「おーい神楽起きろ、朝だぞー」  
 
気がつくと朝になっていた。  
いつの間にか眠っていたらしい私は、ゆっくりと体を起して声の主を見つめた。  
「…銀ちゃん…なんで……?」  
「なんだコラ、俺がここにいちゃ悪いか。ここ俺ん家だからね一応。たった今帰ってきたんだよ。朝帰りだ朝帰り。てか、朝帰りって言うかもう昼回ってるけどな。新八はまだ来てねーのか?」  
新八、という言葉に無意識に体がピクン、と動いた。  
「おっかしいなー、遅れるとかだったら絶対連絡入れる奴なんだけどなぁ。…あ、それともやっぱり本当に童貞卒ぎょふぉっ!!」  
「銀ちゃんキモイアル。セクハラネ」  
「だ、だって他に理由がありますか神楽ちゃん。どーせ初めてで上手くいかなかったとかで落ち込んでんじゃねーの」  
「………」  
分かってた。新八がこんな時間まで連絡もなしでいるということ。それは何を意味しているか。分かってた。でも、分かりたくなかった。昨日あいつを想ってあんなことしちゃって、そして本当の意味で男になったあいつに、私はどう接すればいいアルカ。  
「ま、仮にそうだったとしてもそろそろ来るころだろ。あいつはまじめちゃんだからな、多少遅れてもこっちに来るか、まあ来なくたって連絡くらいは入れるだろうからな。つーかお前なんでこんな布団濡れてんの?それになにこの匂い?  
ぷぷっ、なーに神楽ちゃん、お前いい年こいておもらふぁえるっ!!!」  
「寝汗アル」  
無茶な言い訳のような気もするが、銀ちゃんなら気付かないだろう。本当に事が終った後服を着ておいてよかった。全裸だったらさすがにごまかしきれないネ。  
……でも新八なら分からない。あいつはダメガネのくせに無駄にそういうことにだけ鋭いから、ちょっと心配になる。あいつが来る前に布団を何とかしておくネ。  
そして、もうあいつへの想いは封印するアル。今日からまた同じ万事屋の仲間として、家族として過ごしていくのだ。  
そう決めた時、突然戸がガラガラと空いた。  
「おはようございまーす」  
「っ!!」  
来るの早すぎアルヨ!これだから新八は……。  
銀ちゃんが腰をさすりながら玄関に向かう。  
「おはようございますじゃねーよ今何時だと思ってんだ。もう午後だよ。あふたぬーんだよ。あふたぬーんてぃー買ってこいよ」  
「あふたぬーんてぃーならまだ買い置きがあったでしょ。もしかしてあんたもう全部飲んだんすか!?」  
ギャーギャー騒ぎながら足音が近づいてくる。そして姿が見える。今一番会いたくない顔が、私を、見つめる。一瞬、その顔が曇ったような気がした。でもすぐに陰りは消えて、  
「おはよう、神楽ちゃん」  
微笑む。  
どうして。どうしてそんな顔するアルカ。私のことなんてなんとも思ってない癖に。私の気持ちなんて、これっぽっちも知らない癖に。ああ、やっぱりこいつはそういう奴なんだ。誰にでも同じ顔で笑い、誰にでも同じ愛を向ける。  
私だけの笑顔だと思っていたものは、私だけの愛だと思っていたのは、みんなのものだったんだネ。  
「……おはよーアル」  
ダメだ。仲間に、家族に戻るって決めたのに、新八の顔を見ると、簡単にその決心がゆらいでしまう。  
「どうしたのそんな顔して?怖い夢でも見た?」  
「…新八、あの…」  
「そーいえば新八、お前なんで今日こんな遅くに来たんだよ」  
「ああ、それは…」  
「私!遊びに行ってくるネ!!」  
「えっ?神楽ちゃんご飯は!?」  
新八が理由を言う前に思いっきり叫んで万事屋を出た。新八の口から脱チェリーなんて聞きたくないネ。  
 
 
「……はぁー、分かりやすい奴」  
 
 
いざ飛び出してみたはいいものの、どこに行けばいいものか見当もつかない。かといっていまさら戻るわけにもいかず、とぼとぼと街を歩いていると、最悪な奴と出会った。  
「いよぅ、チャイナじゃねーかィ」  
「……サド…」  
なんでこんな時にこんな奴に会わなきゃいけないアルカ。バカアルカ。死ぬアルカ。  
「なんでィ元気ねーな、ペットの犬でも死んだのかィ」  
「…定春は健在アル」  
しまった、定春がいたの忘れてたアル。昨日のアレ聞かれてたかも……。そう思うと、いくら相手が犬とは言え、無性に恥ずかしくなった。  
「とにかく、今はお前なんかと話している暇はないアル。どっか行けヨ」  
「まーまー待てよ、いつもみたいに喧嘩しようってわけじゃない。今日は俺ァ機嫌がいいんだ。良かったら話を聞くぜ?」  
優しく笑って(いるつもりなのだろう、本人は)ウインクをする。  
絶対嘘アル。ここまでさわやかな笑顔が似合わないやつは初めて見たネ。大体そんな血走った眼でウインクされてもキモイだけなんだヨ。  
…でも、こいつもタイプは相当違うが、一応男アル。全てをさらけだす気は米粒ほどもないが、ちょっと話をするぐらいならいいかもしれない。  
 
「……もし」  
「あ?」  
「もしお前が誰もいない密室で、女の子に告白されたらどうするネ?」  
「ずいぶんアバウトだな、女の子ってどんな女の子だよ?」  
「基本和服でピンクっぽい髪でメガネかけてて結構可愛い女の子アル」  
大体の容姿は銀ちゃんから聞いたんだけど、これで合ってるよネ?  
「…そりゃー襲うにきまってんだろ」  
「…っ」  
そうか。やっぱりそうなのか。銀ちゃんの言うとおりアル。男はみんな獣ネ。  
「……ただ」  
「え?」  
「他に好きな奴がいるんなら、俺は我慢するねィ」  
「……お前に好きな奴がいるとして、そいつには自分のことをアピールするものアルカ?」  
「…少なくとも俺はしねェよ」  
「どうしてアルカ?つらくはないアルカ?」  
「俺みたいな奴は、人に弱みを握られるのは嫌でねィ。それに…そいつにさらに好きな奴がいた場合は、もうどうしようもねぇだろ」  
「……」  
「まぁ、お前の勘違いってこともあるだろうけどな」  
「でっでもっ…ってなんでいつの間に私の話になってるアルカ!!」  
「なーに熱くなってんだ。お前の矮小な脳みそじゃこんな難しいこと分かんねえだろィ。だからお前のことにたとえてやってんだ。  
仮にお前が…そうだな、新八君のことを好きだったとする」  
「!…うん」  
「でも新八君のことを好きな奴が他にいて、そいつに先を越されて告白されちまった」  
「…うん」  
「でも、お前は新八君がなんて返事したかは分からない」  
「うん」  
「そしたらもう、お前も思い切って告白するしかねぇだろィ」  
「!!」  
「仮に振られたとしても、とりあえず行動はしたって、まだあきらめがつくはずだ。  
だがもしなにもせずに新八君とそいつがデキちまったら、お前は一生後悔し続けるぜ。それに、お前は新八君の返事を聞いたわけじゃない。ということは、お前にはまだ可能性は残されてるってこった」  
「…ありがとアルサド、お前本当に時々いいとこあるアルナ」  
「ふん、まあ誰が悩んでるのかは知らないが、せいぜい伝えてやりな。とりあえず好きだって言ってこいってな」  
「おうネ!じゃ、もう行くアルヨ!!」  
 
「せいぜい頑張って伝えなよ…新八君にな」  
神楽が走り去った後、ぼそりとつぶやく沖田。その顔はどこぞの新世界の神のように醜く歪んでいた。というか笑っていた(つもりだった。本人は).。  
「俺がお前なんぞにあんなに優しくするわけねぇだろが。和服でピンク髪でメガネで…結構可愛いかどうかは知らないが、ありゃあ間違いなくこの間の文通娘さんのことだろィ。ころっと騙されやがって。  
クソチャイナは新八君が好きか…かぶき町中にふれてまわってやるぜ…クク、クククククク………」  
 
 
「新八っ!!」  
「うわっと、お、お帰り神楽ちゃん」  
すごい勢いで戸を開く。新八がちょっとびっくりしているが、そんなのお構いなしネ。  
「新八っ!あのっ…」  
「ん?」  
「…ぶ、文通の女の子とはどうなったネ!?」  
「ああ、あれ?」  
新八はふっと笑うと、穏やかに言った。  
「断わったよ」  
「えっ…な、なんでアルカ?」  
「きららさんはまだ外に出るようになってあまり日がたってないから、僕みたいな男に惹かれちゃってるだけだと思うんだよね。もっと周りを見れば、僕なんかよりいい男なんてたくさんいると思うし。……それに」  
「?」  
「…僕、すっ、好きな人が…いるんだ…」  
「!?」  
新八に想いを伝えると決めたはずなのに、もう逃げ出したくなる。本当に私は、こいつの前ではヘタレネ。これじゃ新八の事バカにできないアルナ。  
「…だ、誰、アルカ?」  
「……その人はさ、普段は毒舌ばっかりで、怪力で、すぐに手が出る凶暴な娘なんだけどさ、…本当は誰よりも優しくて、脆くて、弱い女の子なんだよ。それを隠すために、すぐに悪口言ったり、殴ったりしちゃうんだ。…余計なお世話かもしれないけど……」  
新八の頬がどんどん赤くなる。でも、決意に満ちた表情。  
「…護りたいと思ったんだ。僕なんかよりずっと強いけれど、ずっと弱い女の子を。………神楽ちゃんを」  
きっと私の目を見据える。  
「好きだよ、神楽ちゃん」  
 
一瞬、時が止まったような気がした。  
新八は今、なんて……?  
「し、新八……?」  
「…何?神楽ちゃん」  
「今の…ホントアルカ?…」  
「ホントだよ」  
「ホントのホントに、ホントアルカ?」  
「ホントのホントに、ホントだよ」  
「しっ…ぱちっ…」  
頬を熱いものが伝う。胸が最高潮に脈打つ。  
ああ、最初から私は、空回りしてただけだったアルカ…。私は、…私たちは、最初から、お互いのことを……。  
「か、神楽ちゃん大丈夫?そ、そんなに嫌だった?」  
「うるさいアル!!お前が紛らわしいマネしなかったらこんなことにはならなかったネ!!」  
「えっ!?」  
ぎゅっと新八に抱きつく。  
「…スキアル」  
「え?」  
「私もっ…新八の事…大好きアルっ……!」  
「神楽ちゃん…」  
 
どちらともなく唇を触れ合せた。最初は本当に触れる程度に。だんだんと深くなってゆく。  
「んっ…ふぅっ…」  
「ふっ……はぁっ…」  
舌が絡み合う。新八と触れ合っているところからだんだんととけていってしまうような気がした。夢中で新八の舌を絡めとり、吸い、啜りこんでゆく。  
「…っぷはっ…はぁっ…はぁっ…」  
「はぁっ…しんぱち…部屋…いこ………?」  
「っ…うん」  
 
布団の上で、新八が私の服に手をかけると、ゆっくりと脱がしていった。  
「新八…手つきがやらしいネ…」  
「なっ…し、しょうがないだろ、実際そういう気分なんだから」  
「…だ、だからお前は新一じゃなくて新八なんだヨ」  
本当は嬉しかった。新八が私に興奮してくれていること。新八が、私を求めてくれていることが。  
お互い生まれたままの姿になって、ひたすらに相手を求め続ける。  
新八が私の胸に顔を近づけた。  
「んっ…」  
無意識に声が出る。チロチロと新八が先端を舌でなぞる度に、昨日の時とは比べ物にならない快感が脊髄を貫く。  
「あんっ!…はぁっ…ぁっ…」  
突起を口に含まれ、吸われる。ぢゅうぢゅうと音を立てる新八の頭をつかんで、必死に声をあげないようにした。  
新八の手が私のオンナへと伸びる。触れられたときにぬるりと滑って、そこで初めて私は、自分がもうドロドロに濡れていることを知った。  
意外にも男らしいごつごつした手が割れ目をなぞる。ざらざらした手が擦れて、やっぱり昨日とは比較にもならない快感となった。  
「んんっ…あっ…ゃあんっ」  
もう声など我慢できない。新八がついに、私のナカへと指を進めた。  
「うわっ…すごいきついよ神楽ちゃん…それにすごい濡れてるね」  
「へ、変な分析するなヨ…ばかぁっ…」  
ゆっくりと指が膣内を往復する。ほぐれてくると、ゆっくりだった動きがだんだんと速くなってくる。  
「んっ…ふぁっ…やぁっ…あっ!」  
どんどん快感が高ぶってくる。ああ、もうダメだ。  
「んんっ…ああああああああああっ!!」  
新八の指で、私は果てた。  
 
「はっ…はっ…しんぱちぃ……」  
「神楽ちゃん…可愛いよ…」  
新八のキスを受けとめながら、脚を開いていく。  
「新八…ちょうだい……?」  
「……っ」  
新八のネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲が私の入口にくちりと音を立てて添えられる。  
「神楽ちゃん…行くよ……?」  
「ん…しんぱち…きて…」  
新八のネオ(ryが私のナカを掻きわけて入ってくる。いくら指でほぐしたからといって、男のモノを初めて受け入れる私には、やっぱりキツかった。  
「んっ…痛……っ」  
「か、神楽ちゃん大丈夫?やっぱり止めておこうか…?」  
ほんとにこいつは、どこまでも人のことばっかりアルナ。たまには自分の欲望に素直になってくれてもいいのに。  
「私…痛いのはイヤだけど…新八と一つになれないほうが…もっとイヤアル……」  
「…っ!!我慢できなかったら、言ってね……」  
さっきの指よりもさらにゆっくり、ゆっくりと、私に新八が入ってくる。やっぱり痛い、けど、なんでだろう、すごく…すごく、嬉しくて…あれ、おかしいアルナ、前がかすんで見えないや。  
「神楽ちゃん…泣いて…?」  
「痛いからじゃないネ…新八と一つになれたことが、ホントにホントに、嬉しかったアルヨ……」  
新八のモノを全て咥えこんだ私は、新八に微笑んでみせる。  
「新八…好きヨ」  
「……うん」  
新八の腰が動き出す。やっぱりはじめはゆっくり、でも、だんだんと速度が上がってくる。  
「あっ!はっ!あんっ!しんぱちっ、しんぱちいっ!!」  
「はっ…はっ…か、ぐらちゃん……!!」  
名前を呼び合いながら、お互いを貪るように腰を振る。夜兎の血のおかげか、いつの間にかすっかり慣れてしまった私は、痛みよりも快感が勝るようになった。狂ったように腰を押しつける。  
陰茎を膣がぶちゅぶちゅと咥えこんでしごく。子宮が押し上げられ、思わず腰に力が入る。今までに経験したことのないような快感。それでも、やっぱり私の中には、こいつがいた。  
地味でヘタレでダメガネだけど、誰よりも優しくてまっすぐで、強い心を持ったこいつ。こいつがいるから、例え夜兎の血が流れていようと、狂うような快感の中でも、私は私でいられるアル。  
「しんぱちっ、しんぱちぃっ!!」  
名前を呼ぶ。叫ぶ。愛しいその名前を。もう前とは違う、そばにいる。私の声はあなたに届く。その事実が、私をさらに高ぶらせる。  
「好きっ、好きアル、大、好きアルっ!!」  
「僕もだよ、神楽ちゃん…っ、愛してる、誰よりも、絶対にっ!」  
水音が激しくなる。もうほとんど言うことをきかない脚を必死に新八の腰に絡める。限界が近くなる。  
「しんぱちっ、しんぱちぃっ、しんぱちぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!!」  
「神楽ちゃんっ……!!!」  
新八の愛を外にも内にも、私は存分に受け止めた。  
 
 
「…そういえば神楽ちゃん、昨日一人でしてたでしょ」  
「んなっ!なんで知ってるアルカ!?」  
「布団の匂いでね。最初は何の匂いだかわからなかったけど、さっきのアレで気付いて…」  
「私の布団の匂い嗅いでたアルカ、まじきもいアル、しばらく私に近づかないで」  
「ち、違うわっ!なんか濡れてたから銀さんが干しとけって、それでその時に…」  
「ふん、もうそんなことはどうでもいいネ、それよりお前、今日なんでこんな遅くに来たアルカ」  
「神楽ちゃんがキモイなんて言うからでしょ…ああ、きららさんを駅まで送ってきたんだよ。やっぱり彼女一人じゃ心配だからね。いやぁ、ホントはもっと早くこれたはずなんだけど、帰りに迷っちゃってね」  
「お前結局江戸を知らない女の子にエスコートしてもらってたアルカ。ホントダメガネアルナ」  
「やめてくんない!?僕だってちょっとへこんでるんだから!!…っていうかノリで中出ししちゃったけど大丈夫かな…つーか、人間と天人って子供できるのか?」  
「大丈夫アルヨ。私は丈夫だから、天人だろうが人間だろうがフツーに孕むネ。多分」  
「いやまずいだろそれ!どーすんだ僕、宇宙最強のえいりあんばすたーと地球最強の雌ゴリラを同時に相手取ることになっちゃうよ…」  
「心配無用アル、私が守ってあげるネ!」  
「…ダメだよ、神楽ちゃん」  
新八が私の手をぎゅっと握る。  
「ふぇ?」                 
「僕のために、無茶をしないで…。僕は君に守られたいんじゃない、君を護りたいんだ」  
「…だっ、ダメガネのくせに何言ってるアルカ!そんなことは私より強くなってから言うヨロシ!!」  
「……強くなるよ、君よりも、誰よりも」  
私の手を握る力が強くなる。  
「だから、ずっと、僕のそばにいて」  
ああ、バカバカバカ、私は本当にバカ。すぐにこんなことで涙腺が緩む。どこの年寄りアルカ。まったく、我ながら呆れるネ。  
「ぶわっ!!…か、神楽ちゃん!?」  
「…待ってるアル、お前が強くなるまで、ずっと、ずーっと…だから…」  
新八の頭を胸に抱え込んだまま、耳元でそっと囁く。  
「ずっと私の、そばにいてネ」  
 
 
 
「ちょっと銀時、いつまでここに居座るつもりだい。開店は夜からだよ!」  
「…ったく、これだからガキは……」  
 
 
 

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