「いやはや、生徒が失踪したぐらいで私のせいにされるとは……」
いかり肩を揺らしながら廊下を歩くのは黒魔術教師のアドヴォカート。
顎鬚に手をやるいつもの癖も今日はさする、というよりは
ゆすっているような感じだ、荒々しい。
抗えぬ力を前にすれば畏怖というシグナルを発するもの。
顔は強張り、体はすくみ、声は小さくなり、足元は震える……
今まで見た人間はそういう反応を示すのが多かった。
それは悪魔が悪魔たる所以であり、その優越感も悪魔の特権と思っていた。
別に今に始まったことではないが、ここの生徒はそれが無い。
それはアドヴォカートが先生という立場だから。
それはいい、では何故先生と思っているのなら師に対する礼が
伴わないのがよく分からない、先ほどもその敬意を感じない生徒から
友達が失踪した責任がどうのと思いきり罵倒されて苦々しい思いをした。
ガンメルが止めなかったらどうなっていたか分からない。
「どうせどこかの開かずの部屋に入ったのでしょう…呆れた言いがかりです。
まったく、無知というのは恐ろしいものです。私が大人しくしてるのも
ガンメルとの契約のおかげ。偉いのはガンメルであってあの青臭いガキ共では
ないというのに……一度威嚇しないと分からないものですかね……」
アドヴォカートは怒りを滲ませたため息を吐いた………
「悪魔のおじ様」
突然呼び止められた、この呼び方をするのは……
「失礼…貴女のような淑女に気付かずに通り過ぎようとは…これはいけない、
紳士としてあるまじき行為ですね。ご機嫌いかがですかです?アマレット」
そこにはアマレットがいた、悪魔にとって垂涎モノな身体を持つホムンクルスだ。
「…この子が……今日は寝てばかりで……黒魔術の先生なら分かりますか?」
アマレットが心配そうになでているのは飼い猫のグリマルキン。
「私は獣医ではありませんが…まぁ大丈夫じゃないでしょうか?」
「そうですか………」
「よく言うではないですか、寝る子は育つと」
「………そうでしょうか、でもそれが全てに当てはまるというわけ……」
と言ってる矢先、グリマルキンは目覚めた。最初は納得していない態度が
ありありだったアマレットもホッとして、
「ああ……ホントだ、良かった……」
実際のところ、アドヴォカートにとって駒の1つにすぎない使い魔の
健康状態なんて知ったことではない。グリマルキンが目覚めたのも外野が
騒がしかったのでそうなっただけだ。アマレットは聞く相手を間違えていた。
「そう言えば、おじ様は急いでいたように見えましたが……」
「ああ、そうだ……新入生のリレ・ブラウを見ませんでしたか?」
「あの背の低い子ですか……それなら……」
「ほぅ、アマレットは御存知でしたか、どこです?」
アドヴォカートは怒りを発散できそうな話し相手を捜していたのだった。
ガンメルは先ほどの件で会っている、そうなると標的はあの新入生だ、
悪魔に対して対等に近い気持ちで話しかけてきて、しかもこれを
楽しんでやってるかのような余裕みたいなものを感じる。これは気になる。
「あの子なら…シャルトリューズ先生の講義を受けています…」
「なんてことだ…どうも歯車が噛み合ってませんね………」
失望するアドヴォカート。しかしここで彼はあることに気付く。
(いや…リレ・ブラウが錬金術の講義を受けているということは…アマレットは
保護者のような存在のシャルトリューズの目が届かないということだ…)
アドヴォカートはアマレットを見る。
(しかし…アマレットは魅力的な存在なのですが…食らうわけにもいきません。
かと言って生まれて間もないホムンクルスでは話し相手としては物足りませんし……)
アマレットはアドヴォカートの視線は気付かないのかグリマルキンに夢中だ。
(そうです!何も食らう必要はない、私の欲求を満たすだけでも
この際問題ないのですから。私が我慢するなんて笑い話にもなりませんし)
アドヴォカートは静かに笑った……………
「しょうがないですね……ところで、アマレットは講義は受けないのですか」
「あ、はい……私はおじ様も知っての通り……」
「いや、全ては言わなくてもいいです。貴女は魔法を受けるために
ここに来たのではないのですから。ただ、それ以外の講義もあるのですよ。
ちょうどグリマルキンが目覚めたところです、猫とネズミの関係で講義を
して差し上げましょう、いかがですか?」
突然言われた講義の話…いかにも迷惑な話だがグリマルキンでお世話に
なっているので無碍に断るわけにもいかない。
「なあに、すぐ終わりますよ、他の講義が終わって人が通る前に片付きます」
「…それなら……分かりました、お願いします」
「いいでしょう、承りました」
「アマレットは寝付けない時、グリマルキンに寝かしてもらったことは?」
「…はい、あります…」
「気持ちよく寝られたでしょう?」
「ええ、そうですね…とっても………」
アマレットは嬉しそうに答える。少し警戒心が溶けてきたような表情だ。
「あれはグリマルキンの呪文が脳にある催眠を司る器官に直接訴えかけているのです。
だから効果は抜群なんです、しかも副作用もない、女性には特にいいでしょう」
「へぇ……そうなんですか」
「その先には催眠術というのがあります。聞いたことがありすか?」
「いえ………知りませんが……」
「これは先ほどのをやや高度に応用したもので先の呪文と別の呪文を混ぜて
脳は半睡眠状態にして身体のみ動かせるようにしたものです。これを使うと
被呪体の意思は無くなり催眠術師の言うように体を動かします」
「ちょっと怖いような……グリマルキンはそんなことをするのですか」
「いえ、グリマルキンのレベルでは無理です。もっと高等な存在の悪魔なら可能ですね」
「…そうですか……」
「ところでアマレット、こちらを見てもらえませんか」
「はい?」
アマレットはアドヴォカートを見ると、彼は人差し指を立てた状態で構えていた。
次はその手で使って何を言おうとしているのか、その指に注視する。
「はい…もういいでしょう…」
と、アドヴォカートは言った。しかしもうアマレットの意思は薄れている。
アマレットは催眠術にかかったのだ、もう目がすわって視点の先も動かない……
聞く意思も無くなったアマレットを前にアドヴォカートは話しかける。
「では本題の猫とネズミの話に移りましょう。こちらの関係は単純なもので
支配するものとされるもの、それに尽きます。ネズミは教えられるワケでもなく
猫を見れば恐れ逃げます。ネズミが猫に逆らうとか、その怖さを知らないなんて
ありえません、これが自然の摂理というものです。本来なら悪魔と人間も
潜在能力の差を考えればそうなるはずのですが……」
アドヴォカートはアマレットをじろりと見る。
「召還師でないアマレットは世間を知らなくてはいけません、
力の差で主従の関係は決まるのです、今で言えば私が猫、貴女がネズミです。
よろしいですか?」
「チュウ」
アマレットはネズミの鳴き声で返事をした。
「よろしい」
と、アドヴォカートが呟くとズボンのチャックを外し始めた。
「これは何か分かりますか?」
アドヴォカートは自身の一物を指差して尋ねる。アマレットは訝しげな顔をする。
「やれやれ、身体は立派な大人だというのに知識は皆無ですか……
それでは悪い男性に騙されますよ、気をつけないといけません……」
アドヴォカートの講義は続行される。
「さて、主従関係がしっかりしている場合、主人の命令は絶対です。
…おかしいと思われますか?でも封建制度や奴隷制度という言葉があるように
社会全体が個人であることを否定する考え方もあります、要は自分の立場を
よく理解することでしょう、そうすればすべき事も見えてきます」
アマレットはアドヴォカートを黙って見ている。命令を待っている犬のようだ。
「いい受講態度です、では本題に入りますか……」
アドヴォカートは傍にあったベンチに腰掛けるとアマレットに命令する。
「では寂寥の狭間にいる私を救い出してもらいましょう。……アマレット、
口で私の性器をくわえなさい」
アマレットはアドヴォカートの股に顔をうずめ…彼の一物を頬張った。
「ほぅ、思ったより暖かい…
と言いかけた途端アマレットは口の中の違和感を気味悪がったのか離してしまった。
「おや、ダメですよ…主人の命令は絶対です。私のモノをくわえたままで
離してはいけません。息をしたい時だけ隙間を作るのです、あと手で根元を
つかむようにすると慣れない体勢でも安定しますよ、分かりましたか?」
「……………」
アマレットはコクリと頷く。
「いいでしょう、ではもう1回始めから……」
アマレットは再び頬張る。口の内側にある柔らかい肉と硬い歯が一物を包むこむ。
「ぬぉっ……」
ちょっとこれは普通には無い感触だ、あそこの感覚神経全体が喜んでいやがる…
アドヴォカートはニヤリと笑う。驚いたことにアマレットは舌を動かしてきた。
クチュクチュといやらしい音が出る。
「慣れない自分の肉体を触っていた経験からですか?アマレット……
舌を動かした方が主人を喜ばせることが出来る、と判断したのですね。
素晴らしいですがまだ気持ち良くないですねぇ………もっと舌を奥まで
入れるといいでしょう、あと性器をキャンディと思ってもっと激しくしゃぶるのです」
アマレットはうなずき言われた通りにする。アドヴォカートの顔が火照ってきた。
「筋がいいじゃないですか……おっと私も協力しないといけないですね」
と言うとアドヴォカートの長い手がアマレットの尻に辿り着く。
コートのような上着の上から優しくもんでみる。アマレットは驚き
後ろを見ようとするが、アドヴォカートは頭を押さえた。
「ダメじゃないですか、口を離してはいけません。いいですね?
…何度も主人の言うことを聞かないようではお仕置きが必要ですね…」
と言うとコートに下に手をすべらせ太ももを下から股にかけてすべらせた。
アマレットの身体がビクッと反応した。いい感度にアドヴォカートも満足する。
「まったくあの錬金術師にも驚かされますね…こんな気持ちのいい肉体が
創造物だとは……私も何かお願いした方がいいかもしれません……
おっ、アマレット、そこをもっとしゃぶりなさい……いいですね………
おお、いいです………だんだん気持ち良くなってきましたよ…ハァ………」
アドヴォカートの一物が大きくなり熱くなる。それにつられアマレットは
何かに憑かれたようにしゃぶりつく、可愛らしい尽くしぶりではないか。
「どうやら……ハァ…近いようです…………どれ…」
アドヴォカートはアマレットの尻をなでるとその溝に指を走らせる。
ショーツの上からでも秘穴の場所が分かるぐらいに強く押す。アマレットは
上半身を弓なりに曲げる。同時に死んでいたはずの目が少し潤み顔は赤みを増す…
「フフフ…可愛いじゃないですか……それ!」
アドヴォカートが指先に力を入れる、アマレットは顔を紅潮させたが
負けじと一物を擦り上げる。
「おおおお……おおおっっっ!!!」
アドヴォカートは満足そうにイッた……アマレットの口内で盛大に発射する。
アマレットはいきなりの異変にむせて咳き込んだ。
「おっと性液が出るのを言い忘れてましたね、ダメですよ。
掃除が大変ですからそのまま飲んでくださ……!!!!????
異変は起こった。
「!!!!??????」
突如アドヴォカートの一物が燃えるような激しい痛みを感じた。
「うががあああああああ!!!!?何だこの熱さは!?アマレット、離しなさい!」
しかし、散々離さないよう言われているアマレットは咳き込みながらも
手と口を離さない。これがまた痛みを加速させた。
「この!!!離せ!!!何してる!!!!バカ!!!」
普段の物腰はどこへやら、乱暴にアマレットを弾き飛ばした。
股間のあまりの痛さに悶絶してのたうち回る。
どうやら体内に入ろうとした悪魔の分泌物を天使の霊素が拒んだようだ、
そして身体が拒絶する勢いに乗せてその霊素が放出されて悪魔の一物を
焼き焦がしたようである。ギムレットを灰にする力のある霊素だ。
一部とはいえ、これを食らってはアドヴォカートといえども耐えられない……
「あら……どうしたのかしら、私……?…!……おじ様…?どうしたのですか?
大丈夫ですか?」
アドヴォカートの催眠術がとけたアマレットが我に返る。アドヴォカートの急所に
ダメージを与えた当人が無邪気に心配してくる。
「いいから私に構わずどこかに行け!早く!!」
「はい…………?…口の中がネバネバしてる……?うがいしないと……」
「うぐぐぐあああああ!!!!」
アドヴォカートは股間に手をあて痛みに表情を歪めている……。
この惨状の中、グリマルキンに連れられてリレ・ブラウがやってくるのは数分後。
…アドヴォカートに幸あれ。