「ねえ銀さん、私たちが最初に言ったこと覚えてます?」
「あ、ああ、……なんだっけ」
微笑んで問う妙にぼうっとした頭で問い返すと、質問を質問で返さないでくださいと頬をつねられた。
「いででで!やめろよ!わかったわかった思い出すから!……えーと、ごめん。何だった?」
「私たちの中から誰か一人選ぶ、ってことですよ」
ぎくり。固まる銀時をよそに妙は続ける。
それは、意外な言葉だった。
「私たち――それ、やめようかと思って」
「え?」
「だって銀さん、私たち全員のことあんなに好いてくれてるなんて……あんなこと言われてあんなことされたら、もうみんな他の人のところになんかいけないもの」
だらだらだらだら。背中を一気に嫌な汗が濁流となって流れ出す。
一時のテンションに身を任せ、一体俺は何を言った?
脳裏に浮かぶ数々の歯の浮くような科白と、四人の女の言葉が交互に響く。
『――俺に惚れてんなら――黙って俺の、傍にいろ――』
「約束通り、ずっと傍にいさせていただきますね。よろしくお願いします、あなた」
『――お前が何だろうが、銀さんが何度でも抱いてやるし何があろうが傷つかねえ。ずーっと、な――』
「僕、銀時と一緒なら頑張れる。……銀時、ずっと一緒だ。死が僕らを別つまで」
『――俺はお前がいい女だって知ってる。んで、それは俺だけ知ってりゃいい――』
「わっちが女になるのは、銀時。ぬしの前だけじゃ。未来永劫、な。よろしく頼むぞ?旦那様よ」
『――お前の人生をくれや。さっちゃん――』
「銀さん、銀さんになら何だってあげるわ。人生だって、心臓だって。私、銀さんだけの雌豚だもの」
――やっちまったァァァァァァ!!
一気に賢者タイムに突入した銀時は激しく後悔していた。
――K点どころか銀河系、いや宇宙の外までイっちまったじゃねえかァァァァァ!江戸で一番おっかねえ女四人に何てことしてんだ俺ェェェェェ!!
しかし、時既に遅し。四人の女は満面の笑顔だ。
――あ、これ、断ったら殺されるわ。
ぷつん、と銀時の中の何かが切れた。
「あーもう、こうなりゃヤケだ!銀河系だろうが大宇宙だろうが突破してやらァァァァ!!おめーら全員今日中に孕ませてやるから覚悟しやがれェェェェェ!!」
銀時の叫びにきゃあきゃあと四人は騒ぎ、我先にと愛する男に絡み付く。
「お慕いしております、あなた」
「好きだ、銀時」
「惚れておるぞ、旦那様よ」
「愛してるわ、銀さん!」
夜明け鴉の声が枯れても、爛れた宴は終わらない。
空高く昇った太陽の光に照らされて、銀時は再び快楽と欲望の海へ飛び込んだ。
了