「っしゃあー!!」  
「ウソ!!」  
万事屋に男の快哉と女の悲鳴が響く。  
「やっぱな、今の俺絶対勝負事の神が降りてきてるわマジで」  
ソファの上に立ち上がってガッツポーズを決める銀時を机に突っ伏しながら恨めしげに見上げる妙。  
その脇には僅差で白の数が勝ったオセロがあった。  
 
事の起こりは1時間ほど前に遡る。  
新八は寺門通親衛隊の会合、神楽は定春と共にかぶき町内のブランコの見回りに出掛けており、  
久々に一人きりになった銀時が暇を持て余したあげくに一人オセロに興じていたところに  
いつものように可哀相な卵を携えて妙が現れた。  
あらオセロなんて久しぶりに見たわ、私けっこう強いのよ、という妙の発言を受けて銀時が、  
俺は昔オセロ王子の名を欲しいままにしてたぜ、などと妄言を吐いたのをきっかけに  
オセロ勝負をするという、仮にも恋仲にある男女として全く色気のない展開になり、  
何か罰ゲームがないと勝負しても面白くないだろうと銀時が言い出し、  
望むところよと妙が受けて立ったためこのような状況になっているわけだ。  
ちなみに罰ゲームは最もポピュラーかつ最もリスクの高い『負けた方が勝った方の言うことを何でも一つきく』。  
拒否権はもちろんない。「さーて何してもらおっかなぁ」  
「ああもう、ホント悔しいわ…」  
「まぁゆっくり考えさしてもらうわ。罰ゲームは明日ってことで」  
そう言った銀時の笑みに、妙は眉間の皺を深くした。  
 
翌日、改めて万事屋にやってきた妙はソファに座って銀時と向かい合った。  
銀時のことだからきっと死ぬほどパフェが食べたいとかそんなものだろう。  
負けたのはこちらなのだから、今日は銀時がどれだけ糖分を摂取しようと糖尿を悪化させようと奢るつもりでいる。  
だがその前に―――  
「銀さん、一つ訊いてもいいかしら」  
「あ?」  
「その懐からはみ出してるものはなぁに?」  
「あ?ああコレか。え、ひょっとして知らねぇ?これはまぁいわゆる大人のオモ」  
「そんなのは見ればわかります、それを今持ち出す意図を尋ねてるの」  
皆まで言わせず言葉を遮った妙の右手は、銀時の左耳を渾身の力で捻り上げている。  
「イッデデデデちぎれる、耳たぶちぎれちゃうって!!」  
「ちぎるつもりで引っ張ったもの」  
「マジかよ、どんだけバイオレンスなんだお前」  
赤くなった耳をさすりながら半分ほど見えていたバイブレーターを懐にしまい直す。  
バイブと共に長方形の布、紐(普段はジャンプを縛るときに使用)がしまわれているのは、まだ妙には秘密だ。  
「あんまり聞きたくないけど一応聞くわ。ソレをどうするつもりなのかしら」  
「どうもこうも罰ゲームに使うに決まってんだろーよ。じゃあお妙にきいてもらう命令いくぞー。『今日は銀サンのやりたいようにエッチさせなさい』。OK?」  
「OKなワケあるかァアこのエロ天パ侍!!!」  
妙の体重の乗った右ストレートが顔面に炸裂し、部屋の隅まで吹っ飛んでいく銀時はいっそ面白いほどである。  
 
「げふ…っ、ちょ、コレ…いくらなんでもひどくねぇ?頭から血ィ出ちゃってんじゃん俺」  
「銀さんが変なこと言うからでしょう!」  
「変じゃねーよ、むしろ男の素直な願望がチラ見えっつーか」  
「モロ見えの間違いね」  
「そうとも言うな。まぁとにかくそーゆーワケなんでよろしく」  
「何が『そーゆーワケ』ですか!聞いてないわよそんな命令!」  
「さっき言っただろーがァ!!」  
お互いに引かず、ぎゃあぎゃあとしばし揉めたところで銀時がキレた。  
バァン!と机を叩く。  
「だぁあもう、往生際が悪いぞテメー!武士に二言は無しだろ!」  
妙はうっと言葉に詰まった。  
別に武士になった覚えはないが、一度口にしたことを翻すのはポリシーに反する。  
しかし、だってまさかこんな展開になるなんて。  
今日は甘味処に行くつもりだったのだ。  
断腸の思いでへそくりだって持ってきたのに。  
しかし。  
……………。  
暫くの逡巡の後、妙は溜息と共に言葉を吐き出した。  
「……仕方ないわね…今回だけよ」  
「わかってるって」  
「絶対ですからね。……あと、一つだけお願い」  
「ん?」  
「や、優しくしてね?」  
思いがけない可愛らしい台詞に銀時が思わず吹き出すと、妙にじろりと睨まれた。  
慌てて笑いを引っ込めて、額にちゅっと音を立てて口づける。  
「任しとけ」  
 
寝室へ移動し、相変わらずの万年床に腰を下ろすと、じゃーさっそく、と銀時が行動に出た。  
「お妙、ちょっと目ぇ暝ってろ」  
「こう?」  
訝しく思いながらも目を閉じる。  
次の瞬間、下ろした瞼を布で覆われる感触がして、慌てて目を開けてみても既に視界は奪われている。  
「ちょ、何してるのよ」  
「えー?雰囲気作り、みたいな?ついでに手をこう…うし、出来上がり」  
あれよあれよという間に後ろ手に両手首をまとめられ、痛くない程度に、しかし簡単には解けないように縛られてしまった。  
先程までの会話で、今日はイレギュラーなことをされそうだ、と覚悟はしていたが、この状況は想定外である。  
何度か情事を重ねてきたが、そのいずれも銀時は妙の意思を無視したり嫌がることを強要したことはなかった。  
なのに今日はどうしたことだろう。  
視覚を奪われ両手を拘束されてしまっては、ろくに身動きもとれない。  
つまり、銀時が好き勝手に妙を蹂躙できる条件が整った、ということだ。  
「銀さん!」  
抗議の響きを込めて名を呼べば、  
「今日は言うこと聞くお約束だろぉ?銀サンを殴ったりつねったりする手には大人しくしといてもらうぜ」  
(優しくするって言ったくせに!)  
見えないはずなのに、ニタァと笑った銀時の顔が、確かに妙には見えた気がした。  
 
ちゅ、と唇に柔らかい感触が降りてくる。  
キスは妙の好きな行為の一つだ。  
銀時は軽く唇を合わせた後は、下唇を甘噛みしたり戯れのように舐めたりと  
ひとしきり妙を焦らしてから、ようやく深く舌を差し入れた。  
「ん…っふ、ぅ」  
求めてくる小さな舌を搦め捕り吸い上げると、妙の唇の隙間から吐息と共に小さな喘ぎが漏れる。  
退こうとすると追い掛けてくる赤い舌と唇が、なんとも健気で淫靡だと銀時は思った。  
満足のいくまで妙の口内を味わって唇を離すと、溢れた唾液が二人の間を繋ぎ、次の瞬間ふつりと切れた。  
妙の唇はうすく開き、濡れた吐息が零れている。布に覆われた目元はきっと薄紅色に上気していることだろう。  
その様子を思い描きながら乱れた前髪をかき上げてやった銀時の視界を、キラリと光るものが掠めた。妙のピアスだ。  
いつもは髪の毛の陰になって気付きにくいが、赤い小さな石がささやかに存在を主張している。  
赤い石ごと、耳たぶに噛み付いた。  
「ひゃんっ」  
予想していなかった刺激に、思わず声をあげる。  
どうやら銀時は意図的にいつもの手順を踏まずにいる。  
いつ、どこに、何をされるか予想が出来ない。  
まるで知らない人間のようで、訳もわからず不安になる。  
一方銀時は、むらむらと沸き上がってくる欲求と戦っていた。  
(あーもー、すっげーいじめてぇ)  
 
妙は自覚していないだろうが、拘束・目隠しといつになく一方的な状況のせいか  
ほんの少し怯えの色が滲んでいる姿は、銀時の隠れたサディズムを刺激するには充分だった。  
(坂田のSはサドのSだしなぁ)  
あーでも志村もSじゃねーかダメじゃん、などとどうでもいい事を考えつつ、  
わざと荒い手つきで、性急に妙の肌を暴いていく。  
「やぁ…っ」  
ぐい、と着物の袷が左右に広げられる。  
あらわになった鎖骨や肩にわざとらしく音を立てて口づけの後を残しながら、右手で裾を割った。  
吸い付くような肌を滑って奥まで潜り込んだ指先は、たやすく妙の中心にたどり着く。  
下着は既にしっとりと湿り気を帯び、布越しでも妙の高ぶりがわかる。  
「なんだかんだ言ってノリノリじゃん」  
「ゃあぁっ!」  
言葉で煽りながら、ぎゅ、と強めに刺激してやると甲高い嬌声と共に、びくん!と妙の身体が跳ねた。  
だが銀時はすぐに手を退いた。ここを責め立てるのは後だ。  
かわりに、きっちりと締められていた帯を解き緩める。  
着崩れた着物を肩から引き下ろすようにすると、小さくはあるが形の良い乳房がまろび出た。  
本人の主張の強さとは裏腹に、至って消極的な乳房を包み込むように掌に収める。  
円を描くように揉んでみたり、気まぐれに桃色の先端を捻ったりすると、面白いように妙の身体が震える。  
胸を弄びながら、気まぐれにもう一度耳を食んでみた。  
「あっ!ん…ぅ」  
「耳、感じるんだ?」  
「ぁ…」  
耳元に唇を寄せたまま笑いを含んで囁かれる、それだけの事で何かが背筋を走り抜ける感覚がある。  
何も見えないことが、妙の感覚を鋭敏にしていた。  
銀時の吐息、声、指、舌、全てがいつもよりも鮮烈な刺激となる。  
そして何よりも、抵抗を封じられて一方的に蹂躙されている現状に、今まで感じたことのない興奮を覚えはじめていた。  
「お妙ってSかと思いきや実はM?なんかいつもより反応イイ気がすんだけど」  
「そんなこと……っや、あんっ!」  
 
妙を責める手を一旦休めて、銀時はまじまじとその姿を眺める。  
その視線を感じて妙は小さく身震いした。  
帯は半分以上解かれ、小袖と襦袢もまとめて左右に割り開かれ、殆ど身体を隠す役には立っていない。  
はっきり言って邪魔以外の何物でもないのだが、銀時は着物を剥ぐことはしなかった。  
乱れた着物が妙の動きをより束縛する効果を果たしていたのと、何より―――  
「全部脱ぐよりかえってそそるかもなぁ。なんつーんだっけコレ、着エロ?」  
「〜〜っ、口に出さないでよ!」  
ぶつぶつと感想を口にする銀時に、ますます羞恥心が煽られる。  
今、自分はどんないやらしい恰好になっているのだろう。  
両手を封じられ自分からは動くことも出来ない、自分は相手が見えないのに相手からは見放題。  
(まな板の上の鯉ってこういう状況のことじゃないかしら)  
別の言い方をするなら、肉食獣と獲物だ。それくらいの力の差が、今の二人にはある。  
捕食者たる銀時はこの状況に甚だ満足していた。  
虐めたいモードがONになっていることは自覚しているが、止める気はさらさらない。  
というか、むしろ普段虐げられているのは自分だと、銀時は声を大にして言いたい。  
ほんの可愛い意趣返しだ、これくらいなら許されてしかるべきだと勝手に納得することにした。  
茜色の着物と白い肢体のコントラストは目に鮮やかで、銀時の欲に火をつける。  
引き寄せられるように滑らかなふくらはぎに唇を寄せると、妙の身体がぴくりと震えた。  
そのまま時々軽く吸い上げながらゆっくりと舐め上げていくと、切なげな吐息が桜色の唇から零れ落ちる。  
そのひそやかな反応が、銀時の加虐心を加速させる。  
白い腿の内側を噛み付く勢いで吸い上げると、鬱血の花びらが散る。  
「ん…っ」  
小さな喘ぎに気を良くしながら、下着の脇から指を差し入れる。  
「やっぱいつもより感じてんじゃん」  
すでにそこはぐっしょりと濡れそぼって、銀時の指に反応して新たな蜜が吐き出される。  
「や…」  
「ヤじゃないだろコレは。『身体は正直だぜ』とか定番のセリフ言っとくべきか?」  
喋りながら、するりと器用に下着を抜き取ってしまう。  
触れればこれ以上ないほど潤っているのに、淡い翳りに隠された秘所は楚々とした様子さえ見せている。  
(そんなもんじゃないだろ、全部見せろ)  
思い、妙の肩を引いて体勢を崩した。  
「ちょ…!いやっ」  
裾を大きく捲りあげ、腰だけ高く上げた形で俯せにさせると、  
さすがにその何もかもをさらけ出す姿勢には抵抗があったらしく、身体をよじって抗った。  
軽目に、しかしある程度の強さでその白い尻を打擲してやると、「ひっ」と小さく息を飲んで大人しくなる。  
背中で一つに纏められた手、その指先がカタカタと小さく震えているのを見て、銀時は笑みを深くした。  
「言うこと聞かない子にはお仕置きだからなー」  
わかった?と言うと妙が躊躇いがちに小さく頷いた。  
 
つ、と軽く合わせ目を撫で上げてやる。  
「は、ん…っ」  
もうすっかり潤んだそこは、次に訪れる刺激を待ち侘びている。  
蜜を零し続ける秘所に銀時は、おもむろに舌を突っ込んだ。  
「ひぁっ!銀さ、あ、ダメ…っ」  
逃げようとする腰を、再び尻を打つことで大人しくさせる。  
「お願い、もう…ん、あ…っ」  
妙の半分泣き声のような懇願を黙殺し、尖らせた舌を使って執拗に抜き差しを繰り返す。  
もう妙はまともに頭が働かない。こんな扱いをされて悲しいのか腹立たしいのかもわからない。  
が、こんなに不条理に銀時の支配下に置かれて、快感を感じる自分がいることにも気付いている。  
身体が熱い。まだ足りない。  
銀時の舌に翻弄されながらも、途切れとぎれに言葉を紡いだ。  
「銀さ……は、やく…っ」  
それを聞き、銀時は内心でフ、と笑った。妙のおねだりなど滅多なことでは聞けない。  
だが、まだだ。  
早く銀時自身で満たしてほしい、と言われているのはわかっていたが、その前にもう一つすることがある。  
銀時は懐から、先程危うく耳たぶをちぎられそうになった原因であるバイブレーターを取り出した。  
(このためにわざわざ平賀のジーサンとこから貰ってきたんだから使わなきゃ意味ねーしな。  
つーかあのジジィなんでこんなもんまで作ってんだかなぁ)  
妙のとば口に先端を当て、ぐ、と少しだけ挿入する。  
「あっ!?…あ、やぁっ!何…っ」  
(銀さんじゃない!)  
銀時の懐からはみ出していたバイブレーターの事に思い至るが、だからといってどうすることも出来ない。  
経験したことのない異様な感触に身体を捻って抵抗するものの、執拗に解されたそこはたやすく侵入を許してしまう。  
満たされずに燻っていた身体は持ち主の意思を無視して、ようやく与えられた刺激と快感を貧る。  
ゆっくりと抜き差しを繰り返され、ひっきりなしに嬌声が上がる様を見て銀時は唇の端で笑った。  
(すっげーエロいなこの光景)  
いつも凛として気丈な妙が、張り型をくわえ込んでぐちゃぐちゃに乱れて喘いでいる様子は壮絶なまでの色香を放っていた。  
「っは、んん!」  
最奥までバイブを突っ込まれ、もはや抑えの効かない喘ぎが唇から零れたと思った次の瞬間、  
妙の身体を電流が走ったような刺激が襲った。  
「あああっ!」  
頃は良し、と銀時がバイブのスイッチを入れたのだ。容赦ない振動が妙を内部から翻弄する。  
「やぁっ、ア、んんーっ!」  
目の前が真っ白になりそうな強烈な快感が身体を駆け抜けていき、絶頂が見え始める。  
しかし、  
「いや、ぅんっ!だ、だめぇ!」  
快楽に溺れながらもほんの一欠片残ったプライドが、このような無機物で達することを是としなかった。  
だが、そんな儚い抵抗も、虐めたいモードでノリノリの銀時には無いも同然だ。  
バイブレーターを操作する右手は確実に妙の弱いところを責め立てる。  
「お妙」  
耳元に吐息を吹き込むように、  
「素直にイっちまいな」  
そう囁くと同時に、左手で前方の最も敏感な突起を思い切り刺激した。  
「ふぁっ!や、あ、あぁ――――…っ!!」縛められた手がぎゅ、と握りこまれ、爪先が反り返る。  
妙の意識は快楽の渦に飲み込まれていった。  
 
くたり、と力の抜けた妙の視界を覆っていた布を外してやる。現れた瞳は涙に濡れていた。  
「泣くことねーだろお嬢さん」  
「…泣いてません」  
「はいはい」  
なんて気が強くて可愛くなくて、可愛い女だろう。  
優しくしてやりたい、大事にしてやりたいと思う。  
その一方で、もっと泣かせたい、屈服させてみたい、と思う。  
強がる妙の涙を拭ってやりながら、銀時は自分の身勝手さに苦笑した。  
「銀さん」  
「ん?」  
「優しくするって言った癖に、嘘つき」  
「うん、悪い」  
「こんな、意地悪ばっかりする銀さんは嫌いよ…」  
「ああ」  
「でも…銀さんじゃなきゃ嫌なのも本当だわ」  
涙の跡が残る目で、力無く横たわったまま、うっすらと妙は微笑んだ。  
「きて、銀さん」  
内心で、銀時は嘆息する。  
(まいったね、こりゃ…)  
優しくしたいモードON。  
 
 
そっと仰向けに横たえられ、優しく触れるだけのキスをされる。  
ああ、いつもの銀さんだわ、と妙は思った。  
ついさっきまで散々好き勝手していたくせに、両極端な男だと少し可笑しくなる。  
自分の体の下敷きになった両手が痛い。  
妙の顔が小さく歪んだことに気付いた銀時が、あーそっか、と言って妙の体を抱き起こした。  
「悪い悪い。これなら手ぇ痛くないよな」  
「…っ!」  
(解いてくれればいい話じゃないの)  
そう思ったが、銀時の膝の上に抱え上げられる形になった妙は返事が出来ない。  
自重でより深く銀時を受け入れることになったおかげで、  
自力で上半身を支えることも出来なくなっている妙の背中と腰に腕を回して抱きしめ、  
快感に少し掠れた低い声で銀時が囁く。  
「お妙」  
「ぎ、んさ…」  
名前を呼ばれるだけで身体の芯が熱くなる。  
銀時の声が欲情に濡れているから。  
いつもやる気があるんだかないんだかわからない気の抜けた声のくせに、こんな時ばっかり。と妙は思った。  
隙間なくぴったりとくっついて、お互いの心音も混ざり合うような気がする中、銀時がぐい、と動いた。  
は、と妙が息を飲む。  
が、銀時はそれ以上の刺激を与えようとしない。  
「お妙、自分で動いてみ?」  
その声でそんなことを言うのは卑怯だわ、と思う。  
ぱらり、と両手を縛めていたものが解かれた。  
ホッとした瞬間に律動が再開され、妙は銀時の首に腕を回ししがみつく。  
「んんっ、ん、あ、銀さ…っ!」  
銀時の動きが止む。中途半端に火を点けられた妙が思わず不満そうな声を出し、次の瞬間自分の声に気付いて真っ赤になった。  
 
「なになに、どーしたよお妙サン?」  
「ホントに今日は意地悪ね…」  
そんな潤んだ目で睨まれても楽しいだけだと思いながら、軽く揺すって催促する。  
しぶしぶといった感じで妙は膝を布団におろし、銀時の肩に手を掛けたままゆっくりと腰を上下させた。  
妙が羞恥に頬を染めつつひかえめながらも動いてくれている、というのは精神的にも視覚的にも大変美味しい。  
が、ひかえめさが若干もどかしいのも事実だった。  
「っあ!」  
自分で動けと言った手前、身勝手は承知で不意打ちで強く突き上げてやると、  
ガクンと足の力が抜け、再び奥まで銀時を受け入れることになった妙が喘ぐ。  
ニヤリとする銀時、だが―――  
「うっ…」  
ぎゅう、と締め付けられて銀時が呻いた。  
妙の顔を見ると、してやったり、という表情だ。  
「コノヤロー、もう手加減しねーぞ」  
「え?ウソ、ちょ…や、ア、ぁん!」  
宣言通りに手加減なしで揺さぶられ突き上げられ、妙はついに理性を飛ばした。  
瞼の裏で極彩色の光が弾け、意識の浮遊しそうな快感な中で二人は達した。  
 
 
「やっぱり、こういうのはちょっと嫌だわ」水を吸った綿の様に重い体を煎餅布団に横たえたまま、ぼそりと妙が言った。  
「こういうの??」  
「目隠しとか、縛ったりとか!あと、ば、…」  
「バイブとか?」  
自分の醜態を思い出したのか、真っ赤になって頷く。  
「なんで、気持ち良くなかった?」  
「きっ……気持ち、良かったですけど!  
ああいう風に一方的に見られたり触られたりするのは何か悔しいのよ」  
「そーゆーモンかねぇ」  
「そーゆーモンです」  
でも絶対お妙コッチ系のプレイもいけるよな、たまにだったらいいんじゃね?などと考えながら妙の髪を梳く。  
心地良さそうに目を閉じる彼女の、自分とは対象的な、真っ黒で真っ直ぐな髪の毛。  
「お前とだったらサラサラヘアーのガキ作れそうだなー」  
さすがに疲れたのか、半分眠りに落ちながら妙が答える。  
「ろくな稼ぎもない父親なんてイヤよ…」  
その返事に、働きます、と何とも信頼性に欠ける発言をして妙を胸に抱き込むと、  
銀時もまた、心地良い倦怠感の中で目を閉じた。  
 
そのままうっかり寝過ごして、帰ってきた新八に盛大に怒られるのはこの数時間後のこと。  
 
 

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