さて二人目の相手、柳生九兵衛である。
九兵衛は妙と同様、経験がない。しかし彼女は妙とは違う意味で難儀であった。
「だ、駄目だ銀時、見ないで……」
「見ないままどうやってヤれっつーんだよ」
「だって、汚い」
「汚いわけねーだろ、お前のだぞ」
ぐったりした彼女は頑なにすらりとした脚を閉じて、細い身体を抱き締めて銀時を拒む。
そう、彼女は大の男嫌い。
先程まで月詠とさっちゃんに散々二人がかりで責められていた彼女には、流石に銀時を投げ飛ばす力は残っていなかった。
しかし、こういったことに対する人一倍の恥じらいは残ったまま。銀時が触れても、駄々を捏ねる子供のようにその手から逃げ続けている。
「あら、九ちゃんそれじゃ進まないわよ?せっかく月詠さんと猿飛さんが慣らしてくれたのに」
「嫌よ嫌よも好きのうちと言いんすが、のう」
「そんなこと言っても……その、やっぱり、怖くて」
「九兵衛、そんなに俺が怖いかよ。俺じゃあ嫌ならそれでもいいし、無理にするこたァ」
「違う!違うけど……僕だって銀時に、さわりたいけど、その」
「任せて!ここは私が一肌脱ぐわ!」
「ぬしは全裸だろう」
「あら、月詠さんもよ」
「俺ら全員まっぱだカーニバルだろうが……っておいィィィ!その縄をどこから出したァァ!?」
「忍法!僕っ娘☆ドキドキ緊縛初体験の術!」
「うわっ、ちょっと!そのネーミングはダサいと思うぞさっちゃん!」
「突っ込む所が違いんす」「あら、縛られるのも似合うじゃない九ちゃん。可愛いわ」
「あえて言おうさっちゃん、グッジョブであると」
「きゃーん、銀さんに褒められちゃったー!これだけでご飯三杯、いえ五杯はいけるわァァァァァ!」
「ほう、元気だのうおぬし。では早速、わっちと一杯、いや一戦交えるか。お妙、ぬしも混ざるといい」
「うふふ、お手柔らかに……あんっ」
三人を尻目に銀時は今度こそ九兵衛に触れる。
わけのわからない忍法により両手を後ろ手に、両足をM字に開脚した状態に緊縛された九兵衛。その身体は少年のようと言うのが相応しかった。
無駄な脂肪は一切なく、長年のたゆまぬ鍛練により鍛え上げられたものと一目で判るその肉体。
野性味のある、草原の鹿のような美しさと幼さがそこには宿る。
「や、や、銀時、やだ、ほどいて」
「それは無理だ」
恥じらう九兵衛は見たことがないほど愛らしかった。銀時は小振りな(それでも妙よりはある)胸にそっと触れる。
「大丈夫だ。無理にはしねえし、本当に嫌ならそう言え。その時はやめる」
「う……うん、わかった……ん、んぅ、ぁ……あっ……や、舐め……あっ」
撫でるように優しく揉みほぐし、やわやわと両手で愛撫する。つんと尖った先端を口に含んで転がして、もう片方を弄ぶ。
「はっ……あ、や、ぁ……ふ、ぅん、ん、んんん、んっ、ちゅ、んちゅ」
「はっ……どうだ、大丈夫か?」
「うん、平気……あの、銀時」
「何だ?」
「その……さっきの、もっかい、して……」
「さっきの、って……ああ、キスか」
「き!ききききすとか言うな!お前には羞恥心がないのか!」
「羞恥心ってお前、実際やっといてんなもんあるかよ」
「ううううるさいばか!黙ればか!さっさと……その、すればいいだろ!もう!」
「へェへェ。あー、でも九兵衛よォ」
「ん……何だ、銀時」
「これから俺ら、キスよりもーっとぐちょぐちょぬるぬるの、すっげえことするんだぜ?」
「な……んむむ、んーっ!んんん!んー、ん……んちゅ、ちゅっ、ちゅ……」
真っ赤になった彼女の耳元でわざと下品に囁いてから、反論を聞かずに唇を塞ぐ。
抗議の声を抑え込み、深く口付けるうち九兵衛も静かになる。おずおずと出された舌を口に含んで吸うと、白い喉が仰け反った。
「んんっ……ん、ぷは、ぎん、とき」
「下触るぞ」
「あ、やぁっ……だめ、汚いって……」
「だから、お前のが汚い訳ねーだろ。綺麗だよ、お前は」
「そん……あ、あっ」
そっと花弁を割り開き、割れ目をなぞる。くちりと濡れた音がして、そこは銀時を迎え入れた。
「指、入ったぞ。判るか」
「や……いわな、いで」
膨れた芽を撫でながら、ゆるゆると中の指を動かす。今更だがたまたま前日に、新八に言われて爪を切っておいてよかったと思った。
ぬち、……くち、ちゅ、くちゅ。くちゃ、ちゅっ、くちゅくちゅ、ぐちゅ、ちゅ、ぬぷっ。
「あっ……あっ、や、銀時、そんな、僕、も、あああっ!」
はあはあと息を荒げる九兵衛の身体が小さく跳ねる。銀時が指を抜くと、ぬるりと愛液が糸を引いた。
「はっ……あっ、銀、時」
「……そろそろ大丈夫だな」
「待って……銀時、やっぱり」
「どうした、九兵衛。痛かったか」
ちゅ、と銀時と仰向けに倒れた九兵衛のそこが触れ合った時、彼女が片方しかない目を伏せて拒絶の声を上げた。
「……怖いんだ」
「痛くないようにはするぞ。つっても銀さんの身体じゃねェし、限界はあっけど――」
「そうじゃない!」
九兵衛の声は震えていた。
「僕は、縛って貰わないと君に抱かれることもできないのかと思うと……また銀時を投げ飛ばして、傷つけるのかと思うと……怖くて、情けない。銀時が好きで、ずっとこうして触られたくて、嬉しいのに、なのに」
涙を見せまいとしてか、下を向いたまま彼女は捲し立てる。銀時はそれをただ黙って聞いていた。
「好きだ、好きなんだ、銀時……なのに、僕、女じゃなくて、男でもない半端者で、だから」
「それがどうしたよ」
「え――」
九兵衛を戒めていた縄を全てほどいて、銀時は彼女を抱き締める。
「ほら、投げ飛ばしたりなんかしねえだろ?」
「ぎんと、き」
「仮に投げ飛ばされたとしてもよォ、俺を誰だと思ってんだ?銀さんはそんなに柔でも年でもねえよ」
一旦身体を離して、頭を撫でながら語りかける。
「男だろーが女だろーが、んなもん関係あるかよ。お前はお前、柳生九兵衛だろ。俺はお前だから抱くんだよ」
「ぅ、あ」
「不安になったら言えよ。お前が何だろうが、銀さんが何度でも抱いてやるし何があろうが傷つかねえ。ずーっと、な」
「うん……うん、銀時。銀時、好きだ。銀時の、したいように、して」
「ああ」
ゆっくりと銀時は九兵衛の中に入り、ゆるゆると動き出す。
「……っ、あ」
「痛いか?」
「大丈夫……銀時、もっと、動いて、いいよ……ん、んぅ、つっ、う、ぅあ、あっ、や、あっ、あ……」
緊張がほぐれていたのも相まって、九兵衛の中は温かく潤い、しかし程好く締め付けてきた。
徐々に銀時の動きも速くなり、九兵衛は銀時の腰に脚を絡める。
「あっ!あっ、や、あぁっ!や、銀時、……ぅぁ、気持ち、いぃ……!」
自ら快楽を求め、腰をぎこちなく振る九兵衛に、銀時も限界が近付いていた。
「あ、あっ!あっあっ!やぁっ!あっ、もう、もう、駄目、駄目ぇ、銀時、も、ぁ、あぁぁぁ、もう、あぁぁっ!!」
「――う、俺も……!」
ぎちっ、と両の脚で銀時の腰を捕らえたま九兵衛が果てる。その中であっさりと銀時は吐精した。
「あ……銀時のが、出てる……」
「は、……九兵衛……」
九兵衛の紅潮した額に口付けを落として、銀時は自身を抜く。たらりとどちらのものか判らぬ体液が流れ出て、ひどく淫猥だった。
「やれやれ、漸くわっちの番か」
銀時が身体を起こしてそちらを見ると、ある意味修羅場が広がっていた。
ぐったりと横たわり、息を弾ませて月詠にもたれかかる妙とさっちやん。その二人を抱き寄せて、煙管をふかすは吉原百華の頭。
「勿論、ぬしにはもっと骨がありんす――のう、銀時?」
紫煙を燻らせて、彼女はにやりと笑った。
――俺、喰われる。銀時は真剣にそう思ったという。