ー世界からイボが殲滅されてからいくつかの季節が過ぎたかぶき町ー  
 
昼下がりのその街中を、イボが出現した頃からまったく成長せずに年齢しか変わらなかった、天然パーマの銀髪の侍がトボトボと歩いていた。  
「…はあ…ったく、神楽も新八も成長してさ…大人の階段登れてさ…たしかにめでたいよ?  
もう銀さんも、喜んで赤飯でも鯛の活け造りでも振る舞っちゃいたい気分だよ?  
でもさあ、そのまま第2ラウンドおっぱじめなくてもいいじゃん…  
あの調子じゃあ俺しばらく帰れねぇじゃん…」  
万事屋の外でずっと中に入るタイミングをうかがっていた銀時だったが、年頃の男女の体力は想像以上で、何ラウンドでもこなしてしまいそうな勢いだった。  
「あ〜あ…ありゃあ今日中には収まらねえよな…  
俺今夜どこ泊まりゃあいいんだよ…金ねえし…」  
銀時が寂しい財布の中身を見て肩を落としていると、向かいから今の自分には出せない、元気で爽やかな声がかかってきた。  
 
「銀さ〜ん!久しぶり〜!」  
その天井に日の光がさすようになって久しい、吉原桃源郷。  
その女の国にあって唯一の男子、晴太が銀時に駆け寄ってきた。  
最初に銀時と出会った頃は、まだまだ手のかかりそうな小さい子どもだったが、今は背も新八より少し高く、顔つきも少し大人びた精悍なものになっていた。  
「おう晴太か…でかくなったなお前…」  
「うん、銀さんは前と変わらないね!」  
「…あぁ…お願い…今そういうこと言わないで…」  
またもや自分との成長の差を見せつけられ、涙声になる銀時。  
「ど…どうしたの銀さん…  
あ、それより丁度よかった、久々に皆で吉原に遊びに来てもらおうと、万事屋に行くところだったんだ!  
他の皆はどうしてる?」  
今なら神楽も新八も万事屋に居るが、周りの変化に打ちのめされた銀時は、気遣いと虚無感が半々になっていた。  
「あぁ…あいつらは今いねぇよ…ババア達も店の準備じゃね…」  
「そっか…残念だなぁ…  
あ、でも銀さんだけでもおいでよ!  
銀さんなら遊ぶのタダでいいし、月詠姉も会いたがってたしきっと喜ぶよ!」  
「…俺は別に会いたくはねえけど…まあ行くとこねえし金ねえし…行ってみるか…」  
「そうこなくっちゃ! さっ、そうと決まれば、早く早く!」  
銀時は晴太に連れられ、いまいち軽くならない足取りで吉原へと向かった。  
 
「よう、相も変わらず腐った魚のような目じゃのう」  
 
日輪の茶屋に着いた銀時を迎える、前と見た目も変わらず、無表情で出会い頭に憎まれ口を叩く月詠。  
しかし今の銀時には口喧嘩をする気力は無く、ため息をつきうつむくだけ。  
その様子に首を傾げ少し不思議がる月詠。  
「もう〜、月詠姉ってばあんなに銀さんに会いたがってたくせに照れちゃ…ムグッ!」  
余計なコトを、と晴太の口をガバッと両手で覆う月詠。  
「ふ…ふん! 何か知らんが張り合いのない!  
日輪! わっちはもう見回りに行ってくるぞ! 」  
少し頬を赤らめながら、月詠はスタスタと早足で茶屋を去って行ってしまった。  
その後ろ姿を呆れながら日輪が見送る。  
「あらら…ゴメンなさいね銀さん、久しぶりだっていうのに…あれでもあの子嬉しがってるのよ…?  
でも確かに銀さん元気ないわね…何かあったの?」  
「いや…いいのいいの気にしないで…それより俺今日金無いけど本当に大丈夫…?」  
「もちろん! 銀さんならいつでも大歓迎よ! 好きなだけ楽しんでって!」  
「そうか…よし、それなら今日は飲んで飲んで飲みまくるとしますか…!」  
とりあえず飲みまくれるということで、気をとりなおした銀時は吉原の街へと一人繰り出して行った。  
 
それからしばらく経ち、日は沈み吉原を月明かりが照らし始めた頃、銀時は遊女達十数人に囲まれ、すでに呂律が回らなくなるほどに酔っぱらいながら、無数のネオンが輝く街中をフラフラと歩いていた。  
「大体れ〜俺主人公らよ? ジャンプ漫画の〜!  
なのりさ? コミックスも30巻越えでさ、アニメも4年間もやっらろにさ?  
1人らけほろんど初期設定のままっれ悲しすぎるよ〜!」  
同じような話を何十回も聞かされている遊女達。  
そろそろ対応に困りそうなので新しい話題を振る。  
「銀様、そろそろ夜もふけてきますので、お座敷の方をご用意いたしますよ」  
「オッ、座敷? いいねぇ〜! 銀さん色々やっちゃうよ〜」  
「はい、もう好きなだけやっちゃってくださいな」  
遊女に連れられ部屋へと進む中、銀時がどんなお遊びをしようかと考えを巡らせていると、ふいにデジャヴを感じた。  
「…あれ…前にもこんな流れでエライ目にあったような…」  
酒のせいでうまく頭が回らずに、その不安に確信は得られなかったが、一人目的の場所に立ち、襖を開いた瞬間に全ての記憶がよみがえり、酔いも一瞬で覚めてしまった。  
開かれたその部屋の中心で、艶やかな着物に身を包んだ遊女が、畳に伏せた状態から深々と挨拶をし始める。  
「いらっしゃいませ…今夜のお相手をさせていただく、死神太夫…月詠でありんす…どうぞ、よしなっ…」  
 
月詠がゆっくりと上体を起こし、前に顔を向けると、襖は開いたまま誰もおらず、銀時はすでにスタスタと部屋から離れていた。  
「なっ…! ちょっ…おい! 待ちなんし! こらっ!」  
月詠はすぐさま立ち上がり、立ち去ろうとする銀時に追いつきその腕にガシッとしがみつく。  
「なんだよ?またお前の息抜きととんでもねぇ酒乱に付き合えってのか!!離せ! 俺は帰る!」  
いつかの悪夢を繰り返すまいと、必死で腕を振り払おうとする銀時に対し月詠も懸命にすがる。  
「ち、違う! わっちの酒癖については日輪から聞いて、しっかり矯正したんじゃ!  
前はぬしに迷惑をかけてしまったから、今日はわっちから望んでぬしの相手をしようと、こうしてっ…!」  
「うっ…」  
あまりに焦った様子で弁明している月詠に、銀時はたじろいでしまう。  
「…あー…そ、そこまで言うなら一杯飲んでみろよ。  
それで大丈夫なようだったら相手してやるよ…」  
「わ、わかった…」  
月詠は部屋に戻り、お猪口に酒を注ぎクイッと口に含む。  
銀時はその様子を襖の端からおそるおそる覗いている。  
「…んっ…ほれ、なんともないじゃろう?」  
少し頬は赤く染まっているが、普段の月詠のままの口調で呼びかけられる。  
「お、おう…本当に大丈夫なんだな…?」  
「うむ、だからもう安心して入ってこい」  
銀時は一度深呼吸をし、どうしても残る緊張を感じながら月詠の隣に座った。  
「ほれ、前はちゃんとお酌できなかったからな。  
これでやっとぬしにしっかり礼ができる」  
「…お、おう…まあ別に礼なんてどうでもいいけどよ…」  
銀時の持つお猪口に月詠から酒がトクトクと注がれる。  
「いや、ぬしにはいくつもの恩がある…今こうして少しでもそれが返せればと思っとるんじゃ…」  
「…ふーん…」  
以前の酒乱モードの時はまともに見てなかった、しっかりと化粧され、凛とした輝きを放ちながら、楽しそうな笑顔でお酌する月詠の横顔に、銀時の緊張感は少し別なものへと変わっていた。  
 
二人きりの世界が始まって一時間を過ぎた頃、お互いに程よく酒が回り、ぎこちなかった空気もようやくほぐれてきていた。  
「しかしお前、よくあんな酒乱から抜け出せたな…そうとう手こずっただろ?」  
「ああ、少しでも自分の意識を長く持てるように努力していたのだか…ある時は一度店を一件丸々潰してしまったこともある…  
ようやく今の状態になった頃には…晴太も大分成長してしまっていたなぁ…」  
「あ…そう…やっぱりそんな感じなのね…」  
長い間サポートしていたであろう、日輪と晴太の苦労がたやすく想像できてしまいアハハと苦笑いする銀時。  
「…そう…それもこれもぬしと…銀時とこうして一緒に過ごしたかったからじゃ…」  
「ん…オイ…」  
月詠が身体をずらし、銀時の腕にそっと寄り添う。  
パッと見でわかるほど顔は火照っており、トロンと潤んだ瞳で銀時を見つめる。  
「なあ…銀時…今日だけ…今晩だけでいい…わっちをぬしの女にしてくれんか…?」  
 
突然の言葉に銀時は戸惑う。  
「あ…あー、お前酔っぱらっちまってんだろ…?  
お前がそんなコトいうなんてありえねーもんな?」  
「ああ…これは確かに酒のせいじゃ…しかし…嘘を言っているわけではないぞ…  
酒の勢いでもないと言えんのじゃ…」  
月詠は銀時にさらに近づき、その両腕で強く抱きついた。  
「ちょ…おい…」  
「ぬしは…わっちがイヤか? どんなにしても抱きたくない女なのか?」  
銀時の胸にもたれこみながら、月詠が少し悲しそうな顔で問いかける。  
「いいのかよ…? 俺もイイ歳した男だし…止められなくなっちまうぞ…?」  
「いいんじゃ…銀時なら…いや銀時だから…そうされたいんじゃ…」  
月詠がグッと銀時の胸に顔をうずめると、銀時の腕が月詠の背中に強く絡みついてきた。  
「…わかったよ…」  
背中の手が月詠の頬に添えられ、嬉しさからか、少し涙ぐんでいたその表情に銀時は軽く笑い、グッと少し強引に唇同士を押しつけた。  
「ンッ…!」  
月詠の少し強張った半開きの唇に、銀時の舌が割り込んでくる。  
最初は歯に阻まれたが、お互いの熱くザラザラとした舌が激しく絡み合うのに時間はかからなかった。  
「ン…ハッ…ハッ…ンッ…ッ…ンンッ…ハアッ…!」  
お互いの頬を両手で覆い、唇を強く押しつけ合い、舌を、その熱さをより深く味わおうとする。  
「…ッ…ハッ…銀時…隣の部屋に…布団があるから…そこに…」  
「ああ…」  
二人は立ち上がり腕を互いの身体に絡ませ、服をはだけさせながら隣の部屋へ向かう。  
仕切りの襖に月詠の背中が当たる頃には、布越しだった二人の汗だくの肌は直接触れ合っていた。  
銀時がバンと強く襖を開け、用意されていた一組の敷布団に月詠を押し倒した。  
「アッ…!」  
「…悪ィ、痛かったか?」  
「いや…大丈夫じゃ…気にす…んむぅっ…!」  
月詠の返事も待たず、唇を押しつける銀時。  
「ンンッ…フッ…!ハッ…!ハンッ…!!ンンンッ?」  
息が続かなくなった月詠は、銀時の顔を手で抑え少し離した。  
「ハァ…! ハァッ…ぬし…ハァッ…いつもこんな激しいのか…?」  
「さあ…相手によるんじゃねぇ…?」  
「ハハッ…ハァ…褒め言葉と…受け取っておこう…」  
ニヤニヤと笑いあう二人は、息を整えながらもきつく抱き合い、お互いの肌の感触を確かめる。  
 
「ンンッ…!ひゃぁッ…!」  
「声…カワイイじゃねーの…」  
銀時の口元がいつの間にか月詠の胸に移動しており、その固く勃った先端を舌でコリコリと転がしている。  
「ンンッ…このっ…アッ…! そんなっ…急にィ!」  
そして左手はもう片方のフルフルとした豊かな膨らみを揉み上げ、右手はヘソの下辺りまで這わせられていた。  
「あっ…ぎ、銀時…そっ、そこはぁ…ンンッ」  
心底楽しそうに月詠の喘いでいる顔を見ながら、銀時の指はそのトロトロにとけそうな淫溝に辿り着いた。  
「ハハッ…なんか端にコリコリしたのがあるぜ…  
こんなデカく勃っちまってょぉ…」  
銀時は最初に触れたその突起を軽く指の腹で擦りあげた。  
「ンフゥゥゥゥッッ?…アァ…アァッ…!」  
月詠の全身が引きつりブルブルッと震え、その頬には涙と涎が混ざり合う。  
「今のでイッちまうのかよ…とんでもねぇ淫乱だなオイ…」  
「アッ…銀時ィ…もう…おかしく…」  
「止められねえって言ったろ?」  
今度は淫溝全体を右手を目一杯使ってグチャグチャと擦りあげる。  
「ファァァァッッ?もう…駄目じゃ…ッ!ァウウッッ?」  
「ほら、表面擦ってるだけでビチャビチャ湧き出てるぜ…」  
「言う…ッ! なあッ…馬鹿…ものォッ?…ッッッ?  
ンンッ?ンンァァァァッッッ?」  
シーツを破らんばかりに握り締め、顎からつま先まで限界まで反らしながら、月詠は今までで最大の快感に襲われた。  
「…ンンッ!…ハッ…カッ…ハアッ…」  
涙も涎も身体の震えも、暫く止まりそうにない月詠に、ようやく手を止めた銀時が笑いかける。  
「…いかがでしたか?…月詠太夫…」  
「ンンッ…ハッ…ハアッ…! …やり過ぎじゃ…たわけっ…! ハァッ…!」  
「でもあれだけであの感度って…もしかして月詠太夫、オヒトリサマがお好きなんですかァ…?」  
「う…」  
否定しようとしたが、すごく嬉しそうに尋ねてくるその表情を見て、嘘を言えばまたエライ目にあってしまう予感がした月詠は、観念して小さく頷いた。  
「…正直だねぇ…そんな正直な太夫に相談なんだけど、そろそろ俺も我慢しなくてもいいかな…?」  
「ん……?あ…」  
銀時が自身に月詠の手を導き、その滾りと潤いの状態を伝える。  
「ん…」  
月詠は何度か深呼吸をして身体をできるだけ落ち着かせてから、か細い声で返事をした。  
 
筋肉質だがしなやかで柔らかく、それに加えてふわりと甘く淫美な香りと妖しい輝きを放つ月詠の肢体に、銀時の男性らしいゴツゴツとした厚い身体が覆い被さる。  
「じゃあ…いくぜ…」  
「…ん…」  
シーツを握り締め、少し身体が固くなっている月詠に、銀時の滾りが一気にその奥深くまで侵入した。  
「〜ッッ?痛ゥッ…?」  
「…え…」  
月詠はどれほどの痛みでも堪えるつもりだったが、想像以上に重く響く衝撃に声が漏れてしまった。  
欲望を刺激してやまない、激しい快楽に悶えていた先程の様子からは、想像しえなかった反応に銀時は少し溜息をつき、顔を月詠の首元に伏せる。  
「…お前……なんで最初に言わねえんだよ…」  
小刻みに震える月詠に、銀時が耳元で囁く。  
「言ったら…きっとぬしは気遣って…存分に楽しめないじゃろう…?」  
涙声だが、笑顔で月詠が答える。  
「馬鹿ヤロ…こんな時まで意地張るなっての…」  
「ぬしを満足させるのが…今夜のわっちの役目だからな…  
それに…意外と楽になってきた…ほら…銀時の…好きに動いてくれ…」  
「…後で後悔すんなよ…」  
「ああ…」  
月詠の耳やうなじを、頬を伝う涙を、震える唇を、その熱い舌で舐め回しながら、ゆっくりと腰が動きだし、月詠は痛みと幸福感にかきまわされる。  
その段々と強くなっていくモノに、別の感覚が混じり始めた頃、銀時も自身を焚きつける熱く激しい波を抑えきれなくなっていた。  
「月…詠…ッ…?」  
「〜ッッ! ンッ! ンッンッ!アッ…ウゥッ?銀…時ィ?…その…ッ…まま…ッ?…ァァァッッ?」  
事の始まりと同じ様に互いの唇と舌を肌を貪りながら、月詠の中で表面からの刺激では体験できない快楽がはじけ、痛みを打ち消したのと同時に、銀時がギリギリまで溜め込んだ大量の熱い波が、月詠の溶けきった空間を満たしていった。  
 
部屋中にこもった酒の匂いと熱がだいぶ引いた頃、二人は寄り添いつつ、布団にくるまれゆったりとした時間を過ごしていた。  
 
「…ところで銀時…気になっとったんじゃが、昼の時は何をしょげておったんじゃ?」  
特に隠すコトでもないので、銀時がありのままを話すと、月詠がクスクスと笑った。  
「んだよ…笑いたきゃ笑えチキショー」  
「いや…悪い悪い、ぬしにもそんな向上心のようなものがあったんじゃなあ…」  
「どういう意味だよ…まったくバカにしやがって…」  
「まあしかし、それは悪い意味ばかりでもないと思うぞ…」  
「ん…?」  
「わっちにとっては…惚れた男が変わらずにいてくれる、というコトじゃ…」  
「……」  
「…なんか言わんか恥ずかしい…」  
「…ありがとよ…」  
銀時は気の抜けた顔で月詠の頭にポン、と掌を置いた。  
「ふ…ふん! 礼を言われるコトではない!  
ほら、空も明るくなってきた! "今晩"はここまでじゃ!わっちはもう寝る?」  
赤くなった顔を隠すためバフっと枕に顔を伏せてしまった月詠。かなり疲れていたのだろう、その後すぐに気持ち良さそうな寝息が聞こえてきた。  
それを見て銀時も一息つき、グダッと仰向けになり目を閉じた。  
 
「…別に俺は"今晩"だけじゃなくてもいいぜ…」  
 
耳元で聞いてやっと聞こえるようなその声が届いたのか否か、空が青く明るみだす頃、月詠は銀時の腕に顔をうずめていた。  
 
早朝、銀時は激しい頭痛で目が覚めた。  
「イテテテ…やっぱいくらなんでも飲み過ぎたかぁ…」  
頭を抱えながらふと目線を横に移すと、髪どめが取れた、寝癖頭の月詠がスヤスヤとこちらに寝顔を見せている。  
「…へっ…朝起きたら全裸で添い寝ね…」  
昔のことを思い出しながら、頭を抱えていた手をその柔らかい頬に当てると、月詠の瞼がスッと開いた。  
「おっ、悪ィ起こしちまったか…」  
「う…銀…時…?ん……?」  
 
半分寝ている月詠の目に上半身裸の銀時が写る。  
「…ぬし…なんで裸なんじゃ…?」  
「え…いやお前も何も着てねぇじゃん…」  
「…えっ…!なっ…!」  
ガバッと飛び起き布団をめくり、何も身に纏っていない己の体を確認する月詠。  
「…! …?」  
その瞬間、自分が酒の勢いにまかせ、昨夜行なったとらぶるどころではない行為が一気にフラッシュバックし、その顔面にみるみる血がのぼり真っ赤になっていく。  
「え…ちょっ…」  
今までに二度経験したその"兆候"に、銀時は思わず布団から抜け出すが、二日酔いのせいでうまく動けず距離がとれない。  
グルグル目を回す月詠の前に、上半身どころか全身裸の銀時が現れる。  
「ぬしが…裸…わっちも…裸……」  
色々な感情が頭を駆け巡る月詠の、その顔面だけでなく全身が真っ赤になっていく。  
かたや銀時は全身の血の気が引いていくのを感じながら、両手を突き出し必死に抵抗しようとする。  
「ちょ…ちょっと待っ…オマエ昨日あんなに…」  
半泣きの銀時に、今まで体験したコトのない速さのなにかが飛びかかる。  
 
「な…ななっ…なにさらしとんじゃああああっ!!!」  
 
 
ー眩しく朝日が差し込み、新しい一日を迎えた吉原ー  
 
 
その一角で、幸福な朝を迎えたはずの一人の男。  
その顔面に、吉原自警団"百華"の頭の新たな必殺技  
ーシャイニングウィザードー  
が、女の恥じらいと絶叫と共に叩き込まれた。  
 
おわり  
 
 

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