「ククク……なんだかんだ言ってしっかり咥え込んでますねえ。どこの口も食い意地張ってるってことですかい」  
そう言って腰を動かすと、神楽は沖田の下で顔をしかめた。  
「痛いなら痛いって泣いたらどうです?」  
神楽はキリキリと奥歯をかみ締めているようだ。  
「気持ち好いんなら、それで鳴いてもらっても結構ですぜ」  
「誰が泣くかヨ」  
「それじゃいきますぜィ」  
神楽の細い腰を掴んで乱暴に揺すぶると、甲高い悲鳴が上がった。  
「ギイャアァァァ! 死ぬ! 死ぬアル!」  
「死にゃしません。死ぬほど気持ち好くなら、してあげまさァ」  
どうします? と笑いながら顔をのぞきこむと、白い頬に涙の筋が伝っていた。そんなものを見るのは初めてなので面白くて、指で涙を伸ばしてみた。頬一面を涙の水膜で覆うと目をつぶっていた神楽が目を開けて、二三度まばたきして、また閉じた。溢れた涙がまた流れていく。  
 
 さんざん貪ってようやく放すと、神楽は自力で丸まるように布団の上にうつぶせになった。下半身が尻から膝裏にかけて血まみれで、白い肌とのコントラストが壮絶だった。  
傷口はすぐにふさがる体質らしいが、流れた血がすぐに無くなるということはないようで、肌も敷布も赤く汚れている。あれだけのことをしたのにもかかわらず、気を失わなかったのはさすがだ。  
「どうでした?」  
「痛かったヨ、このヘタクソ」  
毒づく声にもいつもの元気がなかった。  
「当たり前でさア。痛くしたんですから」  
尻の穴に突っ込んだのはもちろんワザとだった。ロクに広げもせず挿し込んだから血も出た。痛いだけで気持ち好いことは微塵もなかったと思う。  
ソコを用いた情交もあることはあるが、男と女で普通に使う場所ではない。挿れた時点で場所が違うと気づくはずだろう。それなのに、神楽はそれについてのツッコミはしなかった。  
「チャイナ、お前もしかして、何も知らねえんじゃ」  
「何をだヨ」  
「男と女のことでさァ」  
「馬鹿言うな、知ってるアル」  
「今日のこれ、普通の情交だと思ってますかい?」  
「……違うアルか?」  
ああやっぱり、と沖田は笑った。  
 
「何が可笑しいか?」  
「いや。……ひどいことされたってこと、覚えといた方がいいですぜ」  
「ひどいことしたのか。この鬼畜」  
「誰にも言っちゃあいけませんぜ。旦那には特にね」  
「言うとどうなるアルか?」  
「俺は斬られるかもしれねえが、チャイナお前も捨てられるかもしれませんね」  
「捨てられるのはイヤ」  
「じゃあ、黙ってることです」  
神楽の頭が小さく揺れた。うなずいたようだった。  
 沖田は、最中に乱れた神楽の髪を直してやろうと、桃色の頭に手を伸ばした。団子に結ってあった髪留めは片方外れていた。見渡すと敷布団の外に転がっている。  
頭に残ったままの髪留めも外し、手で梳いてやると、さらさらと肩まで広がった。慣れない手つきでそれを結おうと試みたが、うまくいかなかったのでやめてまた元通り梳いた。  
「これで分かったと思いやすが、お菓子をあげるからって知らない男にプラプラと付いていっちゃダメですぜ」  
 返事がないので髪を引っ張ると、  
「分かったアル」  
と小さい声が返ってきた。  
 
 
 
 
おわり  

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