ランザック王国の国境付近にあるロッテンバウム村の近くそこから北に行った所にある場所でウェイン達は
テントを張り野宿していた。見張りは現在ウェインだ。
「ふぅ〜〜…だいぶ冷えてきたな」
スピリチュアルアーマーを遠隔操作する電波を察知し、この場所をさらに進んで行った場所に傭兵達の
砦がある事を突き止めたウェイン達はすぐさま追いかけたが、
空は既に暗くなりこれ以上無理な追跡は危険と判断したウェインは仲間達と相談した上で野宿し
明日一気に追跡を開始する事を決定した。先ほどまでアーネストが見張りをしていた。
極寒と言ってしまえばかなり大げさな表現だが、それでも薄着のウェインには夜の冷たい空気には少し応える…。
どうしようかと考えたウェインは…
「‥すこし体を動かせば温ったまるかな」
そう呟いたウェインは見張り中なので悪いとは思いながらも、すこしキャンプから離れた場所へ移動してゆく‥。
そして目を閉じて意識を集中させ金の鎌を出現させる。
そして鎌を大きく振りかぶる。
「はっ!ふっ!!」
「はぁっ!はっ!」
風を斬る静かな音と共にウェインの掛け声が響き渡る。
ウェインの掛け声と、鎌を振りかざす音、そして響き渡る虫達の鳴き声しか聞こえない。
(俺が……インペリアル・ナイト…か)
ふと‥ウェインの頭にエリオット陛下の言葉が浮かび上がる。物資輸送任務を終え途中ゲーヴァスという
異形と戦い戻り、報告した後の突然の陛下の言葉。
「これならば、インペリアル・ナイトになっても誰も文句は言えませんね?」
「ウェインの活躍を思えば当然でしょう?」
最初は信じられなかった‥いや、夢なんじゃないかと疑った程だ。
自分だけではなく回りの人達もみんな驚いていた。ハンスはまるで自分の事のように喜び、ゼノスは
陛下の前にも関わらず「やったなウェイン!」と後ろから叩いてきた。
見張りの兵士達数名もざわめいていたのも覚えている。
その後の任務の最中でもウェインは、心が静まらなかった。そして思った。
素直に…「嬉しい」と。しかし、どこか心の底からは喜べないでいた。
(俺は…本当にインペリアル・ナイトにふさわしい…のかな?)
特に士官学校時代から成績が特別よかったわけではない。はめられたとはいえ、再び戦争がおきるきっかけさえ作ってしまったのだ。部下達を‥シャロの夢まであやく潰しかけた。それに…
「ジュリア様は御自分が倒れてしまう程の血の滲むような努力をなさってナイツになったんですよ!」
まるで自分の事のようにジュリア様の事を語るシャロ。自分は‥血の滲むような努力をしただろうか?
「俺は‥ナイツの名にかけて…リシャール様をお守りしたかった」
インペリアル・ナイトとして、そして友としてリシャール前王の為戦い続けたライエルさん。
自分だって平和な世界にしようとマックスと誓った。でも‥自分にはそこまでの覚悟が
あるのだろうか?何かの為に命を賭け戦う覚悟が…。
「………ってあ…」
気がつくと、ウェインは素振りをやめていた事に気づく。無意識にやめてしまう程思いつめて
いたとは自分でも気づかず思わず苦笑する。
「俺は…」
体が既に温まっている事も忘れ、ウェインは呆然と空を見上げていた。見張りにも戻る事も忘れ…
‥ふと、月明かりによってウェインの後ろから誰かの影がゆっくり近づくのがわかり振り返る。
「…隊長?」
心配そうな瞳を揺らした少女が、すこし離れた場所からゆっくり近いづいてくる。
ウェインの沈んでいる雰囲気が遠くからでもわかる程であったのか、とても不安そうな表情だ。
「シャロ…」