「何してんの?」
突然、頭上から降ってきた言葉にさっちゃんは一瞬で氷のように固まった。思いもよらない人の声に全身の毛穴から汗がにじみ出るようだった。目の前に立っている銀髪のけだるげな男、銀時は濁った眼でさっちゃんを見下ろしていた。
「ッ……銀さん!」
なんということだ。自分としたことが、忍者のくせに気配に全く気付かなかったなんて。
辺りを見渡すと半裸の自分の肌と脱ぎ捨てられたパンツとグショグショになってしまった銀時の布団が目に入る。
どう頑張っても言い逃れるすべはないように思われた。
普段、さっちゃんは銀時が好きだということを公言していたが、いつも銀時には軽くあしらわれていた。
だからこそ、こういう状況――銀時をおかずにオナニーしていたところ――を見られるのは気まずかった。
今までなら銀時への気持ちは冗談ということで済ませられたが今では自分が本気だということを明らかにしてしまったも同然なのだ。
「オイオイ……どうしてくれんの?コレ。銀さんの布団グショグショじゃねーか。」
まるで何もなかったようにしようとする銀時からはなたれた言葉はさっちゃんを突き放した。
いっそのこと、気持ち悪い、と罵ってくれた方がどれだけよかっただろう。結局、さっちゃんのことなんて銀時は相手にしてくれないのだ。
不覚にも急に目頭が熱くなる。ダメだ、と自分で自分に言い聞かせるが今までため込んでいたものがあふれだしてしまいそうで、
さっちゃんはここから逃げようと立ち上がる。しかし、次の瞬間、手首を痛いほど捕まれた。
「逃げんのかよ。」
さっちゃんはグイ、と身体を銀時の方へ寄せられ、そう耳元で囁かれた。
さっきとはうってかわって欲情をはらんだ低い声にさっちゃんは腰が抜けてしまった。するとすかさず銀時が腰に手を回し引き寄せた。
布団と同じ銀時の匂いがして、クラクラと目眩がした。見上げると、銀時の顔がずいぶん近くにあり、たじろいでしまう。
銀時のいつもは死んだ魚のような目が今では獣のようにギラギラと妖しく輝いている。その瞳にとらえられて、さっちゃんは身体が熱くなっていくのを感じた。
「いつも俺がいねぇときに忍び込んで、こんなことしてんの?」
銀時が後ろから覆いかぶさるように抱き締めてきた。わざとからかうようないやらしい声でそう言われるだけで、さっちゃんは感じてしまう。
「ひゃっ!」
ねっとりとした生暖かいものが、さっちゃんの首筋を撫でた。先刻、汗をかいて冷えた身体には銀時の舌はとても熱く感じられる。
腰に回っていた銀時の手がなまめかしくさっちゃんの身体のラインをなぞりながら、だんだん上に上がっていく。
銀時の手に触られると肌は鳥肌が立ったかのようにゾクゾクしてしまう。
「……んっ」
手はさっちゃんの胸にたどり着いたが、銀時は一向に揉もうとしない。胸の上をを行ったり来たり撫でるだけだ。
手が乳首に時々かすり、そのたびにさっちゃんの身体は無意識に跳ねた。
そのせいで、かわいらしい乳首はビンビンに立ち上がってしまい、物欲しげに存在を主張していた。
「銀、さぁん……」
さっちゃんは首ひねらせ銀時を見つめる。かすれた甘い声は物欲しそうで切なげだった。
「何?言葉で言わないとわかんねぇんだけど。」
とぼけた事をいう銀時にさっちゃんは絶望した。いつもはどんなはしたない言葉だって平然と言えるのに、銀時の前ではなけなしの理性がそれを阻んだ。
黙ってしまったさっちゃんに痺れを切らした銀時は手をゆっくり下降させはじめた。
なぜか今日のさっちゃんはしおらしい。すぐに乱れて股を開くものだと思っていた銀時は拍子抜けした。
もちろん、後者よりはこちらの方が好みな銀時には嬉しい誤算だったのだが。
下降していく手にさっちゃんは焦る。なんでもいいからはやく銀時のゴツゴツした手でめちゃくちゃに乳房を揉んで欲しかった。
「……で………さ…い」
さっちゃんは顔を赤らめてボソボソいったが銀時には全く聞き取れない。
ん?と銀時が諭すように聞き返すと
「……おっぱい…揉んで……ください」
ためらいがちながらもはっきりとした言葉に銀時はニヤリといやらしく笑い、さっちゃんの乳房を掴んだ。
「あぁんっ!」
やっと与えられた刺激に思わず声が漏れる。身体から力が抜けて、さっちゃんはもう自力で立っていられなかった。
(やわらけー)
銀時は純粋に驚いた。もちろん、初めての女というわけではないが、この大きさの胸の女は久しぶりだった。
余裕で手からはみ出て、指に吸い付くような白い乳房は、銀時の指の動きに合わせて面白いほど形を変えている。
「……ッ!」
おもいっきり爪を立てて銀時が乳房を掴んだ。さっちゃんはあまりの痛さに息をのむ。
先ほど自分でやったのを遥かにしのぐほどの痛みで、それから逃れようと後ろに下がるも、銀時がいるためかなわない。
そして、さらに銀時と密着してしまったさっちゃんは腰に何か堅いものがあたっているのに気付いて赤面した。
銀時が自分で興奮している、と思うとうれしくてたまらない。
はやく挿入したくなった銀時はあまりの快楽に力が入らなくなって人形のようになったさっちゃんを布団にそっと寝かせる。
トロンとした瞳で目尻に涙を浮かべ、上気した頬に真っ赤なぷっくりした唇、銀時はひかれるようにその唇を貪った。
自分のそれとは違う柔らかい感触を十分味わって、舌を差し入れると、銀時の舌の動きに合わせてさっちゃんは一生懸命に応えようとする。
唾液をさっちゃんに流し込み、さっちゃんがそれを飲み込むと銀時は醜い征服欲が満たされていくのを感じた。
唇を離すと、さっちゃんは名残惜しそうな顔をして銀時を見つめた。無意識なのだろうが、そんな顔を見せられて興奮しない男がいるだろうか。
もう銀時の理性の糸も限界が近かった。銀時が乱暴にさっちゃんの股を開くと、そこはむせ返るような雌の匂いがした。
何も纏っていないグショグショのアソコにいきり立った自分のモノをあてる。
「!!」
一気に奥まで突かれて、さっちゃんは悶絶した。
いくら濡れていても、慣らさずに挿入されたら痛いに決まっている。
銀時はそんなことを知ってか知らずか、さっちゃんのことなどお構い無しに次はゆっくりと引き抜く。
死ぬほど痛かったが、いつもと違って余裕なく切なげに眉を歪め、飢えた獣の瞳で銀時に見つめられたらそんなことはどうでもよくなった。
あの冷たい銀時が自分だけを見て、自分に欲情してくれている。それだけでさっちゃんは十分だった。
「あっ、あっ、あっ!」
銀時が突くのに合わせて声が漏れてしまう。今やすっかり痛みは無くなり、与えられるのは快楽だけになったさっちゃんはもうたがが外れてしまいそうだった。
先ほどの自慰で何度もイったため、もう快楽は拷問に近いものに思えた。
「も、っ……許して!」
おかしくなっちゃう、と涙を流しながらさっちゃんは快楽を拒否しようとするが、まだ達していない銀時が聞き入れてくれるはずもなく、さらにグラインドの速度を速めていく。
それにつれてさっちゃんの嬌声も同じように高く、大きくなっていった。
「あぁあぁぁーーーッ!」
ガクガクと小刻みに震え出して、さっちゃんはすぐに絶頂を迎えた。足が指先までピンッと張り、体がしなやかに弓なりになる。
ギュッと引きちぎらんばかりに締め付けられ銀時は達しそうになるが、なんとかギリギリのところで踏み止まり、また腰を振りだした。
銀時の汗がさっちゃんの上に飛び散った。
「お……れは、ま…だ……イってねぇ…んだ……よ……」
「もぅ…い…あぁあん!」
イったにもかかわらず何度も突き上げられ、さっちゃんはもう理性を無くしていた。眼は薬物をやったかのようにイって、口はだらしなく開かれ涎が垂れていた。
行為の中断を求めようと銀時のたくましい胸板に手を置いているが全く力は入らず、意味をなしてはいなかった。
代わりにさっちゃんの豊満な胸が銀時の動きに合わせて、ぷるんぷるんと上下に動いている。
「あぁっん!あぁああぁああぁあ!!」
もう、いっそのこと殺して欲しいとさっちゃんは思った。気持ちよすぎて、本当に気持ちいいのかわからない。
銀時にぐちゃぐちゃにされて、まるで無理矢理犯されているような気がしてきた。ぐちゃぐちゃという結合部のいやらしい音に耳が侵食されていく。
「くっ……!!」
ずっと続くかに思えたその快楽も、銀時が達したためにあっけなく終わりを迎えた。銀時の熱い精がドクドクとさっちゃんの膣内に放たれた。その精も銀時のだと思うとさっちゃんはいとおしくてたまらくなった。
さっちゃんが後始末をして万事屋を後にしようとすると、それまで黙っていた銀時が躊躇いがちに口を開いた。
「またこいよ。」
さっちゃんは驚きに目を見開いた。セフレとして?彼女として?、とはさすがのさっちゃんでも恐くてきけなかったが、どっちでも同じことだ。銀時を拒む理由など持ち合わせていないのだから。
さっちゃんは肯定の代わりに優しく微笑んだ。
終わり