『鏡台に映る淫らな二人』  
 
「何か変わったね、幾松ちゃん」  
「え、どこが変わったって?」  
 
ラーメン店・北斗心軒の女店主の幾松は鍋を振るいながら答えた。  
 
「前より客が多くなって、繁盛してるじゃないの。テレビ効果だね」  
「お陰様でね。けど、あの時は最悪だったんだから。店の中、破壊されちゃってさ。でもまあ、あの  
後、ちゃんと弁償させたから良かったけど。災い転じて何とやらってね。はい!チャーハンお待ち」  
 
最近はテレビ番組で、ある男のインタビュー場所に使用され、その名前が知られるようになった。  
テレビを見た人々が店に足を運ぶようになり、昼どきにはてんてこまいの忙しさに幾松は追われて  
いた。  
注文された品を出して、さらに注文を聞いて調理に入る。調理中の幾松に馴染みの客が言った。  
 
「店のこともあるけどね、あんたも変わったよ」  
「えっ、どこがよ!」  
「何ていうか、艶っぽくなったっていうか、肌つやいいなって」  
 
この話に別の客も加わった。  
 
「おお、色っぽくなったっていうかさ。ほんと、口説いてしまいてえなと思ったりしてさ」  
「ダメだよ。幾松ちゃんは男を近づけたことないんだから」  
「そんなこと言ったって、何も出やしないよ!はいっ、お待ち!」  
「・・・幾松さんよぉ。もやしいっぱいなんだけど。いっぱいすぎて麺や具が見えねえよ」  
 
そんなこんなで昼時のピークも一段落し、少しばかりの余裕が生まれたとき、幾松はテレビのニュ  
ースに目を奪われた。弁天堂のOweeが発売中止になったというニュースだった。それ自体には  
幾松は何の興味もなかったが、その映像の内容に彼女は目を奪われた。ヒゲをたくわえ、変な格好を  
してはいるが、幾松にはすぐに分かった。  
 
「何やってんの?あいつ」  
 
 
そして、時間と仕事に追われて夜も更けていき、店内も客の姿が無くなった頃、ガラガラと店の戸  
を開ける音がした。ヒゲをたくわえた配管工の姿をした見るからに怪しい2人組。桂小太郎とペット  
のエリザベスだった。  
 
「あんた、誰?」  
「あんたじゃない、ただのしがない配管工だ。幾松殿、ラーメン2つだ」  
『おっす』  
「あいよ。カウンター席で待ってて」  
 
幾松が調理にとりかかって、桂に話しかける。  
 
「あんたらのこと、テレビで見たよ。何だって、あんな所にいたわけ?」  
「世の中の動向を知るためだ。あと、“ついんふぁみこん”が欲しくて、つい」  
『それは古いんだっての』  
「攘夷志士だよね、あんたって。子供か、ゲーム好きな子供か?」  
 
幾松が桂たちの前にラーメンを差し出す。幾松はカウンター越しで話を聞くことにした。  
 
「ついんふぁみこんを得るためにゲーム対決をしたのだが」  
『そうじゃないだろ』  
「そうしたら、急に幾松殿のことが思い出されてなあ」  
「ちょっと待ちな。脈絡ないんだけど。ゲームやって、何であたしの事を思い出すわけ?」  
「“ぎゃるげー”なるものをしていたら、その中の登場人物が幾松殿に似ていたのでな」  
「はあ、そうですか・・・。で、どうすんの?これから」  
 
エリザベスは一足先にラーメンを平らげて席を立った。  
 
「どうしたエリザベス?」  
『用事があるのでお先』  
「そうか。ならば仕方ない。追手がいるので、しばらくは変装を解くなよ。気をつけてな」  
『がってん承知』  
 
戸をガラガラと開けて出て行くエリザベス。エリザベスは出ていく間際、幾松に向けて看板を  
出した。  
 
『よろしく頼む。うまくやんな!』  
 
少しばかりキョトンとしてしまった幾松だが、すぐにエリザベスの真意を察して微笑んだ。  
 
(あいよ)  
「どうしたのだエリザベスは?一緒にいたときには用事なんて一言も」  
「いいペットじゃないか、エリーは。なかなかいないよ、ああいうペットは」  
「それはそうだ。ペットというよりも、相棒といってもいいくらいだ」  
「で、今夜はどうすんの?」  
「あ、ああ。そうだな、泊まらせては、もらえないだろうか?幾松殿がよければ」  
「あたしの答えなんて分かってるくせに。いいよ、泊まっていきな」  
「かたじけない」  
「客もあんたが最後みたいだし、今日はもう店じまいさ」  
 
幾松が店の暖簾をしまい、片付けに入る。  
 
「すまぬな、幾松殿」  
「すまないなんて言わないでよ。何度だって泊まってるわけだしさ。先に風呂にでも入る?後片付け  
とかあるからさ」  
「分かった。そうさせてもらう」  
 
幾松は店内の後片付けをしながら、気分が高揚しているのを感じた。ペースが明らかに早くなって  
いるのが分かる。てきぱきと片付けを終わらせると、浴室の桂に声を掛ける。  
 
「着替え、ここに置いとくね」  
「かたじけない」  
 
やがて、桂が浴室から上がってきた。これにかわって幾松が風呂に入った。居間にやってきた幾松  
の姿を見て、桂はドキッとしてしまう。  
 
「うん、どうしたの?ボーッとしちゃって」  
「え、ああ。何でもない」  
 
幾松は桂の隣りに座って一息ついた。  
 
「最近、店の調子はどうかな?」  
「あんたに心配されるほどじゃないさ。徐々に客足も増えてきてるしね。あんたのインタビューが  
流れたあと、忙しくなってるよ」  
「そうか、忙しいか」  
 
おもむろに立ち上がった桂は、幾松の後ろに行くと彼女の肩に手を置いた。幾松は桂の予想外の  
行動に驚く。  
 
「ちょっと、いきなりどうしたの?」  
「幾松殿の疲れをほぐして差し上げようと思ってな。日頃、良くしてくれるせめての礼だ」  
「あんたにしては殊勝じゃない。じゃあ、お願いしようかな」  
 
桂はゆっくりと幾松の肩を揉み始める。弱すぎず、強すぎず、桂の手は幾松の肩を揉みほぐして  
いく。幾松は気持ちよくて、感嘆の声を上げた。  
 
「ふぁーあ、気持ちいい。どこかでやってたのかい?」  
「以前、アルバイトで少しばかりな。スジはいいと褒められた」  
「なるほどねぇ、それなら納得だわ。本当に気持ちいい。肩揉んでもらったの久々だし。あ、そう  
いえばね。今日お客さんに言われたんだ。変わったって」  
「ほぉ、それはどのように?」  
「色っぽくなったとか、艶っぽくなったとか。あたしは何もしていないのにね」  
 
それから少しの沈黙が流れた。少しして、桂は再び肩を揉みながら口を開いた。  
 
「知っていたさ。幾松殿がキレイであることくらい。先ほども湯上り姿のそなたに見とれていたのだ。  
俺が変わったと思うのは、表情が柔らかくなったというところかな」  
「表情?」  
「出会った頃の幾松殿は、どこかしら余裕がないと感じた。しかし、今は落ちついて余裕があるよう  
に思う。それがラーメンの味にも反映されているのではないか」  
「そうかい。それはおそらく桂に出会ったからだよ。あんたと出会ってから、仕事が楽しく思えて  
きてるのは事実さ。あたしが変わったって感じるのは、些細なことでも桂のことを探したりしてたり  
して。らしくないなと思うけど、そうしてる自分を受け入れてるとこもあるし。おかしいよね、あた  
しのキャラじゃないのに」  
「おかしくなどない。俺も変わったさ。以前は国のためなら命など惜しくないと思っていた。しか  
し今は違う。国も大事だが、それと同じくらい大事な守りたいものが増えた。だからこそ、無駄に  
命を散らさずにいようと」  
「いつだっていいから、来たいなら来てよ。あんたが来るように『そば』をメニューに加えてんだ  
から。あんまし食べてくれないけどね、あんたは。嬉しいんだ、桂が来てくれると」  
 
桂は胸に宿った衝動を抑えられなかった。気づくと幾松を抱きしめていた。。振り返った幾松  
は、次の瞬間、桂に唇を重ねられた。やがて、お互いの舌が絡み合い、淫美な音が部屋中に響き渡る。  
唇を離したあと、桂は幾松に話しかける。  
 
「相変わらず舌遣いがいやらしいね」  
「幾松殿も負けてはいまい。なまめかしく動いて」  
 
桂は言い終わると、二人は唇を重ねた。桂の舌が幾松の口内に入り込み、歯裏を丹念になぞっていく  
と、幾松も負けじと桂の舌をなぞる。唇を離しては重ね、貪るように絡めあう。桂は服の上から、幾  
松の胸を愛撫しはじめた。  
わずかにピクッと身をよじらせる幾松を見て、桂は首筋に舌を這わせる。舌は上から下へ、下から  
上へと這い回った。  
 
「や、あん!」  
「紅色に染まりゆく姿は、本当に悩ましいな」  
「ほん、とっにぃやらしい舌だね。はあぁ」  
 
愛撫していた手がスルリと間から入っていく。乳首を探り当てて、指で刺激を加えた。桂は幾松の  
乳首が固くなってるのを確認すると幾松に言った。  
 
「幾松殿、触れる前から乳首が固くなっているのはいかがなものか?」  
「あんたが刺激するからだろ、このエロ親父!」  
「エロ親父じゃない桂だ。ほら、こんなに乳首がビンビンに勃起しているではないか」  
「あたしを、あん、はぁあ、おちょくってん、だろ」  
「いいやあ、そんな事ないもーん!」  
 
幾松は息も絶え絶えの状態になっていた。桂は幾松の胸元を大きく開いた。彼の前には幾松の豊かな  
乳房が露になった。桂は乳房をゆっくりと揉みしだいた。  
 
「気持ち良いか?幾松殿」  
「ふあっ、はあっ、気持ちいいよ」  
「そうか、ならばこういうのは?」  
 
桂は乳輪に舌を這わせて、形に沿って舐め上げる。そこから頂点である乳首に向かって舐めていく。  
幾松は電流が走ったような感覚を覚えて身悶える。彼女の乳房の柔らかさ、感度を堪能しながら桂は  
乳房への愛撫を続ける。  
幾松は起き上がり、桂を寝かせると自分から口付けを交わした。  
 
「一度火が点いたら、なかなか消えないからね。覚悟しなよ」  
 
幾松は桂に噛み付くように唇を重ねた。彼女の唇が、ゆっくりと下へと移動する。襦袢をはだけさ  
せ、彼の上半身が露になると、幾松は指先で体をなぞり始めた。桂は幾松の指遣いに歓喜の声を  
漏らす。  
 
 
「ああっ、幾松殿。気持ちいいぞぉ」  
「まぁだだよ、気持ちよくなるのは」  
 
そう言うと、幾松は桂の乳首に口をつけて吸い始めた。  
 
「好きだもんねえ、あんた。こうして乳首舐められるの。もうコリコリしてるじゃない」  
「あんたじゃない、桂だ」  
「それ言わなくなるくらい、責めたげるからね。あ・ん・たっ」  
「あんたじゃ、うっ、ふぉぉ」  
 
幾松は桂の乳首と同時に、手で彼の股間に刺激を加えていた。同時に責められ、桂は言い知れぬ  
快感に浸っていた。そんな表情を見て、幾松は言った。  
 
「着物の上から何か染み出してるよ。気持ちいいんだぁ」  
「ああ、幾松殿。気持ちが良すぎて出そうになる。思いきりぶちまけたくなる」  
「だったら、一回出す?」  
 
桂は首を縦に振った。幾松は彼の下半身に移って、襦袢の裾を広げた。雄々しく屹立した肉棒が姿  
を見せた。手に取って、ゆっくりと肉棒を上下させると、それはより硬度を増していく。そして亀  
頭を舌で刺激してみる。感じている桂の反応を見て、幾松は肉茎へと舌を這わせる。ゾクゾクとし  
た感覚が桂の体中に伝わる。肉棒はピクンピクンと脈動を続け、今にも射精しそうなほどであった。  
桂の肉棒が幾松の口内に咥えこまれる。そして、頭を上下させる。口内の温かさと、上下の動きの  
緩急に桂は悲鳴を上げるように声を上げた。  
 
「うあっ、はあっ、もう!もう、出る、ぞっ」  
 
幾松の口内に精液が射出された。あまりの量ゆえに、口から零れそうになるのを掌で受け止めた。  
 
「すまん!幾松殿。気持ちよすぎて、そなたの口に出してしまった」  
 
幾松は精液をゴクンと飲み込んで、掌の精液も舐め取った。恍惚の表情を浮かべる幾松は、いつも  
とは違う妖艶さを多分に含んでいた。桂の肉棒はまだ硬度を保っていた。亀頭からトロリと染み出る  
精液を、幾松はまた口内に吸いだす。発射直後で敏感になっている桂は思わず腰を引いた。  
 
「いつもの桂じゃないね。感じちゃってるんだ?」  
「それは、出したばかりだから仕方なかろう」  
 
桂は幾松を寝かせると、彼女の裾を捲り上げた。指で確かめると、ぬるっとした感触があった。  
 
「幾松殿、既に濡れているが」  
「気持ちよかったし、あんたの咥えてたら何だか濡れてきちゃって。ちょっとさ、体勢変えて?」  
 
幾松は桂に下半身を自分の方に向けるよう促した。言われたとおり体勢を変えると、桂は幾松の  
秘肉を掻き分けていく。秘唇からは愛液がとめどなく溢れている。桂はこれに口付け、さらに舐め  
回していく。  
 
「桂、ここが欲しいって言ってる。だから、おいで。あたしのナカに」  
 
幾松が自らの手で、秘肉を掻き分ける。開いた秘唇は、ヒクヒクしながら桂の肉棒を待っている。  
そう桂は思った。引き寄せられるように、桂は幾松の秘唇に肉棒を挿入した。肉棒はゆっくりと  
確実に膣内へ入っていく。  
 
「はあ、あんっ、ふぅん!」  
「温かい、幾松殿のナカは心地よい」  
「あん、バカッ!」  
 
完全に挿入されたあと、桂は腰を動かしていく。幾松は桂の体を強く抱きしめる。幾松は桂の体を  
体と体温で感じたかった。桂は幾松の両足を高く上げて突き続ける。  
 
「桂、はあっ、あっ、ふっうぅん!」  
「気持ちいいか、幾松殿」  
「はっ、あは、はぁ、気持ちいい」  
「俺もだ。だが、俺はまだ幾松殿を味わいきってはいない。まだまだいくぞ!」  
 
桂は自らの肉棒を引き抜くと、幾松に四つんばいになるようにと言った。露になった秘唇目掛けて  
桂の肉棒が挿入される。  
 
「きゃっ、あん、くうっ!」  
「幾松殿、鏡台を、鏡を見てみよ」  
「え、あ、はあん!」  
 
鏡台の鏡は、四つんばいになって喘ぐ幾松とパンパンと一心不乱に腰を振る桂の姿が映し出された。  
幾松は淫らにこの快楽を受け止めている自分の表情を恥ずかしく思うと共に、桂の剥き出しになっ  
た性欲が自分に注がれているという事に嬉しさを覚えていた。  
桂は幾松を引き寄せて自分の膝の上に乗せて、下からズンズンと突き上げてくる。桂はまたもや自分  
らの痴態を鏡台に映そうとしている。  
 
「ほら、幾松殿。俺たちは交わっておるぞ。見えるか?俺と幾松殿が繋がっておるところが」  
「あああ、見えるよ、あんたの・・・と、あたしのが繋がって激しく出入りしているところが、よ  
〜く見える」  
 
幾松は後ろの桂の首に手を回し、自らも腰を振っている。桂は何とか首を伸ばして、唇を重ねる。  
鏡台は余すことなく、二人の行為を映し出す。桂は口付ける自分たちが、何といやらしい表情を  
しているのだろうと妙に感心した。幾松が桂に語りかけた。  
 
「ね、ねえ。あんたと向かい合わせでイキたいんだけど」  
「あ、ああ。そうだな。けっこう、この体勢も辛いしなあ」  
 
体勢を直し、正常位で桂は幾松をズンズンと突いていく。幾松は両足を桂の足に絡め、突き上げる  
動きを受け止める。桂も強く幾松の体を抱きしめる。そのまま、ピストンの動きは早まっていく。  
絶頂の時が訪れようとしていた。  
 
「あ、あ、幾松っ!んあああぁ」  
「うん、うん、来て!あたしのナカに、あああっっ!!!」  
 
幾松は大きく体をのけぞらせた。その後、幾松は桂が絶頂に達したのを膣内で感じ取っていた。  
自分のナカに注ぎ込まれる精液、達したあと、自分の乳房に顔を埋める桂の姿。ハアハアと二人  
の呼吸が部屋中に響き渡った。  
 
翌朝、桂が起きたとき幾松の姿はなかった。着替えて下へ降りると、そこには調理をしている幾松  
の姿があった。  
 
「あ、おはよう。お腹減ってるだろ?」  
「ん、ああ、そういえば」  
「ほら、蕎麦作ったから食べな」  
 
テーブル席に座った桂に幾松は蕎麦を出した。  
 
「あ、幾松殿。一緒に食べてはくれぬか?」  
「え、だって一人前しか」  
「二人でこれを食べればよい。さあ、幾松殿」  
「ふふっ、じゃあお言葉に甘えますか」  
 
向かい合って一つの蕎麦をすする二人。蕎麦を食べ、目と目が合ったとき、お互いから笑いがこぼれ  
る。こんな朝を迎えるのも悪くはない。二人は同じことを考えていた。  
 

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