注:痛い描写アリ。  
 
 
 
 
 こういうのさ、本当は秘密にしておきたいんだ。  
 え、だってよ、照れるじゃねーか、今さらよォ。  
 ガキじゃねーんだしさ。  
 その、なんだ……うん、ごほん。あー…………好きだ。  
 ………………  
 くァーっやっぱダメだ! もう無理! カンベンしてくれよ!!  
 
 なんだよ、笑ってんじゃねーよ。ちくしょーコノヤローこっち見んじゃねーよ!  
 だーから言ってんだろが、向いてないっつの。柄じゃねーんだよ。  
 
 もういいじゃん、な、俺精一杯頑張ったんだし、もうベッド入ろうぜ。  
 今日もたっぷり鳴かしてやるよ……俺にあんなこと言わせたんだから、オメーわかってんだろーなァ……  
 どんだけイってもやめねーからな………ほれ、脚開け。あん? 前儀? んなもんしてやらねーよ。  
 ……こんだけ濡らしといて何言ってやがる。  
 このやらしい粘液見えますか〜? 目そらしてんじゃねーよ、こっち向け。  
 ……いいからこっち向けって、キスしにくいだろうが。  
   
 
 以上、本日の口説き文句。毎度のことながら呆れるわ。  
 宣言通りキスしながら入れられて、反論も非難も封じられて、いつもより痛みを伴う行為のはずが、なぜかすごく興奮した。  
 「銀さん、いたい……」  
 それでも唇を離された瞬間に、弱弱しい感じをよそおいたくて苦しげにつぶやいた。  
 「ふーん……そうかい」  
 冷淡な声音がふってくる。いや、楽しそうというべきか。  
 「もっと痛くしてやろうか……?」  
 なんと返事をすればいいものか迷っていると、  
 「お前さァ、嫌がってるように見えねーんだよなァ」  
 銀さんは悪魔かと見まがうほどに妖しく、微笑みかけてきた。  
 心臓の高鳴りを自覚する。  
 目を細めて、黙って私を見据えると、狼狽するのにも構わずさっと器用に両手を縛り上げる。  
 そうしてゆっくりと引き抜いて、バックに体勢を変えると、触れてはいけないところへ濡れた先端を押しつけてきた。  
 「いやっ……そこ違……!」  
 行為として存在することは知っていたけれど、アナルに入れられる恐怖はハンパなかった。  
 暴れようとする私を抑えつけて、銀さんは強引に挿入していく。  
 身を引きちぎられるような痛みと焦燥感に紛れて確かにある、かすかな満足感を覚えて慄然とした。  
 「きっつ……力抜けよテメー」  
 まるで他人事、慣れきっているかの口ぶりに、どうしようもない嫉妬を感じる。  
 私以外の誰とこんな無法なことをしてきたというのか。  
 でもとにかく今は「痛い」以外の単語は口から出そうにない。痛いの連呼。  
 「わかってるよ、うるせーな」  
 面倒くさそうな口調とは裏腹に熱い舌を絡ませて私を黙らせる。  
 ほんの少しの動きすら強烈な刺激を生み出す、この恐ろしい交わり方は、どこか道を踏み外したような気分になる。  
 破瓜とはまた違う次元の痛みと、身体を許す関係にある興奮と、躊躇いもなく奥まで突き入れてくる容赦の無さに、  
理性を保つ最後のラインが飛び散ってしまいそうだった。  
 少しずつ抜き差しされ始めて泣き叫ばんほどに苦痛を訴える私をニヤニヤと見下ろす銀さんは、ドSだと公言して  
はばからないのも冗談ではなかったのだ。  
 
 ちくりと胸を刺す痛みがまたもやぶり返す。  
 痛くされて感じるなんて、これじゃまるでMっ気があるみたいじゃない心外だわ。ノーマルなのに。  
 だけど、痛がる私を見て喜んでいる銀さんを愛おしいと感じてしまう。もっとしてと思ってしまう。  
 もしかしたら痛さはおまけかもしれない。  
 もっともっと悦んでほしい、そのためならどんなことだって受け入れて、壊れてしまっても構わないとさえ思う。  
 その証拠にどんどん濡れてきて……  
 急にクリトリスをなであげられ、びくりと身体が震えた。  
 銀さんは溢れ出てきた愛液を無言で指にからませて、尖りきったクリトリスをくるくるともてあそぶ。  
 「なにこれ? 身体は正直ってやつ?」  
 鮮明な快感が激痛を緩和していき、それを察したように銀さんの動きも速まる。  
 指で器用にクリトリスを挟んで、ねっとりとしごくようにこすりながら責めあげる。  
 「許してっやめて……!」  
 ダメだ、やっぱり私には無理だ、こんなことされて心の底から喜ぶなんてこと出来そうにない。  
 羞恥心と理性が悦楽を受け入れることを拒否して、良心が悶絶しそうになっている。  
 それなのに快感が容赦なくクリトリスを責めて責めて……果ててしまいそう。  
 葛藤に悶え苦しんでいる様をきっと愉しんでいるだろう銀さんの目の前で、泣きながらイって、背をのけぞらせた。  
 同時に何かが中へ注ぎ込まれ、その熱く激しい迸りに意識を持っていかれ、よくわからないまま気が遠くなっていく。  
 「……銀さん……」  
 最後に絞りだせた声は届いただろうか。  
 こうやって開発されていって、最後にはどうなってしまうんだろう。  
 白くぼやけていく視界の中で、天使のように満足気に笑う悪魔を見つけて、これ以上は考えないでいいようにと、  
自ら残った意識を手放した。  
 何が起ころうと耐えるつもりでいる。離れたくないんだもの。この人がどれだけSでも悪魔でも。  
 遊び終わった子供みたいに無邪気に銀さんが抱きしめてくるのを感じながら、闇に堕ちた。  
 
 
 
      完  
 
 

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