六章 『逃避』
鬼頭がふたたび向かった迷宮の少し先の方で、
鉄の棒と薬の刺激に耐えながら、
壁によりかかって歩いていくヤエ。
「はぁ・・・はぁ・・んくっ・・ぅ・・」
(・・駄目・・・道が分からない・・闇雲に・・歩いているだけじゃ・・・
いずれ・・捕まっちゃうわ・・・・それに・・)
息を荒げながら、敏感になった秘部を刺激する鉄の棒が
しっかり押し付けられた自分の下半身を見る。
(・・これじゃ・・走ることもできない・・恥ずかしい・・・
どうすれば・・どうすればいいの・・?)
絶望感と虚脱感で、次第に足どりが重くなっていくヤエ。
(・・だめ・・こんな姿じゃ・・もう・・)
「はぁ・・・はぁ・・・・」
[・・・・・ン・・・]
その時、ヤエはふと自分の荒い息に混じり、聞き取れるかどうかというほどの
か細い高音が耳に入ってくるのに気付く。
(こ・・これは・・機械の音・・・?)
[・・・・・ィィン・・・・]
「・・・!・・そん・・な・・」
ヤエが見上げた天井の端には、天井と同じ模様が施された極小の
監視カメラが無数に存在した。
ヤエがカメラの存在に気付いた直後に、暗がりの遥か彼方から
低い声が響いてくる。
「・・・・−ん・・・」
「・・・エちゃーん・・・・どこかなー?・・」
(!!・・・やっぱり・・・!・・でも・・
この迷宮の中を歩いているということは・・・
カメラで私を見ているわけじゃ・・ない・・?
なら・・・私の場所は大体しか分からないはず・・・
早く・・)
「・・はぁ・・逃げなきゃ・・早・・く・・んく・・あぅっ・・」
グイグイと敏感な秘部に食い込むように責める鉄の棒に耐えながら、
ヤエは歩いていく。
(でも・・・出口は分からないわ・・・どうしようもないの・・?
捕まったりしたら・・・またあの部屋に連れて行かれて・・
今度は何をされるか・・・・)
(!!)
ヤエはハッと歩みを止める。
(・・あの部屋・・・奥に扉がまだあった・・!
捕まった人をわざと逃がすために作られたのがここなら・・)
ヤエは必死で考える。
(そう・・こんな広い場所に出口が一つしかないなんて・・それに
私があの場所に戻るなんて・・予想しないはず・・!)
(あの奥なら監視カメラはないかもしれない・・それに
どこかに出口だって・・・!)
決意したヤエはよろよろと遠回りしながらあの場所へ戻る。
鬼頭の魔手に落ち、されるがままに辱められたあの部屋へ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
遂に、鬼頭の目に触れることなくあの部屋にたどり着いたヤエ。
道を阻む扉は無く、ほど広い部屋の奥にうっすらともう一つの扉が見える。
ゆっくりと扉に近づき、震える手でそっと押す。
扉は音も無くスッと開くと、その向こうには雰囲気は違えど、
今までと同じ重苦しく無機質な通路が続いている。
(分からないけど・・今は進むしかないわ・・・早くしないと
また戻ってくるかもしれない・・・・)
・・・・・・・
おぼつかない足取りで、通路を進んでいくヤエ。
その白い生足にはうっすらと汗をかき、
可憐な顔は羞恥心と下半身の刺激で紅潮している。
(思った以上に道が分かれてる・・どこへ行けばいいの?・・)
当ても無く通路をさ迷うヤエは、いつのまにか一本道の突き当たりの
扉の前まで来ていた。そっと扉をあけて中に入ってみるが、
何かの備品らしきものが部屋中に積まれているだけで、
これ以上先へ進む道は見当たらない。
(ここじゃ・・ない)
だが、通路へ戻ろうとした時、こちらへ近づいてくる足音がする。
(・・・!・・見つかった・・・!?)
ヤエは咄嗟に部屋の荷物の陰へ身を隠す。
やがて、足音は扉の前で止まり、扉が開けられた。
(・・・!・・あれは・・・!?)
入ってきたのは、ヤエをここまで連れて来たあの男だった。
「ふむ、何か気配を感じたがここに来る者など・・・
・・!・・・・まさか・・?」
男は懐に手をやり、短刀を取り出す。
「・・・・誰だ・・・どこにいる・・・?」
男はゆっくりと暗い部屋を徘徊し始める。
(・・・出来るかどうかわからないけど・・・見つかったら
その瞬間に急所をつけば・・武器を奪うことくらいは
できるかもしれない・・!)
ヤエはじっと息を潜めている。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
その頃、鬼頭の様子が再び変わり始めていた。
「・・・・どこだ・・・どこにいる・・?
そんなに遠くにはいけないはずなのに・・・
この一帯は全て見回った・・・・なんでだ・・・
なんで僕がこんな退屈を味わわなきゃならない・・!?
僕は狩りがしたいんだ!隠れごっこじゃない!
どこだぁぁぁ!?」
鬼頭の感情的な声が迷宮内に響く。
「・・くそ・・・返事をしないつもりなら・・・・
嫌でも声を出させてやる・・・!」
そう言って鬼頭が右手に持っている物を操作し始める。
平たい長方形の形をし、その機械にはいくつかのスイッチがついていた。
そう、ヤエに取り付けられたのは只の鉄の棒ではなかった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ヤエは、おそらく一瞬しかないであろうチャンスを伺っていた。
ヤエの向かい側に積んである荷物を
覗き込んだところを見計らい、素早く男のすぐ後ろまで近づき、
手とうの狙いを男の首元に定める。
その瞬間であった。
[・・キュインン・・・・]
「!!・・んぁぁっ!?」
突如ヤエのレオタードに押し付けられている鉄の棒が、
低い駆動音を発し、ヤエの秘部から電流のような
激しい感覚が身体中に走る。
鬼頭のリモコン操作により、ヤエの胸の谷間を通り
首へ繋がっていたワイヤーが、1cmか2cmほど
鉄の棒に巻き取られたにすぎなかった。
しかし、この予期せぬ出来事にヤエの身体はバランスを失い
よろめき崩れ、反射的に口からは声が出た。
「! お前は!?」
男は当然のごとくヤエの存在に気づき、
即座にヤエを地面に押さえ込んで短刀を突きつける。
(・・そんな・・!!・・どうし・・て・・)
「なぜお前がここにいる・・?
一体若様はどうされたのだ・・・」
「ひぅっ・・!・・ん・・・あぁ・・!」
男に生じる疑問は声となって部屋に響いたが、
無理やりに身体を押さえつけられ、さらに秘部に
押し付けられた鉄の棒による絶え間ない刺激に襲われ、
ヤエの耳には何も聞こえない。
「あぅっ・・んぅっ!!離し・・て・・」
ヤエの顔に涙が滲み、下半身は押し迫る苦痛と性的刺激に
耐えながら悶えている。
「む・・?この奴隷用の拘束具・・・・むふふ・・なるほど。
『狩り』の途中だったというわけか。こちら側に逃げて
来るとは思わなんだわ。残念だったな。ぐふふ・・・」
「・・はぁ・・・はぁ・・」
抵抗する力もないヤエは、うっすら涙を浮かべている。
「どれどれ・・・何か武器はもっておらんだろうな?」
そう言うと男は、床に押し倒されたヤエの上体を引きずり起こし
床に座らせると、背後から忍服の両肩部分を
掴むと、一気に服を肘のあたりまでずりおろす。
「っ!きゃぁっ!!」
ヤエの白い上半身が露わになる。
胸元にはタイツが残っていたが、その極薄の繊維と、
ヤエの肢体からうっすらと滲む汗によって
ほのかに下の肌が見えてしまっている。
「・・ふむふむ・・このタイツの下に
何か隠しておるではないのか・・・?」
男はヤエの背中側から両腕を回して、ゆっくりとタイツの中に
手を忍ばせると少女のふくよかな胸に伸ばしていく。
「あっ・・・やだ・・・触らないで・・・
・・っ!やぁぁっ!!あっ・・あぅ・・・!」
「ふふふ・・・この膨らみは何かな・・・・?」
男はわざとらしい口ぶりで、ヤエの乳房を
ねっとりとした手つきで弄ぶ。
「・・ゃ・・・・ゃだぁ・・・」
またも見知らぬ男から受ける
あまりに露骨な辱めに、ヤエは
顔をうつむけ、身体を縮こませるようにして
羞恥に耐えていた。
しかし、男の手が柔らかな乳房の頂上に近づくにつれ、
身体中を奇妙な悪寒が襲い始める。
「・・む?この突起はなにかな?」
「・・ひゃぅっっ!?」
「ぐふふ・・・どうした?急にもがきだして・・・
よほど大事な物なのかな?もう少し丹念に調べてやるか・・」
男は、まるで粘土玉をつくるかのような手つきで
少女の無垢で敏感な部分を指先で転がせるように弄ぶ。
「ぁぅっ!! あっ! んぅ・・・!・ぁ・・ぅぁ・・!!」
「・・・しかし、若様に引き渡す前に『お仕置き』をせねばな・・
ここを管理する者としては、当然の行いだ・・ぐふふ・・・」
うつぶせに押し付けられたヤエの身体を眺めながら
男はそうつぶやいた。
「では、行くとするか。・・念のため、これを
つけてな・・ふふふ・・・・」
男は懐から、やや太めのワイヤーを取り出すと
端をヤエの首輪にとりつけ、もう片方の端を左手に握る。
そして、肘まで下がっていたヤエの忍服を脱がした。
なすすべもないまま
無理矢理に服を剥がれ、その美しく白い肌を露わにしたまま
怯えと恥じらいで顔を赤らめて座りこんでいるくノ一の少女。
その幼さの残る顔に反してふくよかに発達している肢体には、
性的刺激を与える為の拘束具と、ペットの散歩用ロープにも
見えるワイヤーがつながれている。
清純さが羞恥で汚されたヤエのその姿は、
見ている者の加虐心を誘うのに充分だった。
「手をやかせるな!さぁ、這ってでも来るのだ!」
男は立ち上がると、ヤエの首輪に繋げたワイヤーを
ぐいっと引っ張る。
「あぅっ!きゃぁぁっ!!」
急にワイヤーを引っ張られ、前のめりに倒れるヤエ。
再び、レオタードに鉄の棒がめり込む。
「ふふふ・・おとなしく言うことを聞かんと
お前の大事な場所が悲鳴をあげるぞ・・・・
なにせ、お前がじっとしていようとも・・・」
男の手が懐に伸び、平たい長方形の形をした機械が
姿を現す。
「!!・・そ・・それ・・は・・・・」
「ぐふふ・・そう。お前に付けられているのは
奴隷どもの教育に使う物だからな・・・それなりの
工夫はしてあるというわけだ。・・・・そして、
そいつの操作端末を持っているのは、
若様だけではない、ということだ・・・・・
ぐっふっふ・・・・自分の置かれている状況が
飲み込めたかな?ん?」
「・・・・・・」
ヤエの表情には、半ば諦めが混ざり始めていた。
どうすればいいのかも考えられないまま、
ゆっくり四つ這いの姿勢になると
男のワイヤーに引かれるまま、通路を歩いていく。
「はぁ・・・はぁ・・・」
(・・・このままじゃ・・・・
この男と・・・鬼頭の・・・なすがままにされちゃう・・
・・でも・・どうすればいいのか・・わからない・・・・
もう・・・ダメ・・・・)
この通路の先に待っているのは
更なる男の欲望と恥辱にその清らかな体を
嬲られていくだけと分かりつつも
今のヤエには
鉄の棒からの刺激と、
手足を前へ出す度に
ふるふると僅かに揺れる乳房に
未だ微かに残っている
男の手の感触に耐えながら、
男の言いなりになって
歩いていくことしか出来なかった・・・
六章・終
次章・『ヤエタンいいことなしで候』(仮)に続く・・・・