「なに、硬くなるな銀時。わっちとぬしの仲じゃし、こうなった以上乗り掛かった船じゃ。腹をくくれ」  
「言われなくともそーすらあ」  
「くく、拗ねるでない。これでもぬしに惚れておるのだ。硬くなっているのはわっちのほうじゃぞ?」  
「どこがだよ」  
「もっとも――ここは硬くしてもらわないと困るがのう」  
 
妖艶に笑む月詠は銀時の上にしなだれかかると、自身を細い指で弄ぶ。  
「なに、遠慮はするな。妙や九兵衛のようにおぼこではないわ」  
くつくつと笑って彼女は銀時の瞼へ口付ける。耳朶を甘噛みし、首筋から鎖骨の窪み、男には不要な胸の飾りまで舌を這わせた。  
熱い舌がうねうねと這い回り、手はしゅっしゅっと絶妙な強さで銀時を扱く。  
「熱いぞ、銀時……脈打っておる」  
はあっと熱っぽい吐息を漏らす月詠はどうしようもなく妖艶で、その鋭い眼と低い声で責められて情けない声が出そうになる。  
 
先程、九兵衛の身体を鹿に例えた。だとすれば月詠は猫科の肉食獣だろう。  
鍛えるところは無駄なく鍛え上げられ、しかしその身体は女らしさを決して失わない。  
豊かな胸は銀時を挟んだ時のローションの名残か、はたまた一戦交えた女たちの体液か。ぬらぬらと濡れて嫌らしい。  
痛々しい顔の傷さえ、その美しさを引き立てる装飾品。  
 
「どこを見ておる、銀時」「いつっ」  
彼の内心を見透かしたように、突起を噛まれた。  
「何すんだよ、おい」  
「すまないの、わっちも緊張しておるのじゃ。何しろ、男とするのは初めてでな」  
「は?」  
 
一瞬意味が解らず呆然とする銀時。月詠は心底可笑しそうに笑む。  
「なに、簡単じゃ。あの時わっちは女を捨てた。……地雷亜でさえわっちを抱かなかった」  
もう居ない、彼女のかつての師。彼女の美しい顔を彩る、酷い傷痕をつけた男。  
 
「しかしいくら捨てようが女は女。あそこは男だけでない、女の欲望渦巻く場所じゃ。わっちは百華の頭、同じように捨てきれぬ女を抱えるおなごは吉原には――百華には数えきれぬ」  
月詠はそんな女たちを、ここにいる他の三人と同じように抱いたのだろう。  
抱いて、包んで抱えて抱き締めて。けれど己を抱き締めてくれる誰かを見つけられぬまま、歩んできたのだろう。  
銀時は思わず口をつぐんだ。  
 
「何じゃ?不安か?――心配するでない、わっちとて吉原のおなごじゃ。ぬしを悦ばせる手管くらい、心得ておる」  
沈黙をどう受け取ったのか、首を傾げてにやにや笑う月詠。  
銀時は身体を起こし、彼女を無言で抱き締めた。  
 
「ちょ、何を」  
「別におかしくねェだろ、したいからこーしてんだ」「あ……うむ」  
暫く二人とも無言のまま、じっとそうしていた。こんなこと初めてでも何でもない筈なのに、膝の上に乗った月詠の心臓の音がやけにうるさく聞こえる。  
――他に何も聞こえないほど。  
 
「なァ。無理すんなよ」  
「え?」  
「お前はここでは百華の頭じゃねえ、吉原の女じゃねえ。そもそも性別なんて、お前が言うよーに捨てられるもんでもねえ」  
訥々と、言葉を月詠の耳に流し込む。その耳朶は確かに赤く染まり、熱を持っていた。  
 
ぬちゅ、と月詠の濡れた秘唇に銀時の自身を擦り付ける。  
「あっ、銀時、や……」  
「お前が誰を何人纏めてよーが、どこの奴だろーが。お前は女で、俺に惚れてて、俺に抱かれたくてこうしてんだろ?」  
 
ぐち、ぬちっ、ちゅっ、ちゅく、ぐちゅ、ぢゅるっ、ちゅぶぶっ!  
「やっ、やっ、銀時、擦ったら、あっ、そこ擦るなっ、やめ、あっ!」  
「やめねーよ。俺はお前がいい女だって知ってる。んで、それは俺だけ知ってりゃいい」  
「やぁ、あ、やだ、来ちゃ、来る……っ!!」  
「だから、俺といろ」  
銀時はそう言って、持ち上げた月詠の中に自分のものを挿入した。  
 
「は、全部、入った……?」  
「ああ、俺のが全部お前の中に入ってる。……痛くないか?」  
「ふ、惚れた男のものが痛いわけがなかろう」  
「ならよかった。それじゃ、動くぞ」  
 
ぬるぬると滑る月詠の中。彼女のどうしようもない女。自分はそれを知る、唯一の男。  
そう思うと銀時の動きは自然と速くなってゆく。月詠も初めての男に勝手が違うと戸惑ったのか最初はぎこちなかったが、次第にリズミカルに腰を振りだした。  
ぱん、ぱんぱん!ぐち、ぬち!ぶちゅっぶちゅっぶちゅっぶちゅっ!  
皮膚がぶつかり合う乾いた音。粘膜が擦れ会う濡れた音。快楽に鼓膜から脳髄までも毒されて、もう止まらない。  
 
「あっ!やっ、いゃっ、あぁっ!やっ、やめっ、」  
「やじゃねーだろ、本当にやめんぞ」  
「あっ、やっ、やぁっ!やめちゃ、いやっ!ぁっ!は、んぁっ!」  
「つっても止められねーけどな……っ!」  
「ん、や、来る、きちゃう、くるっ、ぁ、や、やだやだっ、やぁぁぁっ!」  
童女のようにいやいやをしながら月詠は絶頂を迎え、銀時は低く呻いてその中に精を放った。  
 
「あ、銀時、わっちの口も、吸って……」  
「はいよ」  
「んちゅ、ん、んむむ、れろ、ちゅ……ん、銀時、好き。好き……」  
「ああ」  
「んっ、銀時のが……中から、垂れてきちゃう……ん」  
月詠が、精液と蜜の垂れるそこを広げて見せる。ひどく卑猥な光景に生唾を飲んだ。  
 
「そこまでよ銀さん!」  
ハスキーボイスが割って入り、彼は現実に引き戻された。  
見上げると、干し肉よろしく緊縛されて吊るされた雌豚がいた。  
 
「私が、お妙さんや九ちゃん、ツッキーなんかの責めで満足すると思わないでよね!私を成層圏までイかせられるのは銀さんただ一人よ!」  
「お妙ちゃん、やりすぎだったんじゃないかな?ほら、さっちゃん傷だらけだし……」  
「いいじゃない、本人がやれって言ったんだし。それに猿飛さんぴんぴんしてるわよ。ほら銀さん、相手してあげてください。これで最後ですから」  
 
――最後に一番面倒なヤツきちゃったァァァァァ!  
銀時は内心頭を抱えて、とりあえず江戸随一の始末屋、さっちゃんこと猿飛あやめの縄をほどきにかかった。  
 
 

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