女は過酷な戦いに身をやつすことで、辛い過去を忘れたつもりだった。二度と迷うま  
いと自分に言い聞かせる日々。だが、そんな女の前に、再びその男は現れたのだ。  
 
「何の用?」  
「会いたかったのだ…お前に」  
「私を拒んだくせに今さら何の用! 帰って!」  
 
「待ってくれ! あの時、お前の気持ちを受け入れられなかったのには訳がある!  
今日は…それを見てほしくて来た――」  
そう言うなり男は下半身にピッチリと密着したパンツを勢いよく下ろした。露出された  
男の股間を見て、女は思わず眼をみはった。  
 
「チ×コが……二つ!?」  
「そうだ…ワシのチン×コは二本ある。ちなみに片方はちょっと先細りで、もう片方は  
皮が余り気味だ」  
 
何ということでしょう。ジョイスティックが二本。これは兄弟喧嘩が起こらないようにとの  
思いをこめた、匠からの贈り物です。いや違う。  
衝撃的な光景だった。だが…、もしかすると自分は気づいていたのかもしれないと、  
女は思った。彼の顔を見れば予測できることだったではないか。  
 
「この股間を気味悪がり離れていった女もいた。お前にもそう思われるのではないかと、  
怖かったのだ。だが、お前の告白がワシを変えた。お前の勇気に全てをさらけ出して  
報いたいと思ったのだ。許してくれとは言わん。ただ本当のワシの姿を、その眼に焼き  
付けておいてくれんか。――それで充分だ」  
 
男はピッチリパンツを上げて、砲身を元の位置に収めると、女に背を向けた。  
「……幸せにな」  
「待って!」  
女の制止に、男の足が止まる。  
 
「舐められたものね。私をそんなモノで怖じ気づく、ウブな小娘と一緒にしないで」  
女の額にある戦士の証が、その決意を映したかのように光を受けて輝いた。  
 
「私の気持ちはそんなことで揺らいだりしない……私は二重チ×コごとあなたを愛し  
てみせる。二穴同時責めだって、喜んで受けいれるわ!」  
男がゆっくりと振り返る。見つめる女の表情に迷いはない。幾多の戦いをくぐり抜けて  
きた二人の眼には今、熱い涙が滲んでいた。  
 
「……スペースウーマン!!」  
「チェリー大佐! さあ、私を抱いて! もう離さないで!!」  
二つの巨体が激しくぶつかりあい、轟音と共に大地が揺れ、砂埃が舞い上がった。  
 
 
「アレ、銀さん。何ですか、その袋」  
 
「なーんかババアがよ。昨日の夜、デッカい地震あっただろ。また揺れて大事になると  
いけねーから、ウチにもこーいうの備えておけって置いてったんだよ」  
「ああ、防災袋ってやつですね。さすがお登勢さん」  
 
「……なーんか中身パッとしないアルな。こんなのオヤツにもならないアル。  
銀ちゃん、『ごはんですよ』と『サトウのごはん』も入れてヨ。あと酢昆布」  
 
「ああああ! ダメだよ、神楽ちゃん!今食べちゃってどうすんの!」  
「神楽、氷砂糖だけ俺によこせ。乾パンはお前にやる」  
「アンタも止めろォ!」  
 
お登勢が危惧した通り、その後も原因不明の局地的大地震は多発し、かぶき町  
住人の安眠を妨げたのであった。どっとはらい。  
 

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