「私、近藤さんと夫婦になります。」  
妙がそう報告してきたのは日差しが暖かい午後のことだった。  
銀時はとうとう折れたか・・・。とどこかで納得しつつ、  
妹を取られてしまったような、どこか切ない気持ちを味わいながら苺牛乳をゴクリと飲み干した。  
 
「よかったじゃねーの、おめっとさん。」  
と軽く微笑みかけると、妙の隣に正座している近藤に向かって、  
「お妙を宜しくな、近藤。」  
と深く頭を下げたのであった。  
近藤は「おう。」とだけ短く返事ををした。  
 
其れが十二時間前のことである。  
新八が万事屋に泊まることになったので  
着替えの調達を頼まれた銀時は、  
夜中にもかかわらず何度も行き来した道を通って志村姉弟の住む道場へ向かったのであった。  
「もう夜中に妙にも会いに行けねえな。」  
などと切ないような寂しいような気持ちを抱えたまま  
愛車のベスパを庭に停めたのだった。  
しかし母屋は既にひっそりと暗く、  
電話で連絡したはずなのに明かり一つ付いていない。  
不審に思いつつ、勝手知ったる何とやらとばかりに縁側に回りこんで  
妙の部屋の前まで歩いてきたのだった。  
 
最初、銀時は妙がすすり泣いているのだと思っていたが  
どうも様子が違う。  
「・・・・・・さん。」  
と甘い声が聞こえてきて、  
銀時は舌打ちをした  
「なんだ近藤とお楽しみ中かよ。」  
と舌打ちをするが、どうも妙の声しか聞こえてこない。  
切なげに聞こえてくる声も良く聞くと近藤を呼んでいるのではなかった。  
聞こえてきた声に銀時は息が止まる思いがした。  
 
「銀さん…。」  
 
耳を済ませて聞いているとたしかに妙は銀時を呼んでいたのだ。  
しかもくちゅくちゅと水音が聞こえてくるのは涙や洟ではなく・・・。  
もう一度妙が切なげに  
「銀さん・・・。ハアッ・・・。」  
と呟いた音を耳にして銀時はそろりと障子を開いたのであった。  
妙がびくりと身を硬くして開いた障子のほうを見ると、  
銀時が神妙な顔で妙を見つめていた。  
「何で…銀さん…。」と妙が目を見開いている。  
銀時はこの時初めて、昼間感じたのは  
妹を取られるような感覚ではなく、  
惚れた女を取られるそれだと理解したのであった。  
 
「お妙、ごめん。」  
と一言だけポツリと銀時は漏らし、妙を背後から抱きしめた。  
妙の自慰行為で濡れた指先を優しく掴んで口に含み、  
妙の涙で濡れた頬に口付けを落としたのだった。  
 
妙をそっと布団に横たえると、  
優しく覆いかぶさり撫でるように愛撫を始めた。  
その晩ふたりは一つになった。  
 
 
それから三日後、  
妙は近藤のもとへ嫁ぐ用意があると真撰組屯所へ移住していった。  
 
それからは銀時はいつにも増してボーっとすることが多くなり、  
新八も神楽も可笑しいと思い始める頃に事件は起こったのであった。  
 
 
いつもの団子屋で暇をつぶしていると隣に真撰組隊士が五人、  
どっかりと腰を落とした。  
銀時は舌打ちをし、店を出ようとしたが、  
衝立越しに聞こえてくる会話で体が固まった。  
 
「姐さん次はいつ遊んでくれんだろなあ。」  
最初は意味が解らず、花街の情婦のことでも話しているのかと思っていたが  
どうも話がかみ合わない。  
「でもよお、土方隊長の後は煙草の根性焼きが背中にあるし、  
 沖田隊長のあとは折檻の縄の後で萎えるよなあ。」  
「ポニーテールが可愛いよな、髪にぶっ掛けたくなる。最近こなれてきたし。」  
「やっと中イキも覚えただろ?たまんねーよなあ。」  
「ばーか。アレは夕飯に薬盛ってんだよ。」  
「やっぱりな、次に回ってくんのはあと一週間はかかるよなあ。」  
「まあ可愛いからなあ…お妙って呼ぶと締まり良くなるんだぜ。キュッと。」  
 
最後の隊士の一言で銀時は身体中の血が頭に上ってくるのを感じ、  
衝立を木刀で切り裁いた。真撰組隊士たちに殴りかかりながら、  
脳裏にはあの夜のことが思い出されていた。  
簡単なことだった、男所帯に嫁いだ妙は輪姦されていたのだった。  
 
「どうしたんですか銀さん!?」  
ボロボロになって万事屋に帰って来た銀時を見て  
新八が悲鳴を上げた。  
流石の銀時でも五人一斉に相手をするのは無謀だったらしく  
顔は紫に腫れ、頭からは血が流れていた。  
手当てをしてくれた新八の目がお妙にそっくりで、  
涙が出るのをぐっとこらえた。  
男所帯に妙齢の女を放り込んだらこうなることぐらい解っていたはずではないか?  
妙を手放した自分が情けなくて情けなくて、  
そして何より妙に会いたくて堪らなかった。  
あの夜のように抱きしめて欲しかった。  
 
事件から随分たったある日  
妙が万事屋を訪ねてきた。  
銀時はギクリと身を硬くして、  
「新八と神楽ならいねーぞぉ。」  
と、ジャンプから視線をそらさず言い放った。  
「…今は新ちゃんたちには道場に行って貰っています。」  
と妙がぽつりと言うと、沈黙が訪れた。  
「お前、やつれたけど大丈夫か?」  
「銀さん、全部知ってるんでしょう?」  
二人の声が重なる。  
 
銀時は目をつぶりため息を吐くと  
「ああ。あんなところにお前をやったのが失敗だった。」  
とゆっくり言葉にした。  
妙は徐に立ち上がり、着物をするりと脱いで  
銀時に背中を見せた。  
そこには痛々しい青あざや、縄で縛った後、煙草の火が押し付けられた後…。  
とても幸せに生活しているような女の背中ではなかった。  
 
「銀さん、私汚れちゃった。もうだめよ…。」  
とぽろりと涙をこぼして銀時を見つめる妙にかける言葉など見つからず、  
ただ妙を銀時は背中から掻き抱いた。  
 
背中の傷一つ一つに口付けを落としていくと  
泣いていた妙が  
「フフ、くすぐったい。」  
と初めて笑顔を見せた。  
「妙ちゃん、そんな可愛い顔見せて貰うと我慢ができないんだけど。」  
茶化して銀時が言うとふたりのあいだに甘い緊張が走った。  
ぽろりと涙をこぼした妙が、銀時の口を塞いだのが合図だった。  
 
銀時は折檻のあと、傷を舐めながら  
「消毒だからな。」  
と言い、妙の秘部にも口付けを落とした。  
最初は顔を真っ青にしていた妙も、  
他の男とは違う、銀時のやさしい愛撫ですこしずつ解れていった。  
確かに妙は無特定多数の男に廻されてしまったかもしれないが、  
妙が妙であることに変わりはなく、  
それが銀時は嬉しかった。  
背面は酷い傷だが前のほうはこれと言って傷がなく  
ささやかで可愛らしい胸も、天辺の飾りも、あのときのままであった。  
銀時は内心ほっとした。  
妙はぽつりと  
「私の始めては銀さんです。」  
と打ち明けてくれた。  
妙はつらかっただろうこの数ヶ月をたった一人で乗り切ってきたのだ。  
柔らかい妙の胸にそっと触れるとピクリと震え、  
切なげにため息を漏らした。  
「声、がまんしねーで、出せよ」  
「でも、神楽ちゃんがっ…ふっ…。」  
「大丈夫、今外出中。」  
胸の飾りをきゅ、と摘むと妙の腰がいやらしく動くのが解った。  
 
そっと腰を撫でると軽く痙攣するのが以前と違っていた。  
銀時は下着の中に指を入り込ませ、刺激しようとした。  
途端に妙の体が強張る。  
「大丈夫だ、妙。優しくすっから…怖くねーよ。」  
耳に口付けを落とすと妙はゆっくり頷いた。  
妙の其処は既にしっとりと濡れていた。  
銀時は自分のモノを取り出して愛液と先走り汁を絡ませ、  
妙のクリトリスに擦り付けた。  
「やだあ、それ…らめっ…。」  
上下に擦るたびに妙からは甘い声が漏れ、  
愛液が次々に出てきた。  
そろそろか、と思いながら妙の其処にペニスを当てると  
ゆっくり入れていった。  
以前のように抵抗はなかったが、中は柔らかく、あたたかく、  
気持ちよさを感じるには十分だった。  
「ホラ、全部入った。」  
涙目の妙を抱きしめて  
「お前は何一つ汚れちゃいねえよ。」と  
慰めの言葉をかけることしか銀時には出来なかった。  
ストロークをゆっくり繰り返し、  
以前より長い時間をかけて二人は達した。  
 
 
妙が妊娠しているという報告を聞いたのは  
それから一週間後だった。  
 
季節が巡り、秋もそろそろ終わりに近づいた頃であった。  
万事屋のチャイムがなり、  
「へーへー。」  
と銀時が引き戸を開けると、其処には妙がいた。  
妙の腕には未だ幼い赤ん坊が抱かれている。  
「白髪の赤ん坊はうちの組の子どもじゃない。と絶縁されてしまいました。」  
妙がそういって弱弱しく微笑む。  
銀時は妙を力の限り抱きしめ、涙を流していた。  
そろそろ冬がやってくる。  
 
 

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