「俺ァね、テメェのことけっこう評価してるんだぜィ」
「気持ち悪いアルナ。何たくらんでるネ」
切れ長になり色気が増した瞳が沖田を睨みつける。その瞳を平然と見返しながら沖田は続ける。
「2年前はただの乳臭せェガキだったのにな。女ってのは怖いねェ」
「お前は相変わらずだけどナ」
「そもそも地球の人間はヤワだと思わねェか?」
沖田はあさってのほうを見ながらフーセンガムをぷくぅっと膨らませ、神楽が急な発言の意味を
理解するより前にパンッ! と破裂音を響かせる。
「警察なんざやってるとなァ……」
「お前は警官というよりやーさんアル」
「色んなもん見ちまうし、自分でやったりもするし」
「……シカトかヨ。さっきから何が言いたいアルか」
「テメェこそちゃんと聞けよ。Sはデリケートなんだぜ」
「女に首輪つけて大通り闊歩してる奴の言うセリフアルかソレ」
「……身体が変わっても口癖は変わんねェのか」
何気なく沖田の手が動き、神楽の大胆にくびれた腰にまわる。
神楽は目を細めてそれを見やり、余裕を示すように意に介さなかった。
むしろ誇るかのごとく豊満な胸をそらす。
「人生ってなァ殺らなきゃ殺られる。これに尽きるな」
神楽を抱いたまま人の悪い笑みを浮かべる沖田。
「本当は殺したくなんかないんダロ。知ってるアル」
唐突な神楽の言葉に、沖田の瞳に不思議な色が宿る。
「お前が人を殺したくないことぐらい、わかってるアル」
「……そいつは話がはえーや」
口の中でぼそりとつぶやかれた声は当然神楽の耳にも届いていたが、意味がわからない呟きに
いちいち反応するのももう面倒だった。
そうして訪れたしばしの沈黙の後に、いつもと同じ表面的にはすました顔つきで沖田は言った。
「一発だけ」
「銀ちゃんといいお前といい、ロマンチックさのかけらもないアルナ」
「旦那にも口説かれたのかィ。こいつは先越されちまったな」
真相はどうあれ、神楽はすこし艶をふくんだ笑みを見せただけで答えなかった。
自分の身体が持つ意味を神楽はすでに承知していて、その威力を試すのが今は楽しくて仕方ない。
腕力で神楽に勝てる男など地球にはいないし、少々の火遊びぐらいしてみてもいいではないか。
もう子供ではないことだし。保護者のような銀時からの躾を破る快感に神楽は酔い始めていた。
ご都合主義にも程がある。しかし神楽は口八丁手八丁、いつのまにやら拘束されていた。
「こ……このドS野郎……!」
「Sにも色々楽しみ方がありまして。まあ痛みで泣き叫ばせるのもいいがねェ、大人になった身体には
それ相応の責め方すんのが礼儀だろィ」
沖田は薄い目で神楽を見下ろし、暴れる様を鼻で笑う。
「鬼畜! ヘンタイ!」
「言われなれてるし自覚もしてるとなァ、悪口に聞こえねーんだぜィ。そろそろ覚悟決めやがれ」
「お前にしてやる覚悟なんかないアル! 放せ!!」
「この鋼鉄製の枷はな、幕府が夜兎の為に作った逸品だ。お前ら贅沢だね」
「頼んでもないのに作るな馬鹿!」
「今度将軍に言っとくよ」
さらりと流しては服を切り裂いていく沖田に、身動きできぬまま神楽は罵詈雑言をただ投げつけていく。
診察台のようなベッドに手枷足枷で縛りつけられ、上にのしかかる男に口笛など吹かれながら裸にされる
というのは女にとって耐え難い屈辱であり、歯が折れんばかりに歯軋りをしてしまう。
己の力を過信したがために、沖田ひとりなどどうとでも出来るとタカをくくっていたがために、遊びのつもりで
誘いにのったのが間違いだったのだ。
さんざん焦らして豊満になった身体を見せつけ、笑いながらポイ捨てしてやるはずだった。
まがりなりにも警察官、甘くみすぎていた。
肌がまたひとつさらけ出されていく。胸が露出しそうになると、神楽は思わず目をつぶってしまう。
ふいに乳首をつままれる感触に、何も見えない目の奥で光が瞬いた。
やわらかい指先が小さいながらも主張をするその先端をはさみこみ、くりくりとこねていく。
「胸はでかいのに乳首はまだガキか」
羞恥心が神楽を殴りつける。赤くなった頬が元の幼さを滲み出させていく。
沖田はつまみあげたその先端をこするように舐めあげる。快楽にはほど遠いひりひりとした痛みが
神楽の神経を走り、眉がしかめられた。
「テメェの女の声ってどんなだろうな……」
感慨もなく呟いて神楽の羞恥を刺激しつつぺろりとひとなめ、ふるえるように立ち上がった乳首を観察する。
手にあまるボリュームをもみしだき、大きさの差異に、ふむ、とひとりごちる。
「やめろヨ……!」
「やめろで済んだら武装警察はいらないぜィ」
お前が言うなという神楽のツッコミは喘ぎに変わった。沖田の熱のこもった口がやわらかく乳首に吸いつき、
履いたままの下着の中へとすべりこんだ手が濡れてもいないクリトリスをまわりの肉ごとつかみあげる。
直接触れればまだ痛いだけだが、ぷにぷにと発達した陰唇ごとクリトリスを根元からもみあげると
ゆるやかだが明瞭な快感だけが送り込まれる。
「ャ……ヤダぁ……」
力の使い方がわからなくなるその遠まわしな刺激が、過敏になっている神楽の神経には調度良いらしく、腰が
かすかにうねる。
もみまわし動かしていくそのうち、くちゅくちゅと沖田の手の中で濡れた音がし始める。
「なァ、何の音? これ」
目を見開き神楽は恥辱に黙る。そんな神楽を沖田は冷ややかに見据え、指を茂みに分け入らせてゆっくりと
左右に開いていくと、熱い湿り気の中に尖った先っぽを探し当てた。
そこには触れないように指を巧みに動かしてねっとりと神楽の秘所をいじっていく。
さんざん焦らして神楽の瞳がじわっと潤んでいくのを待ち、ある瞬間にきゅっとつまみあげる。
「ああっ……!」
神楽がたまらず漏らした喘ぎ声に、沖田は低く笑う。
「予想通りじゃねーかィ。やっぱりテメェも女だな」
クリトリスをつまみあげたままくにゅくにゅとくゆらせてもてあそぶ。
いまや悪態より快楽が勝る。神楽は悔しさに涙をこぼすが弄られるたびにわきおこる悦楽にはどう
あらがえばよいのかすらわからなくなっていた。せめて声だけは漏らすまいと必死で唇を噛みしめる。
そんないじましい姿を見ているうちに沖田の中で何かが蠢く。ごりっとした異物に似た冷たい塊。
魂にへばりつくその感触を確かめるかのように、沖田の手が動いた。神楽の首へと。
「……ッカハ! 何の真似アルか……!」
首にかけられた手にこもる力が、沖田の裡に潜む純粋な狂気を物語る。
「これでもまだ喋れるたァね……さすがだなァ」
惚れ惚れ、といった態で沖田が嘆息する。
片手で器用にブツを取り出し、悶える神楽のそこに静かにあてがう。喉の苦しさに紛れてか神楽は
感づいていない。沖田はそのことに特に不満はなかった。
「愛してるぜィ、チャイナ」
ある意味真剣な告白なのだが、神楽には感銘どころか神経がヒリつきねじきれそうな違和感しか
与えなかった。殺す気で首を絞めてくる男の愛を理解するなど誰にできよう。
(……ヤられちゃう……!)
気持ちが弱まると身体も同調するのか呼吸が絞まりに負けそうになり、慌てて神楽は弱気を振り払う。
特殊鋼鉄製の鎖をねじ曲げ、沖田の首を絞め返そうとする神楽に、沖田は一気に腰で貫いた。
戦闘では有り得ない、灼熱感と窒息感。内臓が削られ裂き拡げられる痛覚。
神楽は声もだせず悶え暴れたが、どこか切迫感に欠けていた。
死にはしないという一点が爆発的な力の発憤を妨げている。
その状態で沖田はいきなりクリトリスを指で抑えつけた。
すでに神楽の愛液でぬめっている指がクリトリスをやわらかくつぶし、ひわいな形にこねまわす。
「イヤ! あっ……!」
いまだ慣れない肉体の快感に身悶え、どうしようもなく力が抜けていく。
下から上へ、親指の腹が小さくこわばるクリトリスを容赦なくなであげる。
絶妙だった。ぬめりが熱をともない指とクリトリスをとろけさせる。根元を横からこすられ、隠れた芯を
皮の上からいじられる。コリコリとした感触はクリトリスが勃っている証拠、沖田の笑みが深まる。
「ひァ……ヤ……ヤダ……」
はぁはぁと可愛い喘ぎをもらしだした神楽の脚がゆるんでくる。
沖田はゆっくりと、腰を引きだし血のついた肉棒を抜き差しし始めた。
「うぐ……イタ……ぅんん……」
激痛と呼んでもいいくらいなのに、クリトリスから押し寄せる快楽のあられもない甘美さに理性がぐらつく。
にゅるにゅる滑る沖田の指が、ぷくりとふくらんだクリトリスをつまみあげしごきまわす。
的確に責めるひわいな動きが手加減もなく快感の源をいじめぬき、あっけなく神楽は背を震わせのけぞり
幼さの混じった絶頂の声をあげる。それを聞きながら最奥まで貫き痙攣に似た衝撃を神楽の身体に走らせた。
間髪いれず深く長いストロークでじゅぷじゅぷに濡れた神楽の中を味わうように腰を動かしていく。
まだ痛がるそぶりを見せる神楽の充血してひくひくと誘うクリトリスをなでまわし喜ばせてやると、
白いなめらかな頬を赤く染めて羞恥の声をよだれとともに口からこぼした。
沖田の胸の裡が熱くざわめく。
──俺はなんでこんなに
沖田は片手で悶えるクリトリスを熱心にじっくりしごきながら、もう片手で神楽の首を握り潰す。
狂っているのか──
常人ならばとっくに息絶えている非道ですら、神楽は死なないどころかクリトリスの快感に酔い喘いでいる。
きついだけだった中の状態も明らかに変わり、うごめき締めつけ熱さとぬめりで搾り取るように沖田を
責めだしていた。あまりの具合の良さに沖田の手が一瞬震える。
もういいやなんか
殺しても死なないってなこういうことか
それよか、すげェや
良すぎるやべえ
沖田はふっと微笑んだ。
その澄んだ笑みは悦楽に涙ぐむ神楽に見えたかどうか。
どうでもいい。沖田は首にかけていた手を離し神楽のくびれた腰を乱暴につかむや、ピストンを速めた。
手の平のふくらみをクリトリスに押しつけ、ぐちゃぐちゃにこねまわしながら中をいやらしいぐらい責め続ける。
ビクンビクンと絶頂に跳ねる神楽の身体をもてあそび慈しみ翻弄して甘く響くよがり声を鳴き声に変えるまで
愉しげに貫く。肌と肌がぶつかり合う音が、粘膜をこすりあう淫靡な音と絡み合い交ざり合う。
気が遠くなる。わけがわからず神楽は脚を広げ腰を浮かし男の猛りを飲み込み迎え入れる。
本能に忠実に快を貪り絶頂の波に幾度も流され、男との身体だけの交わりに溺れていった。
「そうご……そうごぉ……!」
イク、という言葉の代わりに名前を呼ぶ。神楽の無知ゆえの激しさに沖田は眩暈がしそうだった。
切れ切れの吐息で抱きしめて口づけて、おそらく無意識に小さく愛の言葉をつぶやきながら、腰の奥から
ほとばしりくる白濁を注ぎ込んだ。
合わせるように神楽も大きく叫び、しなやかな肢体を朱の色に染め上げ、大人びた顔に蕩けた艶をまとわせる。
互いにきつく目を閉じて己の内の激流に流されるがまま痺れるほどに堪能すると、すべてを投げ出すように
身体を弛緩させていく。どろりとした液体が繋がったところから流れ出しシーツを濡らす。
強く短い呼吸が心臓の暴動から強制され、互いの胸が激しく上下する。
心臓の高鳴りは、しかし今までとは違う類のもののように沖田は感じていた。どこか恋に似た……
「ありえねェ……」
誰にともなく言ってから混乱した頭をひとつふり、大きく息を吸って脱力とともに吐き出した。
乱れ合った相手を見下ろし、無言で枷を解いていく。
反撃に襲い掛かってくるかとも考えたが、恍惚に唇が濡れている状態でそれはないだろう。
沖田はそう結論づけて、ガラにもなく身体の汗をふいてやりさえした。
「……お前、そんなに私のこと好きアルか……」
瞳を閉じていた神楽が勝ち誇った顔でゆっくりとまぶたを上げていく。
沖田は内心を完全に押し殺し、馬鹿言ってんじゃねーよといつも通りの口喧嘩を仕掛ける。
無理矢理始めた淫行のはずが、最後は求めあって絡みあって、気まずいほどに全てをさらけ出したのに、
結局はふたりの関係が変わることはなかった。恋人でもない、友達ですらない。
別れ際、睨み合いの目の奥でホッとしつつ、ふたりは同時に背を向けた。
──これきりにしようとはどちらも言わずに。
完