「…ッは…すっげ…全部、入っちまったぞ」  
 
狭くて暗い押し入れの中に男の熱でかすれた声が響いた。  
男の額から汗が伝い首筋に流れる。  
男の視線は組み敷いた少女に注がれていた。  
少女の唇からは弱々しく濡れた溜め息が紡がれる。  
 
――熱い。熱いヨ。  
 
少女の頭の中はそれしか考えられなかった。  
男に背後からのし掛かられて、うつ伏せに組み敷かれ、脚を閉じさせないように開かされている。  
そのままの姿勢で少女は男に貫かれていた。  
半ば無理やり少女の奥へとねじ込まれた男の逸物に、少女の幼い躰が悲鳴を上げる。  
熱く猛った男の肉棒は少女の蜜壷に一分の隙もないほどみっちりと射し込まれていた。  
とても受け入れられないかと思われたそれを、しかし少女の躰は根元までくわえ込んでいた。  
 
「な…なんで、ぎんちゃ…。こんな…コト…」  
 
少女の頬に透明な涙が伝う。  
男を信頼していたからこそ、いきなりこんな仕打ちをされたのが少女には耐えられなかった。  
 
 
真夜中、少女はいつものように押し入れの中で眠りについていた。  
暖かくて、暗くて、安心する。自分だけの空間。  
その空間をこじ開けたのは強いアルコール臭のする男の腕だった。  
少女が居着いているこの部屋の主がまた酔っ払って帰ってきたのだと少女は思った。  
少女はこの男のことが大好きだった。  
日頃はダメな只のテンパだが、いざという時に頼れる男だと思っていた。  
本物の家族のように慕っていた。  
少女の家族は半ば壊れ、少女はいつも淋しい思いをしていたから。  
一見投げやりなようで、いつも少女を守ってくれる。求めればいつでも構ってくれるこの男が少女は大好きだった。  
男が酔って帰宅し、寝ている少女を起こすことは過去何回かあった。  
また、他愛もない世迷い言を聞かされるのかと高をくくっていたのに。  
その日、男はいつもと全く違っていた。  
 
無言で少女の衣服を引き裂き、抗議する少女の声を無視して押入れの中に踏み込んだ男の目には暗い炎が宿っているようだった。  
自分に向けられた男の瞳には何も映っていないように見えた。  
その冷たい瞳に射抜かれると、少女は何もできなかった。  
男が自分の事を嫌いになってしまったのかと思った。  
それは少女にとって唯一の心の拠り所を失うにも等しいことだった。  
「あんまり声だすなよ」  
部屋に入ってきて初めて男が笑みを浮かべた。  
少女はその笑顔を見て、なぜかぞっとした。  
 
逃げようともがいたが簡単に取り押さえられ、組み敷かれた。  
布団にうつ伏せに押さえ込まれ、背中に男の体重がのしかかった。  
全身が総毛立ち、恐怖で体が冷たくなって行くのを少女は感じた。  
少女には、男を跳ね除ける力があった。振りほどく事も、逃げる事も、簡単な筈だった。  
だが、少女は自分の力を上手くコントロールすることが出来なかった。  
今、動揺している自分の力が暴走すれば、確実に男に深手を負わせることになる。  
下手をすれば殺してしまうかもしれない。  
少女は男を傷付けたくなかった。自分の力で大切な者を失うことをもう繰り返したくなかった。  
恐怖に耐え、嫌悪感を堪え、少女は言葉を紡いだ。  
 
「ぎ…銀ちゃん、やめるアル。お…お酒飲みすぎネ。もう自分の部屋に戻るヨロシ」  
 
いつもと同じように話したかったのに、どうしても声が震えた。  
 
「…お前さぁ…男とやったことある?」  
 
耳元で男の低い声がした。  
首筋にかかる湿った熱い息に鳥肌が立った。  
 
「何、いってるアルか!」  
 
男の顔は見えないが、自分の体に密着した男の熱を嫌でも感じてしまう。  
さっき見た男の歪んだ笑みが頭を過ぎった。  
あんな風に笑う男を自分は知らない。この男は誰だ。  
銀時なら早く正気に戻って欲しい。夢ならば早く醒めて欲しい。  
脅えて体を震わせる少女は次の瞬間、高く悲鳴を上げた。  
 
「こん中にチンポ突っ込まれたことがあんのかって聞いてんだよ」  
 
男が少女の下着越しに少女のワレメを撫で上げたからだ。  
少女は寝巻き代わりに来ていたチャイナ服を腰まで捲り上げられ、胸元のボタンは無残に破り取られ、既にあられもない姿にされていた。  
男に尻を突き出す形で抑えられているので、男には少女の陰部がいくらでも視姦できた。  
嫌がる少女の脚を無理に拡げさせ、その間にある蕾に直接指を差し込む。  
 
「い…いた…ッやめ…」  
 
男の節だった指が内壁を擦るたびに少女の敏感な部分はヒリヒリと痛みを伝えた。  
 
「せっまいなぁ…こん中突っ込んだら裂けちまうんじゃねーの?」  
 
2本3本と指を増やして少女の入り口を執拗に弄る。  
少女は苦痛に眉を歪めるが、男の口元には楽しそうな笑みが浮かぶ。  
 
「神楽ァ…銀さんがオトナにしてやろーか?」  
ん?と訊きながら男は真っ白な少女の項を舐め上げた。  
少女の瞳には零れそうな涙が溜まっていた。  
どうしてよいか分からなかった。  
助けてくれる人が誰もいない。  
こんな銀ちゃんは嫌だ。  
助けて助けて助けて!  
 
「嫌アル!!銀ちゃんヤメテヨ!!」  
 
搾り出すような声で少女は叫んだ。  
しかし。  
 
「何が嫌なんだ?ぐっちょぐっちょだぞ、お前のココ」  
 
男は歪んだ笑みを浮かべたまま、少女の秘唇を弄り続ける。  
面白そうに男の指が少女の陰核を押しつぶすと、少女の体に電流が流れる。  
 
「あぅうっふぃ…ああ…ッ」  
「あーもう、乳首もこんなに立たせて…そんなに銀さんに弄ってほしーのか?」  
「ち…違…ひゃああああんッッ」  
 
露になった淡い膨らみの先端を男の指がきつく引っ張る。  
少女の体の芯に今まで感じたことのない痺れが生まれ始めた。  
 
「ガキみたいな体なのにエロいよなー。ホラ、下のお口がはやくチンポ欲しいってパクパクしてるぞー?涎もこんなにたらしちゃって…」  
 
お行儀が悪いな神楽は。  
男の楽しそうな声と共にカチャカチャとベルトを解く音がした。  
少女には途中から周りの音が遠くに聞こえていた。  
自分の唇から漏れる淫らな声も、他人の声のように思えていた。  
ただ、全身が燃えるような感覚がずっと続いていた。  
男の手がショーツを乱暴に引き摺り下ろした。  
次の瞬間。  
 
「アアアァアッッ!!!」  
 
熱い熱い、猛々しい何かが貫いて、少女は痛みに体を仰け反らせた。  
 
「う…ぁ…ッきつ…はぁっ…」  
 
男は熱に浮かされた顔で少女の中にその身を沈めた。  
 
 
 
「何で、ぎんちゃ…こんなコト…」  
「神楽ァ…」  
 
浅い呼吸を繰り返し、涙で頬をぐしゃぐしゃにした神楽に銀時が呼び掛ける。  
時間をかけて根元まで沈められた銀時の肉茎が神楽の秘唇に突き刺さっていた。  
 
「忘れんなよ」  
 
言葉の意味がよく解らなくて神楽は銀時に貫かれたまま、後ろを振り返ろうとした。  
だが、間髪を入れずに銀時が腰を揺すりだした。  
 
「ンアアッ!は…アッアッアッアッ!!」  
 
小刻みに体を突かれて奥まで掻き回される。  
最初は痛いだけでよく解らなかったが、銀時の呼吸に合わせて自分も体を揺らすと、頭の奥が痺れて行くような快感が得られた。  
体の熱がどんどん増して、この律動の中に永遠に組み込まれたい衝動に狩られる。  
 
ヘンアル。こんなの嫌なのに。銀ちゃんが怖くて、悲しかった筈なのに。  
 
「お前のマンコ…すっげ締まる」  
 
サイコーだ。耳元で囁かれて耳朶を噛まれた。  
それだけの刺激でも感じやすくなった神楽の内部はきゅうきゅうと銀時を締め付ける力を増す。  
 
気持ちいい…気持ちいいアルヨ…銀ちゃん。  
私おかしくなっちゃったアルヨ…  
 
神楽の洩らす溜め息が官能に濡れ始めた。  
 
「あんまり声出すなっつったろーが」  
 
下のババアに聞こえたらどーすんだ。  
口では悪態を吐いていたが、神楽の甘い声に興奮したのか、銀時の肉茎は神楽の中で大きさを増していた。  
   
ずっちゃずっちゃずっちゃずっちゃ  
ぱんっぱんっぱんっぱんぱん  
 
湿った愛液の音と肌と肌がぶつかり合う乾いた音が押入れの中に響いた。  
獣のようにお互いを貪りあった。  
銀時は神楽の耳の下、首の付け根に深く口付けた。  
白い肌に血色の痕が残された。  
 
「はぁっはぁッ…出すぞ…ッ!!」  
「んぁあああああッ!!!」  
びくびくと体を震わせて二人は同時に果てた。  
 
 
 
「初めてのオトコのコトくらいは忘れねーよな…」  
狭い押入れの中で少女の髪を撫でる男の手。  
少女は寝息を立てて眠っていた。  
男の指は少女の頬を滑り、男が首につけた口付けの痕を辿る。  
どんな形でもいい。自分はこの少女の心に残ることが出来るのだろうか。  
この口付けの痕が消えても、いつかこの少女が自分の前から消えても。  
 
男の呟きは誰にも届かなかった。  
 
<終>  
 
 
 

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