「銀ちゃん、蚊に刺されたアル」
痒いヨ、と神楽が唇を尖らせながら銀時の後ろから首元にしがみつく。
ソファで寛いでいた銀時は、苦しそうな声を上げてテレビからそっと神楽に目を向けた。
痒みに顔をしかめる神楽の首筋には紅い痕がついていた。これが蚊にさされた痕らしい。
何度も爪を立てて掻いた所為か、少し血が滲んでいて痛むそうだ。
「これじゃあ痒み止めは塗らないほうがいいな」
指で血を拭って銀時が言った。しかし、ソファに腰をおろす銀時の膝の上に乗りかかり、
痒い痒いと連呼する神楽を銀時は放って置けなかった。
神楽の腰を掴んで神楽を降ろすと、銀時は神楽を台所に連れて行く。新八が帰宅する際に
周りを片付けたのか、流し台周辺はとても綺麗になっている。
銀時が冷凍庫をあけて取り出したのは氷。一つ取り出して手のひらで少し溶かして水分を
帯びた氷をそっと神楽の首に押し当てた。
「冷たいアル」
びくりと肩を震わせた神楽が言う。気持ちいいだろ? と問うた銀時に、冷たい氷を感じ
ながらもこくりと頷く。冷たさで痒みが麻痺して、同時に暑い身体も冷えていくようだった。
台所に、冷房はないのだ。汗ばむ額の汗を拭って神楽はそっと瞼を閉じる。
やがて溶けた氷と一緒に再び血が滲んでくる。薄い赤の液体を銀時が舐め取る。伝う水は
神楽の衣服を汚すことなく銀時に吸い取られる。
そのまま蚊に刺されてしまった個所を舐めあげる。そのくすぐったさに再び痒みを催して
しまった神楽が身を捩るが、すぐに後ろ頭を掴まれて吸われた。桃色だった個所に、鬱血が
重なってしまったため、紫色に変わる。
「銀ちゃん……また痒くなってきたヨ」
「大丈夫だって、すぐに痒くなんてなくなっちまうから」
唇の端を持ち上げて、銀時は笑う。何か企んでいるときの銀時の顔だ。神楽は銀時の思考を
読み取ってその腕から逃れようとするが、強い力で引き寄せられて今度は唇を重ねられる。
口内を蹂躙する銀時に神楽はただ唸るしかない。そこまで数を重ねたことの無い口付け。上手く
呼吸が出来なくて、その息苦しさに神楽は銀時の肩を押し返そうと腕に力をこめる。
普段ならそのまま突き放すこともできないことではない。けれど中途半端に得てしまった快感への
愛撫に、神楽もただの少女に成り下がっていた。
「私、今汗臭いアル……」
唇を離した後、神楽は困ったような顔をして銀時を見つめる。けれど銀時はそんなことを気に
しない。そんなことないから、と普段は口にしないような言葉を発して神楽を戸惑わせる。そんな
銀時に振り回される神楽は眉間に皺を寄せてぷっくりと紅くなった唇を尖らせる。その表情はその
年頃特有の無邪気さと生意気さを醸し出している。銀時は、そんな神楽の表情が好きだった。
普段は大人びた、生意気なことばかり言う神楽。そんな神楽も好きだけれど、時折姿を見せる
少女の神楽。艶やかな笑みを浮かべ、劣情を煽る悲痛な表情。銀時にはそれが神楽の全てだった。
だからこうして触らずにはいられない。欲望で震える手が、そっと彼女の衣服を肌蹴させる。
膨らみかけた乳房をそっと包み込んで揉みしだくと、少し力を入れすぎたのか、神楽は痛いと
銀時の手を握る。発達途中の胸は張りが目立つため、今度は少し力を抜いて揉んでやった。
「……ッ」
指の先が乳首に引っかかると、神楽が身体を震わせた。鮮やかな桃色の突起が主張するように
尖っている。銀時が舌の先でつついてやると、そこは唾液に濡れ、艶やかな赤色に変わる。
舌で吸い、歯を立てて甘噛みして指の腹で捏ねる。摘んで微かに引っ張ってやれば、即座に
甘い声を上げる。そんな神楽が可愛くて、つい色々といじめたくなってしまう。そんな悪戯心は
誰にでもあるものだ、と銀時は自分自身を説得して、再び冷凍庫をあける。
製氷機から二つほど氷を取り出して手のひらで握り締める。くっついてしまわないように
少し溶けた氷を、押し倒した神楽の上半身に滑らせる。
突然の冷たさに大きく肩を震わせた神楽が上体を起こそうとする。不安げな神楽に、銀時は
氷だから安心しろ、と諭すと、滑らせた氷を神楽の乳首に宛がった。
「ひゃ……っ」
快感によって熱を持った身体に訪れる冷たさ。熱さをもった身体を滅却するような氷の冷たさは
まるで痺れるようで、銀時によってもたらされる快楽とはまた違った快感を呼んだ。
溶けかけた氷をそのままに、銀時は神楽のズボンを下着ごと取り払う。剥き出しになった少女の
性器はまだ熟さぬ、綺麗な薄桃色だった。だが、まるで成熟した女のように蜜を溢れさせる膣口は
艶やかに光り、ぬらぬらとその痴態を晒していた。
咄嗟に足を閉じる神楽の股に足を割り込ませて開き、蜜を舐め取るように舌を這わせる。
快楽に従順な少女の膣からは止め処なく蜜が溢れて内股を濡らす。舌を差し込んで内部を解き
解してやればとろとろに蕩けた膣がぱっくりと銀時を受け入れようとひくつく。
出したままにしてあった製氷機から溶けかかった氷を二つ三つ程取り出して、熱のこもった
神楽の膣に宛がう。一つ目がすんなりと神楽の膣に吸い込まれて内部で溶けていく。感じたことの
ない内側の冷たさに足をびくびくと震わせた神楽が声をあげる。冷たさを通り越して痛いはずなのに
その冷たさが気持ちいい。ほんのり紅く染まる肌が、神楽の肌の白さを際立たせていた。
「あっ冷た……っや、銀ちゃん……!」
「冷たくて気持ち良いだろ?」
銀時の背中にしがみついてその冷たさに耐える神楽。そんな神楽の苦しみに気づいては否か、
銀時は二つ目の氷を神楽の中に侵入させる。一つ目の氷が奥に押し込まれて溶けた氷が襞を撫でる。
三つ目の氷を入れたところで、銀時は指を引き抜いた。身体の小さい神楽にはこれが限界なのでは
ないだろうか、と今更な心配をしてみるが、そうでもないようだ。
神楽は今にも銀時を欲しそうな顔をしている。自分の背中に縋って喘いで、足を絡ませて自分を
誘っているようだ。自意識過剰だと思われるかもしれない、けれど銀時は神楽の虚ろを彷徨う双方の
瞳が時折自分を見つめていたことを知っている。それが神楽の合図だということも。
「銀ちゃん……」
神楽を組み敷いたまま思考を働かせていた銀時がはっと現実に戻る。自分の名前を囁く神楽は
待ちきれないような顔をしている。そのあとに暑いのに冷たくて変だヨ、と続けた神楽にもう一度
口付けて、銀時は己の反り立った性器を膣口に押し当てて一気に貫く。
「は、あっああぁっやぁ……っ」
先に中に入っていた氷が更に奥へと押し込まれていく。氷に触れた銀時の性器も、突然の冷たさに
身を震わせるが、神楽の内部の熱さに纏わりつかれて、一瞬で掻き消される。
躊躇せず、そのまま律動を開始する銀時に揺さぶられて摩擦する氷は全て溶けてなくなって
しまった。水になってしまった氷は、溢れ出す神楽の蜜と共に流れ出していく。
氷で麻痺してしまった膣内に熱く脈打つ銀時の性器が押し入ってきて、じんじんと股間が疼く。
氷よりも大きな質量を持つ銀時の性器。異物感が否めなかった神楽だが、それはすぐに快感へと
変わって丸く開いた唇からは止まることなく喘ぎ声が漏れ出てくる。
そして、銀時が最奥を突くと共に白濁が注がれ、神楽も共に意識を飛ばした。
耳元で不快な羽音を掠めて神楽は目を覚ました。ぼやける視界が覚醒し始めると、自分の目の前を
飛ぶ黒い物体。小さいそれは神楽の手によってぱちんと潰されて落ちてしまう。そこから覗くのは
見慣れた天井。そう、台所だ。あれからそのまま眠ってしまったらしい。
腕に纏わりつく汗に気がついて、神楽はまだ全裸だったことを思い出す。シャワーでも浴びようと
上体を起こそうとするが、上に銀時が覆い被さっていて起き上がれない。おまけに、何か異物感を
感じると思うと、まだ銀時と繋がったままだった。汗をかいてただでさえ不快だと感じているのに
この男は後始末もしないで眠ってしまったのかと、神楽は眉を顰める。そして、つぶして力なく
横たわる蚊を横目に、神楽は唇に笑みを浮かべた。
案の定、次の朝銀時が鏡の前で唸っていた。
「アレ? いつの間にさされたんだ? 大して痒くもないけど一応痒み止め塗っとくか……
オーイ神楽ァ、お前ちょっと痒み止め持ってきてくれや」
「銀ちゃん虫にでも刺されたアルか? 腹出して寝てるからヨ」
「うるせェ、俺が刺されたのはここだ、ここ」
そう言って首筋を指さす。そこは昨日神楽が痒いと唸っていた場所と同じだった。
痒くはないんだけどな、と呟く銀時に、神楽は何か企んだような笑みで、私が薬塗ってやるヨ、と
銀時に近づく。そして紅く腫れているその首筋をぺろりと舐めた。
だってそこは虫刺されなんかじゃない。神楽のつけた痕だから――。
END