ここはローランディア王国の王都ローザリアから西に歩いて6時間ほどの場所に位置する街(ただし地名は王国の一領土にもかかわらず『ティピちゃん王国』)にある領主の屋敷、その一室。  
「…………んあっ」  
 風で揺れたカーテンから漏れた陽光を顔に受け小さく呻いたあと、少女は目を開ける。菫色に近い髪は陽を浴び白く輝き、そして少女の肌はさらに白い。  
「う、うんっ……とぉ」  
 そして紫水晶のような輝きを放つ焦点が合わない瞳を擦りながら少女はベッドから身体を起こし、首を2度ほど左右に振る。  
「ここは……そっか、そうよね。ここは彼の部屋で、そのまま寝ちゃって……」  
 小さく呟いた後ぽっと、少女の頬が赤くなる。そして視線がカーテンから、傍らのシーツに包まれた大きな膨らみに移る。  
「カーマイン……君……」  
 そこにいるであろう男の名を呟きながら、膨らみの上にすっと手を乗せる。  
 カーマイン・フォルスマイヤーの名を知らぬ者は三国大陸の中にはほとんどいない。彼はローランディア王国の特務騎士として数々の武勲を挙げるだけではなく、世界の滅びすら退けた光の救世主『グローランサー』の称号を持つ、正に生きた伝説と言っても過言ではない。  
 そんな世界の英雄のベッドで寝ていた彼女の名はアメリア。魔法学院所属の研究員であり、カーマインやその仲間たちと共に世界を破滅から救った仲間でもある。  
 もちろん、『仲間』だけの間柄ではなく、男と女として行うであろう行為もしっかりやっている仲だ。昨晩もその行為にふけり、そのまま寝てしまったわけだが。  
「それにしても……うんっしょ、っと。はぁ〜身体がだるいわ。なんでこんなに……」  
 言いながらすっと自分の肢体に目を向け。  
「コホン。ま、まあ……疲れて当然よね」  
 アメリアは咳払いしながら頬だけでなく顔全体を真っ赤にさせる。そのまま寝てしまったので衣装は一切つけていない。髪留めを含めた服は床においてあるし、下着はベッドの上に脱ぎ捨てられている。  
 だからこそ、はっきりわかる。身体についた匂い、汚れ、そして熱さ。  
「それにしても、どうしてああ一方的になるのかしら?これでも体力には自信あるし、一回ごとに効果検証もして、前回の結果を考え対策も練ったり研究しているのに」  
 ちなみにその研究中につい身体が火照り、思わず1人で……など彼と寝ない夜では日常茶飯事であったが、それは兎も角。  
「さて、そろそろお腹もすいたしカーマイン君もおこ……そう……」  
 膨らみに重なっているシーツを掴もうとした手が、虚空で止まる。  
「………………」  
 膨らみを、じっと見つめる。  
「……大きすぎよね、うん」  
 成人男性1人が丸まっているにしては大きすぎる膨らみを、じっとアメリアは見つめた後、  
「まさか……!」  
 白いシーツを掴んだあとがばっと剥がしたその先には、白い大きな翼があった。  
「メルフィ!?」  
 艶のある長い黒髪も見えたが、それ以前に翼を眼にしただけでアメリアはそれが誰であるか特定できた。アメリアの親友であり有翼種族の少女であるメルフィ以外、カーマインの寝室に潜り込むフェザリアンは他にいない。少なくともアメリアが知っている中では。  
「すぅ……すぅ……」  
 メルフィが身に着けているのは首のベルトとブレスレットのみでアメリアと同じく衣装は着ていない。そして、メルフィの白い翼に包まれるように……  
「……………………」  
 メルフィに抱きしめられるような形で、黒髪の青年が寝ていた。  
 
「さて……と」  
 カーマインの寝室にあるベッドは広い。俗に言うキングサイズよりさらに広く、幅長さともに3m近くある。  
「まずは改めておはよう、メルフィ」  
 ベッドの上、カーマインが寝ている場所から離れたところで、アメリアは両手を腰に当て仁王立ちしていた。全裸で。  
「う、うん。おはよう、アメリア……」  
 一方フェザリアンの少女メルフィはアメリアの前で正座をしていた。全裸で。  
「で、どうしてメルフィがここにいるのかを聞きたいのだけど?確かしばらくはランザック方面にいるんじゃなかったの?」  
 首をかしげるアメリア。全裸で。  
「ちょっと事情があって……ある理由でフェザリアン一家がその村で暮らせなくなって、移住先を探す前にしばらく彼らをここで住ませて欲しいとカーマインに頼もうと思ったの」  
「ふーん。でもしばらくじゃなく、ここに住ませて貰えばいいんじゃない?この前南西の森開拓して移住区増やしたし」  
「それは駄目なの、ただでさえここには多くのフェザリアンの人達を住ませて貰っているのに、これ以上迷惑かけるわけには行かないし……」  
 フェザリアンのほぼ全てが住んでいたフェザーランドが崩壊し、フェザリアンが地上に住むこことなって一年が過ぎた今でも、移住できず放浪しているフェザリアンがいる。  
 まず人とそれまでほとんど交流が無く、なおかつ論理観に差がある異種族であることが移住を遅らせ、一度定住したフェザリアンも数ヶ月前に起こった傭兵王国騒ぎによって、路頭に迷う事態になった。  
「フェザーランドを失った直後や傭兵王国との戦争の時は大変だったわね。私もメルフィも寝る間も惜しんで走り回ったし」  
「そうだね。あの時は本当にありがとう、アメリア。助けてくれて、本当に嬉しかった」  
「水臭いわよメルフィ、私たち親友でしょ?だから……」  
 そう言いながらゆっくりアメリアはメルフィの後ろに回り、  
「アメリ――あうっ!」  
「そこからどうして裸で抱き合う事態になったのか教えてほしいなぁ」  
 両手でメルフィの翼を掴み、ぐいっと捻った。  
「いたっ!アメリア、やめぐっ!」  
「理由を言ってくれないとやめなーい」  
 悲鳴を上げるメルフィに笑いながらフェザリアン限定の関節技を仕掛けるアメリア。  
「んっ、だってカーマインと会ったの久しぶりだし、それに裸だったし、その……つイタタタタタタ!私の翼そんな風に曲がらないから!」  
「つい、かぁ。ついだったら仕方ないかなー。じゃあ私がメルフィについこうしちゃうのも仕方ないわよね?」  
 ぐいぐいと力を込めるアメリアにあまりの痛さに涙目になるメルフィ。  
「それとこれとは話がちがイタイイタイホントに痛いから!」  
「ところでメルフィ。話は変わるけど、ずっと前に温泉入ったときよりスタイル良くなってないかな?」  
「うん、飛ぶ時間より地に足をつける時間が多くなったから……」  
「そっかぁ。私はマホガク定食のメニューが変わって、その味を再現するために食べる機会が増えたからちょっと太っちゃったみたいなの。ただ歩くだけでスタイル良くなるメルフィがとっても羨ましいなぁ」  
 アメリアはそう言ってアメリアの翼から手を離し、近くのクローゼットを開けて中に手を伸ばす。  
「そんな事言われても、アメリ――そっ、そそそそれは何!?」  
「何って……今からオシオキとしてメルフィの中に入るブツだけど?」  
 取り出したのは男性器を模した棒状の物体、つまりはバイブである。  
「大丈夫大丈夫痛くない。このくらいカーマイン君ほうが大きいでしょ?まあ――カーマイン君のはこんなイボイボ付いてないけどね」  
「ごっ、ごめんなさいアメリア。二度とアメリアがいるときはカーマインと寝ないから、だからそれだけは」  
「そう言いながら股少し濡れちゃってない?そっか、カーマイン君のもの思い出してキュンと来ちゃったんだ。もう、メルフィのスケベさん♪」  
 アメリアはぺろりとバイブの先端を舐め、ネズミをいたぶる猫のような瞳で痛みのため動けずもがいているメルフィを見下ろし、  
「それじゃメルフィ。いい悲鳴上げてね?」  
 
 
「あ、あのね……今回の件はちょっとむかっと来たと言うか、むらっと来たと言うか」  
「…………」  
 再び述べるがカーマインの寝室にあるベッドは広い。俗に言うキングサイズよりさらに広く、幅長さともに3m近くある。  
「うん、そうだね。ちょっとやりすぎちゃったかなと思ったり思わなかったり。ほら、寝起きって変なテンションになりやすいじゃない。それに昨日の余韻というかなんというか、そういうものが私をイケナイ――」  
「アメリア」  
 今この部屋にいるのは三人。正座をし、なぜか額を赤くして弁解をする下着姿のアメリアと、その正面で座っているカーマインと、  
「やはりやりすぎだと、俺は思うが」  
「…………」  
 カーマインの後ろで、背にしがみつきながら涙目でぶるぶる震えるメルフィ。  
 ちなみにアメリアはメルフィを焦らして焦らして絶頂させる寸前ぎりぎりまで焦らし、そこからさらに焦らして我慢できなくなるほど焦らしつくし、自分から淫語でおねだりさせるほど焦らし、いざ挿入しようとした矢先に起きたカーマインからチョップを受けて今に至る。  
 当然おあずけを受けたメルフィだが、さすがにどうすることもできずカーマインの背中に胸を押し付けこすることで何と発散しようとしていたりするがそれは兎も角、メルフィ弄りでノリノリだったアメリアは現在カーマインからお叱りを受けているのだ。  
「って、キミだって悪いのよ?私がいるというのに、寝ている間にメルフィ連れ込んでえちぃことしちゃうんだから。普通なら修羅場よ。ナイスボートよ」  
「だが、雨が降って濡れ、それに辛そうにしているメルフィを別部屋で待たせたままにはできない」  
 反撃しようとジト眼で睨むアメリアだが、カーマインは平然とその視線を受け止める。さすがにメルフィは後ろめたい部分があるのか目をそらすが。ちなみにまだほてりが収まらないのか、吐息が熱っぽい。  
「……そうカーマイン君が真顔で言うと、なんだかそれが正しいような気がしちゃうのって不思議よね。まあキミがそう言うならそうなんだろうなって思えちゃうし。普通に考えれば情事の後に他の女連れ込み情事をした男の方が悪いに決まってるのに」  
「そうなのか?」  
 ため息混じりに言うアメリアに対し、カーマインは少しだけ首をかしげる。カーマイン自身も自分が普通でない環境で育ったことは理解している……理解は、している。  
「うん。絶対サンドラ様はカーマイン君に対しての情操教育をしくじったと思うわ。男女関係的な意味で」  
 何しろアメリアとメルフィの想い人であるこの光の救世主、二人だけでなく複数の女性と深い関係を持ち、その中には義妹義母も含まれる。アメリアが知っている仲で手をつけていないのは、恋人がいるグローシアンの医者とサイズ的に無理がある魔導生命体くらいだ。  
「サンドラ母さんの教えが悪いことは無い、やはり俺に問題があるのだろう。今からでも直した方が――」  
「まあ、そんなキミだから私も好きになったともいえるし、カーマイン君のその性格は直さなくてもいいと思うよ。っていうか、絶対死んでも直らない」  
 少し気落ちした感じのカーマインにアメリアは朗らかに言う。アメリアからすればこれが彼独自のやさしさで、だからこそ今の関係になったのであって、それ自体にアメリアは何一つ文句は無い。今回の件も、本気で怒っているわけではないのだ。  
「カーマイン様。もしくはお嬢様方々、起きてらっしゃいますか?」  
 と、扉の向こうから男の声がする。アメリアも知っている、カーマインの執事兼街の管理人を勤めている中年の男の声だ。  
「3人とも起きている。朝食ならそちらで食べる」  
「かしこまりました。アメリア様とメルフィ様の衣服はいつもの場所、下から2段目の右側と左側に用意しておりますので。すぐメイドに湯とタオルを持ってこさせます。それでは」  
「……普通に考えて、独身領主の寝室のクローゼットに数人分の女性の衣服があるって問題よね?」  
 遠ざかる足音を聞きながら、アメリアは慣れた手つきでいつもの場所に置いてある衣服を取った。  
 
 死の危険。元は歴戦の傭兵で、今はローランディア王国将軍であるウォレスも、それを感じた時が幾度かある。  
 戦場で仲間とはぐれ、孤立無援となった時。  
 傭兵仲間を虐殺した白く巨大な異形の化け物を見た時。  
 二人組みの男に襲われ腕と眼をやられ、崖から落ちた時。  
 ランザック王城が、土台ごと吹き飛ばされている風景をおぼろげながら見た時。  
 軽い気持ちである青年に大人の遊びを教えた後、その妹に追われる羽目になった時。  
 ……そして、  
「ウォレスさんは、どう思う?」  
 そして、今この瞬間。ウォレスは確かに死の危険を感じている。それも自分の半分も生きていない少女相手にだ。  
 ウォレスの目の前にいるのは、桃色髪の小柄な少女。幼く可愛らしい、可憐な女の子だ……詳しく語るのなら、幼く可愛らしい『ようにも見える、外見は』可憐な女の子だ。  
 ルイセ・フォルスマイヤー。“グローランサー”カーマイン・フォルスマイヤーの血のつながりのない妹にして、史上最強ともいえる真・皆既日食のグローシアン。  
「どうとは……なんだ?」  
 神妙な表情でウォレスは聞く。たとえ首筋に剣を突きつけられながらの尋問であろうとも、ここまで危機感は溢れないだろうとキッパリと思いながら。  
 ここはローランディア王国の王都ローザリアにあるオープンカフェ。将軍とはいえ防衛拠点を持たず王都周辺の警護が主な任務になっているウォレスは、城内での昼食後すぐさまローランディアの宮廷魔術師でもあるルイセに掴まって今に到る。  
「ただでさえ余計な虫が多いお兄ちゃんに、新たに盛った雌狐と雌鳥がまとわりついている件」  
「OK解ったルイセ、とりあえず落ち着いてくれ頼むから」  
「もう、ウォレスさんったら。私は十分落ち着いてるよ?……ソウルフォースの射程を目視距離から1キロ前後まで伸ばす事に成功したくらいに」  
「……そうか」  
 とりあえず今度逃げる時は見通しのいい場所は通らないようにしよう……と、ウォレスは心に誓った。ちなみにソウルフォースとは個人が行使できる魔法の中で最高の破壊力を誇る上級魔法。その威力は個人差はあるものの、直撃すれば城門すら突き破ることが可能だ。  
「ところでウォレス。何故俺たちをここに呼んだのだ?」  
 そう言ったのは、ウォレスとルイセと同じテーブルについている黒い髭を生やし白い鎧を着た中年の男。ランザック王国の将軍にして元ウォレスの傭兵仲間、ウェーバーである。  
「でも、ウェーバーさんは謁見済ませたばかりだから暇だよね?」  
「……確かに、茶を飲んでも構わないのだが……だが……」  
 にこやかに言ったルイセから目を逸らしウェーバーは言い、目の前に置いてあるカップを震える手で持ち上げ、淹れてあった紅茶を一度飲んでから、対面にいる青年に話をむける。  
「とっ、ところでゼノスはどうなのだ?」  
「いや、俺はもう」  
「ゼノスはこの周辺の薬草を取りに来たんだろ?試合もしばらくないと聞いたぜ。もう少しゆっくりして行け」  
 席を立とうとした青年……グランシルの剣闘王、ゼノス・ラングレーを止めるようにウォレスは言葉を被せる。ついでに腕を伸ばしその肩をしっかりと掴んで離さない。  
「ちょ!?ウォレス!後生だから逃がしてくれよ!」  
「どうして逃げようとするの、ゼノスさん?」  
 顔を青くして悲鳴を上げるゼノスの顔を、不思議そうに覗き込むルイセ……ただし、眼はこれ異常ないくらい冷たい。  
「あ……いや……なんでもないぜ、ああ」  
「(悪いなウェーバーにゼノス。まあ新ルートに入ったと思って諦めてくれ)」  
 元傭兵仲間と元上司の息子を災厄に引きずり込んだウォレスは、そう思いながら追加注文をする為ウェイトレスを呼んだ。  
 
「ところでウォレス」  
「何だ、ウェーバー?」  
「俺は確か黒いゲヴェルとの戦いで死んだような気がするのだが」  
 神妙な顔でウェーバーは首をさすりながら呟く。  
「いきなり現実逃避するんじゃねぇ、しっかり生きているじゃねえか。変な夢でも見たんだろ」  
「変な夢といえば俺も見たぜ。時空制御塔で親父の秘密を知って、カーマインと一緒にパワーストーンの精製のため時空干渉能力をつかった内容って感じの」  
「あの場で時空干渉能力使ったのはカーマインの他にはリシャールにアメリアを合わせ三人だ。お前はグランシルで黒ゲヴェル2体に倒されずっと自宅で療養していただろ」  
「「う〜ん……」」  
 ウォレスに指摘され、しかしどこか納得できないのか揃って首をかしげる。  
「まあ、あの時期はいろいろ大変だったからな。何せゲヴェルを倒したすぐ後に、ヴェンツェルとジャスティンの両方が動きやがった。ヴェンツェルは時空干渉能力で強化された力で各地を破壊するし、ジャスティンはその歪みを利用して闇落としを仕掛けてきた」  
「さすがの親父もあの二人が同時にラシェルを襲撃した時に死んじまった。その時にパワーストーンも壊れちまったんだよな」  
「波動の供給が切れたお兄ちゃんも倒れて大変だったけど、『いつの間にか』お兄ちゃんと仲良くなっていたアメリアさんにリシャールさん共に助けてもらったんだよね……お兄ちゃんの事がなければ闇に葬るつもりだったのに」  
「アメリアだけでなくリシャールまで力を貸してくれたのは助かった。その後奴等は時空制御塔に立てこもり、メルフィを助けジャスティンを倒し、パワーストーンを精製しヴェンツェルを倒した」  
「まあその後、闇の集合体のジャスティンとゲヴェル融合体のヴェンツェルの同時来襲はちょっと危なかったけど……って、その辺りの説明はどうでもいいの!」  
 バンとルイセがテーブルを強く叩く。  
「とにかく雌狐と雌鳥をどう駆除するか、それが私達の問題なの」  
(((達を付けるな)))  
 ルイセを除く三人が同時に突っ込む、心の中で。  
「メルフィさんのほうは問題ないのよ。プレイヤーキャラじゃないし棒読みだし、シナリオ展開的にも人気が上がる要素はまったくないもん。まあ、あと5年若かったら危なかったけど」  
「ずいぶんとメタ過ぎる話だなオイ」  
 ルイセが言ったことに思わずウォレスは突っ込みを入れた。  
「それよりアメリアさんだよ。あの人には魔物を討つ者とか100年の魔女とか白い魔王とか快盗天使とか第六天魔王とかいろんな意味で危険な影が見え隠れするの」  
「いえ、むしろこのネタ自体が危険すぎるような気がしますよ、ルイセ」  
 ポンとルイセの肩に女の手が触れる。  
「どちらにしろ危険なのには変わりはないって事だよおかあ……さん」  
 ルイセが振り向いた先にいるのは当然、実の母親でありこの前宮廷魔術師長となったサンドラ=フォルスマイヤー。もう少しでよ(以下略)となる年齢にもかかわらず美しいその顔には、少しばかり青筋が浮かんでいたりする。  
「休憩時間はとっくに過ぎてますよ。ただでさえ貴女は最近物騒な魔法の研究ばかりして通常業務を蔑ろにしているのですから」  
「通常業務なんてどうでもいいの!お兄ちゃんが雌鳥と雌狐の餌食になる前に――!」  
「そんなか弱い息子であるものですか。ではウォレス将軍にウェーバー将軍、それにゼノス。私達はこれで失礼します」  
 そう言ってサンドラはぺこりと頭を下げた後、ルイセを引きずって城のほうへと向かっていった。  
「ウォレス、母は強って奴だな」  
「ああ……」  
 ずるずると音を立て遠ざかっていく2人を、3人の男達は見えなくなるまでぼんやりと眺めていた。  
 

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