坂田銀時が何か気がかりな夢から覚めると、彼は自らの下半身が四人の女によって弄ばれていることに気がついた。  
 
 
「ってオイィィィィィ!」  
 
「うむ、起きたか」  
 無表情で袋を揉む月詠。  
「あら、おはようございます」  
 にっこりと笑って竿を扱く妙。  
「お、おはよう……気持ち良いか?」  
 恥ずかしそうに眼を伏せて亀頭を撫でる九兵衛。  
「銀さんお目覚め?うふふ、今日も素敵ね」  
 恍惚とした笑みを浮かべて菊門を舐め回すさっちゃん。  
 
 切れかけた蛍光灯に照らされた銀時の部屋で、とんでもなく淫靡な光景が広がっていた。  
 
「え?これなんてAV?なにこれ夢?銀さん起きてないの?そーいや昨日全蔵と長谷川さんと三人でだいぶ呑んだしなーあーそっか夢かーじゃあ早く起きないと」  
「夢じゃあないわよ」  
「イデデデデデ握んな握んな!わかった!夢じゃあないから!銀さんは現実を見つめます!」  
 
 妙に竿を強く握られ、銀時は涙目で床を叩き降参の意を示す。あらそう良かった、と言って妙は再び銀時を扱き始めた。  
 
「あのー……お前ら何してんの」  
「見てわからぬか?ぬしの息子を元気にしておる」  
「いや、それは目ェつぶっててもわかんだけどよォ。そういうことじゃあなくて」  
「僕らは君に抱かれたいんだ、銀時」  
 九兵衛が銀時の言葉を遮った。  
「それは、つまり……その……僕らは」  
 真っ赤になって言い澱む九兵衛の代わりに、銀時の菊門に奉仕していたさっちゃんが顔を上げてあっけらかんと言う。  
「要するに私たち、みんな銀さんが好きなのよ。あのドッキリの前からね」  
 指でくるくると後孔の周りを撫でながら、布団に肘をついてさっちゃんは微笑んだ。  
「それで、銀さんが大好き過ぎてにっちもさっちもどうにもブルドッグだから、この際銀さんに全員抱いてもらって誰がいいか決めてもらおうってわけ」  
 
「勿論、誰が選ばれても恨みっこなしです」  
「いやあの、そう言われてもよォ。ってかさっちゃんも随分古いネタ使うな」  
 締め括る妙を刺激しないように――相手は菩薩の皮を被ったゴリラだ、息子を握り潰されたくはない――銀時は冷や汗を垂らしながら慎重に話を逸らそうとする。  
 
 しかし、そんな小細工が通用する訳はない。  
 
「わっちらはな、銀時。皆がぬしに心底惚れぬいていると解っているから、ぬしがこの中の誰を選んでも祝福することができる。ただ」  
 月詠は言葉を切り妖しく笑った。知らず、銀時の背筋が粟立つ。  
「わっちらにここまでさせておきながら――もし、ぬしが生半可な気持ちでぬしを慕う、そんじょそこらの小娘にうつつを抜かすくらいなら。……ぬしの自慢のこの息子、今すぐ千切り取るまでじゃ」  
 その眼は笑っていなかった。  
 
「ちなみに、新ちゃんと神楽ちゃんなら今日はここに来ないわよ。だから安心してくださいね、銀さん」  
「な、なんでそんなこと知ってるのかなー、お妙さん……」  
 顔をひきつらせながら問うと、信じられない答えが返ってきた。  
「あの二人は今頃うちでズッコンバッコンしてますから」  
 ――え?ギッコンバッタン?ガッタンゴットン?……ズッコンバッコン?……誰が?……神楽と新八が?……エェェェェェ!?  
 娘と息子が近親相姦に勤しんでいると知った父親に近い心境で絶句する銀時。  
 
 構わず、妙は嬉しそうに頬を押さえて続ける。無論片手は銀時を握ったままだ。  
「新ちゃんったら、てっきり神楽ちゃんの気持ちに気付いてるものだと思ってたけど。やっぱり鈍感なのね、今時の子にしてはちょっと奥手すぎるわよ。ねえ?」  
「チェリーなぞそんなもんでありんす。特に新八のようなタイプは、筆下ろしにおなごが乗っかるくらいが丁度良い」  
「しかし神楽ちゃんもかなりアピールしていたのにな。片方でもやきもきしたのに、両方から相談されるお妙ちゃんは相当大変だっただろう」  
「そうなのよ、新ちゃんも口を開けば神楽ちゃんのことばかりで。青春って感じで見てる方は楽しかったけど、神楽ちゃんが可哀想だわ」  
「新八くんはヤるときはヤるけど、普段は本当に駄眼鏡だからね。眼鏡だし八位だし阪口だし」  
『ねー』  
 
 四人の女が一人の男に奉仕しながらガールズトークをするという、銀時にとって最早カオス以外の何物でもない空間が下半身で形成される。  
 ――いやあの何お前ら人のネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲弄りながらきゃいきゃいしてんのォ!?  
 ――ってか最後の眼鏡!お前も眼鏡だし駄眼鏡だし画伯だし!人気投票なんかジャスタウェイより下じゃあねえかァァァァ!助けて松陽先生ェェェ!!  
 
 不条理に過ぎる現実に、思わず彼はもういない師に心の中で助けを求めた。  
 師とかつての友、彼らと共に野原を駆け回っていたあの頃に出来るなら戻りたい。本気でそう願う銀時の目には涙が滲んでいた。  
 
「……ちょっと銀さん。聞いてます?」  
「え、あ、はい。すみません」  
 銀時は敬語になるほど混乱していた。現実逃避をやめたものの、何も変わってはいなかった。  
「そんな訳で両想いが発覚した神楽ちゃんと新ちゃんは既成事実作りに勤しんでるわ。私たちが全力でバックアップしたから、心配しないで」  
「ちょっと待てよ、何したんだお前ら。嫌な予感しかしねーんだけど」  
 
「神楽ちゃんのお願いだもの。まず私が新ちゃんを呼び出して」  
「僕が稽古をして疲れさせて」  
「わっちが呑ませて全裸に剥いて」  
「私が新八君をギッチギチに縛っておいたわ。蝋燭と鞭とローションはオプションよ」  
「後は合併するだけね。そういうわけで銀さん、私たち全員と合併してもらいます」  
「オイィィィィ!お前らうちの子にナニしてくれてんのォォォォ!?何その完璧な連携プレー!?俺のこと取り合ってんじゃあなかったの!?そもそもどこが『そういうわけで』なのか全然わかんねーし!」  
 
『いいからヤれ』  
 
「ヤります。ヤりますから助けてください」  
 
 亀頭に日本刀、根元に薙刀。袋と下の口にクナイ。  
 問答無用でネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲を人質にとられ、銀時は全力で土下座した。  
 
「うあ、やべ……」  
 
 銀時は半ばやけくそで、折角のこの状況を楽しむことにした。ちなみにじゃんけんの結果妙、九兵衛、月詠、さっちゃんの順で本番ということになった。  
 
「ん、ちゅ……ふ、気持ちよいか銀時?ひくついておるぞ」  
「ぢゅ……む、ん、れろ、んん。銀さぁん、銀さんの、好き。おっきくて、硬くて、太い……」  
 
 寝そべる銀時の腰の両側から、月詠とさっちゃんがアイスキャンディを舐めるように銀時に舌を這わせる。先程萎えた銀時は瞬く間に復活した。  
 
「あ、お妙ちゃん、そこ、駄目ぇ」  
「ふふ、九ちゃん可愛い。ほら、こんなに濡れてる……」  
 少し離れた所に予備の布団を敷いて、妙と九兵衛が絡み合っている。  
 優勢なのは妙の方で、首筋を舐められながら弄られている九兵衛の秘所からくちくちと濡れた音がしていた。  
 九兵衛も反撃しようと妙の秘所に手を伸ばしているのだが、感じやすいのかマゾヒストの気質があるのか殆どされるがままだ。  
 
「銀時、こっちに集中せんか」  
「ぎーんさん、何九ちゃんとお妙さんばかり見てるの?さっちゃんとツッキーのことも見てほしいんだゾ?」  
「あ、悪ィ」  
「そんな銀さんにはお仕置きだゾ!ツッキーお姉様、あれを使うわ!」  
「ええ、よくってよ」  
 
 また古いネタを挟みつつ、二人は豊満な胸を持ち上げてそこに銀時を挟んだ。  
 
 さっちゃんはうっとりと、月詠は無表情のまま。互いに頬を赤らめて肉感的な身体を寄せて、ぴったりとくっつく。  
 
「まだ気をやるでないぞ銀時。わっちら四人を相手にしてもらわねばならんのだから」  
「銀さんなら大丈夫よ。こんなに熱くてどくどくして……」  
 吉原製だというローションをたっぷりと垂らして、月詠とさっちゃんは体を動かしはじめる。  
 色が白く柔らかいさっちゃんの巨乳と、少々大きさでは劣るが張りのある月詠の美乳。四つの蠢く肉の塊に包まれた銀時は痛いほどにいきり立っていた。  
 
 ――え?なにこれやっぱ夢?じゃなきゃ天国?銀さん死ぬの?全国の男の子の夢、ダブルパイズリが今ここにィィィィ!!?  
 ――先生ェェェ!俺、やったよ!童貞の頃の夢を叶えたよォォォ!!  
 先程現実逃避の為に思い浮かべていた師の顔を、今度は果ててしまわぬように必死で思い出す。  
 
 そうせねばならないほど、今の状況は魅力的だった。  
 何しろ普通はあまりされる機会もない胸を使った愛撫を、二人がかりでされるのだ。  
 更にその二人がそこらのAV女優など物の数にも入らぬ美人という、中学生の妄想のようなシチュエーションである。新八のような童貞なら話を聞いただけで射精する。  
 視覚的な興奮度、刺激ともに凄まじい。しかしどうにか暫くは持ちそうだと銀時は漸く一息ついた。  
 
 どう言葉責めをしてやろうかと息を吸うのと、二人が更なる追撃を加えてきたのは、全くの同時。  
 
「ん、ツッキー……ふ、ぁ」  
「む、んちゅ、ちゅ、んっ」  
 
 ぬちゅぬちゅと、二人が銀時の先端を口に挟み込んでディープキスを始めたのだ。  
 竿にはふにふにと柔らかい、豊かな弾力。時折四つの突起がこりこりと擦れて、その度に月詠とさっちゃんそれぞれの口から小さく声が漏れる。  
 その上、粘膜に絡み付く唾液と舌と先走り。  
 ……限界だった。  
 
「――ッ、出るッ!」  
 
 びゅるっ、びゅくくっ。  
 銀時は自身を大きく脈打たせ、欲を思い切り吐き出した。  
 
「はあっ、銀さんすごぉい。こんなに沢山……」  
「……ふ、やるな銀時」  
 
 十代の少女が居候しているため、銀時は連載初期から中々処理もままならず正直かなり溜まっていた。  
 そのためか白濁は二人の顔といわず髪といわず汚し、ぬとりと粘ついて胸へと垂れた。  
 
「しかし折角の子種が勿体無いの。どれ、さっちゃん。こっちを向け」  
「ん、んぅ……やだぁ、ツッキー……あ、くすぐったい……や、あんっ!あ、か、噛んじゃ駄目ぇ!」  
 
 月詠がさっちゃんの眼鏡をそっと外し、顔や眼鏡に付いた精液を舐めとる。  
 耳の後ろに舌を這わせ首筋をなぞり胸の突起を甘く噛めば、さっちゃんは待ち焦がれた刺激に啼いた。  
 ――え、なんなの?何この置いてきぼり感?なんでお前ら銀さんそっちのけで盛ってんのォォオ!?これはこれで良い眺めだけどォォォォ!  
 
「銀さん、準備はできました?……あら、そんなに大きくして」  
「あ、ああ。お前こそ大丈夫かよ」  
 
 銀時が放置プレイによる被虐的快感に目覚めつつある時に、丁度妙から声がかかった。  
 なんだかんだで銀時は月詠とさっちゃんの痴態を見せつけられて復活していた。現金なものである。  
 
「うふ。覚悟してくださいね?銀さん」  
 
 妙が妖しく笑む、その表情は女のそれ。  
 銀時にとって最も長い夜は、始まったばかりだった。  
 
 

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