「ん……」  
 掴んだ手を俺の肩口まで導いて身体を支えさせ、空いた手で後ろ頭を引き寄せる。  
 何も知らない唇を舌先で割って口内に這い入ると、おびえたように俺にもたれた月詠がびくりと震えた。  
 ちゅぷ、と濡れた音が頭に響く。歯列をなぞり、舌を捕えて吸い上げる。  
「っ、ふ……ぅっ……」  
 俺に唇を貪られる不安定な体勢で机についたもう片方の手が、ぶるぶると震えていた。肩口の手にあまり重さ  
を感じないのは、そっちに体重がかかっているせいだろう。  
 変なところで他人に気を使う。  
 ――ほんと馬鹿なやつ。  
「は、っ……!?」  
 舌を放して強引に細い腰を引き寄せる。さすがにバランスを崩して倒れ込んだ月詠受け止め、そのまま肩に担  
いで立ち上がる。女にしては背がでかいのに、見た目ほど重くない。  
「お、おい銀時」  
「ここじゃ狭くて抱けねぇ」  
 そのまま奥の部屋襖をあけて、万年床に月詠を下ろして座らせる。俺も屈んで、お互い顔を見つめあう。  
 俺のものとも月詠のものともつかないよだれで濡れた赤い唇。上気してピンク色になった頬。少し潤んだ目が  
、いつもより頼りなげに俺を見上げる。  
「はっ、やらしい顔」  
 クナイでも飛んでくるかと思ったが、僅かに唇を噛みしめただけで予想外に何の反応もなかった。  
「なぁ、お前ちゃんと楽しんでる?」  
「楽しくはない」  
「吉原の人間なんだから分かんだろ? こういうのは男も女も楽しんでなんぼなんだよ」  
「前に言ったであろう、わっちは座敷に上がったことがないからそういうことは分からぬ」  
 ようは、さっきのパチンコやパフェと一緒なんだろう。俺を慰められれば自分は楽しくなくていい、と。  
 そういう意味じゃ吉原に対する忠誠心となんら変わりない。  
 ――なら善がるぐらい楽しくさせてやるよ。  
「……舌出せ」  
 従順に差し出されたそれに、俺の舌を絡ませる。  
「んぅっ……ふ、っ……」  
 月詠の帯を緩めて、着物を一気にはだけさせる。白く引き締まった身体と豊満な胸が露わになる。中途半端に  
腕に引っかかった着物がかえって艶めかしい。  
 
 ――?  
 首筋から肩にかけて指を這わせていくと滑らかな肌の上に何かが障った。ふと目を向けて、それがふさがった  
傷跡だと気付いた。  
 肩、胸、腕、背中。そこかしこに大小様々な傷跡がある。色が白いから普段はあまり気にならないが、こうし  
てじっと見てみるとこいつの生き方が生半可なもんじゃねぇことがよく分かる。  
「ふ、……っ」  
 首筋に舌を這わせながら胸を手で包む。前に偶然触っちまったが、やっぱりこいつ胸でけぇ。手のひらに収ま  
りきらないそれの柔らかい感触を楽しむ。  
「今日はジャーマンかますなよ」  
「わかっておるっ……!」  
 胸元で呟いた俺に、月詠が潤んだ目できっと睨みつける。  
 こんな風に女をいじめるなんざ久しぶりで、愉快さに口元が歪む。  
 背中で身体を支えてやりながら、そっと床に月詠を横たえた。  
 
 
 
 真っ白い乳房の真ん中でピンク色した乳首を舌先で舐めると、俺の下に敷かれた身体がびくっと震えた。  
「感じた?」  
「く、くすぐったいだけじゃ」  
「ふーん……ま、いいけど」  
 女を捨てたっていう例の下らない意地か、はたまたホントに不感症なのか。  
 ただくすぐったいってやつはいい傾向だ。肌の感覚が良い女は教えてやりゃ驚くほど敏感な身体になる。俺は  
乳首を口に含んで、舌の腹でねっとりと舐めた。  
「んッ……!」  
 胸の上を這いずりまわる俺の舌から逃れようと身をよじる月詠を上半身で布団に押しつける。上背は断然俺の  
方がでかいから、いとも簡単だ。  
 いくら死神の字がついたところでこいつが女なんだと実感する。  
「……ひ、っ!?」  
 片方の腕で両手首を捕えて、空いた手でわき腹をつ、と撫でてやると腹の筋肉が緊張したのが分かった。感度  
が悪いわけじゃねぇ。  
「ふ、あっ! ま、待て、くすぐったい……!」  
 月詠の嘆願を無視して、首筋や脇の下の性感帯を指先で触れるか触れないかの微妙な強さで伝っていく。あっ  
という間に紫色の目から涙が雫になって零れた。  
 
「っ……!」  
「なーんだ、ちゃんと感じてんじゃん」  
 黒いパンティの上から指の腹で擦ると、そこは明らかに濡れていた。  
 恥ずかしかったのか、耳まで真っ赤にして俺から目を背けた。服や下着を脱がすのに抵抗しないのは若干残念  
だが、なかなか俺のサド心を煽ってくれるいい反応だ。  
 すっかり濡れたそれを取り去って、直に触れてみる。熱く濡れた粘膜が、俺の指にまとわりつく。  
「分かる? 俺の指にお前のマンコが吸いついてんの。なに、そんなに俺がほしいわけ?」  
「……」  
 月詠が、耐えるように背けていた顔をこちらに向けた。  
 相変わらず耳まで真っ赤だったが、そこに羞恥の色はない。俺に腕を抑えられたまま、首を伸ばして。  
 俺に、触れるか触れないかの不格好なキスをした。  
「ああ。ぬしが欲しい」  
「……」  
 ――かなわねぇな。  
 真摯に俺を見据えて言った月詠に、俺は内心思った。  
 どうもこいつ相手にはごまかしが効かねぇ。からかい半分を、大真面目に返されちまう。  
 性根がねじれにねじれて、変化球しかろくに投げれない俺にはこいつの直球が恐ろしくもうらやましい。  
「……わかった」  
 わだかまっていた帯と着物を取り去って、俺は月詠の身体に身を沈めた。  
 
 

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