ある朝の歌舞伎町。今日も真選組のパトロールにかこつけて万事屋をいじりに来た土方と沖田だったが、裏通りのあきらかにいかがわしい店の前で見慣れた物体を発見した。
「…おい総悟、この道路と一体化寸前の殿様ガエル見てぇな物体はなんだぁ?」
「やだなぁトシさん♪もうアルツハイマー末期ですか?どう見ても江戸の平和を守る♪我らが大将近藤さん♪じゃあないですか♪」
「♪マークウゼぇぇぇ!!!!!
つか近藤さんあんた何全裸で粗チン曝してんだよ!!!!!!!!」
やっと眠りの時間を迎えたばかりの歌舞伎町にはた迷惑な怒鳴り声がこだました。
事の理由は昨晩。
「お妙さん、俺をケツ毛ごと愛してくれる器のデカい女はあんたしかいないんだよぉ。」
この日も近藤はしつこくお妙を口説きにかかっていた。最近は重度のストーカー行為に対する鉄拳制裁を避け、手が出せない客として来ては閉店までしつこく言い寄ってくるのだ。
店としても上客であり真選組局長である近藤を、喜んで迎えこそすれ、むげに扱うなんて事はもっての他だ。
お妙は今すぐにでも殴り倒したい気持ちを抑え、笑顔でドンペリコールを重ねて耐えていたのだった。
やっと騒がしさのおさまった夜の街を、仕事を終えた二人の女が家路へと歩いていた。
「お妙ちゃんも大変ねぇ、上客とはいえ」
苦笑混じりに慰めるように肩を叩く同僚に、深いため息で返事をする。
「まったく…。最近は誰もヘルプに入ってくれないから余計疲れるわ。
おりょうちゃんこそ久し振りに例のテンパが来て参ってるみたいね。」
「今度こそは宇宙の藻屑になったと思って安心していたんだけどね。
お互い変な客で苦労するわよね」
たわいの無い会話でも、気を使わずに話しをできる事が心地よい。
しょうがないね、と目で笑いあう。
「いけない、今日はここでだわ」
そこはいつも二人が別れる角より、はるかに手前の地点だった。
最近になってお妙は仕事を一つ増やし、そちらにいく時はここで別れるのだ。
「どうよ、新しい仕事は。割がいいなら今度紹介してね」
明るく手を降りおりょうとお妙は別れる。
(おりょうちゃんなら案外向いてるかもな。
お互い猫被ってストレス溜めてる口だし…)
小さく笑ってお妙はさらに薄暗く狭い路地に入っていった。
その背中を追う人物がいるとは知らずに。
(おっお妙さん、危険です!そんなあからさまに怪しい店っ!)
お妙の背中を追っていたのは勿論件のストーカー、もとい、真撰組局長の近藤だった。
毎回のお妙との攻防(ドンペリに始まるボトルコールやいっきコール)に連敗をきし、その度にトシや山崎に引き取られる
(沖田が迎え要員にならないのは、鬼絡み酒な近藤に業を煮やして江戸川の橋にはり付けにして放置した過去があるからだ。)
屈辱を耐え、酒かそれともお妙のいじめかどちらかに耐性を付け、奇跡の復活力を知らず知らずの内につけたのだった。迎えの(山崎はじめ)哀れな隊員をなんとかまき、愛しいお妙が無事に家に帰り着くのを見届けるだけ。のはずだった。
(菩薩のお妙、水曜限定のプレイ…、ってなんじゃこりゃあ!!!!しかも当店3の今イチオシっ!!!ってゴラァ!!!)
先程迄のお妙も、入り口の金縁の中で微笑んでいるお妙も変わらず淫靡な匂いをさせずにいて、よけい近藤を混乱させるだけだ。
(いかん!お妙さんが客をとるまえにィ!)
近藤はその店がどんな店か確かめず、お妙の指名をとったのだった。
「あら近藤さん、こっちにもいらっしゃって下さったのね。」
やんわり微笑むお妙の体からドス黒い炎が出ているように見えているのは、決して近藤の気のせいではないだろう。
しかしそんな当たり前の事はどうでもいい。
それよりお妙の背後にあるまがまがしい数々はなんなのだ。
(あー…、なんか松平のオッサンとこで見た事あるなー。)
実際使われていた物や置いてあった物に混じり、何に使うかわからないが恐怖感を増長させるような器具がある。
その中にあられもない姿に固定して屈辱を煽る台を発見し、ついうっかりお妙に使用する想像をしてしまう。
「(いかんいかん、のんきに鼻血を出している場合じゃない)先程ぶりです、お妙さん。」
ダラダラと流れる鼻血を拭いもせずに、精一杯声をかけた。
「お待ちしていたんですよ、
まあとりあえず脱げ。」
うふふ、と可愛らしく笑っているが、この人は今ナンテイッタンダ?
「ここがどういう場所か知らない事はないでしょう?
武士ならグダグダせずに脱いでしまいなさいな。」
(ココってそういう店なのか-!!!!!!
って事はお妙さんの純潔はっ!!!!!!!
てか俺もこれからっ?!?!?!!)