三章  『虜』  
 
鬼頭亨・・・・  
 
幕府への膨大な出資を行っており、圧倒的な財力で  
経営範囲を今も広げている  
『鬼頭ふぁうんでーしょん』の社長、鬼頭 靜鵬の一人息子。  
全てを金と権力で処理しようとする父親の七光りに甘んじ、  
歪んだ環境で育った男である。次期総取締役の地位を約束されてはいるものの、  
26歳という年にも関わらずその自己中心的で卑劣を卑劣と  
認識することも出来ぬ子どものような性格をしている。  
 
ヤエの任務は、鬼頭ふぁうんでーしょんへの潜入、及び  
幕府の一部の人間達の癒着、及びその他の不正事業の調査であった。  
だが、この男・・・鬼頭亨の潜入捜査を担当していた同僚のくノ一、未耶との  
音信が途絶えていたのだ。  
 
未耶は、ヤエの一つ年下のくノ一だった。ヤエと同じく幕府直属の忍であり、  
美しい黒髪を左右で結わえた髪型が印象的な、幼さの残る少女である。  
4度目になる今回の二人共同の隠密捜査では、鬼頭 靜鵬の人的繋がりを  
調べる役目にあたっていたが、今回の騒動が起きた後、  
未耶からの連絡は一度もなかった・・・・  
 
(未耶も・・・未耶もこの男に・・!?まさか・・)  
 
ヤエはまだ完全に戻らない意識を奮い立たせるように、  
キッとの顔を見る。  
 
だが、鬼頭はヤエの目ではなく肢体をじっとりと見ながら、  
独特な口調でつぶやくように口を動かしている。  
 
「・・ふふ、やっぱり来るよね。来るよ。うん。  
 ヤエちゃんは水のなかも得意だからやっぱり手分けして来るなら  
 海だらけのここだよねぁ・・うん。  
 インフレ起きてればね。何かとお金いるもんねぇ・・・ふふ。・・・・だからって  
 タコみたいに手足売れないしなぁ・・売れない。うん。・・ぅふふ・・・売ってないだろ?・・  
 ・・ね?・・・でさ・・どうしてここの店来たのかな・・?・・・聞きたいなぁ・・うん。・・・  
 当ててほしい?・・んふふ・・・欲しいんだ・・・?・・ねぇ?  
 『わりと まともそうだった』とか?・・・まさかねぇ・・・うん。」  
 
「・・・!!」  
 
男の呟きを聞き、思わず身を強張らせるヤエ。  
(そんな・・最初から・・・!?・・そんな・・・こと・・)  
 
驚きと微かな怯えが混じったような、宙吊りになったくノ一の  
顔を見て、頬を歪ませる鬼頭。  
まるで人間ではなく物を見るかのような  
冷たく、歪んだ笑み。  
 
「・・・『すきやき』としか  
 書いてないしねぇ・・あの看板・・・  
中にいる奴も普通じゃなかったけど・・んふふぅ・・  
ドジなくノ一にはあれで充分かな・・ってさ。ふふ・・・・」  
 
鬼頭の言葉に、ギュッと心が締め付けられ、  
心の内から後悔と自責の念が滲みだしてくる。  
 
「・・んー・でもマシかな。うん。・・この前見つけたのと違って  
 今までのやり方じゃヤエちゃんを捕まえる機会が無かったわけだし・・・ね?うん。」  
 
「!・・・この前・・!?・・まさか!?」  
 
「あぁ・・うん。ヤエちゃんと群れてたんだっけ。この前のは。   
 2,3日で味しなくなっちゃったから忘れてた・・んふぅ・・・  
 もう少し美味しくなるかと思ったんだけどなぁ・・」  
 
「・・・・!!・・未耶なの!?未耶をどうしたの!」  
 
「ふふ・・玩具の癖に僕とパパの会社に紛れ込んでくるんだから・・  
 面倒だからここの下の方の玩具箱に入れてあるよ。  
 ・・・もう一個の玩具も、今やっと見つけたしね。・・・・  
 ・・ふふぅ、幕府の馬鹿組の注意も反れたし、ヤエちゃんも  
 手に入ったわけだから、この騒動の首謀者も少しは  
 褒めてあげないと・・・・あのまま君が好き勝手してたら、  
 どうなってたか分かったもんじゃない。  
 ・・・やっぱり世の中っていうのは、僕の為にあるんだ。  
 この星の連中は金に汚いから金の価値を下げてやれば  
 好きなように操れるし・・・君を連れて来た男だって  
 なかなか趣味の良い飼育官になってるよ・・・んふ・・・」  
   
(そ・・そんな・・そんなのって・・・)  
鬼頭の言葉に、言葉を返すこともできないヤエ。  
 
 
「お話が長くなっちゃったね、ヤエちゃん。  
 ・・まぁ少なくとも、ヤエちゃんは今から僕の物になるわけだよ。ふふ・・   
 ヤエちゃんみたいな子を飼い慣らしてあげる為にわざわざここを用意したんだ・・」  
 
(・・!!・・・な、何を言っているの・・!?)  
 
 
男はゆっくりと、部屋の中に積まれている『何か』に近づき、  
覆い被さっている布をとりはらう。  
 
「・・・・・!?」  
 
危うくヤエはそれを見て再び気が遠のきかけた。  
 
部屋の方々に置いてあったのは  
鞭から拘束椅子に至るまで、  
人間への責めに使われる物であった。  
 
それらの用途を、ヤエ自身が具体的に知っていたわけではない。  
だが、自分がこれから何をされるのかを漠然と予感させるには  
充分だった。  
 
「ん・・くぅっ・・・!」  
 
無駄とは分かっていながらも、体をゆすって  
もがく。  
   
「ふふふふ・・・意識はもう戻ったね・・  
 ちなみに体の痺れは当分とれないから鎖がなくても  
 それほど困りはしないけど・・その格好の方が素敵だよ。ヤエちゃん・・」  
 
 
自分の世界に浸りきっている・・・そう、まるで自分の絵を自己評価するかのような  
男の様子に、怖れにも似た嫌悪感を覚えるヤエ。  
(なんとかしなきゃ・・!・・このままじゃ・・私・・・)  
 
「・・・うん。素敵だけど・・なんかね・・うん。それ、いらないかな。  
 無い方がいい・・・・」  
 
男は脈絡も無く呟くと、部屋の右端に並んでいる道具箱の中から  
音も無くナイフを取り出し、鼻歌を歌いながらゆっくりと  
宙吊りのヤエに近づく。  
 
「・・!?・・い、いや・・・・」  
 
ヤエは必死で抵抗するが、今は体に力を込めることも出来ない少女だ。  
そんなヤエの様子には構うことなく、男はヤエの服の中にそっとナイフを  
持った手を差込み、服の中を通して背中へ回す。  
 
そして、ヤエの身体を包むタイツを背中から、横を通って胸の下へと丁寧に  
ナイフでゆっくり切り裂いていく。  
同じように、下半身を中心に様々な場所に切れ込みを入れたあと、  
鬼頭の手がタイツを掴んだ。  
 
「んふふ・・・まず、これから脱ごうか・・・」  
そう言うと、両手を使って気の向くままに  
タイツを剥ぎ取っていく。  
 
「きゃあっ!や、やめて!いやぁ!」  
 
・・・蝶と蜘蛛の奇しき邂逅。  
羽根を絡めとられた蝶を迎えるは、貪る者の欲望のみ。  
 
三章・終  
 
第四章『TV版ヤエタンには裏切られまして候』(仮)に続く・・  
 
 

テレワークならECナビ Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!
無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 海外旅行保険が無料! 海外ホテル