「どうしたの、ミーシャちゃん。お話ってなあに?」  
魔法学院の寮、ミーシャの部屋に、ルイセとミーシャは居た。  
「うん、ちょっとお兄様のことでね。  
 あ、そうだ。おいしいお茶があるんだけど、どう?  
 話は飲みながらってことで。」  
そう言って、ミーシャは返事も待たずに立ち上がった。  
ルイセは遠慮して断ろうかとも思ったが先を越され、  
またそれもいつものことと思い、有難く頂戴することにした。  
ミーシャがキッチンに引き下がると、ルイセは手持ち無沙汰になってしまい、  
特にする事もなく部屋の中に視線をめぐらす。  
(いつ見ても、可愛い部屋だよね。……私の部屋にも、ああ言うクッションとか欲しいなぁ)  
世界を救った一行の一員とはいえ、あまり彼女の語彙は多いほうではない。  
ただ単純に可愛いと評価したが、実際には元学院長の養女(少なくとも建前上は)の部屋である。  
家具のつくりはしっかりとしたものだし、細部の細工も丁寧なものである。  
ただ、それらの上にあるものがあまりにも少女趣味で彩られているるため、よほど注意しないとそれには気付かないだろうが。  
「あ、これ、お兄ちゃん……だよね。」  
そんな中に、ルイセは一つのぬいぐるみを見つけた。ルイセの兄であり、またミーシャが「お兄様」と呼び慕う少年だ。  
ひどくデフォルメされたものだが、その特徴的な両の瞳とジャケットの崩し方は身間違えようもない。  
近づいて、手にとってしげしげと眺めているうちに先ほどのミーシャの言葉を思い出す。  
「お兄ちゃんのはなしってなんだろ?」  
ルイセは何故か不安になり、兄のぬいぐるみを無意識のうちに抱きしめていた。  
 
「るいせちゃ〜ん、お・ま・た・せ〜♪  
 って、何してるの?」  
ティーポットとカップ二つ、それから小さなケーキを盆に載せたミーシャがキッチンから顔をのぞかせ、声をかける。  
「え、あ、その……何でもないよ、うん。」  
ルイセは慌てて振り返り、あはははと引きつった笑いを浮かべてごまかしながら、後ろ手にぬいぐるみを元の位置に戻した。  
ミーシャはルイセと、その後ろを見比べて、  
「ふぅん……ま、いいけどね。ほら、これ見て〜♪  
 私が焼いてみたケーキなんだけど、どうかな?お兄様に食べてもらおうと思って挑戦してみたんだけど。」  
それはフルーツケーキだった。丁寧に塗られた白いクリームの上に、色とりどりの果物がまるで宝石のように輝いている。  
どこか抜けた感のある彼女だったが、こう言った家事の類に関しては意外と器用なものである。  
「わぁ、美味しそう。ねえねえ、食べていいの?」  
ルイセの目はそのケーキに惹きつけられている。先ほどの事の照れもあって、やや小走りになってテーブルに座る。  
「もちろんじゃない。そうじゃなかったら出さないよ。」  
笑いながら、テーブルにケーキを置き、カップに紅茶を注ぐ。  
「あれ、一つしかないけど、ミーシャちゃんはいいの?  
 私だけが食べるのって、なんだか気まずいし……」  
テーブルの上には、ルイセの言葉通りケーキは一切れしか置いていない。これ以上切り分けるのも難しいサイズだ。  
ミーシャはいたずらっぽく舌を出して  
「うん、私はいいの。味見してて結構食べちゃったし、それにやっぱり人に味を見てもらわないとね。」  
そんなものなのかな、とルイセは思ったが、自分がそれほど料理をする方ではないため、今一つわからない。  
「それじゃ、いただきま〜す。」  
しばらくの間、二人は思い出話を茶請けに楽しくティータイムを過ごす。  
学園生活のこと、ミーシャと兄の出会い、戦争──  
 
 
「私、何だか眠くなってきちゃった……」  
どれほど経っただろうか、ちょうどカップ一杯の紅茶が無くなるころ、  
ルイセはどうしようもない眠気を覚えていた。  
「どうしたの、大丈夫?」  
ぼーっとした様子のルイセを覗きこみながら、心配そうに尋ねるミーシャ。  
「うん、大丈夫だと思うけど……」  
「本当に?少し横になったらどうかな、私のベット貸してあげるけど。」  
「う〜……それじゃ、そうする……ありがとね、みーしゃちゃん……」  
フラフラと覚束ない足取りで、ミーシャのベットに向かう。  
「うん、気にしなくてもいいよ♪」  
笑顔で答えるミーシャだが、その色合いがいつもとどこか違うことに、  
睡魔に引き摺られてゆくルイセに気付くことはできなかった。  
 
 
どれほどの間眠っていたのだろう。  
ルイセが目を覚ましたとき、既に日は沈み、代わりに月とグローシュの放つわずかな燐光が室内を照らしていた。  
何か悪い夢を見ていたような気がする。  
裸でロープで四肢を広げられ、ベッドの支柱に括り付けられている自分の様子に、  
未だ夢が続いているのだろうか。焦点のはっきりしない頭でそう思った。  
「あ、ルイセちゃん起きた?おっはよ〜。」  
友人の声にほとんど反射的に体を捻ると、両腕と両足から強い刺激が走る。  
「痛……?」  
ロープに縛られている所が擦れ、痛みを覚える。そして、それと同時に今まで感じた事のない感覚も。  
その感覚に戸惑いながらも、ルイセは何とか首だけを声のほうに向ける。  
「ミーシャ……ちゃん?」  
友人の姿に、ルイセの困惑は深まる。  
ミーシャは、その豊かな裸身を月光の下にさらしていた。  
「ねえ、ミーシャちゃん、これ解いてよ……いたい、よ……っ」  
抗議し、身じろぎする度に先ほどと同じ感覚が体中を駆け巡る。痒さにも似たその刺激に、吐息が、心が乱されてゆく。  
「ねえ、ルイセちゃん。前にも話したかも知れないけど……」  
しかしミーシャはまるで聞いていないと言った様子で言葉をつむぐ。  
彼女を知るもの誰もが見たことのない笑みを浮かべながら。  
「ルイセちゃんの事、ずっと、ずうっと、羨ましかったんだぁ。」  
その口調だけを取れば、先ほどまでの思い出話となんら変わるところはない。  
言いながらゆっくりと、ベッドに歩み寄ってゆく。  
「私、身内って呼べる人おじさまだけだったし……」  
「ねえ、ミーシャちゃんってば……ん、んむぅ……」  
普段と違うミーシャの様子に、ルイセは恐怖し、叫ぶ。  
だがミーシャは何も答えず、身を横たえてその肌を重ね、なお声を上げるルイセの口を自分の唇で塞いだ。  
突然の事に驚き、目を見開くルイセ。その口元か粘りつくような水音が響きだす。  
(あ、また……いや、何、この感じ……)  
ミーシャの舌が口内をなで、自分の舌と絡むたび、甘い刺激が走り、体の奥が震える。  
未知の感覚に恐怖しながらも、その感覚をもっと味わいたいと思う自分がいて、いつしか自ら舌を絡めてゆく。  
 
「ん……ふふ、ねえ、ルイセちゃん……」  
ねちっこい音を残して、ミーシャは顔を離しルイセの耳元に顔を寄せて囁いた。離れてなお唇を繋いでいた唾液の糸がルイセの紅潮した頬に張り付き、月光にきらめく。  
「覚えてる?あの時……おじ様を殺した、あの時……」  
その言葉に、惚けていたルイセの意識がほんの少しだけ焦点を結ぶ。  
まるで乱心したとしか言いようのない元学院長──ミーシャがおじ様と呼ぶ、彼女の父ともいうべき男の、凶行。  
彼女たちはそれを、彼を殺すという形でしか止めることが出来なかった。  
「それで、おじ様がいなくなって、私、色んな事がどうでもよくなっちゃって。  
 でも、ね、お兄様が何も言わないで抱きしめてくれて、私、居てもいいんだ、ってね。  
 判る?こんな風に、やさしく。」  
いつの間にか背中に回した手で、しかし言葉とは違ってきつく抱きしめる。ぴくりと、ルイセの体がはねた。  
「やだ、ミーシャちゃん痛いってば!」  
「ホント?本当に痛いだけ?」  
「そ、それは……」  
耳元で甘く囁かれたその言葉に、ルイセは強く反論することができなかった。  
背中に当てられた手が背骨をなぞり、耳朶を舌で撫でられ息を吹きかけられるたび、体中をくすぐられた様に甘い疼きが支配してゆく。  
「それなのに、お兄様ってば、遊びに来てくれてもルイセちゃんのことばっかり聞いて……」  
「やっ、いっ…たっ……やぁ……」  
尻にまで滑らせた手がルイセの肉を捻り上げた。  
「ね、ルイセちゃん、気持ちいいでしょ?」  
「そ、そんなこと……ないもん……痛いだけだよ……」  
「本当に?でもほら、ここ……」  
すぅっと、ルイセの淡い茂みの奥に指を進める。  
花弁に指を這わせただけで、そこがじっとりと湿っているのが判った。  
自分でも触れたことのない秘奥を撫でる指に、体は過敏に反応する。  
「ふふ、こんなに濡れてるのに、感じてないなんて。ルイセちゃん、嘘は良くないよ?」  
指先を産毛に添わせるように、触れるか触れないかといった所で滑らせる。  
敏感な部位に与えられたわずかな刺激にすら体を強張らせ、ルイセは何度も首を振った。  
「判んない……いや、怖い……ね、やめよ、ミーシャちゃ……あぁ!?」  
 
突然、撫で続けていた人差し指がルイセの奥を割り、進入してゆく。  
直に体の内側を擦られる感触は、今までとは比べ物にならないほどの刺激をルイセに与えてゆく。  
あくまでも優しい愛撫が不意に乱暴なものにかわり、それは痛みを覚えるほどだったが、それすらも快楽に変わるほど、彼女の神経は研ぎ澄まされていた。  
震えるルイセの頬に、涙を拭うように舌を這わせる。  
「ルイセちゃん可愛い……お兄様が大事にするのも判るよ……  
 ねえ、ルイセちゃん、ここ、お兄様にどれだけ弄ってもらった?」  
秘奥をなぶる指が二本に増え、そこを拡げるように指を開き、あるいは肉襞の一枚一枚をゆっくりとなぞる。  
その刺激一つ一つが甘い痛みとなり、指を締め付けるように秘肉を震わせる。  
絶え絶えに喘ぎながら、ルイセは答えることもできずただ首を振るだけだった。  
ミーシャはその反応に気にした様子もなく、わざと音を立てるように指を動かしながら言葉を続ける。  
「ふふ、そんな事はどうでもいいの。私、最近気づいたの。  
 お兄様が私を見てくれないのは、ルイセちゃんが居るからだって。  
 ルイセちゃんが私のものになれば、お兄様、私だけを見てくれるんじゃないかって。」  
耳朶を一度甘噛みしてから唇を首筋にうつす。筋肉をつたう様にゆっくりと走る舌の感触に、ルイセは初め嫌悪しか感じなかった。  
しかし舌が鎖骨の窪みにいたると、その嫌悪感といじり続けられる最奥からの刺激が混濁して、言いえないものに変わっていた。  
何時の間にか、、ぬちゃぬちゃと響く音が二つに増えていた。  
ミーシャは口でルイセの上体を、片手でルイセの秘奥をねぶりながら、もう一方の手は自分のそこで蠢いている。  
ルイセの体をもてあそび、その初々しい反応を見ているうちにミーシャの体は猛り、そこはしどしどに濡れていた。  
指の動き一つ一つに反応し、震え、喘ぐ。  
ルイセの狭い膣口から指を引き抜くと、瞼を閉ざして体全てで息をするようなルイセの頬にその指を擦りつけた。  
涙と、自らの体から流れ出た愛液に濡れた顔が、蕩けきった表情と相まって年齢にふさわしくない色気を醸し出していた。  
 
 

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