人通りの多い商店街。
私は放課後ナミ君に誘われた。
「良かった〜!あんちゃんとお出かけできて!!」
「あ、有難う…私もナミ君とお出かけできて嬉しいよ」
そんな笑顔で言われたら凄く緊張しちゃうな…
自分もうまく笑い返せているか心配になる。
「さっき買った美味しいチョコさ、公園かどっかで食べようよ!」
私の返事を聞かないままナミ君は私の手を取り、公園へ走り出した。
―そんなに走ってないと思う。公園に着いた。
「はぁ…っ……」
「ごめんねあんちゃん、走らせちゃって。」
私はあんまり運動が得意じゃない。
証拠にちょっと走っただけで息切れを起こしている。
とりあえず、私達は近くにあったベンチに座った。
「ほら、僕が買ったチョコはコレ!あんちゃんのは?」
可愛いらしい箱に入った苺味のチョコを取り出してみせている。
ナミ君好みだなぁって思う。
「えっと…私のはこれ」
一方、私のは黒い箱に入ったトリュフチョコ。
ちょっと背伸びして、大人っぽいパッケージのを買ってみた。
見せ合った後、お互いチョコを口の中へ放り込んだ。
「んん〜〜ッ!甘くて美味しい!!」
「…???」
ちょっと苦いかも。
口の中でじわって溶ける感じがいいんだけど、私には合わない。
それになんか液体が入ってる。舌がヒリヒリする感じ…こういう仕様なのかな?
「ねー僕あんちゃんの買ったチョコ食べたい!!」
「えっ!!?」
ふとした瞬間、口の中に何かが入ってくる。
まだ口の中にあったトリュフチョコが吸い取られていく…
「…っはぁ…………」
「…!!!!」
これって所謂キスかな?
でもなんとなく気持ちが良い感じがした。
「なんか大人っぽい味だね!あんちゃんこういうのが好きなの?」
何にも無かったようにナミ君が尋ねてくる。
さっきのは何だったんだろう…?
「あ、違うの!パッケージ見て選んだから……」
「…あ、これアルコール入ってるよ?」
ナミ君が私の買ったトリュフチョコの箱の裏を見せた。
どおりで食べた時ヘンな感じがしたんだ。
「ところで…あんちゃん、顔赤いよ?」
持っていた手鏡で確認すると真っ赤とまではいかないけど、赤面している自分が映る。
「そっ、それはナミ君が…」
「あ!そのこと、僕とあんちゃんだけの秘密だからね!」
そう言ってナミ君はナミ君の買った苺チョコを私の口の中に入れた。
やっぱり苦いのより甘いほうが私は好き。
「そろそろ遅いし、帰ろっか!」
「うん!」
ナミ君の顔を見ると、ほんのちょっとだけ赤かった。
さっき言われた"秘密"の事を思い出すとやっぱり恥ずかしいけど、
同時に何か嬉しい気持ちになる。
そのまま私達は軽い足取りで家に帰った。
【終わり】