夜。かつては眠らない街だったかぶき町も今は廃墟が立ち並び見る影もない。
そんな廃墟の一角に二人はいた。
ぴちゃぴちゃと、淫猥な音が無機質な廃墟の闇に響く。
「もっと、奥、まで咥えろ…」
少し上擦った声で新八が言う。
自分の足元に跪き、顔を埋める少女の姿を見降ろす。
少女――神楽は銀時の衣服を模したオーバーニーソックスで目を覆われ頭の後ろで結ばれたまま、新八の陰茎を咥えていた。
薄紅色の長い髪に指を挿し入れ、優しく解くように撫でていた手に力が篭る。
「ふ…っん……」
喉の奥へ侵入する肉茎に息苦しさで鼻から息が漏れる。
だが、抵抗は見せなかった。
こんな風に大人しく新八の言うままになるなど、普段の神楽からは想像もできない。
顔を合わせば憎まれ口を叩くだけ。
まともな会話をしたのはいつのことだったか。
――こうしている時が一番素直だな
従順に自分の肉棒に奉仕する神楽の様子を見て新八は思った。
目隠しによって自分の顔を見ないで済むから、意地を張ることもない。
それは自分も同じだった。
***
銀時がいなくなってから、二人はしばらく共に万事屋をやっていた。
そのうちふらりと銀時が戻ってくることを信じて。
だがその思いも虚しく、銀時が戻ってくることはなかった。
神楽は銀時のことをとても慕っていたから――それは多分、自分が彼を慕っている気持ちとはまた違った意味合いも含めて――
だから、銀時の戻らない万事屋に一人にするのが心配で自分も万事屋で寝泊まりすることにした。
銀時がいない今、神楽を守るのは自分だと、そう思ったから。
始まりがどうだったかは覚えていない。
特別な何かがあったわけではなかった。
ただ大切な人が戻ってこない寂しさを紛らわすように、二人は関係を持った。
それから何度したのかわからない。数えるのも億劫なほど、身体を重ねた。
ぎんちゃん…――
思考が熱く蕩けるような最中、ふと漏らした神楽の一言が、新八の脳髄を凍らせた。
***
神楽の咽喉奥深くの粘膜が新八の肉茎の先端を柔らかく包み込む。
息苦しさでえづきそうになり飲み込むように動くと、亀頭が優しく圧迫されて快感が走った。
口内に欲を吐き出してしまいたくなる気持ちを抑えて、肉茎を引き抜く。
唾液と先走りの混ざった粘液が重たく何本もの糸を引き、自重に耐えられなかったものが塊となって肌蹴た神楽の胸元にボタリと垂れた。
「げほっ…ぅぇ…げほげほっ…」
解放された神楽は咳き込む。
目隠しによって顔の半分が隠れてしまっているが、それでも息苦しさと興奮で紅潮しているのがわかった。
乱れた息を整えるために荒く息をし、鼻を啜る様子は幼児のようだ。成長しきった身体とは対照的なその様子が新八の情欲を揺さぶる。
はしたなく口から首にかけて垂れた粘液を指で拭って唇へ運ぶ。
指の感触を唇に感じた神楽は、そのまま素直に口を開けその指を受け入れた。
ねっとりとした粘液を纏った指先を、先程陰茎をしゃぶった時と同じように噛まないように丁寧に舐める。
口内に侵入した新八の指が神楽の舌を押し込み引っ掻いた。
神楽はずくずくと下肢が疼くのを感じた。触らずとも肉を受け入れる準備ができているのがわかる。
期待と羞恥から、もぞもぞと内腿を擦り合わせた。
爪の甘皮まできれいに舐め取ると、新八は満足したのか神楽の口内を解放した。
そしてそのまま膝立ちした神楽の下腹部、媚肉の合わさり目に指をなぞらせた。
ぬちゅり、と卑猥な音が響く。
なぞって開いた割れ目から溜まっていた愛液がとろとろと蕩け出した。
二三度指を往来させると躊躇なく神楽の秘唇に指を突き立てた。
「―――――ああぅッ!!!!!」
これまで何度も行為を重ねてきたそこは、さほど痛みはなかったが、いきなりの摩擦と圧迫感で思わず悲鳴が上がる。
そんな神楽を意に介さぬ様子で、新八はそのまま膣内の指を数を増やし、そしてバラバラに指を動かした。
「ぃあぁっ…あああっ!!!!…やぁっだ…めえええッ」
ジュブジュブと音が鳴る。膣内が激しく揺さぶられ、たまらず喘ぐ。大きな口を開け、だらしなく涎が垂れた。
強烈な刺激でまともな思考ができない。
ギュッと足の指が強張り、体勢を崩さぬよう必死に新八の腕に掴まった。
グリグリと膣中で指を捻じり、膣壁を掻き出す様に引き抜きそしてまた挿入する。
最早膝立ちしているのもままならず、よろめく神楽の上体を支えて呟く。
「下着もつけずにこんなにして。発情期も大概にしろ」
―その白い衣装では肌が透けてしまうかもしれないのに。
―もしそれで暴漢にでも襲われたらどうするんだ。
そんな言葉が後を次ぎそうになったが、ぐっとそれを呑み込んだ。
そんな事を言ったところでこの娘が耳を貸す訳がない。
「どんどん溢れてきているな。はしたない女だ。」
心とは裏腹に、すべり出る言葉は意地の悪い台詞。
新八の平坦な声が神楽の脳内に響いた。
胸がどきんと高なった。
お前はそんな風に話す奴じゃない
斜に構えた喋りをしたところで、お前はただのメガネなのに。
覚束ない思考でぼんやりと思う。
視界が遮られていて良かったと思う。
余計なことを言わなくて済むし、この気持ちを知られたとしてもその反応を見なくて済む。
何も考えずに、ただこうして一時の快楽に身を任せてしまえばいいから。
「尻をこちらに向けろ」
黙って新八の言う通りにする。
背後に新八の気配がする。
やわやわと尻をさすられ、秘所に熱い塊がぬちゃりと当たるのを感じた。
ゆるゆると熱い肉棒が入口を上下に滑る。
そして位置を定めると一気に挿入した。
「あああんッ!!!!!」
指とは違う質量と熱と圧迫感にたまらず声が出る。
膣奥の、指では届かなかった場所に肉の先端が侵入すると、脳髄を直接刺激するような快感が走った。
しかしそれは一瞬で、その快感が治まっても新八はそのまま動かない。
膣いっぱいに侵入したそれに徐々に身体が馴染んでいくのがわかる。
ずくずくと、腹の中がうずく。
早くこの中を掻きまわしてほしい、そう思った瞬間
新八が腰を激しく降り出した。
挿入した時よりも更に愛液の量が増し
新八が前後に腰を振る度に、じゅぽじゅぽと陰音が鳴った。
視界が遮られているせいで聴覚が研ぎ澄まされ
肌がぶつかり合う音が、結合部から発する水音が、己の発する意味を成さない音の羅列が
ぐるぐると頭の中に響いた。
張り詰めていたものがぷつりと切れ、ふっと意識が遠のいた。
強張っていた神楽の身体が少し緩むのを感じた新八は
神楽に覆いかぶさるように上体を曲げ、腕を回すと
両手でワンピースの胸元をぐいと引っ張り、豊かに膨らんだ乳房を乱暴に掴んだ。
張りと弾力と、手に馴染むような柔らかさがあるその胸に
指が食い込む程力を籠めると、可愛らしく美しい曲線は歪んで拉げた。
「い…あ…っ」
痛みと息苦しさで放り投げられていた意識が戻る。
硬くしこった乳頭を親指と人差し指でギュッと摘まみ、そのままコリコリと弄ぶ。
「やぁっ…あんっ、あっ、ふぁぁぁっ!!」
ピリピリと電流が走るような感覚。
その強い刺激に神楽はただ淫らに喘いだ。
鼻にかかった甘ったるい声。
―本当は。
―嬉しかった。銀ちゃんがいなくなっても一緒に万事屋をやっていたことが。
―寂しかった。今こうしてお互いの顔をきちんと見ることもできないことが。
からだを重ねれば重ねる程、新八が手の届かない所へ行ってしまう気がして。
―ねえ、ねえ
―どうしたらいいアルか
―ねえ
「ぎんちゃん……」
不意に神楽の口から洩れた。
***
胸が抉られるようだった。
銀時の代わりになどなるつもりはなかった。
ただ、そばにいて、守りたかった。
彼女は夜兎で、僕よりも強いから「守る」なんて自己満足かもしれないけど。
けれど、神楽ちゃんは女の子だから。
とても大切だから。
だから守りたかった。
でも結局自分は彼女の何の支えにもなれなかったんだと
今はいないあの人の名前を呼ぶ神楽に、自分の無力さを思い知る。
こうして今彼女の身体を貪り喰らう自分が、惨めなのに、しかしそれを止めることができない。
どうにもできない歯がゆさと、自己嫌悪と焦燥感。
胸の中に沸いたドロドロとした感情は熱を持ちを身体中を興奮させる。
俄然神楽に打ちつける腰の動きが強くなる。
腰を打ちつける衝撃でやわらかな尻の肉がぷるぷると波打った。
その透けるように白い尻たぶを強く握る。
汗でしっとりと濡れた尻肉の感触が心地いい。
後ろから突かれた神楽の膣壁は、新八の肉棒をより深く誘うように愛液を満たしていく。
溶けるように熱く、ぬめった膣内はきついながらも優しく肉茎を包み、扱く。
神楽が自分の肉で悦んでいるのが嬉しくて
甘くかすれた声で喘ぐ神楽をもっと鳴かせてみたくなる。
尻をつかむ手を腰にまわし、赤く充血し硬くなった芽を擦る。
優しく指で皮を剥き、顔を出した陰核をこねた。
「ひぃぁぁっ…ッ!!!」
最も敏感な場所を愛撫され、既に収縮しきっていたかと思われた膣が更にきつく収縮した。
太股が痙攣しガクガクと震える。
蠢く肉襞が精を絞り取るように絡みついた。
背中を走る射精感に、新八は二三度大きく抽送し、腰を神楽の最奥まで打ちつけた。
膣内の肉茎が戦慄き、鈴口から勢いよく精液が子宮へ発射した。
「ああああーーーーっ!!!」
膣内に満たされる精液の感覚に、神楽は身体をビクビクと小刻みに震わせ達した。
全ての欲を吐き出し、萎えた自身を引き抜くと
くぽん、と膣内が音を立て、続いて吐き出した精液がこぽりと垂れた。
咥えるものを失った入口が小さく口を開け、ひくついているのがよく見えた。
欲を吐き出すと一気に脳味噌の熱が引いて行くのが分かる。
神楽に目を向けると、達した身体の余韻が引くよう呼吸を整えていた。
目隠しをしているから、彼女の表情はわからない。
固く結ばれた目隠しの結び目に手を掛ける。
この瞬間が最も緊張する瞬間だった。
目枷を解いたら、この行為の全てが終わる。
また明日、いつもと同じように顔を合わせ憎まれ口を叩きあうのだろう。
でも今、解いたその奥にある瞳が自分を見つめたら。
その視線に耐えられる自信が無かった。
固く結んでいたオーバーニーを静かに解く。
結び目の両端がはらりと分かれ床に落ちた。
閉じた瞼の先からぼんやりと外の世界の光が伝わり、視界が解放されたのがわかった。
ゆっくりと瞼を開ける。
後ろを向いているから、神楽から新八の顔は見えない。
まだ後ろは振り向かない。すぐに振り返ってはいけない。
顔を見ると彼は行ってしまうから。
まだ身体に残る痺れが落ち着く頃、頭を少しだけ後ろに向ける。
下を向いた新八の表情は眼鏡と長い前髪に隠れて良く見えない。
でもその姿はとても哀しげに見えた。
ほんの一瞬、目線が合った。
すぐにその視線は外れ、そのまま何も言わず後ろを向き去って行った。
―これは罰なのだ
神楽は思った。
―本当はとても嬉しいのに。
―一緒にいてくれることが。
―そばにいてくれることが。
―こうしてからだを重ねることも。
素直になれない自分が憎い。
「しんぱち…」
呟いた声が誰もいない部屋に小さく響いて消えた。