彼女――――イライザ=メイフィールドは、部屋でひとりため息をついた。  
 戦争が終わり、お父様もファンデルシアも無事だったことがわかったし、  
魔法を消したから不安なことなんて何も無い・・・はずなのに。何かが欠けた気がする。  
 ソファーに横たわっている彼女の視線の先にはテーブル、そしてその上には  
ブレスレットが置いてある。魔法を消去した後に落ちていたものを持ち帰っていたのである。このブレスレットからは何かを感じて仕方が無いのだ。  
 いったいこのブレスレットは・・・あれこれ考えているとき、部屋の扉をノックする音が聞こえた。  
「入って良いわよ」  
 ソファーから起き上がってイライザが言うと、「お邪魔しますね」と微笑みながらフレーネが入ってきた。  
「立ち話だと疲れるだろうから、ここで悪いけれど座って」そう言って彼女を自分の右隣に座らせた。  
 2人は先の戦いのことやこれからのことを小一時間話していたのだが、  
その最中にイライザの視線が切なそうにブレスレットの方へと何度も向けられていたことに気付いたので、フレーネは思い切ってブレスレットを見ながら「どうですか?何か思い出せました?」と問い掛けてみた。  
「ううん。でも、このブレスレットには何か大切なものが詰まっていたような気がするの。そういえばフレーネ、これを拾った時に心当たりがあるような感じだったけど・・・?」  
「ええ、これは“あの人”のものだったから」  
 
不思議そうな顔をするイライザに、頷いて答える。  
フレーネの唇から“あの人”という単語が発せられた時、イライザは胸に少し痛みを覚えた。  
「“あの人”って、誰よ。あの時もそのようなコトを言っていたよね?  
一緒に魔法を消去しに行ったのはあなたと私、それにレムス・ヒエン・レオナ・レジーナ・ヴァレリーだけだったじゃない!」  
左手で胸を押さえながら、フレーネの目の前に右手を広げて親指から順に折り曲げていく。  
「・・・6、7。そう、間違いなく7人だったわ」  
さらに5まで数えて曲げ終わった指のうち、小指、薬指を順に伸ばす。  
すると、間を空けずにフレーネはイライザにぴったりとくっつき、中指の腹を摘んできた。  
「いいえ。8人です。そう、“あの人”もいました。戦争が終わったのも、  
魔法を消去したのも、そしてみんながこのお屋敷に集うことができたのも・・・“あの人”がいたから・・・」  
そう言いながら中指を伸ばそうとするが、イライザは抵抗する。  
「それなのに・・・それなのにどうしてイライザさんは“あの人”のことを思い出せないでいるんですか!?」  
「ちょ、ちょっとフレーネ、落ちついて」  
語気を荒めるフレーネをどう落ちつかせて良いのかわからなくなった途端、  
彼女と繋がっていたイライザの右腕は力が抜けてフレーネの太腿の上に置かれる。と同時に指の力が抜けて中指が伸ばされた。  
 
「ふふっ、これで8人目、です」 伸ばされた中指を愛しそうに撫でながら、フレーネは話し続ける。  
「わたし、会った時からずっと“あの人”を想っていたんです。  
でも、“あの人”は貴方のことを一番に想っていたんですよ。  
だからこそ、イライザさんが“あの人”のことを思い出さないと・・・」  
言い終わらないうちにフレーネはうずくまる。瞳から涙が零れ、イライザの中指とそれを摘む自身の指へと落ちる。  
次第に涙の量が増え、結ばれた2人の手が涙に覆われてゆく。  
そっと手を解き、両腕を背中にまわす。時折、軽く背中を叩きながら「泣かないで頂戴」となだめるイライザもまた泣いていた。  
ひとしきり2人で泣き続けた後、フレーネは顔を上げて辛うじて声を発した。  
「夜、“あの人”と・・・ファンデルシアの宿で・・・そして・・・一昨日のここ・・・」  
「夜、・・・“あの人”・・・ファンデルシアの宿・・・一昨日のここ?」  
目を瞑り、聞き取れた単語を何度も復唱してみる。  
記憶を辿ってみようとした時、また胸が少し痛むと同時に、何故か甘く切ない気持ちがこみ上げてきた。  
その直後、イライザの唇に衝撃が走ったかと思うと、そのまま体がどすん、と後ろに倒れた。  
 
「んっ・・・」  
目を開けてみるとそこにはフレーネの目があった。体全体には圧迫感がある。  
どうやら彼女がキスをしてそのままイライザの上に倒れこんだらしい。  
イライザにとってはこれがファースト・キスだと悟ったのだが、お互いの唇を重ね合う行為には、どこか懐かしさがあった。  
「ごめんなさい」と言いながら、フレーネが両腕を伸ばして上半身を上げると彼女の髪がイライザの頬を優しく撫でた。  
「“あの人”と、あなたが・・・していたから。」  
「え?」  
不意にイライザの体が疼いてきた。さっきの単語と合わせて考えると、  
どうやら“あの人”と愛し合ったことがあるらしい。わからないけど体はどこかで覚えているみたい。  
このまま彼女と続ければその時の記憶が辿れるかもしれない。一度、視線をブレスレットへ移した後、フレーネへと戻す。  
もしかしたら、“あの人”への思いを私に重ねているのだろうけど、彼女も似たような想いはあるのだろう。  
記憶のことだけでなく目の前にいるこの人が愛しい。  
「このまま、委ねても、いい?」様々な想いが交錯したまま、イライザは囁いた。  
こくんとフレーネが頷くとまた髪がイライザの頬を優しく撫でる。そして、キスをした。  
「ん・・・んっ・・・」  
今度のはマシュマロのようにやわらかく、優しくて甘い。  
 
フレーネの口が首筋を伝っていく。  
「ん・・・あっ・・・ふあっ」  
イライザの口から甘い吐息が漏れる。  
「ふふっ、可愛いですね」  
そう言いながらフレーネは、イライザのドレスの胸に手をかけ、あらわになった胸にもキスをする。もう一方の胸を優しく撫でまわす。  
「あっ、ふぅ、く、くすぐったいわ」  
そして、ぴんと硬くなった頂点を口に含み、それを吸い上げる。  
「ふああぁっ、んんっ」サンダーボルトに似た刺激がイライザの全身を駆け抜けてゆく。  
イライザに身体を重ねたまま、フレーネの手が太腿から這うように付け根へと動いてくる。  
「う・・・あんっ」ショーツ越しに指が秘所にある蕾に触れてきて、イライザは甘い声を出す。  
湿ってきているのがフレーネにもわかっているんだろうなと思うとたたでさえ火照っていた身体がますます火照り、疼く。  
「ふ・・・フレーネっ」彼女の名前を呼ぶと、彼女はイライザに重ねていた体をどかせた。  
圧迫感から解放されたイライザは、少し脚を開き、ドレスのスカート部分をたくし上げた。  
すると、先ほどフレーネが触れた脚の付け根とショーツがあらわになる。  
 
「ふふふっ、ドレスと同じオレンジ色。イライザさんらしくて、よく似合ってますよ」  
「あ、ありがと・・・ふふっ」ドレスでさえも誉める人はめったにいないのに、  
こんな時に、しかも下着を誉められたことが意外だったので思わず笑みをこぼす。  
「どう・・・しますか?自分で脱ぎます?それとも私が・・・」  
「お願い」とイライザが頼む。フレーネがショーツの上からイライザの裂け目に口付けをするとイライザは「ぁふぅっ」と甘い吐息で応え、腰を少し浮かせた。  
口付けの後、フレーネはショーツに手をかけ、膝元まで下ろし、イライザの脚を開かせた。  
露わになったイライザの花弁からは蜜が流れ出している。広がった両脚の間に頭を埋める。花弁に唇を重ね、ちゅぅっと音を立てて蜜を吸う。  
「んっ、イライザさん・・・おいしい」  
「ふぁっ・・・あぁっ・・・ん・・・んんっ・・・ふぇっ」  
えもいわれぬ快感にイライザはしばらく身を任せ続けていると、突然、花弁が開いて蕾に暖かいものが触れた。  
「はぁぅん」可愛らしい悲鳴を上げ、生じた快感に一瞬イライザの意識が飛ぶ。  
「うれしいです。こんなに感じてくれて」言いながら、フレーネは尚も両手でイライザの花弁を開いたまま、舌で蕾とその周辺を味わい続ける。  
「ふぁっ・・・あっ・・・あっ・・・あぁっ・・ああ・んんんっ、んふっ」  
しだいにイライザの唇から零れる甘い声が次第に大きく、そして間隔が早くなってきた。  
身体も、瞳がとろんとして、開いていた両脚がぎゅっと閉じようとし、つま先が立って腰が少しずつ浮く。  
それに呼応するようにフレーネの舌もイライザの花弁の中を懸命にかきまわす。  
「あっ、あっ・・・ふあああぁんっっ!」  
甘い絶叫と共に、身体全体が強張り、イライザは絶頂に達した。  
 
 
絶頂に達してからしばらく後、横たわったまま、イライザはテーブルの上にあるブレスレットを見ていた。  
“あの人”ともこういうことをしていたのかしら?――――そんな疑問が脳裏を通過する。少なくとも、身体は何かを覚えていたような気がする。  
「イライザさん」フレーネが優しく声をかける。  
「どうでした?何か思い出せました?」  
「ええ、まぁ。途中、何度か“あの人”のことが思い出せそうだったの。それが何だったのか、上手く言えないんだけど・・・。でも・・・でも、いつかきっとはっきりと思い出せる時が来ると思うわ」  
「早く思い出せるといいですね」  
「ありがとう。“あの人”のためにも、貴方のためにも。そして、私自身のためにも、思い出さなきゃ」  
「あの・・・イライザさん?」  
「なあに?」  
「もし、よかったら・・・また、そのお手伝い、させてくださいね?」  
「ううん、思い出すための手伝いじゃなくても、してほしいの」  
「えっ?」  
「その・・・フレーネのが・・・とても良かったから」  
2人はふふふっと笑って、唇を重ねあわせた。  
 

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