志村家の庭が、本日の舞台。
「ちょっと銀さん、荷物ってガラクタですか」
お妙がガラクタと言ったのは、銀時が牽く荷車に載せられた機械(からくり)のこと。
「鉄●28号の出来損ないじゃないですか」
「お前横山光輝先生に失礼なこと言うんじゃねえよ。横山三国志は少年達のバイブルだぜ?」
荷車には鉄●28号の出来損ない、という言葉がぴったりな武骨な機械が一体、仰向けになっていた。
三十分ほど前、銀時からお妙に『客に頼まれた荷物を夕方まで庭に置かせてほしい』という電話があった。
大き過ぎて万事屋には入りきらない、というのだ。
断る理由も無かったし、置き賃は払うと言われたのでお妙は承諾したのだが、その荷物こそがこの機械だというのだ。
「ガラクタでも鉄●28号の出来損ないでもねーよ。
これはさ、今セレブの間で密かにブームの高価な機械なんだぜ。こんなナリしてるけど結構高いんだぜ?」
「……とてもそうは見えませんけど」
銀時が機械のボディを叩きながら説明するが、お妙にはそうは見えない。
「一時流行った機械メイドさんより高いんだぜ、コレ。
客に頼まれて買いに行ったけど、なかなか手に入らなくて苦労したんだぜ」
「嘘っ」
「ホントホント。コイツ、表向きはお掃除ロボットみたいなもんなんだけどさ、実は……」
銀時は急に声のトーンを落とし、機械の股間のカバーをやたら慎重に外した。
「………!!」
お妙は驚き、頬がみるみる赤らんでいく。見開かれた目はカバーの下にあるものに釘付けになっている。
銀時は横目でちらりとそれを確かめると、カバーを元に戻した。
「ホントの使用目的は”ここ”。旦那とすっかりご無沙汰してるセレブの奥様用だよ。
天人の技術ってのは怖ろしいモンだねェ。色も形も手触りもサイズも本物の地球の男とまるッきり同じなんだとさ。
触りゃあ硬ーくなるし、扱きゃあ出るモンは出るし……あ、出るっつっても別売りのローションだけどな。
使用者のお好みを分析していい感じにヤってくれるらしいぜ。
男前のツラした機械メイドの男版ってえのもあるみてーだけど、それじゃあ目的バレバレだし、
”ここ”の方がそれほど良くないらしいんだよ。
その点コイツなら見てくれがコレだし、”ここ”はすげーし。セレブの奥様は心置きなく買えるってモンさ。
こんなモン、神楽や新八にゃあとてもじゃないが見せらンねえだろ? だから置かせて貰いに来たんだよ」
「た……確かにそんなもの、神楽ちゃんや新ちゃんに見せるのは教育上宜しくないわね……」
お妙の頬は赤らみが引かず、声が上ずっていた。
「そうだろ? 宜しくねえだろ? っつうわけで、客に納品すんのが夕方だから、
それまでコイツをよろしくメカドック。軒下にでも入れといてくれよ。んじゃ俺は夕方まで別の仕事が入ってッから」
銀時は手でパチンコを打つ仕草をしながら、志村家を後にした。
「………」
銀時が門をくぐって出た後も、お妙はリヤカーに載せられた機械の傍に突っ立っていた。
未だ収まらぬ胸の鼓動と湧き上がる興味。
唾を飲み込むと、先程銀時がちらりと見せてくれたカバーの下のモノがもう一度見たくてたまらず、
お妙は震える手をそっと伸ばした。
「見るだけ……見るだけだから……」
自分に言い聞かせているのか呟きながらカバーを外すと、そこには確かにあった。
生い茂った陰毛から伸びた陰茎。サイズは標準より少し大きいくらいだろうか。勃起はしておらず、下を向いている。
作り物とは思えないほどリアルなそれに、お妙の鼓動がさらに早まっていく。
「ちょっとだけ……触ってもいいかしら……」
恐る恐る、お妙はそれに手を伸ばす。
そっと、触れた。
少し柔らかな感触は、まさに人間の男のそれと同じだった。
「本物みたいだわ……」
お妙はそれを幾度か撫でた。
説明するまでも無く、これは銀時の嘘八百。機械は源外のところからタダ同然で貰ってきた古いもので、
中の部品を取り除いて長谷川が入り、股間だけを出している状態だ。
(お……お妙ちゃん……)
機械の中で、長谷川は少々動揺していた。
こうすればお妙とヤれる、と銀時にそそのかされ機械の中に入ったものの、お妙ちゃんはそんなことしない、と
半信半疑だったのだ。
(なんて柔らかい手だ……お妙ちゃん)
優しく撫でられた長谷川のそこに、全身の血液が集中する。
「あ……」
お妙は驚愕した。機械の陰茎が、ムクムクと頭を擡げたのだ。
「すご……ッ」
陰茎はみるみる硬く大きくなり、天を仰いだ。大きめの亀頭。茎には血管がしっかりと浮き出ている。
「……こんなにリアルなんて……」
(やべぇぇぇ!! オジさん勃っちまったよぉぉぉぉぉ!!)
機械の中の長谷川は思わず勃起してしまったマダオ(『ま』ぁなんていうか『だ』めな俺の『お』とこの勲章)
を収めようとしたが、そう簡単に収まるものではない。
それどころかこの倒錯した状況に余計マダオは血液を集め、硬くなっていった。
「……」
勃起した陰茎を前に、お妙は銀時の言葉を思い出した。
『使用者のお好みを分析していい感じにヤってくれるらしいぜ』
「いい感じ……に」
最近は不景気でアフターをしてくれる客もいない。あっちの方はすっかりご無沙汰だった。
いい感じ、ってどんな感じなのだろう。
それを妄想するお妙の頭の中はレディコミの見開きクライマックスシーンだった。
「少しくらい……いいかしら……」
お妙は屹立したそれをそっと手にし、横髪を耳に掛けるとゆっくりと顔を近づけ、そして……咥えた。
(オォォォォォォォォォォォ!!!!!! お妙ちゃんんんんんんっっっ!!!)
長谷川は悶絶した。
マジックミラー式の小窓からは、長谷川のものを咥えるお妙がチリバツ見えた。
柔らかい手と、ぬめった口腔の感触。
(お妙ちゃんが……お妙ちゃんが……フェラーリ……)
先日のさっちゃんと比べれば拙さは否めないが、頬を紅潮させ、顔を上下させている。
その上品そうなお妙の口を出入りするのは紛れもないMYマダオ。
(なんてことだ……キャバクラ勤めしてても身持ちは硬いって思ってたのに……)
軽い絶望感、快感、背徳感に長谷川は興奮した。
(銀さんは知ってたんだな、お妙ちゃんがこういうキャラだってことを……)
「んっ……ん、」
軽く扱きながら懸命に口淫をする。まるで生きているかのように機械の陰茎はお妙の口淫に反応し、脈打っていた。
皮の弛み具合も本物そっくりだ。っていうか本物なのだが。
はぁ、とお妙が息を吐いて口を離すと、陰茎は唾液と先走りらしい液体でテラテラ光っている。
「ちょっとしょっぱいわ……ローションも特別製なのね」
飲み込んだ先走りらしい液体の感想を口にすると、お妙は己の身体の疼きに従うべきか否か、迷った。
コレだけで満足するつもりだったが、そうはいかないのが貪欲な人間の性。
欲しい。
入れたい。
満足したい。
人間とは、三大欲求の前には理性が瓦解する生き物である(徳川茂茂・談)。
「壊したりしなければいいわよね、あ…後で、ちゃんと綺麗にすれば…バレないわよね……」
お妙は己に言い聞かせるように呟き、着物の前をそっと肌蹴、荷車に上った。
そして機械に慎重に跨り、下着をずらし、機械の陰茎を逆手に持って亀頭を膣に宛がい―――
(う・嘘ォォォォぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!)
長谷川のマダオに、ぬめっとした感触。その感触は間違いない……。
「んん……ッ」
ズプ、ズプ、と音を立てながら、機械の……もとい、長谷川の陰茎がお妙の中に入っていく。
「ぁ……」既にそこはじっとりと濡れていて、スムーズに入った。
お妙が腰をゆっくりと落とすと、お妙自身の体重でそれは奥へと誘われた。
「ぅ……ん、はぁ―――ッ」
お妙の尻が機械の上で柔らかく潰れた。
白い喉を見せてのけぞったお妙の顔は恍惚としていた。
(は……入っちゃった……入っちゃったよコレェェェェェェ!!!!
どーーすんのォォォォ!!! いいのかコレェェェェ!!!!)
長谷川とお妙は合併した。それも騎上位で。
「すごい熱いわ……奥に当たってる……お金溜まったら……ううん、近藤さんに貢がせちゃおうかしら……」
物騒なことを呟きながら、お妙は己の中で存在を主張する機械のモノの感覚に酔いしれ、
ゆっくりと腰を動かし始めた。
が、機械の中の長谷川は、あまりにもご都合主義な展開に軽くパニック状態だった。
(おおおおおおお妙ちゃんと俺が今ひとつになってるゥゥゥゥゥ!!!
いいのか!? いいのかこれェェェェ!!! 親子くらい年離れてるのにいいのかァァァァ!!!
しかもなんていい具合ッッッ!! 締まり最高人生最高ォー!(※エドはるみ調)
感じてるお妙ちゃんの顔やらしすぎッッッ!!! 銀さんありがとぉぉぉぉぉぉ!!!)
長谷川のことなぞ何も知らないお妙は、腰を激しく動かしながら胸元を乱し、
膨らみの少ない己の胸を慰めていた。
「ん、ふ、あ……、ん、んぅっ……、ッ……」
荷車がギシギシと音を立てる。
鉄●28号の出来損ないのような機械の上に跨って腰を振る女、とは傍目には間抜けな格好に見えるかもしれない。
しかし実際は生身の男と、ヤりたかった女が合併号しているのだ。
「んぁっ……、ひっ……あ、っ」
お妙は喘ぎ、思うが侭に腰を動かしている。むっちりとした太腿が揺れる。
(お妙ちゃん……やらし過ぎるよお妙ちゃん……なんて素敵なんだお妙ちゃん……
嗚呼もうダメだ……オジサン……オジサンもう我慢の限界だあああああああああ!!!)
プチン、と長谷川の中で何かが弾けた。
「……え、」
突如、お妙が跨っていた機械が上半身を起こした。
「ちょっ……え、……なんで……」
お妙があっけに取られる間もなく、機械(IN長谷川)はお妙の身体を狭い荷台の上で四つん這いにすると、
着物の裾をまくり上げ下着を下ろし白い尻をむき出しにさせ、後ろから押し入った。
「あ――あ゛、あ゛あ゛あッッッ!!!!」
お妙が嬌声を上げのけぞった。
――使用者のお好みを分析していい感じにヤってくれるらしいぜ
銀時の言葉がお妙の頭の中で繰り返される。
『こういう意味だったのね……確かに私はバックが大好き……すごいわちゃんと分かるのね……』
偶然である。
一方、プッツン(古)した長谷川はマダオモード全開だった。
「マ」ジになったら「ダ」ンディーでヤルときゃヤる「オ」レ、という意味らしい。
後ろからお妙を攻め立てた。久しぶりにハッスル(古)である。
「あぁッ、ひ、ぅんっ……んッ、いいっ……いいわ……すごい……ッ」
お妙は機械に後ろから攻められ、全身が性感帯になったかのような悦びに、自ら腰を振り、
いやらしく喘ぎ、己の胸を弄った。
(お妙ちゃんごめん……でも俺、止まらねえんだ……!!)
長谷川の心の叫びも虚しく、お妙は「ああんっ、イイっ!」などと喘ぎながら尻を押し付けていた。
(もう……もう限界だ……お妙ちゃん、ごめんついでに……――!!)
「はあぁん、イくぅぅっ、イっちゃうっっ!!」
お妙が叫んだのと殆ど同時に、長谷川も絶頂に達した。
お妙の中に、長谷川のマダオ……もうネタがないですいい加減……
だからマダオという名の精子ということでもういいやメンドクセ……が、びゅるびゅると放出された。
「おう、お妙。すまねえな」
銀時がパチンコの景品らしい駄菓子持参で志村家を再び訪れたのは、夕方のことだった。
機械は朝来た時と同じく、荷車に載せられ庭にあった。
朝と違っていたのは、機械がいやに綺麗になっていたことだ。
「あら、銀さん遅かったわね。ちょっとホコリ被ってたから拭いときました」
そして、銀時をそう言って出迎えたお妙の頬が赤かったことと、髪がやや乱れていたこと。
「はいこれ置き賃」銀時が差し出した駄菓子の入った袋を、お妙は素直に受け取った。
「あら、可愛いお菓子ばっかり。ありがとうございます」
それを見た銀時は、計画がうまくいったことを悟る。
いつものお妙なら、『なんで駄菓子ばっかりでハーゲンダッツがないんじゃぁぁぁぁぁ!!』もしくは
『お前置き賃っつっただろ? 賃っつったら普通は金のことだろうがチンチン売ってくるか?』となる筈なのだ。
「それじゃあちょっくらコイツ納品してくるわ」
荷車に手をかけた銀時に、お妙が「ねえ、」と声をかける。
「ん? どうしたお妙」
「あの、これ……お掃除用なのよね」
「ああ。それがどうかしたか」
「いえ、あの……うちのお庭の草むしりでもお願いしたいなって思って……レンタルとかしてないのかしらって」
躊躇いがちなお妙の言葉に、銀時は少し考える振りをし、もったいぶった挙句に言った。
「そうだなぁ。レンタルは確か……一日一万っつってたかなぁ」
「そ・そう……ありがとう、銀さん」
お妙は早速今週末にレンタルしようと決意し、機械の乗った荷車を引いて去っていく銀時を見送った。
荷車の機械の中では、お妙にあの後何度も搾り取られた長谷川が真っ白に燃え尽きていた。
(終わり)