鉄で出来た重い扉を開けると、そこは狭い一室だった。  
照明器具は無く、窓から差し込む月明かりだけがその部屋を照らしている。  
部屋にたちこめる血の臭いに、また子は顔をしかめた。  
「やあ、遅かったね。」  
そういって神威は腰掛けていた窓の桟から飛び降り、つかつかとまた子の方へ歩み寄る。  
「こんな所に呼び出して何の用ッスか?  
 今日の会議内容に関係のない事だったら速攻で帰ってやるッス。」  
また子はそう言って神威を睨んだ。  
「ひどいなぁ、そんなに怖い顔しなくてもいいのに。  
 春雨と鬼兵隊は同盟関係にあるんだから、そろそろ警戒も解いてほしいんだけど。」  
「私は別にあんたを仲間だと思ってるわけじゃないッス。  
 ただ晋助様のご意向に従っているだけッス。」  
相変わらず神威を睨み続けることを止めないまた子に、やれやれと神威は溜息をついた。  
「まぁいいや。今日はおねーさんにお願いがあって来てもらったんだ。」  
「お願い・・・?」  
また子が表情を険しくすると、神威はちっちと人差し指をふって、笑顔で答えた。  
「変なことじゃないよ。ただ、僕の子供を産んでみてほしいだけだから。」  
「 」  
一瞬また子の思考能力が停止した。  
「ひどい顔だね、口あいてるよ?ちょいグロ?」  
「思いっきり変なことじゃないッスか!!  
 生憎私はあんたみたいな変態に付き合ってる暇は無いんスよ!!」  
また子はすごい剣幕で叫ぶと、そのまま神威に背を向けて出口のドアへと歩き出す。  
「まあまあ、そんなに焦らないでよー。」  
そう言ってジャンプする神威が前方の視界に入った次の瞬間、また子の腹部に激痛が走り  
体が宙に浮いたかと思うと部屋の壁に叩き付けられた。  
激しく咳き込むまた子の方へと、神威はニコニコと笑顔を浮かべながらゆっくり歩み寄る。  
また子は本能的に神威に銃を向けた。  
先程の衝撃からくる吐き気を必死に抑えながら、また子は叫んだ。  
「突然卑怯ッスよ!  
あんた一体何のつもりッスか!」  
それを聞くと、神威はヒューッと口笛を吹き、拍手をしながら言った。  
「やっぱりおねーさんは人間の女の子にしては強いみたいだね。  
 今の蹴りを受けたら、普通の人間なら血を吐いて失神するよ?  
あ、時々死んじゃうけど。」  
そしてまた子の前にしゃがむと、銃を握ったままのまた子の右手首を掴み、  
銃口を自身の左胸に当てた。  
 
「い、一体何の真似ッスか!?」  
予想外の行為に一瞬困惑したまた子の隙をみて、神威はまた子を自分の方に抱き寄せる。  
そしてまた子の耳元に唇を近づけて囁いた。  
「おねーさんは僕を殺せないよね?  
だって、僕はおねーさんの大好きな人の大切な取引先の総督だよ?  
だからさ。」  
ぎしっと低い音が響いた。  
「うぁあああ!!!」  
また子の右手から銃がすべり落ち、また子は震えながらその場にうずくまる。  
また子の右手の平は、ぷらぷらと手首から垂れていた。  
神威は子供にしてやるようにまた子の頭を撫でながら笑顔で言った。  
「ね?無駄な抵抗はやめた方がいいでしょ?  
それに、あんまり壊すと僕もあのお侍さんにも怒られちゃいそうだしさ。  
あ、それ一ヶ月もあれば治る程度にしといたから安心して。」  
神威はケタケタと笑いながらぽんぽんとまた子の頭をたたく。  
「貴様ぁ・・・!」  
また子は激痛と怒りに涙を目に溜めながら神威を睨んだ。  
「心配しなくて大丈夫だよ。  
おねーさん、僕の妹と対等にやり合ったことあるんでしょ?  
あいつはかなり弱いけど、一応夜兎とやりあえるくらいの能力があるってことは  
人間にしては強いってことだよね?  
僕とおねーさんの子なら面白い子になりそうだから、産んでみてほしいってだけだよ。」  
そしたらその子が大きくなった時、楽しく殺し合いが出来そうじゃない?と笑顔と言う  
神威に、また子は恐怖心を覚えた。神威の力に対してではなく、神威の狂気に対して。  
「・・・私は絶対にあんたの子なんか産まないッス!この馬鹿アホ毛!」  
また子は心の底の恐怖心を悟られないよう、出来るだけ力強く叫んだ。  
そんなまた子の表情を見て、神威はにやりと先程とは違う笑みを浮かべた。  
「そんな風に強がってる顔、すっごくそそられるんだよね。」  
そう言って突然また子に口付けた。  
また子は驚いて目を瞠った。  
必死に抵抗しようとするも神威の圧倒的な力で押し付けられ、身動きが取れない。  
神威の舌は巧妙にまた子の唇を押し割って、また子の口内を犯す。  
必死に逃げようとするまた子の舌を捕らえ、絡めるたびにくちゅくちゅと水音が室内に響いた。  
二人の唾液が互いの口内で混ざり合う。  
いやだ、と思っているのに、また子は確かに自身の熱が上がっていくのを感じた。  
 
「ふぁっ・・・」  
やっと唇が開放され、また子は一気に体内に取り込まれる酸素に喘いだ。  
二人の唇の間で繋がって光る唾液が、また子の羞恥を一層煽る。  
神威は満足そうにまた子を見た後、そのまままた子の上衣をはだけさせた。  
白く豊満なまた子の乳房が露になり、また子は顔を真っ赤にした。  
「い、いやッス!やめろ!」  
息も絶え絶えに叫び、また子は手足をじたばたさせた。  
「うるさいなぁ、あんまり騒ぐと殺しちゃうよ?  
それに、」  
「ひぁっ!」  
乳房の先端から走る刺激にまた子は思わず声をあげた。  
「こんなに硬くさせちゃって、身体は結構喜んでるみたいだけど?」  
ころころと乳首を指で転がしながら、楽しそうに神威は言った。  
違う違うと子供の様に首を横に振るまた子を神威は愉快そうに眺め、  
そのまままた子に覆いかぶさるようにして、また子の乳房を弄んだ。  
片方の乳房を手全体で揉みしだきながら、もう片方の乳房の先端を指でひっぱる。  
また子の意に反して身体はその刺激に反応し、熱を帯びていく。  
「いやっ・・・やめて・・・!」  
また子は半泣きになりながら動く方の手で神威の頭を退けようとするも、  
力がうまく入らず、くしゃくしゃと神威の髪の毛をかき乱すことしか出来ない。  
「何それ、ジェラシーを表現してくれてるの?」  
「ち、ちが・・うあぁっ・・・!」  
艶っぽい表情で悶えるまた子を見て、神威はにっと笑うと乳首をねっとりと舌で包んだ。  
ぴちゃぴちゃという音が耳に届くたび、また子は羞恥に震えた。  
「うぁ、あっ・・はぁっ・・・!」  
ひっきりなしに襲ってくる快感に、また子は我慢できず声をあげ続けた。  
脳裏に高杉の姿が浮かぶ。  
かつて一度だけ彼に抱かれたときも、同じように胸への愛撫をうけたことを思い出した。  
心に決めた想い人がいるのに、他の男に蹂躙され喜ぶ体が悔しくて、また子は罪悪感で  
涙を流した。  
「ここ、どんどん硬くなってるよ?あんなに嫌がってたくせに。」  
そういって神威は乳首を噛んだ。  
 
「あぁあっ!」  
強い刺激にまた子は顔を真っ赤にして、はぁはぁと激しく息をした。  
かすかに痙攣しているまた子の身体を見て、神威はふふっと笑った。  
「ねえ、好きでもない相手に随分感じてたみたいだね。」  
この淫乱。  
耳元で低い声にそう囁かれ、それにさえ反応してしまう自分の情けなさに  
また子の目には再び涙が滲んだ。  
「でも、本番はこれからだよ。おねーさんも分かってるよね?」  
そう言って神威は下着の上からまた子の秘部をなぞった。  
「はぁっ・・・!」  
すこし指をあてられただけで、また子の秘部はくちゅ、と水音をさせた。  
先程の愛撫をうけて、また子の下着は既にぐっしょりと濡れていた。  
「もう大洪水だよ?このまま挿れても大丈夫そうだね。」  
わざとくちゅくちゅと大きな音を立てながら、神威はまた子の秘部を撫で回す。  
「く、ふ・・っ、あぁ・・・っ!」  
下着越しとはいえ、敏感になっているそこへの刺激に、また子は堪らず声をあげた。  
神威はにやりと口角をつりあげ、秘部の上を這う指の動きを激しくする。  
刺激のせいで詰まりそうになる息を必死に絞り出しながらまた子は言った。  
「・・そ、れだけは・・・っ、絶対、いや、・・・ス・・・!」  
神威はぴたりと遊んでいた指を止めると、そのまま震えているまた子の唇に  
愛液を塗りたくるように這わせた。  
「でも、下着越しでも僕の指、こーんなに濡れちゃったんだよね。  
 これだけ汚しといてやめて、なんて虫がよすぎるんじゃない?」  
「そんな・・・っ」  
また子は泣き出しそうな表情で神威を見つめた。  
どうしたら逃げられるのか、上手くまわらない頭で考え、ハッとまだ左側のホルスターに  
拳銃がささっている事を思い出す。  
この男を殺さなくても、身体の一部を攻撃してその隙に逃げることは出来る・・・  
覚悟を決めて拳銃に手を伸ばそうとした  
瞬間、神威に首を絞められ、唇を塞がれた。  
「ぐっ・・・!」  
突然の苦しさに、また子は身体を強張らせた。  
息が出来ない・・・  
殺される・・・!  
 
そう思った瞬間カシャン、と遠くで音が聞こえ、同時に首と唇を開放された。  
 
神威は激しく咳き込んでいるまた子の髪を掴んで自分の顔に寄せた。  
また子は痛みに顔を歪ませながら、神威を睨んだ。  
神威はニコニコと笑いながら言った。  
「僕を撃てるとでも思ったの?  
 こんなにいい思いさせてあげたのに、ひどいなぁ。」  
もう許してあげない、そう言うや否や神威はまた子の手を押さえながら、  
するりといとも容易くまた子の下着を剥ぎ取った。  
「嫌ッ!」  
と叫ぶも、股間に触れた熱く柔らかな感触に、また子は思わず息をのむ。  
身体の中で一番敏感な場所を舌で舐られ、強い快感がまた子の身体を溶かしていく。  
秘部からはとめどなくねっとりとした液が溢れ出していた。  
「やっ・・んんっ!・・・あぁっ・・!」  
がくがくと揺れるまた子の腿に、神威はぎりぎりと深くまで爪を食い込ませた。  
本来ならただの苦痛でしかない痛覚も、今のまた子には快感と同等の効果を持って襲った。  
神威は唇をずらして濡れそぼった穴に舌を差し込み、柔壁をかき回した。  
じゅぶじゅぶと激しい水音が響く。  
「はぁあっ・・・!あああっ!」  
激しさを増していく行為にまた子はただ喘ぎ、身をよがらせることしか出来なかった。  
もう、限界――――・・・  
 
そこで神威は突然行為を止めた。  
また子は息を切らしながら潤んだ瞳で神威を見つめた。  
神威はニコニコと笑顔を浮かべたまままた子に言った。  
「もう疲れちゃったし、やめてあげるよ。  
 おねーさんもずっと嫌がってたしね。」  
「えっ・・・。」  
思わず口から出た言葉に、また子は罪悪感で顔を伏せた。  
「あれ、何か不満でもあるみたいだね?どうかしたの?」  
神威は意地悪い笑みを浮かべながらまた子に聞いた。  
「・・・。」  
「何か言ってくれないと分からないんだけどなぁ。」  
そう言うと神威はふーっとまた子の小さな突起に息を吹きかける。  
「ひゃあ・・・っ!」  
ひくひくと物欲しそうに動く秘花を見て、神威は口角を吊り上げた。  
ほんの少しの刺激にさえ過剰に反応してしまうほどしこりきった尖りが切なくて、  
また子はすすり泣いた。  
それでもなお寡黙を守り続けるまた子に、神威は溜息をつき、しょうがないなぁと呟いた。  
 
「ア・・・ッ!」  
秘部に昂ぶった肉棒をこすり付けられ、また子は思わず目を見開く。  
身体に電撃がはしったような感じがした。  
神威はゆっくりと割れ目をなぞるように腰を動かす。  
「ねぇ、どうしてほしいの?」  
「・・・れ、て・・。」  
「もっと大きな声で言ってよ。」  
神威は裏筋をこりこりと小さな突起に強くこすりつけた。  
「ゃああっ・・・!い、れて・・・いれてぇ・・・っ!!」  
そうまた子が叫ぶのを聞くと、神威はくくっと押し殺すように笑い、  
また子に覆いかぶさる。  
「本当、淫乱だね」  
そう耳元で囁くと、神威は勢いよく己の肉棒でまた子を貫いた。  
「はあああっ!!」  
なんて熱いのだろう、とまた子は朦朧としながら思った。  
こんなのは初めてだった。  
ドクドクと胎内に響き渡る熱い鼓動に、体中が蕩けていく様な気がした。  
「く・・・っ」  
耳元で吐き出された熱のこもった息に、また子はさらに顔を赤らめる。  
これは僕もキツイかもしれないね、と神威はきゅうきゅうと絡み付いてくるまた子の  
柔壁に思わず苦笑した。  
互いの腰が動く度、ずちゅずちゅと結合部から猥らしい音が響く。  
どんどん強まっていく快楽に溺れ、二人とも本能のままに動いた。  
「うああっ!」  
突然首筋に鋭い痛みがはしり、また子は思わず叫んだ。  
神威は噛み付いた傷口から流れる血を舌で吸うように舐め取っては、唇の位置をずらして  
またまた子の首筋に噛み付いた。  
「いぁっ・・・く、はあぁ・・・っ!」  
痛みと快感が交互に押し寄せ、また子は堪らず神威の頭を抱きしめた。  
柔壁は咥え込んだ肉棒をさらにきつく締め付ける。  
神威は強すぎる刺激に顔を歪ませ、一層激しく腰を打ちつけた。  
「ぁあああ・・・っ!もう・・っもう・・・!」  
貪り合う様な情交に、二人とも限界を迎えようとしていた。  
神威の唇から低い呻きが漏れ、覆い被さった身体がぶるりと大きく震える。  
「あぁぁああっ!!!」  
熱い滾りが胎内に叩き付けられ、また子の身体がびくびくと痙攣した。  
息を漏らしながら、二人とも果てた。  
 
 
―――このまま妊娠してしまったら、もう晋助様と一緒には戦えない・・・  
また子は絶望を感じながら、そのまま意識を手放した。  
 
 
「あ、起きた?おはよー。」  
目を覚ますと、何事も無かったかのような神威の姿が視界に入った。  
「・・・あんたの顔だけはもう二度と見たくないッス。」  
また子は目を手で覆い、神威に背を向けた。  
「ひどいなぁ、おねーさんの子供のお父さんになるのに?」  
えっ、とまた子は声をあげ、神威の方を振り返る。  
まさか、たった一度の性行為で本当に身ごもってしまったのか、と狼狽するまた子を見て  
神威は笑い出した。  
「冗談だよー。それに夜兎と人間じゃ子供は出来ねーよって阿伏兎に怒られちゃった。」  
「本当ッスか!?良かった・・・。」  
「ちょっとひどいなぁ、それ。」  
また子の心から安堵した顔を見て、神威はわざとらしく顔を膨らませた。  
がすぐに表情を崩してニコニコといつもの笑顔を浮かべる。  
「まあいいや。僕もうお腹空いたから行くね。  
 また遊んでねー。」  
「誰があんたなんかと!!」  
そういってキッと睨みつけてくるまた子に、神威はふっと笑いかけると顔を寄せた。  
「でも、もう忘れられないでしょ?淫乱。」  
耳元でそう囁かれ、また子はびくりと震えた。  
じゃあね、と神威は手を振りながら部屋から出て行き、そこにはまた子だけが残った。  
 
忘れられないなんて、そんな訳ない。  
私が心から慕うのも、体を許すのも晋助様だけ。  
そう言い聞かせているのに、先程のたった一言だけでさえ熱を灯してしまう  
自分の弱さが許せなくて、また子は泣いた。  
畜生!という叫び声がコンクリートの壁に反響して落ちた。  
 
 
 

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