  
 しかし、最後の一切れがフレーネの口に入った瞬間、寂しげな表情を見せたのをフレーネは見逃さなかった。  
 フレーネはイライザの頬に手を添えて口を重ねた。  
「んっ・・・」  
 舌でイライザの唇をノックすると、すぐに唇は開かれた。  
 その直後、イライザは口の中に何かが入ってくるのを感じた。  
 やわらかくて甘い、林檎の欠片。  
 フレーネが口を離した時、イライザは欠片を飲み込んで問い掛けた。  
「林檎・・・どうして?」  
「さっき、イライザさんが寂しそうだったから。最後の一口は2人で食べたかったんです。・・・もしかして、嫌でした?」  
「ううん。ただ、いきなりだったからびっくりしたけど」  
 イライザはポットを手にとって空になった2つのカップにミルクティーを注ぎこんだ。  
 フレーネにカップを差し出すと、彼女は「ありがとうございます」と言って受け取り、カップに口をつけた。  
 口の中がミルクティーで満たされてゆくにつれて、アップルパイの味が消えてゆく。  
 一方、イライザはカップを手にしてはいるけれども、なかなか口を付けようとはしなかった。もう少しアップルパイの余韻に浸っていたいのだろうか。  
 そんなイライザがミルクティーを口にするまで、フレーネは何も言わず見守り続けていた。  
 
「さっきはありがとう」  
 カップをテーブルに戻しながらお礼を言うイライザ。  
「そんな。お礼なんて」  
「なかなかミルクティーを飲もうとしなかった時も、林檎を口移ししてくれた時も、私が何を考えていたのか分かっていたのでしょう?」  
「ええ」  
 イライザがファンデルシアのことを考えていたのは分かっていたけれども、フレーネは敢えてそれを口に出さずにあいづちを打つに留めた。  
「不思議ね。この間もそうだったけど、貴方は私の望む以上に私を満たしてくれるの。自分でも見えない心の奥底まで見ていてくれているみたいに・・・」  
 イライザはフレーネの手を取り、自分の左胸に引き寄せた。  
 とくん、とくん、と優しい鼓動がフレーネの手に伝わってゆく。  
 二人は目を瞑ってこの鼓動にしばらく身を委ねていた。  
 心というものが実在するのかイライザにはわからないけど、こうして胸の鼓動を感じてもらうことでフレーネに心を捧げているような気になれた。  
「キス・・・しても、いいかな?」  
 目を開き、イライザはフレーネの背中に手をまわす。  
 フレーネも目を開いて、イライザの背中に手をまわして頷いた。  
 イライザはフレーネを抱き寄せて、キスをした。  
「んっ・・・」  
 唇を重ねるだけの、やわらかで、甘く、優しいキス。  
 唇が離れるとイライザはフレーネの胸に顔を埋めた。  
 ふわふわと柔らかい乳房からフレーネの温もりと鼓動が伝わってくる。  
「このまま、貴方に包まれていたいな・・・」  
 フレーネの背中を撫でながら囁く。  
 フレーネは何も言わず、イライザをぎゅっと抱き締めた。  
 
「ねぇ、横になってもいいかな?」  
「はい」  
 2人は重なるようにソファーに横たわる。フレーネはイライザの重みを全身で感じた。  
「幸せ・・・」  
 イライザは薄紫の髪に指を通しながら言葉を続ける。  
「フレーネの胸の中にいられるなんて夢みたい。これが夢だったら・・・醒めないでほしいな」  
「・・・夢じゃ、ない、ですよ。身体の温もりや胸の鼓動、それに指の優しさは夢では感じることができないですから」  
 胸元にあるイライザの頭を撫でながらフレーネは言葉を返した。  
「うん・・・」  
 イライザは同意とも吐息とも判別のつかない声を漏らしただけだった。  
 その後、ことばを交わさないけれど、お互いの身体を指で愛撫し合うことで2人は心を交わせる。  
 海の上でゆらゆらと揺られているような気持ち良さに、イライザは少しずつ眠りへと落ちてゆきそうだった。  
「イライザさん」  
「んー?」  
「アップルパイ、ありがとうございました」  
「ん・・・」  
「今度は、2人で一緒に作りましょうね」  
「うん・・・」  
 イライザの腕の力が抜けてソファーからだらりと垂れ下がる。  
 そして、寝息を立ててついに眠りへと落ちていった。  
 イライザの髪に指先を通して何度も優しく梳いた後、腕をイライザの背に回す。  
(素敵な夢が・・・見られるといいですね)  
 愛しいひとを包みこみながらフレーネもイライザを追うように瞼を閉ざして眠りについた。  
 
 
「・・・う・・・ん」  
 小一時間ほど過ぎたころ、心地よい眠りからイライザが目を覚ました。  
 フレーネの胸に埋めていた頭をゆっくりと上げて彼女を見ると、まだ眠っているようだった。  
 フレーネの微かに聞こえる息遣いと愛らしい笑顔はイライザの心に潜んでいた衝動を呼び覚ます。もっとフレーネに触れていたい―――イライザはその衝動を抑えることができず、フレーネの襟元から服の中へ少しずつ指を差し入れていった。  
 その刹那、イライザの手首がぐっと掴まれた。一瞬何が起こったのかわからなかったが、気がついた時にはフレーネがイライザをじっと見ていた。  
 寝ているフレーネを手にかけようとした後ろめたさで、イライザはフレーネの瞳をまともに見ることができず、顔を横にそむけた。  
「起きて・・・いたの?」  
 フレーネの瞳を視界から外したままイライザは尋ねた。  
「はい。一度、目が覚めていましたけど、目を瞑ってずっと考え事をしていました。・・・想いを伝えたあの日、イライザさんはわたしを受け入れてくれました」  
 イライザの手首を掴んでいた手が頬にそっと触れる。  
「今度はわたしがイライザさんを受け入れたい―――そう望んでいるけれど、どうしたらいいのか分からなかったんです。・・・だから、すごく嬉しい」  
 その言葉に動かされるように、イライザはそむけていた顔をフレーネへと戻して彼女の瞳をじっと見つめた。  
 応えるようにフレーネが頷くと、イライザはフレーネに唇を重ねた。  
「んっ・・・」  
 唇から伝わる温もりが心を優しく包みこむ。  
「んんっ・・・んむっ・・・」  
 舌が触れ合うたびに、心が昂ぶってゆく。  
 他の部分にも触れたいという気持ちが高まり、イライザは唇を離して再び襟元から服の中へ指を入れようとした。  
 
「待って下さい」  
 先ほどと同じように、フレーネはイライザの手首を掴み、それを制した。  
「この服・・・身体とぴったり合っていますから」  
 そう言いながら、両腕についている白いリング状の留め金をぱちりと外した。  
 そして、服の袖を摘んでぱたぱたと動かすと袖口から服の中に空気が入ってゆく。  
「こうやって空気を少し入れてからでないと脱げないんです」  
 イライザがフレーネの胸元を見ると、今までまで身体と密着していた服が、空気が入ったことで少し余裕ができていた。  
「さっき、服の中に指を入れようと苦労していたみたいですけど」  
 強引に指を入れようとしたのがばれていたのが恥ずかしくて、イライザの顔が真っ赤になった。それを忘れたくて首をぶんぶんと左右に振る。  
「今は楽に指が入りますから・・・」  
 その言葉を聞き、今度はこくんと首を縦に振った。  
 三度目の正直。イライザが襟元に十指を潜りこませて服を下ろすとついにフレーネの肩が露わになった。  
 イライザの目に映るその身体はあまりにも綺麗で、ちょっとした衝撃で壊れてしまいそうに思えた。  
 白い花を手折ってしまわないようにフレーネの両肩に手のひらをそっと触れてから、首から肩へと続いている、白くてなめらかな曲線を撫でてゆく。  
「あ・・・」  
 フレーネは思わず甘い声を上げる。  
 手を肩に添え、イライザは唇を鎖骨へと降ろす。  
 溶けてしまいそうなほどの白い肌を支えるように緩やかなカーブを描く一対の柱の上を、優しく両肩の間を往復させていった。  
 幾度か往復を繰り返したとき、ちょうど鎖骨上の中間地点でイライザは唇を少し離し、フレーネにふうっと息を吹きかけた。  
「はぁ・・・っ」  
 それに応えるように声を上げながら、フレーネの身体はわずかに震えた。  
 
 イライザはフレーネの胸が現れるぐらいにまで服を下げると、フレーネの腕は服によって拘束されてしまう形になってしまった。  
 腕の自由が利かなくなっているフレーネにこのままコトを続けることは躊躇われ、イライザは声を掛けた。  
「腕、抜ける?袖を押さえてあげるから」  
 イライザが袖を摘むとフレーネは服の中から腕を引き出した。  
「ありがとうございます。ちょっと気になっていましたから」  
 フレーネが束縛の解けた腕をイライザの後ろへとまわすと、イライザは顔をフレーネの胸に埋めた。  
 服の上から埋めたときよりもフレーネの柔らかさと温もりと鼓動が伝わってくる。  
 埋めたイライザの顔が動くたびに、彼女の前髪がフレーネの胸をくすぐる。  
「くすぐったい・・・です」  
「ごめんね。じゃぁ、動かないように抱いてくれる?」  
 イライザが息苦しくならないように顔を横に向けると、フレーネはイライザの頭が動かないようにぎゅっと抱き締めた。  
 イライザはフレーネの温もりに包まれたまま、鼓動に耳を澄ませていると、さっきよりも鼓動の間隔が短くなっていた。  
「すごくどきどきしているのは、私が貴方に触れたから?」  
「はい。肌でイライザさんを感じているから・・・」  
「ふふっ、ありがと」  
 目の前にあるふくらみの頂点を指で弾いた。  
「あんっ」  
 フレーネは可愛い悲鳴を上げる。  
 フレーネの腕の力が抜けるとイライザは頭を少しずらし、頂点のまわりに唇を這わせていった。  
「あ・・・はぁっ・・・」  
 唇を押し当てると、自分よりもほんの少し大きなふくらみはやわらかな感触とどきどきと鳴る鼓動をイライザに伝えてくる。  
 そして、イライザが乳房の蕾を唇で軽く挟むと、フレーネは目を閉じてすがり付くように腕に力をこめて再びイライザを抱き締めた。  
 
 イライザはさらに口を開いて蕾とふくらみの一部を口に含む。  
 時折舌で撫でながら、イライザはフレーネの蕾に赤ちゃんのように何度も吸い付いていた。  
「んんっ・・・はぁ・・・んっ・・・」  
 イライザに愛でられることで硬くなった蕾は、吸われるたびにイライザを敏感に感じとり、フレーネの神経に甘い疼きを伝える。  
 その疼きを受け続けるうちに腕の力が次第に緩んでゆく。  
 イライザを包みこんでいるのは自分のはずなのにフレーネは自分がイライザに包まれているような感覚になっていった。  
 口に含まれていた蕾がふたたび外気に晒される。  
 イライザが乳房から口を離して顔を上げ、フレーネの服を少し下ろす。  
 露わになった脇腹の上でイライザの指がゆっくりと軌跡を描く。その軌跡は服に辿りつき、指が服に掛かってもなお軌跡を描き続けようとしていた。  
「全部・・・一気に脱がせて・・・いいです」  
 フレーネの言葉にイライザは両腿のプロテクターを外してから、服をずるずると下ろす。膝のあたりまで脱がせてゆくと、腹から腿まで全てイライザのもとに晒された。もちろんフレーネの大切な場所も。  
 しかし、そこにあるはずだと思っていたものがないことにイライザはふと気付いた。  
「あの・・・フレーネ。貴方、下着はつけていないの?」  
「え?ええ。この服は直に着るようにできていますから」  
「じゃぁ、この服じゃないときは?」  
「寝るときは部屋にあったバスタオルやバスローブに包まっているか、裸で寝ていますから・・・着けたことってほとんどないです」  
「着けた方が良いわ。だって、女の子のいちばん大切なところを可愛く守るものだからね」  
 
そう言うとイライザはフレーネの花びらにそっと唇をつけた。  
「はぁっ・・・」  
 その接吻に甘い吐息を零すフレーネ。  
 イライザは花びらのまわりに既に溢れている蜜を丁寧に口に含んでから、ふたたび花びらに口をつけて、中から溢れ出る蜜を吸いとってゆく。  
「やっ・・・はぁ・・・ん・・・んっ」  
 イライザが蜜を吸う音が火照ったフレーネの身体をますます焚き付け、イライザに求められるがまま蜜はとろとろと湧き出てくる。  
「あっ・・・うぅ・・・」  
 その蜜を吸われるたびに、花弁の中に隠れている芯も一緒に吸いこまれるようになびいていた。  
「ああっ」  
 イライザが花弁の中に舌を差し入れてその芯に触れた。これまでとは違う強い刺激がフレーネに伝わってくる。  
「ふ・・・あぁ・・・」  
 少し強張っていた入っていたフレーネの身体は、舌による花芯への愛撫が続くにつれて少しずつ力が抜け、今ではイライザの愛撫を素直に受け入れていた。  
「ねぇ、フレーネ」  
 花芯への愛撫をやめてイライザが話しかける。  
「指・・・入れて、いい?」  
 フレーネが首を縦に振ったのを見て、イライザは指をいったん自分の口に入れて唾液を纏わせてからフレーネの脚の付け根の溝にあてがった。   
 ここまでは前に自分にしてくれたことと同じ。自分のなかにも指を入れたことがないのに、ましてやフレーネのなかに指を入れるのが少し怖かった。  
「握っていてあげる。怖くなったら、握り返して」  
 イライザの言葉にフレーネは片手を差し出す。差し出された手をイライザはそっと握った。  
 これも前にしてもらったこと。だけど、今回は指を入れられるフレーネよりも指を入れるイライザの方が手を繋ぐ事を求めていた。  
 
 イライザはフレーネのなかに指を進めてゆく。  
「大丈夫?」  
 少し進めるごとに一旦止めてフレーネの表情を見る。  
「大丈夫です」  
 返事を聞いてイライザは指をふたたび進めていった。  
 指が軽く締められることがあったもののイライザが思っていたほど怖くなく、すんなりとフレーネの中に指が入る。  
「温かい・・・。フレーネの中が指から伝わってくるの」  
「わたしもイライザさんの指が入っているの、わかります。こうしてイライザさんをわたしの中で感じることが出来るなんて」  
「ふふっ、私も思ってなかったわよ」  
 イライザの指先がフレーネの奥の扉に触れた。  
「これが、純潔の証?」  
「ええ。ところで、イライザさん」  
「なぁに?」  
「この前のこと、覚えていますか?わたしに・・・くれるって、言っていましたよね?」  
「ええ」  
「わたしも・・・イライザさんに貰ってほしいです」  
 そう言うとフレーネはイライザの手をぎゅっと握った。  
「ありがとう。だけどね、今はいいの」  
 フレーネの中からイライザの指がゆっくりと引き抜かれる。  
 純潔の証をくれるって言ってくれたことは嬉しかった。だけど、今は身体の温もりが欲しい。  
「おいで、フレーネ」  
 繋いだ手をイライザがぐいっと引き寄せると、それにつられてフレーネは身体を起こす。  
 
 イライザは一度フレーネを正面からぎゅっと抱き、今度はフレーネに身体の向きを変えてもらって背中からぎゅっと抱き締めた。   
「温かい。ううん、ちょっと熱いかな」  
 頬をぴたりとフレーネの頬にくっつけるイライザ。  
「さっきよりもどきどきしているわね」  
 右手でフレーネの左胸を覆い、鼓動を感じる。  
「イライザさんがわたしに・・・してくれたから」  
 フレーネは言葉を返しながらイライザの左手を掴んで脚の付け根のやわらかな扉へと導いた。  
「ここにも・・・もっと、イライザさんを感じさせてください」  
 イライザは頷いて入口にある芯に触れる。  
「はぁ・・・」  
 フレーネは熱くて甘い吐息を零す。  
 芯がゆっくりとイライザの指で転がされる。  
「んっ・・・ふぅっ・・・あ・・・あっ」  
 手のひらで覆われていた乳房のふくらみも五指で撫でられる。  
 イライザの指の優しいリズムに応えるように身体から蜜が溢れ出る。  
「や・・・ああ・・・はぁ・・・」  
 イライザに触れるフレーネの頬は少しずつ熱くなり、胸の鼓動も早くなる。  
「イライザ・・・さん。わたし・・・あぁっ」  
 身も心もこのまま溶けてしまいそうな感覚に意識は朦朧としかけていた。  
「愛し、て・・・んんっ・・・あああぁっ!」  
 イライザに抱かれたまま身体を震わせてフレーネは果てた。  
「私も、愛しているわ」  
 左手で熱い飛沫を、右手で胸の鼓動を感じながらイライザはフレーネの耳元で囁いた。  
 
「それにしても・・・不思議ね」  
 呼吸を荒げてぐったりとしているフレーネをいたわるように包みながらイライザは呟いた。  
「ん・・・」  
 フレーネが身体の昂ぶりを落ちつかせて意識を戻したようだ。  
「嬉しかったです。・・・イライザさんにしてもらえて」   
「ううん。してもらったのは私の方かな。私がしたはずなのに、貴方が私にしてくれているみたいな気持ちになるの」  
 アップルパイを食べてもらった時も、こうやって抱いている時も。  
「それが満たされるってことでしょうか?」  
「わからないけど、たぶんそうなのかな。・・・でも、貴方が私にしてくれた時に私が同じように気持ちを返しているか、ちょっと不安だわ」  
「大丈夫です。ちゃんと伝わってきていますよ」  
 そう言うとフレーネは身体の向きをかえてイライザを抱き返した。  
「温もり、鼓動、もちろん気持ちも」    
 そう言ってくれるけどやっぱり自信がない。  
 安っぽいかもしれないけど、不安な時にはちゃんと言葉と行動で示すと良いのかしら?こんな風に―――  
「愛しているわ」  
 そのことばと共にイライザはフレーネに唇を重ねた。  
(Fin)  
 

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