『人には節を曲げねばならないときがある』
服部全蔵は吉原に行く回数が多くなっていた。彼は日輪に自分の腕を売り込み、日輪はそれに応じ
て全蔵の腕を買った(ブスっ娘倶楽部のVIP券にて)。いわゆるブス専として知られる全蔵で
あったが、ここに来て例外が誕生した。そう、自分の腕を買ってくれた日輪である。全蔵は日輪に
興味を持つようになっていた。そして全蔵は『ひのや』に来ていた。
「よぉ、日輪さん。今、お暇かい?」
「あら、全蔵さん。今は休憩中だから、しばらくはゆっくりしていられるけど」
「じゃあ、俺の茶話でも付き合ってくれるかい?」
「ま、ここは茶屋だからね。お付き合いしましょう」
「そいつは話が早い。なら、お邪魔させてもらうかな」
日輪が茶と茶菓子を用意していた頃、日輪の息子である晴太が飛び出てきた。
「あ、忍者のおじさん。いらっしゃい」
「おう、ぼんず。今から仕事か何かか?」
「当たり!今から仕事。おじさんは行くのかい?ブスっ娘倶楽部に」
「ナマ行ってんじゃねえよ、クソガキ。お前の店のローション、口の中にでも入れてやろうか?」
「うえ、嫌だよ。じゃあね、ごゆっくり」
「晴太・・・ごめんなさいね。環境が悪いのかしらねえ?」
「いいガキじゃねえの。なかなか出来てると思うぜ」
「そうかしら」
「ああ、あのまま育ってくれりゃあ」
「はい、どうぞ」
「こりゃどうも」
差し出された茶と茶菓子を全蔵は口にした。そこへ見回りから戻ってきた月詠がひのやに帰ってきた。
全蔵の姿を認めると、月詠は彼に一礼した。
「珍しい客人じゃの、日輪。先の件では、日輪を助けていただき礼を言う」
「礼なんざいらねえ。そこの御仁から、腕を買われた身の上だ。当然のことをしただけさ。嬢ちゃん
も仕事か?精が出るねえ、ここの奴らは真面目で結構。地上のあいつに見せてやりてえもんだな」
「銀時のことか?あの男は変わらぬ。もはや、あの生活が身に染みておるようでな」
「月詠、あんまり銀さんのこと、そんなに悪く言わない」
「いや、本当のことじゃから」
「で、また見回りに行く予定とかあんのかい?」
「いや、今日のところはこれで終わりでありんす。平穏ゆえ、部下に任せてきた」
月詠は自分の部屋に上がる際、日輪に告げた。
「ひ、日輪。わっちは、この後、野暮用があって地上へ行くことになったゆえ」
「はいはい。気をつけて行って来な。銀さんにもよろしくね。朝帰りとかもOKだから」
「な、何を言っておる」
明らかに月詠の態度があたふたとしているのが分かる。月詠はぱたぱたと上に上がっていった。日輪
はそんな月詠を楽しみつつ、見送っていった。
「なんだい、あの嬢ちゃんはあいつの事が」
「みたいだね。あの娘はね、初めての恋なんだよ。女を捨てて、この吉原のために尽くしてきたの。
銀さんたちが現れて、接するたびに普通の女としての情を取り戻した。それがあたしには嬉しくて
ねえ。見てるだけで、顔がほころんでしまうのさ」
「いい事じゃねえの。そういう展開、俺は好きだぜ。ジャンプで好きなのは、ラブコメ系だから。
ハッピーエンドで終わってほしいもんだ、アンハッピーは好きじゃないんでね」
「ああ、あの娘には幸せでいてもらいたいからね」
「あんたは・・・どうなんだよ?」
月詠が下りてきた。今から地上に向かうようだった。
「ごゆっくりとな。では、日輪。行ってくるでの」
「いってらっしゃい。あ、ちょっと月詠待ちな」
「何じゃ」
「ほい、銀さんたちに持っていって」
「日輪、そのような」
「飢えてるんだから、特に甘味中毒者はね」
「そうか。では、持っていくとするかの」
月詠が立ち去ったあと、日輪は全蔵に答えた。
「幸せよ、あたしは。晴太や月詠や、吉原のみんなが生き生きとしているのを見てるから」
「そうじゃねえ、あんた自身どうなんだって聞いてんだ。あの嬢ちゃんには、女うんぬん言っておき
ながら、自分は女としての幸せ捨ててんじゃねえのか?」
全蔵の言うことは的を得ていた。確かに吉原のために、自分は力を尽くしてきた。みんなの幸せが
自分の幸せだと思うことで、自分自身も幸せであると。
「けっこうな推察ね。とはいっても、あなたにはどうしようもないじゃない。あなたはブス専、なん
でしょう」
「今日、俺がここへ来たのはブスっ娘倶楽部の開店待ってたんじゃねえ。あんたに用があった」
「あたしに?」
「存外ベッピンも悪くはねえと感じたのは、あんただからだよ。妙にあんたが気になってな。あの時
だって、偶然じゃない。あんたの事見てたってわけだ」
「あたしに言い寄る男なんて、久しぶりね。悪い気はしないよ。でもね、あたしはこんなだし、あん
たの想いに応えられない」
「雇い主の事情に立ち入らないのが忍者の理だ。だが、理から外れればただの男と女。惚れちまった
んだよ、あんたにさ」
全蔵はぶっきらぼうに日輪へ自分の想いを告げた。
「俺の通り名は『摩利支天』。摩利支天ってのはさ、その昔、帝釈天と阿修羅が戦ったときには
帝釈天の支配する月と太陽の光を遮って、阿修羅の攻撃から守ったらしい。それ繋がりってわけ
じゃねえが、あんたを守りたいんだ。何もかもから。あんたが望む限り」
日輪はしばらく、一言も発せず全蔵を見つめていた。前髪のせいで、どんな表情なのか窺うことは
できないが心を込めた言葉であることは理解できた。このように自分を求めてくれた言葉を聞く
のは久しぶりで、知らず知らずのうちに胸の辺りが熱くなっている。まだ自分の中に、女の部分が
残っているのかと思うと自然と笑みがこぼれた。
「どうした?」
「ふふっ、おかしくなってきたんだよ。あたしにも残っていたんだなって、女の業っていう残り火が」
「日輪、それって」
「この気持ちが男と女のそれなのかは分からない。けど、今のあなたの言葉にあたしの心が揺り動かさ
れたのは事実みたい。上がるかい?」
「ああ、あと座布団柔らかいのお願いしていい?」
「あいよ」
全蔵によって、日輪は自分の部屋へと戻っていった。布団を敷いていって、そこに日輪を座らせた。
全蔵は日輪をじっと見つめた。本当にきれいな顔立ちだ。今までの自分の好みとは真逆である。しか
し、日輪を欲しているという想いに偽りなどない。今は目の前にいる女人を愛するのみだった。
「いいの?あたしで」
「いいも悪いかもあるかよ。俺から求めたんだ」
全蔵はゆっくりと唇を重ねた。触れるだけの口付けが段々と激しさを帯びて、二人は唇を重ねたまま
舌を激しく絡ませる。
「はあっ、あん」
「へっ、我慢してたんじゃねえか。久々に燃えてきたってな。あ、これじゃ、バトル漫画じゃねえ
か。自重、自重」
舌を絡ませた音がいやらしく聞こえ、その音が日輪の眠っていた女を呼び覚ます。唇を離した際、唾
液が銀色の糸となって二人を繋ぐ。全蔵は自分の衣服を手際よく脱ぎ捨てると、今度は日輪の衣服を
脱がせる。シュルリと音を紡ぎながら、着物がはだけられていく。日輪はここにきて、恥ずかしいと
いう気分になった。
吉原で一番の花魁と呼ばれた自分が、どうして恥ずかしいという気持ちになったのか。日輪として
も分からない問題であった。全蔵は日輪の全裸を見るにつけ、さすがは吉原一の花魁であると妙に
納得した。だが、そんな肩書きなど全蔵には必要なかった。今、目の前にいる女は自分が惚れて
抱きたいと思った女、それだけだった。
「はんっ、久しぶりだし、多分体とか崩れてきてる、あん、うぅう」
「全然だけどぉ。きれいな体だよ、しばらく見ていたいくらいだ」
「ふふっ、見るだけで満足?」
「い〜や、満足しねえ。こんな美味そうなごちそう、放置プレイなんて出来るわけねえ」
「なら、食べてくださいな。心ゆくまで」
首筋に唇を落とし、ゆっくりと日輪の体を舐めていく。左腕でゆっくりと日輪の乳房を揉み上げて
いく。柔らかい感触が全蔵の手に残る。這っていた唇が乳房へと至り、桃色の突起に舌先をつける。
日輪は思わず身をのけ反らせた。構わずに全蔵は乳輪ごと、乳房に食いついた。気持ちいい刺激に
全身で応える日輪。日輪の手がすっと全蔵の肉棒に触れた。
「大きい。そして、硬いのね」
「どうした?もう欲しくなったのか」
「いいや、まだ食べてほしいから。あたしは後から食べるわ」
全蔵はさらに下へと動いて、下半身へたどり着く。両足を開いて秘部を確かめる。秘唇から愛液が
溢れ出していた。指ですくってやると、粘り気を持った液体が指を濡らしていた。
「すげえ溢れてるぜ、しかもどんどんと」
ゆっくりと中指を膣内に入れていく。すんなりとズブズブと受け入れていく。膣内は入ってきた
指をキュウと絡みついてくる。
「あんっ、ふううぅぅうん。あなた、気持ち、いい」
「全蔵て呼びな。俺も日輪って呼ぶから」
「うん。全蔵、もっと、もっとかき回して」
「ほいじゃあ、もう1本追加の方向で」
「あああっっ、ふあっんぅ」
続けて中指が日輪の膣内に入った。2本入った指は、縦横無尽に膣内をかき回していく。水音が
ピチャピチャと部屋中に響く。日輪は全蔵の愛撫に息も絶え絶えになっていた。
「ぜ、全蔵、今度はあたしの番。さ、立って」
「いや、日輪とこういう事してる時点で、もう勃って」
「全蔵」
「お、おう」
すっくと立ち上がった全蔵に向かって、日輪はそそり立っている彼の肉棒に触れてみる。硬度を増
している彼の肉棒からは透明な液体がにじんでいた。
「立派ねえ。じゃあ、食べちゃうわよ」
日輪は肉棒を握り締めた。そして、舌先を亀頭につけてチロチロと舐めれば、全蔵は頭を上げて
この気持ちよさに耐えている。
「ようやく、感覚が戻ってきたみたい。料理方法は数々あるから覚悟してよ」
「ははっ、お手柔らかに頼んます」
全蔵の肉棒は怒張しきっており、日輪にとってはこれを御することなど、造作ないことだった。日
輪の唇が亀頭より移って、肉茎に至ると上下に唇を動かして愛撫する。舌も這わせていくと、全蔵
は下からこみ上げる心地よさに身を震わせる。
「うぁっ、やべぇ。ほんと、こりゃあぁやべえ」
「だったら、一回出させるとしますか」
そう言うと、日輪は深く全蔵の肉棒を咥え込み、前後に頭を振っていった。緩急を使いながら、肉
棒は絶頂へと誘われていく。音をわざと立てながら、日輪は前後に頭を振り続ける。さらに全蔵の
表情を窺い、それに応じて動きの強弱を変えていくという手練手管の妙技。もはや、全蔵が必死に
射精すまいという意志を持っていても、抗えるはずもない。全蔵は身を震わせ、日輪の口内に射精
した。
「はあっ、あ、うぅわぁ、はあ、はあ。情けねえ、出しちまった」
日輪はこぼれた白濁液を手ですくい、ペロッとそれを舐め取った。そのしぐさに全蔵の肉棒は、再び
硬度を取り戻す。舐め取ったあと、笑みを浮かべた日輪は後ろへ倒れこむと全蔵に言った。
「全蔵、まだイケルんだろ?次はここで味あわせて。今度は、刹那で終わらせないで」
「では、服部全蔵いざ参らん!」
全蔵の肉棒が日輪の秘唇をかき分けて、膣内へと入っていった。日輪はこのような事をするのは
久しぶりだったので、最初はなかなか全蔵の肉棒を受け入れなかった。全蔵は焦ることなく、何
度も挿入を試みる。ゆっくりと膣内の深部に達していく。
「はっ、あああぁぁ。はい、って、くぅっ」
「気持ちいい、日輪のナカ。あったかくて、トロトロして。へっ、油断しちまうと刹那で終わるな」
「今度も刹那で終わるなら、クビ!ねっ」
「あいよっ、ご主人様ってよおっ!」
「ああ、ふあっん!」
パンパンと腰を振って、全蔵のピストン運動が始まった。とは言っても、全蔵は日輪の膣内の気持ち
よさと戦っていた。気を抜いていたら、果ててしまうような、えもいわれぬ快感が肉棒を介して十分
すぎるほど伝わってくる。膣内が全蔵の肉棒に絡みつくような感覚である。気を保って、全蔵は日輪
の両足を抱えて前後に動かした。
(おそらく、日輪は知っている。自分がとんでもないモン持ってんだって。だが、悪くねえ。突かれ
てヨガっている日輪を・・・ってうぉう!)
「動きが遅くなってるよ、もうイクの?」
「うぅぅ、おっ、へへっ、まぁだまだよ!」
強がっているものの、全蔵は挿入してからイク寸前、まさに綱渡り状態であった。さらに、日輪が
膣内を時折、キュウと締め付けてくる。全蔵は日輪の体を起こし、自分は後ろへと倒れた。日輪は
腰を前後に振って全蔵を責め立てる。その姿は躍動感に溢れて、まるで舞をしているかのようだっ
た。
「日輪、舞ってるようで、きれいだぜ」
「そんな余裕、まだあるの?じゃあ、これは」
「うぉっって、お前どんだけだよ」
日輪は今までの動きに回転する動きを加えた。全蔵は揺れている日輪の乳房を下から揉み上げる。
さらに下から激しく腰を打ち付ける。日輪も全蔵も、激しく動いていたため体からは汗が噴き出て
いる。二人はもう絶頂へ近づいていく。
「ひ、ひの、わ、いいか?イッテも、出すぜ」
「ああ、出して。あたしに全部、ぶちまけて」
「うぉ、あああっ」
「ふっ、ぅうぁはあっ、んっふっううん!」
全蔵は射精していった。日輪も満足したのか、体が自然と小刻みに震えている。一度ではなく、何度
も射精するたびに、日輪は膣内にてこれを感じていた。射精し尽くすと、日輪は全蔵の胸の中に倒れ
込んだ。二人の息遣いだけが響く。息も落ちついたところで、日輪が口を開いた。
「はあ、はあ、久々だったから燃えちゃったみたいねえ。まだまだ、あたしも若いのかもね」
「へっ、俺は堪能させてもらったぜ。はは、気持ちよすぎだって」
「あら?まだまだ頑張らないと。こんなモンじゃないから」
ニッコリと日輪は全蔵に微笑みを向けた。こいつにゃ一生敵わねえな、苦笑いを浮かべながら全蔵
は日輪の髪をゆっくり撫でた。自分の好みとは真逆ながらも、その節を曲げさせた吉原の太陽・日輪。
全蔵は日輪を引き寄せると、愛しさを込めて唇を重ねた。