五章  『拘束』  
 
・・・・・・・・・・  
宙吊りのヤエに異変が起き始めていた。  
鬼頭にはかされたレオタードの内の、  
ヤエの秘部が少しの刺激にも敏感になっている。  
 
 
「・・・んぅ・・・・」  
(何なの・・・なんでこんなところが・・・くっ・・擦れる度に・・  
 変な感覚が・・・)  
 
 
「ふふ・・気持ちいいかい?レオタードの裏側に敏感になるお薬を  
 付けてあげたんだ・・・・少しだけどね・・んふふ・・」        
ヤエに背を向けたまま、壁際に並んだ道具を選別しながら  
鬼頭が楽しげに話す。  
 
「さーて・・・付けてあげるのはお薬だけじゃないよ・・・  
 これと・・これも、ね」  
 
「・・!」  
 
鬼頭が手に取った物・・・それは、黒い皮製の首輪と、  
細い円柱状の鉄製らしき棒だった。円の直径は3cmほどだろうか。  
長さは・・・ヤエの太ももの幅よりも少し短い程度か。  
怯えと恥じらいが混ざったヤエの表情を見つめながら、  
まずは首輪をつける鬼頭。  
 
「んふぅ・・素敵だよヤエちゃん・・・それで、こっちのは・・  
 ここに付けてあげるよ・・・・」  
 
「んぁっ!?・・や・・・何を・・」  
 
鬼頭は、鉄の棒をヤエの足の間に通し、両足で挟みこませるように  
レオタードに押し付け、棒の端についているボタンを押した。  
すると、棒の両端から巻尺のように収納されていた  
細いワイヤーの頭が表れる。  
 
そして、まずヤエの正面側のワイヤーを  
腹部、胸の間の方へとゆっくり上に引き出し、首輪に結びつける。  
今度はヤエの背中側へまわり、レオタードに押し付けてある鉄の棒の  
もう片端からワイヤーを伸ばし、背中にそって上へ引き出し  
前側と同じように首輪に結びつける。  
こうして、ヤエはまたがるような形で  
鉄の棒を股に固定されてしまった。  
 
「はぁ・・・はぁ・・んっ・・・!・・くぅ・・」  
(あぁ・・いや・・・こんなの・・・)  
 
「ふふ・・これでいい・・さぁて、と。じゃあ狩りの時間だね。  
 ヤエちゃんにはどうやら自分が何なのか分かっていないみたいだね・・  
 僕に口応えするなんて・・・だから、僕がしつけついでにちょっとした  
 遊びに付き合ってあげる・・ふふ・・・・  
 もしも、逃げ切れたら自由になれるけど・・・  
 僕に捕まったら、その時は・・徹底的にヤエちゃんの身体に  
 玩具なりの態度っていうものを教えてあげる・・この、ご主人様がね・・・  
 さぁ、せいぜい頑張って逃げておくれよ・・ふふ・・・  
 少したったら捕まえにいくから・・・・・んふ・・・」  
 
鬼頭は壁のスイッチを制御すると、ゆっくりと鎖が下降していき、  
ヤエの足が床についたところで枷も外れる。  
しかし、ヤエの力が入らない体は、地面に崩れ落ちてしまう。  
 
「ん・・・・くぅ・・・」  
(逃げ・・なきゃ・・・早く・・」  
ヤエはどうにか立ち上がろうと、頭を持ち上げるが、  
ヤエの正面でピンと張られたワイヤーに引かれ、  
鉄の棒がより強くヤエのレオタードを押さえつけ、  
秘部を刺激していく。  
 
「あうっ・・!・ん・・・ぁぁ・・」  
(うくぅっ・・・無理に動くと棒が・・・もっと・・擦れちゃう・・・)  
 
「さぁ・・・どこにでもいっていいよ・・・・・ふふ・・」  
 
 
「ひっ・・ん・・・あ・・・・ぁぅっ・・」  
 
男の欲望の赴くままに弄ばれながらも、他になすすべがないヤエは  
敏感な刺激に耐えながら力なく立ち上がり、よろよろと入ってきた通路を歩いて行く。  
 
暗がりの向こうへヤエの姿が消えると、男はヤエが歩いて行った方向とは反対側の扉をあけると、  
今までと変わらない、左右に無数の分岐道があり、壁からの圧迫感のある通路が広がった。  
 
だが、ヤエの出て行った向こうの通路と違い、こちらは  
比較的明るい照明と、整地された平坦な床が印象的だ。  
鬼頭のコツコツという足音が周囲の壁に僅かに反響する。  
その規則正しいリズム音に鬼頭が発する音とは別に、  
もう一つ反響音が混ざり始めた。  
 
通路の向こうから近づいてくる男の足音・・・  
ヤエを連れて来た男だった。  
 
「・・これは若様。事は無事済みましたか・・?」  
鬼頭の姿を確認した男は、顔に似合わぬ敬語で挨拶する。  
 
「んー・・・今の所はいつも通り・・・・そう、いつもと同じさ・・・」  
 
「それはそれは・・なによりですね・・・ぐふふ・・」  
 
「・・・だが、不愉快でもあるんだ。」  
 
「は・・・・?」  
 
「僕はいつも通り、と言ったろう。それじゃ何の面白味もないんだ。うん。  
 ・・・いつもそうだ・・ゴミみたいなヤツはいつでも最初に反抗して、  
 しつけをしてやると、黙っていいなりになって、そのうち不味くなるから  
 ゴミ箱に放り込む。・・・・同じ事を何度も繰り返すような退屈は  
 僕には似合わない。・・・・僕を失望させることはこの世の最大の罪だよ。うん。」  
 
「ぐふふ・・なるほど、さすがは若様・・貴方様を失望させるような玩具などは  
 徹底的に壊してしまうのが一番の良策ですからね・・」  
 
「んー。まぁ、ね・・・その為にお前がいるわけだし。」  
 
「・・後処理でしたら全て承りますよ。若様・・・・・・」  
 
「・・んー・・・そう・・それだ・・前に処理に回した玩具にいたねぇ・・  
 ヤエちゃんと同じ衣装のヤツが・・」  
 
「はい・・・」   
 
「・・・・アレさ。もう『堕ちた』かい?」  
 
「はあ・・それが・・年端もいかぬ女のうえ、  
 羞恥にも他よりはるかに敏感なので、  
 すぐにでも堕ちると踏んでいたのですが・・・  
 未だにしつけの最中でございます。」  
 
「・・そうか・・・それでいい・・・そいつに  
 この前作っておいたのを使ってあげてよ・・・・」  
 
「し、しかし よろしいので?  
 2,3日も身体が持たぬかもしれませぬぞ?」  
 
「ああ、いいよ・・・・それまでには思い通りに使える  
 タイミングがくるんじゃないかなぁ・・んふふ・・・」  
 
「・・・御意のままに。では、施して参ります。」  
男は軽く一礼すると、数ある分かれ道の一つに吸い込まれるように歩いていく。  
 
鬼頭は再び歩き出し、やがて一つの部屋にはいった。  
無数のモニターが並ぶ暗い部屋。  
青白いモニターの光に、鬼頭の歪んだ邪悪な笑みが更に映える。  
 
「んふふ・・・いくら巣の中でもがいたって・・・・  
 蜘蛛の捕食本能を刺激するだけなのになぁ・・・」  
 
迷宮の至るところに設置された監視カメラによって、  
ヤエのいる場所は鬼頭に筒抜けだった。  
 
青白い光に照らされながら、鬼頭の眺める  
一つのモニターに映し出されている少女の姿。  
 
来た時と違い、草履もタイツも無くなった生足。  
かろうじてタイツに包まれているふくよかな胸。  
下着もなく、直接はかされている黒いレオタード。  
そして、そこに押し付けられ、ワイヤーで首輪に  
固定されている鉄の棒。  
 
「・・・そろそろいいかな・・んふふ・・・場所がまるわかりじゃあ  
 つまらないもんねぇ・・・大体の見当がついたら・・・  
 あとはせいぜい狩りをたのしまなくちゃ・・うん。」  
そう呟きながら男はヤエの座標を確認すると、ゴソゴソと  
何かを手に取り、再び薄暗い迷宮へとゆっくり歩いていった・・・  
 
巣の中で悶える蝶を嬲る為に。  
 
五章・終  
 
次章予告:確実に獲物に追いついていく鬼頭。再び囚われてしまうのは  
     もはや時間の問題となったヤエ。  
     ヤエは絶望の中に見出した咄嗟の機転を実行に移すが・・・  
 
第六章『ヤエタン不幸中の災害で候』(仮)に続く・・・  
 

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