『シュナイダーの反乱』から一年。ようやく落ち着きを取り戻したバーンシュタインで再び事件が起きた。
バーンシュタイン王城謁見の間にて・・・
玉座のエリオットの前に、二人のインペリアルナイトが控えている。古参のオスカー・リーヴスと、ユニコーン騎士団長ジュリア・ダグラスだ。
「では今回の事件の報告をお願いします。リーヴス卿。」
「はっ。今回起きた人間消失事件ですが、我が国では・・・アーネスト・ライエル卿、シャルローネ・クラウディオス卿、リビエラ・マリウス、ハンス・バート。そして偶然滞在中だったグローランサー、カーマイン・フォルスマイヤー殿・・・。」
カーマインの名が出た時ジュリアの表情が曇るが、オスカーの報告は続く。
「・・・ランザック王国に出向中のウェイン・クルーズ卿、アリエータ・リュイス。ローランディア王国ではゼノス・ラングレー。」
「つまり『シュナイダーの反乱』において功績のあった者達がまとめて消失したと?」
「御意。目撃者によると、城下街の酒場にて泥酔したリビエラの愚痴に付き合っていたアーネスト、城内の鍛錬場にてハンスを射的の的にしていたシャルローネ。」
「的って・・・」
「ハンスがウェインの事でからかったのが原因のようです。リビエラもウェインの事を愚痴ってたようです。
二人ともまだまだウェインの事を吹っ切れてないようですね。おっと、話がずれました。四名とも『黒い光』としか表現仕様のないモノに包まれ消失しています。
伝令の報告も併せると、ウェイン、アリエータ、ゼノスらもほぼ同時刻に同じ現象ののち消失した模様です。」
「カーマインさんは?」
「彼については・・・ダグラス卿?」
オスカーに問い掛けられ赤面するジュリア。あの夜の事は城内でも噂になっている。曰く「ジュリアと同衾しているカーマインをルイセがテレポートでさらっていった」「頂点を迎える直前にティピの妨害が入った」などなど。それらは当たらずも遠からずの噂だった。
どう報告するべきか悩みながら、ジュリアは三日前の事を思い出す。『カーマイン。貴方は今どこに・・・』
三日前 バーンシュタイン王城・ジュリアの部屋
日の落ちた部屋の中で、引継ぎと雑談をするジュリアとリーヴス。
「・・・では明日のローランディア特使の警護はお願いしますね。陛下が気を利かせてくれたんだから、彼の滞在中はしっかり傍についていて下さい。」
「オスカー!」
「じゃあ、おやすみ?」ウインクをして部屋を出て行くオスカーに、思わずクッションを投げ付けてしまう。
「まったく・・・。でも二ヶ月ぶりに会えるんですね、カーマイン・・・」
彼女の最愛の人は、隣国ローランディアの騎士。そして光の救世主『グローランサー』と称される青年。
お互いの立場上簡単には出会えぬ関係。それでも時間を見つけては逢瀬を重ねてきた・・・が、
関係が深まれば周囲が放って置かないのはいつの世も同じ。何時結婚するのか?どちらの国に属するのか?そんな話がすぐ耳に入ってくる。
『世界の救世主、インペリアルナイトとしての立場、政略結婚・・・自分自身の気持ち』そんな言葉が頭をよぎる。
「ローランディアに私が嫁いで行くか、カーマインを婿に迎えるか、どちらにしても角が立つ・・・か。まるで歌劇の主人公だな。」
溜息混じりにぼやいた時、窓を叩く音がする。
「何者!」油断無く剣を構え窓に目を送るが、ジュリアは我が目を疑った。
「やあ、久しぶり。」月明かりの中、テラスに佇んでいたのがカーマインだったからだ。
「なっ何故ここに?とにかく中へ入ってください。」突然の来訪に驚きながらもとりあえず部屋に迎え入れ、
「貴方が来るのは明日の筈では?それにここは5階です、一体どうやって?」当然の疑問を口にする。
カーマインは不敵な笑みを浮かべながら「オレを誰だと思っている?」と返す・・・。