「ん?近藤さん今日非番じゃ無かったか?」  
「うん、だからお妙さんに逢いに行ってくる!」  
「まァたストーキングですかィ」  
「捕まらねェ程度にな」  
「ストーキングじゃ無いって!って、え?!捕まるッて何?!俺達が警察だよね?!」  
「何か有ればパトカーで迎えに行きまさァ。サイレン鳴らして」  
「それどういう事ォォ?!迎えッて意味違うよね?!」  
「近藤さん、程々にしとけよって事だ。俺達に捕まる前にあの女に命取られねーようにな」  
「あーあ、そしたら別のお迎えになっちまいまさァ。残念です、近藤さん」  
「今生の別れだ、近藤さん」  
「トシ!?総悟!?」  
「「逝ってらっしゃい」」  
 
 
**☆***☆**☆***☆**  
 
 
屯所を出て、お妙さんの家に向かいながら大きく伸びをする。  
お妙さん、元気かなァ。  
体は凄ェ疲れてるけど、お妙さんの笑顔を思い出すだけで足取りは軽い。  
年の瀬で忙しくてすまいるにも行けなかったし、約一ヶ月振りか。  
お妙さん、俺に会えなくて寂しがって無かったかなァ…  
 
 
「おっ妙さーん!あなたの勲が逢いに来ましたァァ!」  
 
総悟は俺の事ストーカーだって言うけど、最初はちゃんと門から入るからストーカーじゃない。  
玄関を開けようと手をかけるが、施錠されているらしく、戸は開かなかった。  
 
「ん?買い物かな?お妙さん。スーパーに行った方が良かったか」  
 
仕方なく庭の方へと廻る 。  
居ないのなら仕方ない。待たせて貰おう。でも家の中で堂々と待ってたら不法侵入になっちゃうし、軒下でこっそり待ってるか。  
庭に出て縁側へと目を向けると、愛しいお妙さんの姿が。  
 
「…あっ、お妙さ…」  
 
慌てて口を押さえる。  
 
「…はは、返事がねーわけだ」  
 
縁側で腰掛け、お妙さんは眠って居た。  
洗濯物を畳んでいる途中で寝てしまったのだろう、手には洗濯物を握ったまま。  
 
隣に腰掛けて、起こさないように手から洗濯物を外す。  
顔を覗き込むと、起きている時とは違う、あどけない表情に無意識に頬が緩んだ。  
可愛いなァ、お妙さん。普段金出してもこんな近くまで接近する事なんて無いしィ…………ん?  
 
「ッッ…!!」  
 
あれ?これ今チャンスじゃね?!  
お妙さんとキスする……いや、キスは愚かあんな事やこんな事やそんな事まで……いや、だめっ勲!そんな事までしちゃだめっ!  
そうだ、お妙さんとは健全な恋人同士として結ばれたい。その上であんな事やこんな事やそんな事までしたい。  
だからこんな寝込みを襲うような真似…  
 
「……ん…」  
 
俺の葛藤を他所にお妙さんは重心が崩れ、俺の肩に頭を預けて来た。  
 
ええェェェ!  
お、お妙さん…!そんな可愛い顔向けないでェ!決心が……決心が……!  
 
「……えーと、お妙さん?こんな所で寝ると風邪引きますよ……?」  
 
小声で呼び掛けた俺の声に返事は無い。  
相当深く眠ってるらしい。疲れているのかもしれない。  
…俺はこんな相手に何を考えてたんだ。  
自責の念に肩を落とす。  
取り敢えず、日が落ちてきて肌寒くなるし、お妙さんを布団まで運ぶか。  
 
お妙さんを抱き抱えお妙さんの寝室へ運ぶ(当然場所は把握済みだ)。  
 
たまに滞在に利用している押し入れから布団を出して敷くと、お妙さんを横たわらせた。  
 
 
「……」  
 
 
…腰から手を抜く気になれない。  
布団の上、無防備なお妙さん。  
思わず生唾を飲み込む。  
 
「……いやいやいや、ダメだって勲!お妙さんも疲れてるんだから!」  
 
もー今日は帰ろう……  
何とか名残惜しい左手を抜き取って立ち上がる。その時―……  
 
「…お帰りになるんですか?」  
 
……ん?  
 
「ぎゃァ!お妙さんんん!?」  
 
お妙さん、起きてるゥゥゥ!  
スミマセンすみませんスミマセン俺まだ何もしてませんんんん!  
 
「……静かにしてください」  
「んぐッ」  
 
口に拳を突っ込まれて黙り込む。  
歯がいてェェ…でもお妙さんの手が俺の口内に……ッ!  
 
「もう帰っちゃうんですか?久し振りなのに」  
「や、いや……お妙さん寝てたんで…」  
 
あれ?可笑しくね?  
いつもお妙さんは俺の事邪険にするのに(照れ隠しでね!)。  
 
「……それは、あなたが最近すまいるに来ないからです」  
「へッ?」  
「昼間だったら会えるかと思って……お昼も出来る限り起きてたんですよ?」  
「えェェ?!」  
 
そ、そんな頬染めて言うのォ?!お妙さん、それって……それって…  
 
 
「……寂しかった、です」  
 
お妙さんが、俺の着物の端を掴んで恥ずかしそうに目を伏せる。  
 
 
え?  
えェ?!  
 
 
 
「仕事だって分かってます。でも……もう、離れたくないです」  
「おっおた、お妙さん?!」  
「どうしたらあなたの側に居られるの?」  
「お妙さ……」  
「近藤さんの側に居たいです…」  
「……それって…」  
「ケツ婚…してください」  
 
そう言うとお妙さんは、着物の帯を外し始める。  
 
「ちょ、どうしたのお妙さん?!」  
「既成事実…作りましょう?」  
「へッ?!」  
「近藤さんになら何されても構いません」  
 
頬を染め、でも俺の顔を切なげな表情で見詰める妙の姿に俺は……  
 
 
―――――*―――――*―――――  
 
 
 
「近藤さん、何書いてんですかィ?」  
「ん?お妙さんと俺が結ばれる為の理想のシナリオ」  
「は?」  
「初夢で枕の下に敷いておこうと思って!」  
「………………近藤さんよ、報告書はどうしたんだよ?今日期限のヤツ」  
「え?」  
「そんな事してるなら、さすがに終わってるんだろうなァ?」  
「えェ?!うッうん!モチロン!」  
「近藤さん、この白紙の報告書なんですかィ?便所紙にでもするつもりで?」  
「ヒィ!総悟それダメェェ!」  
「……残念だなァ、近藤さん。初夢見れねェな。寧ろ睡眠なんて暫く取れそうにねェじゃねェか」  
「おッ…お願いトシィィ!せめて、お妙さんに一目だけでも……!」  
「安心してくだせェ近藤さん。俺がアンタの気持ちが詰まったこの紙を届けてきまさァ」  
「やめてェェ!俺死んじゃう!新年早々死んじゃうゥゥ!」  
 
 
 
完。  
 

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