「だから言ったじゃろう?……かかったと気づいたときにはもう遅いと」  
 月詠が煙管を口に咥え横目で銀時を見上げる。  
 「……お前の師匠のセリフだろーが」  
 「そうだったかのう……?」  
 くすりとほのかな笑みをみせて月詠がふぅっと紫煙を細く吐く。  
 「てめーなぁ……とにかく俺ァ帰るぜ、どけ」  
 つれなく月詠を押しのけて、薄暗く灯のともった部屋から出ようとする銀時の腕に、そっとしなやかな  
指が絡む。  
 「女に恥をかかせるのか? 銀時……」  
 男のいつもと同じそっけない態度に、月詠は面白そうに言う。  
 「今日は誰も見ておらん。わっちとぬしだけじゃ。そうじゃろう?」  
 「あん時はお前、ただのリフレッシュだ、つって騙されて行ったんだっつーの」  
 「嘘をつくな。いろいろ期待していたと聞いたぞ。栗拾いだのわかめ酒だの浮かれていた、とな」  
 カラン、と漆塗りの煙管箱に小さく音を響かせて、新品の煙管を大事そうにしまう。  
 月詠のその仕草をひととおり眺めてから、銀時は苦い声をだした。  
 「……だいたいお前は愛想がねーんだよ。言ったろ? 旨い酒にはべっぴんの笑顔が最高のツマミだ。  
 ふたりっきりでもお前といちゃいちゃする気にはなんねーよ」  
 ばっと乱暴に月詠の手をふりはらい、銀時は部屋の中に敷かれた布団を睨みつける。  
 「わからんのか……? 誰かが見ている前でシナをつくり銀時に寄りかかるなど、わっちのキャラでは  
 ないからのぅ」  
 思いがけず艶のある声が銀時の耳をくすぐった。  
 もう一度、ゆっくりと月詠の細い指が銀時の手にふれる。  
 「かまわんのだ。好きにして、かまわん……」  
 そう言いながら月詠の指が小さく震えている。  
 銀時は大きな溜め息をつき、月詠は心の内を閉ざすように目を伏せる。  
 「お前なら、銀時なら、と思ったんじゃ……わっちは、もっと色んなことを知らねばならん。  
 この町の皆を護るために」  
 「……ったくお前はよォ、真面目な奴だぜ」  
 少しだけ口を尖らせて銀時は呟く。  
 「吉原の自警団を統べる決意と覚悟はたいしたもんだが、男と女っつーのはな、そんな堅っ苦しいモンじゃねーよ。  
 もっとこう、気持ち良くて頭がふわふわするような、まいーや、面倒くせ………」  
 銀時はふわりと月詠をかき抱き、絢爛たる模様の上に倒れこんだ。  
 それでも肌蹴ない月詠の着物をじれったい手つきで緩めていく。  
 「いつもと同じ格好で誘いやがって……完璧だまされたぜ。何が相談したいことがある、だよ」  
 「罠の張り方も伝授されたからな、地……っ!」  
 いきなり銀時が唇を塞ぐ。  
 「他の男の名を呼ぶなとは教わらなかったようだな」  
 刺すような視線が月詠を震わせる。  
 たとえ一時のものだとしても、この男の独占欲を垣間見た気がして月詠は心ひそかに胸を躍らせた。  
 銀時が唇から手を離すと、その手にはほの淡く紅が色づく。  
 その控えめな色に不覚にも銀時は胸がしめつけられるが、とりあえず見なかったことにした。  
 微かな落胆がほんの一瞬だけ月詠の顔に浮かんですぐ消えたのも、気づかないフリをした。  
 どうしてそんなことをしたのか、自分でもよくわからない。  
 何を言ってもあやふやで身勝手な言い訳になりそうで、お楽しみの前に殴られたくはない、と、しばらく  
黙ったまま銀時は月詠の帯を解いていく。  
 いや、解けなかった。  
 「どーなってんだよこの帯……ぎちぎちに締めやがって。締めんのはあそこだけにし……ぐはッ!」  
 銀時の下品な冗談を最後まで言わせず、月詠の鉄拳がとぶ。  
 「ロマンチックに事が運べんのかぬしは!」  
 「人のこと言えねーだろうが! いってーなァ、よーし、泣かすの決定な!」  
 言うが早いか銀時はガバッと着物の裾を広げて月詠の脚を押さえる。  
 「抵抗したらそこでおしまいだぜ。最後までやりたきゃ抵抗すんな」  
 「な、何をする気……?! あっんあ……!」  
 薄布ごしに女の大事なところをなでられて、未知の感触にたまらず声をあげる月詠。  
 
 「何って決まってんだろ〜? なんだ? やっぱりオボコなのか?」  
 にやにやしている銀時の顔を、月詠は頬を染めながら睨みつける。  
 「知識はあっても処女は処女だよなァ。大丈夫大丈夫、こう見えて手馴れてるからね」  
 ちらりと月詠の瞳に悲しみの色が浮かぶが、銀時はそれにも反応した様子を見せずに秘所をなめらかに  
指でなぞる。  
 「ぅ、くぅ………!」  
 熱く湿ったような感触が銀時の指の先に感じられる。  
 優しくなぞり続けると、そのうちにじわりとぬめりが薄布を犯して指先にまとわりついてきた。  
 「もう濡れてきてんぞ。女は捨てたとかぬかしてやがったよなァ、確か」  
 月詠の身体の上にのしかかるようにして銀時は顔を近づけ囁く。  
 「ぬしの……せいじゃ………わっちは……本当に……」  
 荒い息が月詠の邪魔をする。  
 銀時に言葉が届いたのかどうか、月詠にはわからなかった。  
 遠まわしな告白にも、何事もなかったかのように指の動きがとまらなかったからだ。  
 この男の真意がいまだ掴めなかった。  
 ──誘わなければ良かった、本当は、求めるよりも求められたかったのに。  
 月詠の目尻が潤んでくる。  
 罠を張っている最中はなんと楽しかったことか、なのに捕らえたはずの獲物をどう扱っていいかわからない。  
 ──わっちは何を………望んで……  
 愛して欲しいと、今さら言ったところで、心ではなく身体だけを愛でられて終わってしまう気がする。  
 暗く沈んでいく胸の内とは裏腹に、月詠の頬は上気し、喘ぎは甘く、腰は震える。  
 「もっと楽にしろよ、がっちがちじゃねーか。脚も閉じてくるとさァ、弄りづらいんだよね」  
 銀時の片膝が月詠の閉じようとする両膝を強引に割り開いていく。  
 羞恥に眉根を寄せつつも脚を広げられるがままの月詠の表情に、女の性が匂い立つ。  
 抵抗をやめようとする動きに沿って銀時は手を下着にはわし、上からきゅっと卑猥な突起をつまみあげた。  
 それだけで月詠が声を殺し仰け反るさまを楽しそうに見下ろして容赦なくなぶる。  
 「なんだ、ちっせーな、胸がでかいからココもでかいと思ってたぜ」  
 ぬめる布ごと敏感にふくらんだ突起を指で挟み込んで、ぐちゅぐちゅとこねまわしながら、荒い呼吸の  
せいで上下する月詠の胸元を乱暴に肌蹴させた。  
 とっさに両手で肌を隠そうとする月詠を銀時は目で制すと、わざと好色そうに笑いかけながら少しずつ  
手を胸へと這わして、ピンと尖る乳首に軽く指先だけを押しあてる。  
 ふるえあがるような快感を隠すかのように、月詠は唇を噛んで銀時を言葉なくにらみつけた。  
 「……どうした? もう終わりでいいのか?」  
 月詠は相反する衝動に心臓が握りつぶされそうになる。  
 愛のない交わりなど終わりにしたいと思いながら、心の奥底で渦巻く深い欲が身体の芯を燃やしてくる。  
 どくどくと脈打つのは心臓だけではなく、愛液があふれる秘部はもとより、指で触れられているだけの乳首まで  
ひどく熱く主張してきていた。  
 ジンジンと疼き、快を求めて銀時の指にこすりつけたくなってしまう。  
 いやらしく腰をくねらし、豊満な胸をふるわせて、男を求める姿を銀時に晒してしまう自分を想像し、月詠は  
喉元まで真っ赤になっていく。  
 何かを言おうとしてなんの言葉も発せないまま今にも泣き出してしまいそうな顔をする月詠に、銀時は  
何度目かわからぬ溜め息をつく。  
 「だからお前は真面目だってんだよ。楽しめばいいんだよ、こーいうのは」  
 世話が焼ける、これだから処女は……と銀時は胸中で傲慢につぶやく。  
 「誰も聞いてないんだろ? 色っぽい声ぐらい出してみろよ」  
 ゆるりと乳首をつまみあげて指の腹で転がし、手の中におさまりきらないたっぷりとした胸をやわやわと揉むと、  
泣き声に近い喘ぎ声を月詠は切なげに唇からこぼしだす。  
 「そうそう、いいね。やる気でるなー」  
 銀時はひとしきり胸を堪能すると、ねっとりと湿る月詠の下着に手をかけて脱がせた。  
 女の本気の匂いが銀時を熱く刺激する。  
 「そんじゃモンブランでも作りますか」  
 
 月詠を顔の上にまたがらせた。  
 もちろん月詠にもご奉仕させるべく69の体勢で。  
 「誘ってきたのはそっちだから、まぁ頑張って楽しませてくれよ」  
 銀時は処女の御開帳をのんびり眺めながら、気楽な口調で言う。  
 月詠は目を丸くしてかすかに怯えた。  
 知識としてはあるにはあるが、実物を目の前にして、さあどうぞ、と放り出されては困惑するばかりだ。  
 艶めく乱暴な男の象徴、それに舌をはわし、指でこすりあげるなど、本当に自分に出来るのか、しかし  
これを超えなければ先へは進めない……くそ真面目に月詠は覚悟を決め、銀時のモノに両手を添える。  
 ああ、そういえば……と、月詠はある事に気づき、切なくなる。  
 熱く脈打ちそそり立つ男根に、自分の指が細く白く頼りなげに絡まるのを見つめ、そっと顔を近づける。  
 唇と唇の、キスのかわりに、小さくふるえながら舌を出して、舐めた。  
 ───さすがに銀時でも、キスは恋人とするのか……  
 悲しみに涙がでそうになる。  
 それを打ち消すように大胆に舌を絡めてカリ首を刺激し、根元をやわらかな指で揉み上げ扱きだした。  
 打って変わって処女らしくない責めに銀時は驚いたが、月詠から漂う必死さに、何も言わず黙っていた。  
 言葉でねじって泣かせてやろうと思っていたのに、ただならぬ本気の気配になんとなく圧倒され、  
しばらく好きにさせてやるかとぼーっとしていたが、吉原の遊女直伝の技の数々に銀時は平静を保って  
いられなくなってきた。  
 正直そこまでするか?!と叫びたい気分だが、舌を巧みに絡ませじゅぷじゅぷと激しく頭を上下させつつも  
絶妙な指づかいを駆使して尺八に没頭している月詠には、おそらく何を言っても聞こえないだろう。  
 銀時の目の前で揺れる陰部が、赤く充血してぷっくりと盛り上がり、こぼれおちそうなほどの愛液を滲ませて  
くる。  
 「しょーがねーな……」  
 銀時は低くつぶやき、尖り勃つクリトリスにいきなり吸いついた。  
 痙攣を思わせる震えを見せ、月詠の動きが不自然に止まる。  
 喉奥いっぱいにまで男根を咥え込んだまま、クリトリスを吸われる感触に身悶えして、白い尻をふるわせる。  
 「やっと止まりやがった。焦んなよ、落ち着いて優しーく扱ってくれ」  
 舌を離し、指先で月詠のぬめりをいじりながら銀時は言葉を続ける。  
 「あとでお前のここにはいる大事なブツなんだからよ」  
 さらりと放たれた言葉に、月詠は今自分が何をしているのかを急に自覚して、羞恥に頬が熱くなる。  
 (そうだった、わっちが今舐めているのは、銀時の………)  
 それ以上は考えることすら出来ず、ぎゅっと目をつぶった。  
 しかし心の内からわきあがる何かが理性を押しのけ再び月詠の指を動かし、口での奉仕を再開させる。  
 ゆっくりと、じんわりと、愛おしさだけを込めて舐め、しごく。  
 銀時はようやく人心地ついた気分で、腰に広がる穏やかな快楽を満喫しながら月詠の秘部を指で広げた。  
 どれだけ興奮して舐めているのか、蜜があふれてとろけて、太ももにまで伝い落ちてきていた。  
 「好きだねぇ、お前も……」  
 どうして俺なんだ、という疑問は、銀時は言わないことにした。  
 何も必要ない。  
 愛も恋も、身体だけの快楽には何一つ必要ない。  
 ───それでいいじゃねーか。俺はお前に何も望まない。  
 お前は俺に何を望む?  
 身体ならくれてやる。昇天したいなら連れていってやる。本当にお前が望むものが何なのか、それを  
口に出さない限りは、いくらでもつきあってやるよ───  
 銀時の優しさは理解しがたい。  
 説明されたところで、恋に溺れてしまった女ならば到底わからない。  
 ひどい男だとまた言われるか……銀時は苦笑し、女の快楽の芯めがけて舌を突き出す。  
 やわらかくクリトリスをこねまわし、まわりを指で広げて皮に隠れておびえていた芯をさらけ出すと、  
月詠のぬめりを舌にからませ執拗にねぶり上げた。  
 ぶるぶる震えて耐えていた月詠だが、ついにたまらず上半身をのけぞらせて喘ぎだした。  
 当然口の中から銀時のモノがはずれてしまう。  
 切ない悲鳴をあげながら月詠は物欲しそうにまた濡れた唇を近づけるが、次々と送り込まれる  
初めての快感に、痺れた身体がいうことをきかない。  
 かろうじて両手で銀時の物を包み込んだまま、荒い吐息で激しい喘ぎをし続けるしか出来なかった。  
 
 銀時の舌がとめどなく蠢いて、確実に月詠を追い詰めていく。  
 限界が近づきふくらみ始めたクリトリスを容赦なくねぶり、舐めまわし、口に含み吸い上げる。  
 「だ、だめ! だめじゃ銀時、それ以上は………!」  
 月詠は息が苦しいほどの快楽に頭がおかしくなりそうだった。  
 感じたことのない絶頂の波が深く押し寄せてきて、どこかへ連れて行かれそうな不安な気持ちにすらなる。  
 だめだいやだと叫んでも、銀時の舌はとまらずにますます卑猥にうごめき、月詠は訳が分からないままに  
果てた。  
 その果てた瞬間に銀時の指が深くねじ込まれる。  
 「ひっ……いい……んあああっ!」  
 偽りの拒否をことごとく払いのけられて、さらに奥深く悦楽を与えられる。  
 銀時の指と舌は休むことなく音を立てて月詠を犯し続けた。  
 「もうっもう……っ……やめてく…れ…………ぎっ……ん…………」  
 視界が焼けつき真っ白に落ちていく世界で月詠は男の名を叫んだ。  
 最後は言葉にならなかった。  
 入れられている中指を噛みつくように締め上げて、月詠は我知らず激しい絶頂を男に伝える。  
 それに応えるかのように銀時は強く尻を鷲づかんでクリトリスに吸いつき、唇と舌で強く押し潰して、  
甘い余韻をじっくりと堪能させてやる。  
 跳ねるように月詠の腰がビクついても銀時は手を離さずに、口の中で肉芽をくゆらせてなぶり続けた。  
 そそり勃つ男根に荒い息が熱くかかり、ぐったりと身を預けてくる女の重みと体温が銀時には懐かしい。  
 ───女を抱くなんざ、いつぶりだ? 毎度毎度呪われやがってコノヤロー……  
 月詠に握られたまま、ピクン、と銀時の分身は返事をした。  
 
 
 銀時は仰向けに寝転んだままで月詠を促し身体の向きを変えさせた。  
 身体にうまく力がはいらずに息を乱して自分にまたがる女を見上げつつ、  
 「自分で入れてみろよ」  
 と言い放った。  
 ショックを受けたように月詠が身震いをし、かすかに首が左右に揺れた。  
 「出来ません、てか。俺が誘ったわけじゃねーのに、こっちから動くのはちょっとカンベンしてくれって  
 感じなんだよな。もう終わりにすっか……あ〜あ」  
 銀時の情け容赦ない非情さに、月詠は悲しさと焦りを瞳ににじませる。  
 男勝りの気丈な娘が見せる繊細さに銀時は内心愉しみつつ追い討ちをかけた。  
 「ほれ、やり方はわかるんだろ? あんまりじらさないでくれる?」  
 銀時から目をそらし、月詠は悶えるように腰を浮かした。  
 視線が刺さるのが恥ずかしくて、自分だけはと目をつぶり、感触を頼りに位置をさぐる。  
 にゅるにゅると探っては見当をつけようとするが、経験がないので確信がもてず、困惑したままぬめりと  
ぬめりを絡みつかせたままぎこちなく腰を揺らした。  
 その無自覚なところが銀時の目にはいっそう色っぽくうつる。  
 「……処女が自分から腰揺らしてオネダリか……郭はすごいね、やることが違うわ」  
 月詠は顔を真っ赤にして何か言い返そうと目を開いたが、銀時のやらしさ満点の視線に射抜かれ、  
さらに羞恥を煽られ、結局何も言えずにまた目を閉じ、もう何も考えないことにした。  
 ぐぐっとあたりをつけて先っぽを自分の中へと入れる。  
 激しい痛覚が腰に走り、じわじわと背中を這い登る。  
 初めて感じる根源的な痛みも、切ないまでに疼く胸に秘めた想いも、全て己の内に飲み込み、腰を沈め、  
文字通り自分から処女を捧げた。  
 苦痛に歪む月詠の表情の中に、銀時は何も見つけないよう目を閉じて、腰に力を入れ、沈み込んで  
くる月詠の動きに合わせて奥まで突き上げる。  
 「っああ、あああああっ………!」  
 喉をのけぞらせて呻く月詠の腰を掴み、逃げられないように押さえつけ、ささやく。  
 「……動いてみな、気持ちよくなるから」  
 痛いのは百も承知、その先にしか女の快楽はない。  
 月詠もそれはわかっているだろう、銀時はひりつく心をそうなだめて、汗に濡れて火照る女の肌に手を  
すべらせていく。  
 下から見上げると、見事なまでの巨乳に、銀時は単純に感動した。  
 
 「こう……なんつーの? ロマンっつーかさ……思いっ切りめちゃくちゃにしたくなるんだよなァ……」  
 月詠には同意しがたい感想を述べつつ銀時の手がその豊満さを握りつぶす。  
 それでも手の中で形を変えてはね返り、先端をぷっくりと尖らせて男を誘う。  
 銀時は、生意気だな、と呟くと、すらりとした指で乳首を挟み込んで軽く弾いた。  
 弾くたびに泣きそうだった月詠の呻きがとろけた喘ぎに変わっていく。  
 「感度いいなオイ、開発するまでもねーよ。さすがは太夫だぜ」  
 煽ってみても返事はなく、ただ耐えている様子を見せるだけの月詠に、銀時はやれやれと溜め息をついて、  
初めて優しい声をだした。  
 「……動いてみ、いいから……」  
 銀時の胸の上に置かれた月詠の両手が激しく震え、何かを訴えかけようとしていたが、やがて観念した  
かのようにそっと腰を動かし始めた。  
 その間にも鮮やかな血が少しずつ互いの色素の薄い陰毛を濡らしていく。  
 当の本人は痛いとも止めろとも口にしない。  
 覚悟を決めた女の美しさに不覚にも銀時は見惚れたが、動きの稚拙さもどかしさに我慢できなくなり、  
苦しい姿勢から無理をして身体を起こすと、そのまま月詠を仰向けに倒し、上から押さえつけた。  
 瞬間、近づき触れそうになった互いの唇に、月詠は短い吐息をもらす。  
 ───やはり触れてはくれぬのか……身体だけの交わりなのか……  
 ───せめて、一言、言ってもよいか……?  
 「銀時………愛し……」  
 瞳をうるませ想いを告げようとする月詠の唇を銀時はもう一度ふさぐ。  
 「そんなこと言うなよ……」  
 銀時の顔に浮かぶ切ないようなまなざしに、月詠は言葉の続きの代わりに頬に一筋、涙をこぼす。  
 押し付けられた愛しい男のあたたかい手のひらに、目を閉じて、口付けのつもりで舌を触れさす。  
 いじらしいその仕草を眺めながらも銀時の気持ちは動かない。  
 銀時はそんな己を不思議に思うが、変わらないものは変わらない、どうしようもない。  
 「……すまねーな」  
 唇からそっと手を離し、両手をついて身体を支えながら、銀時はゆっくりと月詠の中で動き始めた。  
 「………月詠………」  
 せめてもの償いに、女の名を呼びながら。  
 「……かまわぬ。好きにしてくれて、かまわぬ……」  
 抱かれる前に言った言葉と同じ言葉を吐きながら、月詠も自ら腰を遣い、銀時の動きに寄り添い  
合わせていく。  
 激しく締め付けられる胸の痛みを、銀時にも味わわせたくて、月詠は銀時の猛りを搾り取るように  
締めつけ、奥まで誘い込み、きつくねじりあげた。  
 「ちょっお前……ほんとに処女?……」  
 苦笑いしながら銀時がつぶやく。  
 「ああ……ぬしが………初めてじゃ……」  
 何もかも、もう忘れてしまって、このまま身体だけに溺れてしまいたい、と月詠は願った。  
 男の熱い肉棒が身体の芯を貫いて、頭の中まで掻きまわしていく。  
 ずちゅ、ずちゅ、と淫靡な音が二人だけの空間に満ちていく。  
 銀時の荒い息遣いが幸せだった。  
 処女を犯される尋常でない痛みも、この男ならば許せる。  
 最奥にまで突かれるたびに息が止まりそうになる。  
 理性が弾け飛んで、出したことも無いような喘ぎ声を恥ずかしげもなくあげ、たくましい腕に掴まり、  
爪を立ててしがみついて、痛みの奥から湧いてくる得体の知れない快楽をむさぼるように腰を振った。  
 銀時が声を荒げる。  
 「……じっとしてろ! 出すぞ!」  
 月詠は激しさを増す銀時の首筋にすがりついて言われた通りにした。  
 布団におしつけられ、容赦なく抜き差しされる。  
 受けとめようにもピストンの強さに身体がついていけない。  
 ぐちゃぐちゃに掻き混ぜられ、脳みそまで犯されていく。  
 痛みか悲恋か、判別つかずに泣きながら、中に注がれたかった。  
 なのに両脚を強く押さえ付けられ銀時の腰に絡ませることもできずに引き抜かれ、お腹の上に  
遠慮なくぶちまけられる。  
 鋭く息を吐く音に射精音が混ざる──こんな卑猥で悲しい音、聞いたことが無い。  
 月詠の爪が銀時の肌に喰い込む。  
 長い溜め息をついて、銀時はやっと口を開いた。  
 「…………いてーよ……」  
 
 夜の闇にひっそりと佇む宿から、男と女が寄り添うこともなく出てくる。  
 互いに目を合わさず、なんとなく黙ったまま夜空を見上げた。  
 ふと、銀色の髪が風に揺れる。  
 「忘れるのが礼儀なんだよ……昔のことも、町のことも、明日のことも……明日の米どうしよう……やべ、  
ちょっと滅入ってきた……」  
 うつむく頭を、すぱん!とはたく音が寝静まった町に響く。  
 「お前はさァ、色気ってもんを知ってるか?」  
 「こうじゃろ?」  
 女は片手を首の後ろにまわし腰をくねらせ不器用にウィンクをすると、仕上げに、チュ、と投げキスをした。  
 
 丸く明るい月の下、銀時と月詠は笑いながら別の道へと歩いていった。  
 最後までキスも交わさず手もつながず、それでも満足げな笑みを見せて。  
 
 
      完  
 
 

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