どこまで覚えている、と言うよりも、どこまでが夢でどこまでが現実なのかが分からない。
いつの間にか蒲団に入って寝入っていた。
目が覚めて、おずおずと開いた茶の間で朝食を摂っていた弟はいつもと同じ笑顔で朝の挨拶
をしてくれた。
弟とのことは多分夢だったのだろうと思いながら洗面所で顔を洗い、片手間に洗濯機をまわす。
歯を磨きながらぐるぐると回転する洗濯物をぼうっと眺めていた。
――その中に。
昨日穿いていたショーツがない事に気付いたが、ぼうっと霞んだまま緩慢に痺れているような
思考ではどうでもいいように思える。
お気に入りの白いショーツがあの暗い路地裏に落ちていたとしても、
ストーカーのごりらが懐に仕舞って持って帰っていたとしても――もしかしたら。
昨日は朝からショーツを穿き忘れていたのかもしれなくても。
そんな事はどうでもよくて。
顔を洗ったり歯を磨いたりしながらも常に妙の胸に迫るのは、いまだ妙の身体の奥で燻り
続けている、猥らな欲求だ。
足の付根を襲う甘い痺れは燦々と降注ぐ太陽の下でも容赦なく妙を襲い、気がつくと、
大江戸マートで若者がこそこそと立ち読みしている卑猥な雑誌を横目で追っている。
高く持ち上げた尻の割れ目に赤いショーツを食い込ませた女の子が誘うように妙を見ている。
こちらに背を向けてはいるものの、豊満な胸が脇の下から垣間見えるその女の子に、いつしか
自分を重ねている。
黒くて大きな男の手が、白い尻を鷲掴んで赤いショーツを乱暴に剥ぐのを思い描いている。
赤いショーツは既に滴るほどに濡れている。
男は迷わず女の陰裂を指で撫で擦り、やがて白い内腿を粘ついた液体が伝い落ちるのだ――
妄想は直ぐに現実のものとなった。
スナックスマイルに出勤した妙の尻を、酒が興じた客の一人が揉んだのだ。
それは、店中がしん、と静まり返るほどの見事な揉みっぷりだった。
新しいグラスを取りに立ち上がった妙の尻を、頭の天辺が禿げ上がった客が両手でむんずと
掴んで揉みしだいたのだ。
厭らしい笑みを浮かべながら掌を動かす客に、この後の展開が安易に予想できる誰もが
同情した――が。
妙は「あ」という驚きの声と共に鼻から抜けるような甘いと息をもらしただけで、その男の
手を振り解こうとはしなかった。
逆に、困ったように眉根を寄せたものの、男の手から尻を逃がそうとはしない。
何が起きたのか分からずに、男の手が奔放に妙の尻を揉んでいるのを店の誰もが
黙って見守っている。
やがて、揉まれ続ける妙の尻の辺りの着物が崩れてくっきりと尻を左右に分ける筋が見え
始めた時、ごくり、と生唾を飲む客を尻目に、何かに弾かれるようにしてそれまで黙って
事の成り行きを見守っていた阿音が立ち上がると、妙の腕を引くと控え室へと走っていった。
「ちょっと、どうかしてんじゃないのっ」
控え室のドアに鍵をかけ、妙を奥のイスへと突き飛ばして阿音が声をあげる。
「なに発情しちゃってんのよ、可笑しいんじゃない」
「恥ずかしく無いのっ」と叱り飛ばす阿音に、妙はやっと正気を取り戻した様子だった。
はっとしたように頬を赤らめると、そのまま目を伏せて俯いてしまう。
控え室のドアの鍵を閉めたものの、他に誰か追ってこないかどうかを阿音は耳を澄まして確認
した後、ふーっと肩で溜め息をついて妙の正面へと回り込んだ。
「――男を知った、わけか」
言いながら阿音が、イスに座る妙の腰の辺りを意味深に見下ろす。
「余程良かったみたいね――と、言いたいところだけど」
言って、阿音は妙の顎を掴むと俯いた顔を上向かせる。
「どうやら中途半端なところまでしかしてもらってないみたいね」
言われて、妙の顔が更に赤く染まる。
ど、どうしてそれを、と妙が口に出す前に阿音はふん、と勝ち誇ったように鼻で笑うと、
「これでも巫女の端くれだからさ、少しは分かるのよ?」
と、告げて妙の顎を付き返すように離すと己のロッカーに歩み寄る。
「わ、わたし、どうしたらいいのか……」
「分からないのよ」と、珍しく弱気な妙を、ロッカーを開いた阿音が勿体つけるように
ゆっくりと振り返る。
「分かってるって。だからココにコレを取りに来たんじゃない」
一言一言を噛み締めるように言った阿音がロッカーから何かを取り出して扉を閉めた。
にやり、と笑った阿音の手に、緑色をした奇妙な棒状のものが握られていた。
「随分と前だけどパパに貰ったの、俺が店に居る間はコレを入れておけって言われて。
だから松平のパパが店に来る時にはいつでも入れられる様にってロッカーに仕舞って
あるのよ」
言いながら歩み寄る阿音が、手にした緑色の物体の根元をちらり、と見下ろす。
全身にいぼの様な突起を纏った棒状の物体の根元には赤いスイッチらしきものが見て取れる。
阿音がそのスイッチを押すと、昨晩妙の口の中に押し込められた長谷川の陰茎と似た形のそれは
低いモーター音を響かせて身体を奇妙に捻り始めた。
「大丈夫、使い終わった後はちゃんと洗ってるから」
言って、うっとりするような目で緑色の陰茎を見詰める阿音が妙の目の前で立ち止まる。
「中途半端に男を知ったりするからダメなのよ」
阿音は妙の目の前に座り込むと、着物の裾を割ってきちんと揃えられた足をさらす。
控え室は暖かかったが、妙の背筋を冷たいものが流れていった。
「これで一気に貫けば疼きも静まるはずよ」
阿音の手が、ぴったりと寄り添う妙の膝と膝の間に入り込む。
その手は冷たかったが、妙の身体の奥の熱が妙を冷えさせる事は無い。
思考はとうに麻痺している。
導かれるようにして妙の膝は離れ、低いモーター音を響かせながら奇妙に身体を捻る
玩具の陰茎を足の間に招き入れる。
ゴムでキツク縛られているような括れの先が、妙の白い内腿を擽る。
少しずつ、少しずつ奥へ奥へと進むそれが妙の薄水色のショーツに触れたとき、妙は膝を閉じて
阿音の肩を突き飛ばしていた。
「ちょっと、なにするのよっ」
床に尻餅をついた阿音が声をあげる。
玩具の陰茎は阿音の手から離れて床に投げ出された。
「まぁあれか、恥ずかしい?まだ本当に男を知らないわけだし」
「なら自分で頑張ってみる?」と、続ける阿音が玩具の陰茎を拾い上げて妙へと差し出す。
「違うところに入れちゃうと大変だから見ててあげようか」と、言いながら立ち上がった阿音が、
そのまま妙の横のイスに腰を下ろす。
「さ、どうぞ。まぁ、人間の男がいいに決まってるけどここには居ないから。手っ取り早く
済ましちゃいなよ。出勤からずっと見てたけど今日一日変だったじゃない、このままじゃ
仕事にならないでしょ?」
言って手渡された陰茎が小刻みに震えている。
身体を捻りながら小さく振動するソレを手に、妙はごくり、と生唾を飲み込んだがいつまでも
玩具の陰茎を見詰めるばかりでどうする事も出来ない。
身体の奥は欲しているようだったが、それをどうしたらいいのか分からなかった。
「だからワタシがやってあげようと思ったのに。自分じゃなかなか出来ないでしょ?」
「まして初めてなわけだし」と、続ける阿音がイスから立ち上がろうとしたのを、妙が正面に
回りこんで制する。
「そ、それもそうなんだけど……その、こんなの入れて痛く無いの?」
きっと夢だと信じているが、妙のソコに入ったのは弟の細い指一本だけだった。
痛くはなかったが、女のように繊細な弟の指が何本束になったかしれない玩具の陰茎を
同じ場所に入れたら、物凄く痛いような気がしていた。
「痛いなんて最初だけよ、それにもうあんたは充分大人の身体なんだし。痛いなんてのは
濡れてもいない子供の話よ」
呆れたように言う阿音が、「さ、どうするの、一人のほうがいい?」と言いながら肩を竦める。
「ちょっと尻を撫でられただけで感じるくらいなんだから、痛くないわよ、きっと」と、
続ける阿音が控え室を出ようとイスから立ち上がるのを、妙が再び制した。
「あ、阿音ちゃんで試させてっ」
言うが早いか、イスに座った阿音の着物の裾を割った妙が玩具の陰茎を一気に足と足との間に
突き立てた。
天井の裸電球が照らす阿音の白い足の付根を、真っ赤なショーツが覆っている。
昼間、大江戸マートで見た雑誌が脳裏をちらつく。
尻に食い込んでいた赤いショーツを引き剥がす男の手と、尻を揉まれている女。
どちらにも自分を重ねた妙は、考えるよりも早く慌ててイスから立ち上がろうとした
阿音の足の間に肩を滑り込ませて片腕で身動きが取れないように腰を抱きこんだ。
妙の目の前に、玩具の陰茎を宛がわれた阿音の赤いショーツがあった。
緑色の陰茎が身体を捻らすたびに、赤いショーツが皺を作ってその脇から黒い毛を覗かせている。
「……はっ……ああ……ん、じょ、冗談は止めなさい」
必死に妙の肩を押し返そうとしながら、阿音が言うが、赤いショーツは徐々に濡れて
赤を濃くしていく。
「ワタシだって自分のココにこうしたいんだけど、でも怖いんだもの、だから阿音ちゃんで
試させて」
言いながら妙は、目の前で阿音にしている事が自分のことのような錯覚を覚える。
玩具の陰茎を強く押し付けると、赤いショーツが黒々とした陰毛と共に中身を曝け出す。
その隙間から大袈裟に回されている頭を滑り込ませると、阿音は一際大きな声を上げて身体を
反らした。
「ああっ……!!」
阿音が声を上げるのと同時に、妙も声を漏らしていた。
緑色の先端を赤いショーツの下に潜り込ませて押し付けているだけなのに、阿音の息は
どんどん荒くなっていく。
妙の視線の先で、赤いショーツが捲れて陰裂に食い込んでいる。
食い込んだ赤いショーツもろとも、妙は玩具の陰茎を強く阿音の陰裂に押し付けた。
「……も、もう分かったでしょ、それくらいで……ああっ」
息も絶え絶えに言葉を紡ぐ阿音が、言って妙を見据える。
玩具の陰茎を握った妙の手に手を添えると、陰裂に頭を差し込んだ陰茎を抜き取り、
肩で息を整える。
いつの間にか同様に息の上がっていた妙が、同じく息を整える。
からからに乾いた喉に唾を流し込むと、添えられた阿音の手を振り解いてぬるりと濡れた
陰茎の頭部をじっと見詰める。
そうしてそのまま、中身を中途半端に晒して陰裂に食い込んだままの、阿音の赤いショーツを
見下ろして口を開いた。
「――阿音ちゃんも困るんじゃない、こんな中途半端のままじゃ」
告げて、濡れて陰裂に食い込んだ赤いショーツに指をかけた妙は、
そのままショーツを引き剥がして玩具の陰茎をその中へ差し込む。
「どこ、もっと開いて教えてよ、教えないと闇雲に突っ込むわよ」
言いながら妙が、手にした陰茎の先で濡れそぼった阿音の陰裂を何度も擦りあげる。
「ここ、それともここ?」と、言いながら妙が陰茎の先をぐいぐいと押し付けると、はぁはぁと
息を漏らす阿音が観念したかのように徐々に足を開いていく。
「どこ、指で示して教えて」
黒い毛の間から桃色の肉が覗いている。
ぱっくりと開いた桃色の肉壁を陰茎で擦っていた妙が、赤く膨れ上がった固い芽を見つける。
奇妙な動きをしながら小さく振動する陰茎の先をその芽に擦り付けると、一際高い声を上げた
阿音と共に達してしまったような気がした。
「……こ、ここです……」
イスから半分ずり落ちている阿音が、大きく開いた足の間を指で指し示す。
桃色の襞は奥へ奥へと続いていたが、中でも一際だらしなく濡れた部分があった。
「やーね、オシッコでも漏らしたみたいだわ、いつもこんなにしてるの、阿音ちゃん?」
咎めるように言い放つ妙の目が冷たく阿音の顔に突き刺さる。
「……ご、ごめんなさ……はぁああっ!」
今にも泣き出しそうに妙を見詰め返す阿音が小声で言い終わらないうちに、妙は手にした陰茎を
一気に目指した場所へと突き立てる。
どうするものかもわからなかったが、力任せに押し込むと玩具の陰茎は桃色の肉の中に
どこまでも深く潜っていった。
……続きます