北京市内に大きく構える屋敷で、秀蓮が火消しを蝋燭に被せた時は夜もだいぶと更けた後だった。  
足元に注意しながら寝台に上り、実に久し振りに軽くて暖かい布団に包まり、赤ん坊の様に寛いだ気分になった。  
安徽から北京までは長い旅だった。慕白と二人で鐵氏に頼まれた仕事を終え、ようやく北京に戻って来る事が出来た。  
温かく綺麗な風呂に入り、ゆっくり休めるのが、秀蓮は嬉しくてしかたがなかった。  
間もなくして気持ちの良い眠りがやってくる。現と夢の間をさまよい、眠りに吸い込まれる。が  
「・・・・!!?」  
 心地よい気分は一瞬にして吹き飛び、心臓が激しく鳴る。闇の中から伸びた大きな手が、秀蓮の  
口をきつく塞ぎ、息も出来ないくらいに押さえこむ。冷静な判断もままならない内に、大きな身体が  
寝台の上にあがり込んできた。  
「しっ・・・私だ」  
 尚も心臓は狂ったように鳴り響いている。その手が慕白の物だと分かった今でも、恐怖と驚きに息も出来なかった。  
そのまま鼓動が止まり、意識が薄れそうになる。大きく見開いたままの瞳は、瞬きもせずに空虚を見つめていた。  
慕白は気にする様もなく、秀蓮が叫ばないか確認してその手を離した。  
大きな体躯でのしかかり、おもむろに彼女の唇を間探りながら、寝具の下に手を差し込む。  
「・・・ん・・・っ・・む・・慕白・・何を・・するの・・・」  
 震えて乱れる息で何とか言葉を紡ぐ。  
「決まっている」  
「・・・・なっ・・何を考えているの!・・ここは鐵様の屋敷よ」  
 秀蓮は顰めた声で、それでも語気は荒く慕白に抵抗した。  
 
「解っているさ。でもお前が欲しい」  
「駄目よっ!・・もしこの事が知られでもしたら・・・私たち!・・・」  
 話している間にも、慕白は身体全体を押しつけるようにして秀蓮を味わう。  
「ならこうしよう。これならいざと言う時、私一人が打ち首だ」  
 言うなり秀蓮の手首を捻り、側に有った腰紐で強固に縛り上げた。  
「何をするの?!慕白っ!」  
「犯されたと言えば良い」  
 更にその手を寝台の枠に括り付け、あっという間に秀蓮の動きを封じてしまった。  
「そんな駄目よ慕白!」  
 世間には言うことの出来ない間柄になってからというもの、常に辺りに気を配りその関係を周到に隠してきた。  
この屋敷の主人は二人が一方ならぬ世話になった人物であり、この事が見つかってしまえば、裏切りに匹敵すると秀蓮は考えていた。  
亡き婚約者を裏切り、その上に己の師匠と不貞を働くなどと。  
 そんな秀蓮の考えなど知らぬふりをして、慕白は温かな首筋に唇を寄せる。  
しばらく振りの秀蓮の香が、鼻腔と下半身をくすぐるのを感じて、先を急ぐように上着の留めを解いていく。  
露わになる肌を楽しみながら、開ききった上着を袖に通したまま、下着だけを更に取り去る。  
縛られた秀蓮は抵抗も出来ず、とうとう慕白の目にその胸を晒してしまう。  
彼の大きな手がそれを一撫でするだけで、秀蓮の身体には漣のように鳥肌がたった。  
「・・あぁ・・」  
 何とかして手を解こうと思えども、慕白の力で結ばれた紐は、秀蓮の力ではびくともしない。  
それどころか、胸に愛撫を加えられるたび、体から力が抜けて、されるがままとなってしまう。  
 
「・・やぁ・・・やめて頂戴・・」  
「・・・本当に?」  
 指は敏感になってきた乳首を掠め、肋骨をなぞり臍の窪みに降りてゆく。  
素肌を愛撫されるたび秀蓮の腰は浮き、身体は続きをねだるように疼く。早くも股の付け根が火照りだした。  
闇に慣れてきた目は、暗がりにいつもの聖者のような笑みを浮かべた慕白の姿を捕らえる。  
整った目鼻立ちに、一文字の眉が精悍さに拍車をかけている。緩めた口元が少し風変わりな形だといつも思う。  
秀蓮はこの数年で、夜その顔を浮かべる慕白は、いつも聖者とは真反対の男になる事を学んだ。  
そして自分がそれにあらがえない事実も学んだ。慕白は尚も己の極めた剣術のように、軽やかで柔軟に指を滑らせる。  
大きな体から想像もつかない、羽のように微妙な愛撫を施した。  
「あぁ・・・ぁ・・」  
 秀蓮の唇から歓喜の溜息が漏れる。抑えようにも抑えのようのない快感が、全身をゆったり漂う。  
「随分といやらしい身体になったものだ。縛られた上に愛撫をされて、お前の乳首はこんなにも固く尖っている」  
 言いながら人差し指で弾くように刺激を加えると、秀蓮の突端は更に強度を増した。  
「あうっ・・」  
 慕白は薄闇の中、恥辱と快感に震える秀蓮がとてつもなく愛おしかった。  
寝台に括り付けられた身体は細く引き締まり、腰から着たままのゆったりした履物が、ことさら彼女を華奢に見せていた。  
緩く編まれた長い髪は肩口に散らばり、張りの有る膨らみが鍛えた胸板にちょこんと載っている。  
普段は義侠心も厚く、男よりも優れた剣士などという事は、瞳の奥にしまい込み、  
自分の手によって一人の女に生まれ変わる彼女が、可愛くて仕方が無かった。  
早く秀蓮の美しさや可憐さを、世間に隠さずに口に出来る身分になりたいと思う。  
昔から、彼女ほど優れた女性を見た事がない。  
思昭から聞かなくても解っていた、彼女が如何につつましく、優しさと知性を備え、その上に強く、美しいかを。  
いつも全てを自分の物にしたいと思っていた。  
それが武當の修行の道から外れた考えだと解っていても、秀蓮を諦めきる事は出来なかった。  
今この瞬間にも、やはり間違っているのかもしれないと思う。  
慕白はそんな考えを頭から吹き飛ばすように、秀蓮の固くなった乳頭に柔らかな舌を這わせた。  
 
「はぁ・・・ん・・・」  
 慕白の舌がやらしく、優しく、絡みつくたびに、秀蓮の思考から抵抗の文字が抜けてゆく。  
大きな手のひらで力強く揉んだかと思えば、生温かい舌が這いまわる。  
欲深い自分の身体が次を求めてうねるのが分かった。  
秀蓮の熱い息を頭の上に感じながら、慕白は小さな乳首を吸い続ける。  
強弱を付け、手や口はおろか自らの束ねた髪の先までも使って、ひたすらに胸への愛撫を続けた。  
秀蓮の声は囁くような溜息から、徐々に抑えられない嬌声へと変わってきた。  
時たま我慢出来ずに喉から大きな音を発しては、唇を噛んで堪えようとしている。  
後もう一押しで降参の声が掛かるだろうと、慕白は意地悪く考えながら微笑んだ。  
最後に歯で軽く噛みながら、舌でなぶるように攻め立てると、切れ切れな声の合間に降参がかかった。  
「・・ぁ・・・ぁ・・・・むっ・・慕白・・お願いよ、許して・・・声が聞こえてしまう。私の手を解いて・・・」  
「だったら・・・口を塞いでしまえばいい」  
 それでも構わないと秀蓮が瞳で訴えかけると、慕白はおもむろに自分の寝巻きを脱ぎ捨て、秀蓮の胸元をまたぐように陣取った。  
「な・・・何?」  
「塞いでやるから口を開けるんだ、秀蓮・・さぁ」  
 意外と厚みのある唇が、戸惑いながら薄く開く。  
慕白が下履を割って、己の一物を取りだすと、さっと頬を紅焦させて顔をそむけてしまった。  
「そ・・んな・・・嫌よ・・・」  
「ならそのままだ」  
 慕白は何事も無かったように、手を自分の後ろに回し、再び敏感な秀蓮の乳房を探った。  
「んんっ・・・!・・・あぁ」  
 またもや漏れた声に唇を噛んで、再び口を開けるとき秀蓮は、二つと無い手段を受け入れた。  
「いい子だ・・・」  
 
まだ半分しか変化していないそれは、秀蓮の口の中で微妙な感触を醸し出す。  
柔らかすぎず硬すぎず、何とも気持ちの良い感触だと思った。  
風呂上がりなのか、いつもの濃い慕白の臭いが薄まり、変わりに薬湯の香が少しする。  
幹全体に舌を絡ませ、口中で転がすように愛撫する。いつの間にかこの作業にも慣れたものだった。  
最初は鼻についたこれの臭いすら、今では何とも感じない。  
それどころか、たまにどうした事か自らこの臭いを欲する時が有る。なんと浅ましい女だろう。  
今だって本当は待っていたのかもしれない、慕白がこうして差し出してくれるのを。  
でなければ、こんなにも美味しいと感じるだろうか?   
今や慕白の分身は、口の中で大きなえらを広げ、秀蓮はその先から出る愛液を吸いだそうと、必死に舌と唇を動かした。  
「はは・・必死だね秀蓮」  
 そう言われて、眉根を寄せてこちらを覗き見たものの、やはり秀蓮は必死になって頬張り続ける。  
きつくすぼめた唇で亀頭冠を扱き、舌は先端を中心に泳がすように動かす。  
手の使えないもどかしさに、やきもきしながらも、秀蓮は以前教わった通り、舌と唇で慕白を導こうと躍起になった。  
喉の奥まで一気に導き入れ、また一気に絞りながら先端まで吐き出す。  
それを繰り返すうち、限界まで強張った慕白の肉柱は、予告も無しに痙攣を起こし爆発した。  
 
「・・んあっ・・!」  
 驚いた拍子に口から反れた陰茎は、秀蓮の頬や口元に飛沫を残し、再び口内に戻った。  
何度も震える肉柱を又放してしまわないように、秀蓮は残らず精液を吸い出す。  
独特の臭いを放つそれを、事もなげに飲み込んで、ようやく、まだ小さくならない慕白を開放した。  
上気した顔に乳白色の粘液が散らばり、蕩けた視線でこちらを見ている秀蓮は、この上なく淫らで美しい。  
「・・・秀蓮、お前ほど覚えの良い弟子はない。どこか他で修行を積んでいるんじゃないのか?」  
「・・あ・・彼方が私をこんなにしたんじゃない・・」  
「ふふ、冗談だ・・。さぁこれもやろう」  
 そう言って飛び散った残滓を指で拭い、秀蓮の口元まで運んでやる。  
薄い頬の肉の感触を楽しみながら、丁寧に拭っていく。  
すると開いた唇から薄い舌が伸び、真っ赤に色づいたそれが、慕白の指から残り物を拭い去っていった。  
「美味しかったか?・・・さて私も頂こうかな・・」  
 その言葉を聞いて秀蓮の身体は敏感に反応する。  
既にどろどろに蕩けきっていると思われる女芯がさらに熱を帯びる。  
慕白の舌がそこに這わされる事を想像するだけで、身体は絶頂を向えそうだった。  
「ん?どうした秀蓮、また乳首が尖ってきている・・・ほら、痛いだろう」  
「あぁっ!」  
 天にそそり立つ小さな尖りを、指の間に挟んで揺するように愛撫する。秀蓮の体の電気信号は、  
素早くその刺激を陰部に送り続けた。  
 
しばらく遊んで、ようやく腰紐を解く。下履きの裾を引っ張るとそれはすっと両足から抜けてしまう。  
薄い下着一枚だけを着けた秀蓮に、ねっとりとした視線で犯すような眼を向ける。  
慕白のその行為が秀蓮の烈情を煽るのだ。  
「秀蓮、君は自分がどれほど男を虜にする身体を持っているか解っているのか?  
 お前は魔性の女だ、この私ですら耐えうることが出来ない・・・  
 その淫らな体を見てみろ役立たずな下着もだ。濡れて向こうが透けて見える」  
「・・・・ぅ・・・・・・・」  
 淫猥な女、実際にそう言われ言葉でなぶられる度に、己の中で何かが昂ぶる。  
そう言って慕白はさらに私の淫らな部分を晒け出そうとしている。  
ほんの少し前までは自分にこんな一面が潜んでいるなど思いもしなかった。  
彼にいい様にされる度、どんどん自分の中でも何かが変わってきた。こんな女ではなかった。  
こんなにも浅ましい自分に嫌気がしながらも、それを止めることなど出来もしない。  
秀蓮の目尻から滴が溢れだす。抑えた咽ぶ声と共に、慕白に施される愛撫からも声が漏れる。  
大きな手が引き締まった脚を登って来る度、どんどん声も大きくなっていった。  
「あぁっ・・・やぁ・・」  
 慕白は今や全く役に立たず、秀蓮の陰部に貼り付いた白い布きれを撫で上げる。  
染み出た愛液で指は滑り、秀蓮の開いた裂け目を下着の上から何度もこすってやった。  
「やぁ・・・っん・・駄目・・・ぃ・・ぃ」  
 そこに触り始めたばかりだと言うのに、秀蓮の身体は小刻みに震え、今にも達してしまいそうだった。  
「ん?もう我慢出来ないのか?」  
 そう言って慕白は、素早い手つきで下着の縁から手を滑り込ませた。  
指はあっと言う間にぬかるむ肉びらに吸い込まれるように潜っていく。  
「!!っ」  
 
同時にもう一方の手で口を塞ぎ、さすがに大きくなる秀蓮の声を封じた。  
手も口も封じられ、慕白にされるがままになりながらも、秀蓮は激しい快感にうめきながら身をよじった。  
中と外からの同時の攻め立てによって、秀蓮の生き物のようにうごめく膣壁が細かな痙攣を繰り返し、  
彼女自身も発作に見舞われたかのように四肢を突っ張り硬直する。  
目は虚ろで、頬には僅かな微笑さえ湛え、次の瞬間には体中の筋肉が大きくうねるように収縮した。  
中も二本の指を絞めつける程の圧迫感で大きな収縮が襲う。  
慕白はにわかに自分の我慢が利かなくなってきたのを感じた。  
「秀蓮、まだ終った訳ではないぞ」  
 慕白は力が抜けて、重たくなった秀蓮の足を掴み、いとも簡単に下着を取り去る。  
それを丸めて秀蓮の口の中に詰め込むと、緩慢な表情でこちらを見ているうちに足の間に入り込み、  
裂け目の中に一気に己を埋没させた。  
「うううっっつ!!」  
 秀蓮は急な慕白の侵入で大きな瞳を見開いて覚醒した。  
激しい絶頂に達した身体は驚くほど敏感になっており、慕白の巨木のような一物を迎え入れる余裕は秀蓮には無かった。  
「思った通りの絞まりだな・・・ん?中はまだ震えているのか・・」  
 しばらくその痙攣を味わうようにじっとしていたかと思うと、急に両足首を掴んで、  
膝が肩にくっつくまでに秀蓮の下半身をひっくり返した。  
 
「!うあっ・・・」  
「ほら秀蓮、見えるだろう・・お前のあそこは今だにヒクついている。」  
「・・ぁあ・・・」  
 強すぎる刺激に目眩を覚えながら、秀蓮は言われるままに視線を落とす。  
そこは真っ赤に腫れ、たっぷりの粘液のせいで酷く光って見える。  
自分の粘膜がぴくぴく動き、そこに杭のように刺さった慕白の物を小刻みに絞めつけているのが解った。  
「動かさなくてもいきそうだ」  
 そう言いながらも慕白はゆっくりと腰を引く。  
秀蓮は目の前で赤黒く光る肉棒が、自分の襞の間から這い出てくるのが見えた。  
悪憎ましいほどの太さを備え、張り出したえらの部分が見えそうなくらいまで引きだし、また一気に最奥まで突き降ろす。  
喉に詰まった布の隙間から秀蓮の叫び声らしき物が聞こえる。  
それを聞いた慕白は嬉しそうに鼻で笑って、また同じようにそれを繰り返した。  
「・・がぁっ!あ゛あ゛ぁっっ!」  
 喉の奥から漏れる悲鳴と共に、目尻からは苦しげな涙がこぼれ落ちる。  
相変わらず秀蓮の乳首は硬く尖り、蜜壷は周期的な痙攣と収縮を繰り返していた。  
「・・・・おい、まさかイキ続けてるのか?」  
 もちろん返事など無い。秀蓮は慕白が何を言っても、既に解らなくなっていた。  
杭が出入りするたび雷に打たれたような痺れが全身を襲い、膣も子宮も陰核さえ、  
打ち上げられた魚のようにぴくぴくと痙攣している、それだけが解った。  
慕白は自分の力が無限大に膨らんでいく錯覚を覚えた。  
今や秀蓮は完全に自我を失い、身体だけが快楽に震えている。  
慕白は伸け反った細い首に、引き寄せられるように片手を伸ばす。  
それだけでも回りそうなほどの細い首は、少し力を篭めるだけで容易に折れてしまいそうだった。  
加減をしながら指に力を入れていくと、自分の下で秀蓮がむずがるように体を動かす。  
それは慕白にとって新たな快感を生んだ。底無しの欲求が不意に首をもたげる。  
慕白はもう少しだけ力を足した。  
 
「・・・う・・・・ぐっ・・・」  
 他人の動作によってもたらされる快感は慕白をどんどん限界に追い詰める。  
視界は白く濁り、下半身の感覚だけが鋭く脳に突き刺さる。陰茎がどくどく脈打っているのが自分でも解った。  
もう少し。もう少しだけ。  
「・・うぐぅ・・・・・う゛っ・・・ぅぅ・・」  
 徐々に秀蓮の顔が鬱血してくる。彼女は訳も解らずに只々藻掻いた。  
「あぁ・・・イキそうだっ・・」  
 収縮した袋は秀蓮の尻に揉まれ、竿は彼女が藻掻くたび、きつく絞められ激しくこすられた。  
激しい彼女への愛がこみ上げてき、次元の彼方に魂を解き放つように、慕白は一気に己を開放した。  
秀蓮の中におびただしい量の種が蒔かれ、同時に秀蓮の割れ目からは、勢い良く熱い噴水が上った。  
完全に意識を失った彼女から慕白はようやくその手を放した。  
慕白の意識は徐々に、霧が晴るようにはっきりとして来る。  
下半身はまだしびれるような感覚を残してはいるが、久々に爽快な気分だった。  
慕白は生りを顰めた己の一物が秀蓮から抜け落ちると、その脚を丁寧に寝台の上に揃えてやった。  
今夜の内にする事はまだ多く、晩餐の後片付けの手始めに、頬にかかる乱れた辮髪を直した。  
 作業の間秀蓮は一度も目を醒ます事はなかった。  
新しい下着に替えてやり、寝巻を着せ直し、更にはそっと部屋を抜け出し、隣の自分の部屋の寝台に寝かした。  
荷物を全て入れ替え、汚した布団に更に茶をこぼして誤魔化し、そうしてやっと一息吐ける思いになれた。  
本当は朝まで秀蓮を愛でていたい、だがそれが叶うのは、遠い旅路の途中で誰も二人を知らない土地でだけ。  
まさか、ここの使用人が起しに来た時、無様に見つかる訳にはいかない。  
にわかに一人の寒さを感じながら、慕白は布団を肩まで引き上げた。  
朝になればまた秀蓮に逢える、そう思いながら慕白は静かに目を閉じた。  
 
 
 「どうぞ」  
 秀蓮が返事をすると共に開いた扉の向こうには、慕白が立っていた。  
「・・・誰も起してくれなかったのね・・」  
 食事の載った盆を見て、秀蓮は少し拗ねたようにそう言う。  
今の時間はどちらかと言えば昼に近く、客人として招かれた家で、こんな時間まで惰眠の中でまどろんでいたのだ。  
秀蓮は心の中でだらしの無い自分を恥じた。  
「私が起さないよう頼んだんだ、誰も君を責める人など無い」  
「・・・・・・ねぇ・・・・・・私・・・この部屋だったかしら・・?」  
 秀蓮は先ほど目醒めた時の事を思いだす。  
布団の中でゆっくりと絹の温かさを楽しみ、徐々に頭がはっきりしてくると、部屋に見覚えが無い事に気付いた。  
くるりと部屋を見回して見る、自分の荷物はきちんとそこに有る。  
「なんだか、頭がはっきりしないのよ・・・昨日は夢を見た気がするわ・・・」  
 そう言いながら秀蓮は、いつの間にか手首に出きた擦過傷をこすった。  
この仕事をしていると、気付かない内にいろんな怪我をしている。  
さっき久し振りに覗いた鏡には首に何箇所か赤黒いあざが出来ていた。  
今日はそれが見えないよう、襟の高い服を着ざるを得なかった。  
「・・・きっと疲れているんだろう・・・今回の旅は長かったからな」  
 慕白は驚きと同時に、わずかな欲望を感じた。だが、今はまずい。  
「さぁ、朝食を持ってきたんだ。熱いうちに食べなさい」  
 机の上に載った粥は美味しそうに湯気を立てている。秀蓮は慕白に微笑むと朝食に手を着けた。  
慕白は、美味しそうに粥を食べる秀蓮を黙って見守る。  
そうしながら胸の隙間にしまったある物をそっと撫でた。  
それは昨晩の名残。後で秀蓮は気付くかもしれない、自分の下着が一枚行方不明になってることに。  
慕白は乾いて固くなった下着を服の上から楽しんだ。  
秀蓮が目を上げると、そこには聖者のような微笑みを浮かべた慕白が、優しく自分を見守っていた。  
 
                                                           完  

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