「まったく、この男はとんでもない粗相やらかしてくれたもんだよ」
「お登勢さん、タバコは最寄の喫煙所でお願いしますね」
「何言ってるのお妙さん。ラブホっていうところはね、事が終わった後に男がくわえタバコで女の尻を灰皿代わりに使う場所なのよ」
「そうなのか? 妙ちゃん」
「いいえ、私達と猿飛さんは人種が違うのよ九ちゃん。
私はただ、仕事でもないのにタバコ臭いのを我慢するのが嫌なだけ」
「あねごぉ……私やっぱり眠いアルぅ……」
「神楽ちゃん、だから先に万事屋で寝ててって言ったじゃないか」
「……新八だけ呼び出されて面白くないアル」
「あーあーもう、いったいどれが誰だかさっぱりじゃないかい」
「わっちらは構わん。さっさとやりなんし」
「いや、でも、銀さんを裸にするの、僕だってちょっと抵抗が……」
かなりグダグダになりつつも新八は銀時を脱がし終え、神楽を家まで送っていった。
そうして残された女達の目が光る。
「じゃ、お登勢さん、そういうことで」
「いやいや待ちな、なんであたしなんだい」
「そうよ! 銀さんとずっぽりぐっちょりイクのはこの私よ!」
「趣旨ずれてるだろーが!!」
さっちゃんやお妙の大声にも銀時は目を覚ます気配がない。
これからの地獄を夢にも見ずに幸せそうに裸で布団にくるまっている。
「みんな静かに。起きたら作戦が台無しになるぞ」
九兵衛がそう言いながら足元の布団をめくりあげ、銀時の恥部を露出する。
「?!」
「………」
処女と非処女で反応に差が出た。誰がどうとは言わないが。
「ちょっと九ちゃん! そんな作戦立ててないわよ!」
「違うのか? 僕は作戦立案というからには、てっきり……」
「ま、ある意味立ってるけど」
銀時のそそり立つナニを見て全員が呟いた。
「基本はローションじゃが急の場合は仕方ない」
月詠がしゅこしゅこと片手をなめらかに上下させて男根を擦り上げる。
もう片手は指先を透明な先走り汁に絡ませ、カリ首を弄る。
月詠の手慣れた動きは吉原直伝であろうか、それとも酔いのせいか。
「根本は強く、先っぽは指で包むように。カリ首にはひねりを加えるのじゃ」
みるみる銀時のブツが大きく反り返っていき、女達は目を見張る。
さっちゃんですら顔を上気させた銀時に見惚れる間もなく、
「うぁっ……!」
銀時は眉根を寄せて呻き、月詠の手に白濁を飛び散らせた。
いつのまにやらその手の上にティッシュが重ねられていたのはお登勢の長年の経験によるものか。
当の月詠は己でやっておきながら、知識と実体験の差に呆然とした面持ちだった。
「……と、とまぁ、だ、だいたいこんなもんじゃ」
「まず僕にやらせてくれ」
「いつになく積極的ね、九ちゃん……」
「動かない人間相手に触る練習をしておこうかと」
「私は寝てるだけの銀さんだと物足りないわ……
やっぱり髪の毛わしづかまれて無理やり口に入れられて、ガクガク揺さ振られながら罵られるぐらいじゃないと興奮しないわ」
「なんだいアンタ、Mなのかい?」
「違うわ。私は銀さん専用のメス豚よ。Sであれば簡単になびくようなそこらの尻軽Mと一緒にしないでちょうだい」
「ぬしは単語選びを間違っているだけで、なかなかまっとうな事を言ってるのぅ」
手を拭きつつ月詠は感心したように言う。
「その前の無理やりのくだり、ドMの発想じゃなくて?」
そうお妙が軽く突っ込んでいる間にも、九兵衛は銀時のへたんとなった一物に手をかける。
「しぼんでいるが大丈夫なのか?」
「しごいているうちに回復してくる。ただ最初は優しい扱いが必要じゃがな」
「……優しくするのは気持ち悪い。妙ちゃん代わってくれないか。僕はドラ〇ンボールのほうを担当する」
「ちょっ、いやよ私もドラボールのほうがいいわ」
「妙ちゃん、それだとドラえ〇んのボールになってないか」
わいわいと色気もなく銀時の玉は二人の女に一つずつ握られ、おそるおそるもみこまれていく。
それでも、びんっ!と立ち上がり、妙の頬をぺちんと叩いた。
「若いってのは勢いが違うねぇ。なんだか旦那を思い出すよ」
懐かしい感慨にお登勢が浸っているが、誰も聞いていなかった。
暴れだしたお妙をとめようとモミクチャになっている。
「物足りないけどやっぱりここは私がやるわ!」
さっちゃんが意を決したようにいきなり叫んだ。
「静かに! 銀時が起きたら作戦が台無しに……」
「でもここはビーンと起こしてもいいんでしょ? 」
「いいも悪いも……ん? そもそもどんな作戦だったんじゃったか?」
「吉原の手練手管で銀さんを骨抜きにして快楽奴隷に仕立て上げる作戦じゃなかったかしら?」
「冗談よしとくれよ。こんなタダ飯食いの奴隷なんざいらないさね」
「そうよ、私が奴隷になりたいわけであって、奴隷の銀さんなんてテンション下がるわ」
「僕は特に意見はない」
「わっちは皆が手本を見せろというから触っただけで……」
一同顔を見合わせ、なんだかもうどうでもいいやという感じになり、
「はい解散〜」
と女達は去って行った。
「おいおい待て待て、一人は残んねぇとダメだっつの」
「何よ全蔵いたの? じゃあ私が残るわ! 朝起きたら怒った銀さんからお仕置きプレイね! きゃー!! 」
「それじゃ目的が変わっちまってるじゃねーか。禁酒させんだろ禁酒」
「そうねぇ、でも……なんだかまだ腹いせし足りないわ」
ぽつりとお妙がつぶやいた言葉は、女達に共通の気持ちであったので、自然と皆の視線がナニに向く。
そしてそのまま月詠へと。
「いや、しかし、あとは口や舌を使わなければいかんのでな」
「いいじゃないの。猿飛さんが実践してみたいっていう顔をしているわよ」
「え?! ま、まぁ……口頭で教えてくれたら口頭で実践するわよ」
「誰うま」
「上手くねーよ」
「いいからいいから。さ、スタンバってくださいな二人とも」
月詠とさっちゃんは気まずそうに顔を見合わせ、しかし拒否はしなかった。
皆の見ている前であれ、大義名分で堂々と惚れた男をいじくれるのだ。誰にも批難されずに。
「とりあえず軽く舐めることからじゃな。焦らし焦らしで責めていくのじゃ」
月詠の言うままにさっちゃんは銀時の立ちかけの物に唇を寄せていく。
心なしか震えているようにも見えた。
「……銀さん……」
目をつぶり愛おしそうに鬼頭に口づけ、舌をそっとのばして絡めるようにカリ首のシワを唾液で濡らす。
たったそれだけでさっちゃんも濡れてしまうのが他の女達にも伝わったが、誰も何も言わなかった。
「そのままゆっくりと手を竿に這わせて、持ち上げるようにしながら舌で根本から先のほうへ愛撫して……」
指示を出す月詠の声も小さく途切れていくほどに、さっちゃんの献身的な溺愛フェラは堂に入っていた。
「ねぇ……もう、口にくわえてもいい……?」
少し切なげにさっちゃんが声をもらす。
「まだ駄目じゃ。完全に勃ち上がるまでは舌でねっとりまとわりつかせつつ根本を手で撫でまわすのじゃ」
「……ん、こう? こんな……感じ?」
はぁっと熱い吐息が銀時からもれ出る。その反応にビクリとさっちゃんは身体を固くするが、起きる気配がないとわかると、ほっと息をついた。
「ん、ん、……もう、もぅ口に入れたい……我慢できない……ねぇいいでしょ……」
「まだじゃ。もっとしつこく舐めなんし」
待て、をかけられるたびにさっちゃんはじゅんと濡れていく。真からメス豚であることを自覚させられて、頬が染まるのをどうしようもない。
「はぁ…はぁ…銀さん……お願い……」
脳内は銀時とのおあずけプレイになっているようだったが、お妙ですらそんなさっちゃんには突っ込めなかった。
「ごめんなさい、ごめんなさい銀さん……!」
さっちゃんは涙目のままぎゅっと目をつぶり、淫らに唇を開けて男根をくわえ込んだ。
鋭い息が銀時から聞こえ、深い快感をさっちゃんに伝える。
さっちゃんは身震いすると、じっくり奥までくわえ込み、じゅるじゅる音を立てて引き抜き、自分の唾液で光る男根を皆の目に晒す。
女達の息を詰める音が狭い部屋に響き、誰ともなく気まずい雰囲気が満ちる。
気づいているのかいないのか、さっちゃんはそれをものともせず行為を続けていく。
「要領は手コキと一緒じゃ。根本は強く、先は優しく、カリ首は舌を絡ませながらひねりを」
淡々と月詠の指導も続く。
「んっ、んっふ、ん……っ」
さっちゃんの顎が上下する動きに合わせてドクドクとみなぎっていく銀時は、呼吸を荒げながらもまだ目を覚まさない。
さっちゃんは、これだけやってもまだ起きないなんて銀さんは寝ててもSなんだ素敵、とますますノっていく。
じゅぽり、じゅぽりと音が止まずに、さっちゃんの喘ぎに似た息遣いと混じり合い淫靡さが増す。
「手がお留守じゃぞ。もっともみしだけ、玉も忘れるな。舌の動きは横じゃ、口の中でねぶりあげろ」
月詠の頬も少なからず赤らんでいるが、もう事ここに至っては途中で止めるわけにもいかず、手に変な汗を握り指導し続ける。
「っく……う……!」
銀時は一度軽く悶えたあと、遠慮なしにさっちゃんの口内へとぶちまけた。
とろんとした恍惚の表情のまま、さっちゃんはゆっくりと銀時の肉棒を引き抜いて、白く苦い液体が一滴たりとも唇からこぼれ落ちないように、
こくんと飲み下した。
それを見ながら月詠はなんとなく唇を尖らせる。
「一度出すと次は長いって本当なのねぇ」
「これがそうか。なるほど」
「あんたら、まだ若いのにこんな耳年増になっちまっていいのかい?」
さっちゃんと月詠から完璧に距離を置いたところで交わされるお妙と九ちゃんの会話に、お登勢が呆れたように突っ込む。
「あら、何も知らない演技くらい出来ますよ。女ですもの」
微笑を見せつつお妙はしれっと言い放った。
──数時間後には、汗だくの銀時と汁だくのティッシュがベッドに放置されていた。
「この後は年長者にお任せして、さ、私たちはおいとましましょ」
「本当に起きやしないだろうねコイツ」
「これだけ抜いておけば大丈夫だろう」
各々が手や口元を拭いながら結構あっさりとした会話をする。
年長者というよりは、寝起きに開き直った銀時が襲いかからないであろう人物、という暗黙の了解の元、
お登勢はベッドの中で溜め息をつき、朝を待ったのであった。
完
「やっぱベッピンさんは怖ぇわ」
天井の死角に張り付いた全蔵はカメラ片手にそう呟くのであった。