しばらくの間、甘い余韻に浸り抱き合う2人。  
「私にも、お願いします」  
 心地よい圧迫感に包まれているなか、イライザの耳元でフレーネが囁く。  
「もちろん。・・・してもらったお礼も兼ねて、ね」  
 下にいたイライザは、そう応えながら身を捩り、自分が上側になろうと・・・したのだが。  
「え?」  
「きゃあぁぁっ」  
 一瞬浮いたと思ったら何かに叩きつけられた。  
 やはり1人が横になるぐらいの広さしか持たないソファーでは無理があったらしく、気が付けば2人はソファーとテーブルの隙間の床で重なっていた。  
「だ、大丈夫ですか?」心配そうなフレーネに「大丈夫」と笑顔で返す。  
「この続きはベッドでした方が良さそうね」そう言いながら2人は腕を解いて起きあがる。  
「悪いけど、先に行っててくれる?扉を開けてすぐ左にあるから。貴方の部屋と同じだからわかるわよね」  
 乱れた着衣を直しながら言うと、フレーネはブレスレットを切なげに見ながら頷いてから、扉へ向かう。  
 フレーネが扉のノブに手をかけ、がちゃりと音を立てたとき、思わずイライザは口を開く。  
「ねえ。ぶ・・・ブレスレットはどうする?」  
 さっきフレーネがブレスレットに向けた視線が気になった。  
 でも、今は“あの人”を忘れてフレーネと2人きりでいたい――――本心を押し殺したためか、少し声が上ずった。  
 フレーネはイライザに背を向けたまま無言で首を横に振り、奥の部屋へと入った。彼女も2人きりになりたかったようだ。  
「ごめんね、あとは2人だけでいさせて」ブレスレットを抱きしめながら呟く。  
 ブレスレットをテーブルに戻して、イライザも奥の部屋へと入った。  
 
 部屋に入った左側、壁に沿ってベッドは配置されている。  
 フレーネの姿が見えないが、イライザが掛け布団として使っている大きなタオルケットに1人分の膨らみがある。  
 ベッドの足元を見ると、そこには丁寧にフレーネの衣装が折り畳まれていた。  
 その横に自分も衣装を脱ぎ捨てて、イライザはタオルケットの中へ潜りこんだ。  
 タオルケットの中でフレーネはイライザに背を向けていた。生まれたままの姿を見せるのは恥ずかしいようだ。  
 さっきの積極性はどこへ行ったのかしらと思いつつ、イライザはこの状況を愉しむことにした。  
 自分がしてもらったように、首筋にキスをする。  
「ん・・・んんっ」  
 フレーネから吐息がわずかに漏れる。緊張しているのか、その息遣いは耐えているように感じられる。  
「堪えなくていいわよ」といいながら、猫のように舌で撫でてゆく。  
「ふ・・・あっ・・・あぁぁ・・・」  
 今度は堪えずに喘ぐ。時々、背中をすこし反らせるのが可愛い。  
「んっ」と声を上げながらイライザは自身の双丘をフレーネの背中に押しつけて、腕をフレーネの胸へとまわす。  
「あ・・・い、いい・・・です」  
 背後から押し当てられているむぎゅっとした感覚、その中にある硬くて優しい刺激、自分の胸を揉むイライザの手。3種類の心地よい圧力がフレーネを包みこむ。  
 さらに、イライザは押し当てている胸をフレーネの背中に這わせるように動かす。  
「ふぁっ・・・ふぅっ・・・」  
「あ、あっ・・・んっ、んんっ・・・はぁっ」  
 イライザの吐息の温もりが頬を通過するごとにフレーネからも甘い吐息が零れる。  
 
 次第にイライザの手は胸から下腹部へと移動する。  
「・・・あ」  
 一段と甘い声がした。イライザの指がフレーネの割れ目に触れた。  
 濡れているのがよくわかる。表面を撫でているだけなのに蜜が音を立てる。  
「ふ、ふあっ・・・いい・・・です」  
 身体をぴくりとさせながら応えるフレーネ。  
「うふふふっ。フレーネ。か〜わ〜い〜い〜わぁ〜っ」  
 悪戯っぽく言葉を投げかけながら、イライザは中指をフレーネのなかへ潜り込ませていく。  
「きゃううぅっ!」  
 プチドラゴンの子供のような可愛らしい声を上げるフレーネ。イライザの調子に合わせているみたいだ。  
 イライザの指が敏感な突起に当たったらしい。それを探すように指先で花弁の入口をなぞっていく。  
「きゃっ・・・ああっ・・・ふ・・ふああっ」  
 とフレーネがよがるたびに入口は蜜で溢れ出す。イライザの中指も次第に蜜に包まれてゆく。  
「いっ、痛ぁいっ!」  
 突然、フレーネが悲鳴を上げる。それと同時に、我に帰るイライザ。  
 濡れた中指が滑ってフレーネの奥深くまで入ってしまったのだ。  
 それを拒むように、フレーネは脚をぎゅっと閉じて、その付け根にある小さな扉を閉ざした。  
 イライザの指はその扉に挟まれたままである。  
 
 本当は泣きじゃくりたい。だけと、泣いたらその震えで余計に痛みが走るはず。だからフレーネは必死で泣くのを堪えた。  
 どうしたらいいのだろう?下手に動くとまたフレーネに痛い思いをさせてしまう。まず、イライザは締めつけられた指の力をゼロに近づけようとした。  
 
 
 2人が動きを止めたままでいる。  
 静寂がタオルケットの中を支配する。  
 
「ご、ごめ・・・ん・・・」  
 先に静寂を打ち破ったのはイライザだった。  
「・・・・・・」  
 フレーネから言葉は発せられなかったけど、なんとか言葉を紡ぎ続けようとする。  
「・・・その、・・・ゆ・・・」  
 上手く続かない。頭のなかで言葉をなんとか捜そうとするのに。  
「ゆび・・・が・・・」  
 発せられる言葉は拙いけどイライザの思いは十分わかっている。  
「謝ること・・・ないです」  
 ついにフレーネは静寂を破った。  
「ただ、突然で・・・びっくりしてしまいましたけど」  
 イライザは返せる言葉が思いつかない。  
「・・・ゆ、指を・・・」  
「う、うん」  
 返す言葉が出てこないまま、とりあえずフレーネに応える。  
「ん・・・っ」  
 できるだけ力を入れないようにして、フレーネは仰向けになる。膝を立てて脚を少しずつ開いた。  
 それに伴い、イライザの中指への締めつけが緩んだ。  
「一気に、いくから。力は抜いていて」  
「は・・・い」  
 フレーネが返事したのを聞き、指を一気に引き抜く。  
「・・・ああぁっ!!」少し甘みを含んだ悲鳴がした。  
 
 フレーネの身体は震えている。鼻をすする音が聞こえる。  
「ごめんなさい・・・ごめんなさい」  
 イライザはフレーネの耳元で二度囁く。  
「・・・凄く、痛かったです・・・」  
 再びイライザに背を向けながら続ける。  
「でも・・・次第にイライザさんが・・・わたしの、中にいることが、感じることが、できて・・・」  
 そう言うと、フレーネはイライザの方を向き、彼女をぎゅうっと抱きしめた。  
 イライザもそれに応えるようにフレーネを抱きしめる。  
 フレーネの身体の震えと鼻をすするような動きが収まった。しかし、今度は先ほどイライザの指が入った秘所が疼く。  
「イライザさん、わたしと・・・わたしと、一緒に」  
 フレーネの呼びかけにイライザは首を縦に振る。  
 イライザは一度起き上がって2人を覆っていたタオルケットを剥いだ。  
 
「あ・・・」  
 フレーネがわずかに甘い吐息を漏らす。  
 ファンデルシアに降る雪のような白い肢体が露わになる。  
「綺麗ね」  
 イライザが思わず口にしたが、フレーネは顔を赤く染めながら首をふるふると横に振る。  
「本当に、綺麗」と言いながら、イライザはフレーネの下腹部に顔を近づけた。  
「さっきは、ごめんね」  
 イライザのの指を呑みこんだフレーネの花弁に呟き、裂け目に合わせて優しく唇をつけた。   
 そして、2人の脚を絡ませて、お互いの裂け目を重ね合わせると、ちゅくっと2人の蜜の音が立った。  
「はぁっ」  
「ふあっ」  
互いの秘所を自分の秘所で味わうという未知の快感に甘い声が零れた。  
「あっ・・・う、あ、ふぁっ・・・あぁっ・・・んんっ・・・」  
「んんんっ・・・ふっ・・・あっ、あ・・・はぁ・・・あっ」  
 相手を味わい尽くすように、身体を動かし、裂け目を擦り合わせる。  
 その動きは、だんだん速くなり、それに合わせて擦り合う裂け目も音を奏でる。  
「フレーネ・・・フレーネっ!」  
「イライザ・・さん!」  
 お互いの名前を呼び合った直後、  
『んんっ・・・あああぁぁぁっ!』  
 2人は一緒にてっぺんまで上り詰めた。  
 
 
「・・・っちゃったね」  
「・・・っちゃいましたね」  
 からだの昂ぶりが落ちつきを取り戻したあと、お互いにとろんとした瞳で見つめ合った。  
「イライザさん」フレーネが優しく声をかける。  
「なあに?」  
「ありがとうございました。気持ち良く・・・なれたから」と笑顔。  
 真正面からそんなことを切り出されて、イライザの顔がかあぁっとなる。  
「知らないっ」  
 照れ隠しなのか、イライザはタオルケットを手にとって2人の身体に掛けると、そっぽを向いてしまった。  
「私も・・・気持ち良かった・・・」  
 そっぽを向いたまま言うとフレーネは「嬉しいです・・・」と言ったきり黙ってしまった。  
 少し時間が経ってもフレーネが何も言わないので、イライザは身体の向きをフレーネの方へと反転させた。  
 よほど疲れたのだろうか、フレーネは仰向けになってすやすやと寝息を立てている。  
 当分寝つけそうになかったのでイライザはちょっと考え事をした。  
 ブレスレットや“あの人”のことは気にならなかった。  
 何か大切なものを失った気持ちを、フレーネは埋めて・・・いや、それ以上に与えてくれたように思える。今はもう、目の前にいるこの人のことしかない。  
 そういえば、今度はフレーネもブレスレットや“あの人”のことを口にしなかった。どういう思いを抱えているんだろうか?と思っていると。  
「あ・・・い」フレーネの声が耳に入った。  
 どうやら、寝言らしい。どんなことを言っているのが聞き漏らすまいと神経を集中させる。  
「イ・・・ラ、イザ・・・お・・・ねぇ・・・さ、ま」で、いったん途切れて「あい・・・し・・・て・・・ま・・・す」と続いた。  
 イライザは「私も、あ・い・し・て・る・わ」とそっと囁きながら、フレーネの前髪をかき分けて、額にそっと唇を重ねた。  
 
(Fin)  

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