「じゃあ、ちょっとトイレに行って来るよ」
「……待ちたまえ、九城」
「どうしたんだよ、ヴィクトリカ」
「いいから、ちょっとこちらに来たまえ」
「はい、来たよ。で、用事はなに? 早くしてよ?」
「……九城こそ、トイレに行って『これ』をどうするつもりだ?」
トン、とヴィクトリカの履いた靴の先が股間に当てられた。
「うっ!? な、なにするんだよヴィクトリカ!」
「劣情をもよおしているんだろう……?」
そのまま、スッ、スッと爪先で擦られる。
ズボンの上からわかるほど盛りあがった股間をなぞるように。
「う……ううっ……!」
「原因はわかっている。あのの煙だろう。ああした麻薬には理性を減退させ、
発情を誘う作用があるものだからな」
言いながらも足の動きは休まない。
極上の美少女に足で嬲られるという屈辱的な状況だが、九城はなぜか動くことが出来ないでいた。
「ど、どうして……わかったのさ」
「湧き出る知恵の泉の前には当然の帰結でしかない……九城。
わたしは退屈なのだ。退屈で死んでしまいそうなのだ。
……だから、そこで自慰をしたまえ」
「なんでそうなるのさ!?」
「あるいはわたしに弄ばれてその面白い顔をもっと見せるのだ、九城……」
『どちらが良い?』そう問いかけるような青い瞳に、他の選択肢が吸い込まれて消えてしまう。
「じ、自分でするのはちょっと……」
迫られる不自由な二択に、かろうじて消極的な答えを返す九城。
しかしヴィクトリカは少しだけ嬉しそうに、だが容赦なく言い放つ。
「そうか。わたしに弄ばれる方が好みなのだな、九城。この変態め」
「うう……」
心の底でかすかにだが目覚め始めていた被虐的な性質に切り込むような台詞を受け、九城は顔を真っ赤に染めて絶句するしかなかった。