「ん、」  
 肌蹴た着物の間に手を差し入れて少し小ぶりの胸を揉みしだく。  
 それと同時に首筋に軽く唇を触れてやると、先程まで強張っていた身体が弛緩する。  
 抱きしめられるようにして愛撫される身体に、彼の煙草の匂いが染み付いてしまう  
ようだ。  
 そんなことを思いながら、妙は土方の愛撫に従順に応える。  
 「……余計なこと考えてんじゃねェよ」  
 まるで心の中を見透かされているような土方の言葉。それに妙は答えようともせず、  
ただ、覚束ない喘ぎを漏らすだけだった。  
 
 土方のセックスは、こちらが焦らされるほどに優しい。  
 何故なのだろう。ただ性交する関係だけだというのに。もっと、もっと激しく、乱暴に  
してもおかしくはないはずなのに。  
 それが、妙には解らない。解るのは、土方のみ。  
 ふいに、土方の目を見るのが恥ずかしくなって、目を逸らす。  
 妙はまだ、土方のその理由にはたどり着いていない。けれど。  
 けれど、だんだんと確信に触れてしまいそうで、怖い。  
 ぞくり、と背筋が粟立った。それで妙の思考は遮られる。確信に触れてみたいという  
好奇心もあったが、土方の気持ちを知るのが怖い。だから、好都合かもしれない。  
 土方が、剥ぎ取った着物から現れた胸を掴んだのだ。  
 ぐっと力を入れられて、激痛が走る。息をつめた妙だったが、その痛みは一瞬で、すぐさま  
優しい愛撫へと変わる。胸の突起を指で摘まれて、唇で嬲られて、時折爪を立てられる。  
 その時のじんと電気の走るような感覚に、妙は知らないうちに恍惚とした表情で土方を見ていた。  
 「そんな顔するなよ。我慢できなくなっちまうだろ」  
 苦笑交じりの、いたずらな笑みを浮かべて土方が言う。それに妙も我に返ってくすりと苦笑した。  
 
 「ごめんなさい、つい、気持ちが良くて」  
 普段近藤を相手にしている時の鬼のような形相とは全く違う、女性らしいふんわりとした笑みに、  
土方も一瞬心囚われる。いつも、こういった表情を浮かべていれば男もそれなりに寄ってくるだろうに。  
 帯を解く音がする。するすると衣擦れの音が静かな部屋にただ響く。それは二人の欲望を煽る  
一種の媚薬かもしれない。  
 着物を全て剥ぎ取ると、妙は身震いした。夏といっても、ここは室内。しかも屯所の副長室だ。  
 空調も整っていて、部屋は蒸し暑い外と違って大分涼しい。ここで何も身に纏っていないと、  
肌寒いのも当然だ。  
 「……寒いか?」  
 「少し、ね。けど大丈夫よ。すぐに熱くしてくれるんでしょう?」  
 「――相変わらず誘うのが上手いな」  
 唇に弧を描いて笑みを浮かべる土方。それに釣られて妙も微笑んだ。  
 こんな状況からか、妙の笑みはとても妖艶に輝いて見えた。  
 妙が、土方の着物の前を肌蹴させる。これも誘う一つの行為だ。二人は今、ただお互いに  
欲望を求めて性交をしている。まさに獣のようなセックスだ。  
 土方が肉付きのいい妙の内股をなぞった。くすぐったくて、妙は思わず身を捩る。  
 それからその太ももを持ち上げて、妙の身体が二つに折れるくらいまで持ち上げる。  
 「……っこんな所を、貴方の局長に見られたらどうするの?」  
 悪戯に妙が問う。その問いに、土方は暫時眉を顰めたが、小さくため息をついて口を開いた。  
 「こんな時になんだァ? 萎えるだろ。近藤さんには悪いが、俺達は付き合ってる訳じゃねェ、  
  だろ?」  
 「……そうね」  
 瞼を伏せて妙はそう呟いた。それから、自らの股間に指を這わせて、露わになっている秘所を  
ぱっくりと開いた。  
 「さ、早く終わらせましょう。……私我慢できないわ」  
 自分で己のクリトリスを弄りながら妙は言う。余裕のあるような発言だが、妙の秘所はすでに  
愛液に塗れ、内股や、後ろの蕾までも濡らしていた。  
 
 きゅう、とクリトリスを摘むと、妙は甘い声を上げる。自慰をしているのを、土方に見られて  
いる所為だろうか。いつもよりも感じている自分が居る。  
 クリトリスだけでは飽き足らず、そっと膣孔に指を這わせた。中指を膣内に埋め込むと、  
待ち望んでいたかのように内壁が蠢いた。  
 「あ……っくぅ……」  
 中指を膣内で曲げたり、内壁をさすったりと自慰を繰り返し、人差し指までも挿入する。  
 それを見ていた土方はそんな卑猥な痴態に思わず唾を飲んだ。  
 「――おいおい、いくらなんでもやりすぎじゃねぇのか?」  
 くつくつと喉の奥で笑いながら土方は言った。理性を抑えるのに精一杯なのか、その声は自然と  
掠れていた。  
 足を持ち上げる手に力がこもる。その白い内股に顔を近づけたかと思うと、強く吸い上げる。  
 唇を離すと、妙の内股には無数の花弁が散りばめられていた。  
 左の肘で妙の両膝を固定すると、空いた右手を妙のだらしなく開いた唇へと差し入れる。割り込んだ  
指は歯列をなぞり、舌を絡ませ、妙はその指を自然と愛撫していた。  
 指を引き抜くと、妙は物足りなさそうな顔をしたが、それに見向きもせず、土方はその唾液に  
塗れた指を、妙の後ろの蕾にあてがった。  
 「や……っな、そこ……っ?」  
 「慣らしてやっからおとなしくしてろ」  
 妙の質問になっていない問いに手短に答えると、土方はその指を挿入した。指一本程度なら  
易々と入るだろうと踏んでの事だ。  
 幸い、その蕾まで妙の愛液に濡れていたことから妙の蕾は土方の指を歓迎するように締め付けた。  
 「あ、あ……っくるし……」  
 襲いくる異物感に妙がうめいた。少し動かしていた指を止めて、妙が落ち着くのを待つ。  
 その間にも妙は自らの秘所を指で弄っていた。その快楽にすっかり溺れてしまったのか、自然と  
蕾に込められていた力が抜ける。  
 それをいいことに、土方はもう一本指を挿入した。  
 「ひあ…っあ……っや、だ……ふ、ぅ」  
 自分の膣内を弄る己の指と、土方の愛撫する蕾。お互いから来る強烈な快感に、妙は甲高い声を  
上げる。  
 
 「も、無理ぃ……っやめ、て……ぇ…」  
 快楽に消え入るような声は、土方に届いているのか否か、土方は差し入れていた指を引き抜いた。  
 「あ……っ?」  
 無くなってしまった片割れの快楽。それに妙は気の抜けた声を上げた。  
 しかしそれは一時のことだった。きょろきょろと周りを見回す土方。ふと目に留めた先にあるのは、  
土方の愛用する刀。  
 手を伸ばしてそれを手にとり、土方はその鞘の部分を妙の蕾にあてがった。  
 「ちょっと……っそれってもしかして……」  
 快楽に濡れていた妙の瞳が恐怖に変わる。しかしそれも一瞬のことで、目をつぶった瞬間には  
凄まじい快楽が妙を襲っていた。  
 「あっあああぁぁぁぁ―――っ」  
 びくびくと全身を痙攣させて妙は喘いだ。しかしこれだけの善がりだけでは満足し足らない。  
 土方は仰向けになった妙を横たわせて、膣口に己のそそり立ったペニスを突き立てる。  
 二つの性感帯を同時に攻められて、妙は声にならない悲鳴をあげた。ただ、身体を震わせて母音を  
その潤んだ唇から漏らすのみ。  
 二つの内壁同士が擦れあって、今までに無い快感を生む。土方も内部の強い締め付けに苦しそうな  
顔をしながら激しく律動を繰り返す。  
 「う、あ…っあっい、あぁ……っ」  
 無理な体勢から挿入されているため、上手く声が出せない。そんな苦しそうな妙を見るのもまた  
一興。一気に土方の劣情が煽られる。  
 最奥を思い切り貫くと、妙は女らしい甘い声を上げて達する。その瞬間の強い締め付けに土方も  
また絶頂に達しようとする。それを悟ってすばやくペニスを引き抜くと、勢い良く射精した。  
 それは妙の腹や胸を濡らし、顔までも汚した。快感の余韻に浸っている妙の表情はとても恍惚と  
していて、土方の中に再び劣情が湧きあがろうとする。  
 
 「……っぁ、はぁ…はぁ……っ」  
 肩で荒い呼吸をしながら、妙は顔に付着する精液をぬぐって舐めた。身体に付着した精液は土方が  
拭いとってくれた。蕾からもずるずると刀を引き抜く。  
 呼吸が整ってきた頃、妙は背中の痛みに気がつく。見て見るとそれは畳に擦れた痕だった。  
 「ひりひりすると思ったら……畳でこすれたみたい」  
 「すまねぇな。布団ですりゃァ良かったな」  
 指先で妙の背中をなぞって土方が言う。それから妙の後ろに回って擦れた痕をそっと舐め上げる。  
 「ん……っ」  
 「そんな声出すなよ。煽ってんのか?」  
 「違うわよ……」  
 生ぬるい感覚が妙の背中を這う。ひりひりと痛むそこに土方の舌が這うと、沁みるのか否か、  
快楽にも似た感覚を覚える。  
 そんな時、土方が耳元で囁く。  
 「―――……俺にしとけよ」  
 ぼそりと囁かれた台詞に妙がぴくりと反応した。またこの台詞。恐れていた確信に今、迫っている。  
 土方が、自分の中に入ってこようとする。  
 「……私には、」  
 答えようと口を開くが、それはすぐさま土方に遮られる。土方も、妙の返答を見透かしているの  
だろう。その声には少し焦りが交じっていた。  
 「分かってる。……あの銀髪だろ?」  
 「………」  
 そう、妙の想い人は銀時。けれど恋人同士ではない。土方と同じような関係だ。  
 銀時には、銀時の想い人が居る。それを知っての上でこうして土方や銀時と性交を交わしている。  
 ただ少し違うのは、こうして優しく愛撫してくれる土方を銀時に見立てていることだけ。  
 果たして土方は、この事実を知っているのだろうか。  
 今はただ、この温もりだけを大切にしていたい、と妙はいつも思う。  
 そうでないと、この関係に終止符を打たれてしまいそうだから――。  
 
 
 
  END  
 

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