闇も濃くなってきた頃、また子は揺れる船内の廊下を歩いていた。時々ぎしぎしと
古い床板の音がまた子の耳を掠める。
不気味な隙間風がまた子の髪をその頬に撫で付け、汗ばんだ額にしっとりと垂れた。
ぎ……と、重い鉄の扉を開ける。
灯りの灯っていない部屋には申し訳程度に作られた小さな窓からひっそりと月明かりが
漏れる。その光が、部屋に佇んだ人物の影を照らす。
その濡れたような黒髪をはらうこともなく、男は扉の前に佇むまた子を見据えた。
「晋助様……」
静かな声でまた子は高杉の名を呼んだ。それに高杉は紅色の瞳を細めて口元を歪めた。
「来い」
短く言った高杉に引き寄せられるようにまた子は一歩、踏み出した。
安いベッドに腰掛けた高杉は、歩みの遅いまた子に焦れたのか、また子の腕を取って
自分の元へ引き寄せた。
「……!」
また子は慌ててその手を振り払おうとする。条件反射だった。けれどその白く細い女の腕は
がっちりと高杉に掴まれている。
その手に強く力を込められ、また子はその表情を歪めた。
「逃げるんじゃねぇぞ。俺についてくるんだろう?」
「……逃げるわけないじゃないッスか。私は晋助様にずっとついていくって決めたッスから」
「いい覚悟だ」
ククク、と喉で笑ってまた子の顎を掴み、そのピーチピンクの唇を啄ばむ。つぅ、と舌で
下唇をなぞり、噛み付くように口付ける。唇を吸い上げるように舌を絡め、歯列をなぞり、
互いの唾液を吸いあう。わざと音を立てて口付けると、また子は恥じらい、その顔を
赤く染めた。
高杉は口付けながらまた子の胸をまさぐった。着物の上から尖った胸の突起を探り当て、
強く摘んで引っ張った。
「んんっ……ふぅ……」
痺れるような痛みにまた子は、びくびくと身体を震わせた。
着物の衣擦れの音が、また子の羞恥心をより煽った。
くぐもった声を上げた際に、どちらともつかない唾液がまた子の顎を伝う。それでも高杉は
口付けをやめることなく、胸への愛撫を続ける。息苦しさと胸への快感に耐えるように
また子は高杉の肩を強く掴んだ。
「爪を立てる程気持ち良いか?」
「は……っあぅ……んんっ」
高杉の問いに答える暇も無くまた子は喘いだ。強く胸を揉みしだかれて、痛みすら感じると
いうのに、それが快感へと変わっていく。
唇を離した高杉は仰け反ったまた子の白く浮き上がった首筋に口付ける。歯を立てて
噛み付くと赤い鬱血の痕が痛々しく残った。
「……っは、あっあぁ……っ晋助様……!」
着物の前を肌蹴させて鎖骨に花弁を散らす高杉。そんな高杉の名を息を切らしながら呼ぶ。
早くも快楽に溺れるまた子の足の間に手を差し入れた高杉は、下着の上からまた子の
秘所を擦り上げる。
「ひぁ……っし、晋助様……ダメッス……! あっやっ」
「誰に向かってそんな口聞いてんだァ? この淫乱が」
高杉に擦られる度に下着は湿り気を帯び、また子が手淫に反応しているのがわかる。
膝を跨いだまた子を、自分の胸に預けるようにして高杉はベッドに倒れこんだ。そして上に
乗ったまた子に対し、下着を脱ぐように命じる。また子はそれに逆らうことなく、高杉の前で
下着を脱いだ。
「ん……」
高杉に見られているということを意識してまた子は目を閉じる。ゆっくりと下着を足から
引き抜き、いつものように高杉の顔の上にその腰を下ろした。
また子の秘所をまじまじと見つめた高杉はやがて、襞を指で掻き分けて膣口を曝け出した。綺麗な
桃色をしたそこはひくつき、愛液をしとどに溢れ出している。
「ほう……」
高杉が言葉を紡ぐ度に、吐息がまた子の秘所を刺激する。それにびくびくと身体を震わせる
また子に追い討ちをかけるかの如く、その秘所を舐め上げた。
「あんっや……っは、あ……っ」
膣口に舌を挿入し、内部を嬲る。歯でぷっくりと膨らんだクリトリスを愛撫し、攻め立てる。
高杉の容赦ない愛撫はまた子を翻弄する。また子も、その快感を追おうと自ら腰を揺らし
始めた。
「自分から腰をふるたァ、とんだ淫乱だなァ? ククク」
「そ……んなこと……言わないでくださ……あぁっふぁ……」
また子の言葉は最後まで言葉にならなかった。高杉が再び舌を膣内に差し入れてきたからだった。
襞を舐め擦り、愛液を吸い上げる。強烈な快感に思わずまた子は意識を飛ばしてしまいそうに
なる。しかし、その寸でのところで高杉は舌を抜き去り、また子を自身の下肢へと移動させる。
「これが欲しいか?」
そう言って差し出したのは高杉の雄雄しく反りたった性器。
どくどくと大きく脈打つそれは今にも破裂してしまいそうなくらいに張り詰めている。
それを見たまた子がごくりと息を呑む。しかし、自身を蝕む淫楽に耐え切れずに掠れた声で
つぶやく。
「――欲しいッス……」
その言葉に高杉は歪んだ笑みを浮かべてまた子の腰を掴み、一気にそれで貫いた。
解されたまた子の膣は、すんなりとその男根を受け入れて離さない。襞を抉られるように
内壁を引っかく性器は、また子にとって快感以外のなにものでも無かった。
「ひあああぁっあぁ……っはぁ、あっん……はっ」
高杉の上で淫らに喘ぎ乱れるその姿は、今は有能な部下ではなく、一人の女だった。
自ら腰を振り、男根をくわえ込んで甘い声を上げるまた子に高杉は意地の悪い笑みを浮かべる。
そしてまた子の着物をまさぐり、歳の割には豊かなその胸を強く掴んで揉み上げた。
「あ……っ晋助様ぁ……! あん……や、あっああぁ――……っ」
高杉はまた子の中に精を吐き出し、それと同時にまた子も絶頂に達した。
ずるずると萎えた性器を引き抜き、また子は疲れ果てた身体を起こす。性交に乱れた着物を
整えて、ベッドに横たわっている高杉の後始末をする。
それがまた子の仕事なのだ。
己の愛液と精液にまみれた性器を舐めて綺麗に処理したあと、そっと部屋を出る。
また子は高杉を慕っている。だから高杉の言うことは絶対だ。例え自分がただの玩具でも
高杉に抱かれることを望んでいる。彼女は盲目的に高杉を愛しているのだ。
だからまた子は毎晩高杉に呼ばれる度、こうして身体を預ける。
「おやすみなさい、晋助様……」
窓から差し込む月明かりを見つめて、また子は呟いた。
END