細い腕が、力強く愛しい女を胸に抱く。  
静かな和風庭園に面した屋敷の一室で、それまで触れれば切れてしまいそうな空気をまとっていた  
小柄なサムライは、渾身の愛しさを込めて少女を背後から抱きしめた。  
 
「会いたかったよ、妙ちゃん」  
 
そのサムライの行為が意外だったのか、とっさに妙は自分にまわされた腕を振り払おうとする。  
しかし、華奢な見た目と異なり、小柄なサムライの腕からは、どうにも逃れることはできなかった。  
腕の中に妙を感じ、サムライは語りかけた。  
 
「あの時の約束を覚えているかい?」  
 
サムライは彼女の髪にそっと口づけ、彼女の耳元で囁きを続ける。  
 
「僕は、約束通り強くなって帰ってきた」  
 
約束と聞いて、妙は戸惑いを隠せない。  
 
「九……ちゃん?」  
 
自分を抱く腕の主の名を呼び、戸惑うように妙は九兵衛の顔を見上げた。  
 
「今度は妙ちゃん、君が約束を果たす番だ」  
 
九兵衛の顔を見上げた妙の唇に、九兵衛のそれが重なる。思いもよらない行為に、妙の時間は一瞬止まった。  
 
「やめて!九ちゃん」  
 
冷静に自らの身に起きた出来事を理解すると、妙は反射的に九兵衛を突き放すが、九兵衛は妙の抵抗を  
もろともせず、再び彼女を腕に抱いた。  
 
「今までずっと、君を想わない日はなかった。君を守れる強さを僕は欲せずにはいられなかった。」  
 
九兵衛はそのまま妙をきつく抱きしめると、今度は妙の頬に口付ける。  
 
「あの頃の約束のままに、僕と夫婦(めおと)になってほしい。そして僕を支えてほしい。  
僕には……君が必要だ」  
 
それまで抵抗していた妙だったが、九兵衛の言葉を聞いた瞬間、抵抗の手を収めた。  
再び九兵衛は、妙の唇を求めるが、二人の唇が重なっても、妙は抵抗する様子を見せなかった。  
しかし、妙は体を小刻みに振るわせ、何かを思い出したように、固くまぶたを閉じる。  
九兵衛は、妙が抵抗しないことを知ると、より深く唇を求めた。  
長い間求めてきた妙を存分に味わうように、唇の感触を、キスの味を、滑る舌先を駆使して丹念に味わう。  
妙の目尻から雫が一筋流れるのを合図に、再び二人は距離をとった。  
妙の口から、熱いため息がこぼれる。潤んだ瞳はとても悲しげな色に沈んでいた。  
 
「……奥に、座敷が用意してあるんだ。」  
 
九兵衛は、静かに奥のふすまを開けた。一組の布団が敷かれているのが妙の目に留まる。  
九兵衛は妙の手を取り、再び抱き寄せる。思いもよらない展開に、妙は驚きを隠せなかった。  
 
「九ちゃん、あなた……」  
「夫婦になるのに、早いも遅いも無いだろう?今すぐ……君が欲しいんだ。」  
 
そういうと、力強く妙を抱き上げ、奥に移動し、ふすまを閉じた。  
そっと慈しむように布団の上に妙を下す。  
これから起ころうとすることを思って妙の顔が強張る。  
 
「九ちゃん…本気じゃないわよね?」  
 
無表情でいる九兵衛は、妙の問いかけを否定するかのようだった。後ずさりしながらも、なおも妙は問いかける。  
 
「……私たち、女同士よ?」  
 
自分に迫ってくる九兵衛を諭すように、妙は問いかけるが、九兵衛は無言のまま妙に近づいていく。  
妙の逃げるスペースも無くなると、「鬼ごっこは終わりだよ」と告げ、九兵衛は再び妙を両腕に捕らえた。  
取り乱す妙をあやすように、九兵衛は彼女の髪を撫でながら言った。  
 
「……君も知っての通り、僕の体は女だ。大きくなっても男になれないことはとうの昔に理解している」  
「だったら、なんで夫婦になろうなんて……」  
 
真剣な妙の視線を受け止めるため、九兵衛は妙の方に向き合った。  
昔から変わらない、九兵衛を見つめる瞳。優しくて強い昔のままの彼女がそこにいた。  
 
「無謀なことだと…僕も思う。でもね……」  
 
妙の髪をなでていた手を妙の頬に移動させ、九兵衛はそのぬくもりを実感する。  
 
「でもね、君を忘れることなんてできなかったんだ。」  
「九ちゃん……私は…」  
「君に拒絶されるだろうことも、百も承知だ」  
 
妙の口から聞く前に、九兵衛は自らの決意を口にした。  
その言葉に、妙は口をつぐんだ。  
妙の頬に残る涙の跡をそっと指で拭って、九兵衛は彼女の瞳をまっすぐに見つめた。  
 
「君と子を生すことはできなくても、君を幸せにしたい。君と幸せになりたい。」  
 
九兵衛の独眼が妙を見つめる。その瞳は力強く、そして悲しげな色を放つが、  
そこには妙しか映っていなかった。  
 
「……どうしたらいいのかと、悩んだ」  
 
九兵衛は妙の唇を指でそっと撫でた。むずがゆく感じたのか、妙はそっと体を震わす。  
 
「良いアイデアは浮かばなかった。でも一つの結論に達した。」  
 
その言葉と同時に、妙を布団に押さえつけ、深く唇を求めた。  
妙はもがいて抵抗するが、九兵衛はそれを許さず、小柄ながら巧みに妙を押さえ込んだ。  
妙は唇を固く閉ざし、九兵衛を拒絶する。しかし、息苦しさからその鉄壁も長くは持たなかった。  
息苦しいだけだった口づけが、妙の中へ九兵衛の侵入を許した途端、甘い陶酔感となって広がった。  
身勝手な九兵衛の行動に困惑するものの、妙は全身に広がる甘美な感覚に戸惑いを隠せない。  
初めての感覚に手足がしびれてしまう。全身に広がる甘美な痺れ。背筋を通して下腹部に広がり、足の指先まで到達する。  
妙の息は上がり、震える体は、酸素を求めて喘ぐ。  
妙の抵抗の手が止まると、九兵衛は妙から唇を放し、着ていた上着を脱いだ。  
 
「僕は……君のことが好きだ。そして君が欲しくてたまらない」  
 
「君に僕のそばにいてもらうためには……」  
 
「君を縛り付けてでも僕のそばにいさせるためには………」  
 
「……僕無しではいられないようにしてしまえれば……」  
 
妙はぼんやりと曇る思考の中で九兵衛の声を聞いた。初めての感覚は妙に奇妙な居心地の良さを感じさせる。  
曖昧な感覚で九兵衛を眺める。目の前には、表情をわずかに和らげた九兵衛がいた。  
彼女は、妙の帯に手を伸ばし、一つ一つ丁寧に脱がしていく。  
 
「……九……ちゃん?」  
「妙ちゃん。好きだよ。君のために僕は剣以外の修行もしたんだ。」  
 
妙の首筋に九兵衛の唇が触れる。過敏になっている妙の肌は、九兵衛のぬくもりを敏感に感じ取る。  
妙の首筋から胸元に啄むように触れる九兵衛の唇の跡には、ほんのりと赤い印が残った。  
 
「君は変わらずに綺麗だね。妙ちゃん。君の体にずっと触れたかった。」  
 
妙の小振りな胸に、九兵衛は手を伸ばす。その瞬間、妙の体が強張る。  
妙のぼんやりとした思考から霧が晴れつつあるのか、虚ろだった瞳に鮮やかな色をが戻りつつ合った。  
 
「……九ちゃん……いい加減に……」  
「妙ちゃん、怒ってもかまわないよ。」  
 
妙の言葉に動揺することも無く、九兵衛は妙の胸に手を伸ばし、優しく包み込む。  
そしてその起立した色づく先端をそっと唇でつまんだ。  
先ほどまでとは比べ物に成らない衝撃が、妙を襲う。自ら慰める刺激とは全く異なる快感が妙を襲った。  
 
「なんだかんだ言っても、僕のこと、受け入れてくれるんだ。」  
「ちがっ……んっ……ぁんっ……」  
 
妙は背をそらし、どうにか快感から気を逸らせようとするが、  
九兵衛の無骨だが純粋な愛撫に捕われてしまう。  
 
「だっ…めぇ……そっちっ…ぁっ……」  
 
妙の息が上がる。九兵衛の指が妙を翻弄する。九兵衛の唇が、舌が、妙の心をかき乱す。  
幼なじみが、子供の約束を真に受けて、妙の前に帰ってきた。  
大切な友には違いない。心を許す親友であることも。  
昔、自分を守るために傷つき失った九兵衛の左目。自分は、九兵衛の左目になると誓った。  
その負い目もあって、妙は九兵衛を強く拒絶することができなかった。  
でも、どうだろう。九兵衛に触れられ、慈しまれて、初めて知った愛される心地よさ。  
この甘美な感覚は、困惑している妙の心さえも狂わせてしまうかもしれない。  
 
九兵衛の指先が妙の下腹部へと向かう。リズミカルに目指す先へとするすると下りていく。  
 
「やめてっ……九ちゃんっ……これ以上はっ……」  
「君とこうなりたいと、ずっと思っていたんだ。」  
 
九兵衛は妙を抱きかかえるように横たわり、胸を揉みし抱きながら、耳元で囁く。  
右手は妙の一番敏感な部分を躊躇いがちに目指している。  
 
「妙ちゃんも大人になったんだね。柔らかくて温かい。」  
 
妙の大事なところに到達した九兵衛の指はそっと密林をかき分け、  
絡めとりながら敏感な突起をまさぐる。絶望感ともとれるため息と、  
敏感な部分をまさぐられる快感とに妙は歯を食いしばり声を漏らすまいと耐えた。  
妙からこぼれる熱い吐息と九兵衛の衣ずれの音だけが部屋に響く。  
九兵衛の指先に翻弄され、快楽の頂点へ導かれた妙は、そのまま気を失った。  
失われる意識の中で、満足そうな、でも寂しそうに微笑む九兵衛を見つめていた。  
 

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