「キミ、何の用?」  
―――餓鬼が来て良い所じゃないよ?  
   
男のチャイナが張り付けた胡散臭い笑顔で話し掛けて来る。正直参った。背中から汗をかくなんて、一体どれ位振りの事だろう。  
   
「……すいやせんねェ、失くなった玩具をちょいと探してまして」  
「じゃあもうお帰り?此処には玩具なんてないからネ」  
「いや、」  
   
そう言いつつチャイナへと視線を移す。  
恐らく相当にヤバいクスリでも使われたのか、大した抵抗もせずに全裸の儘男チャイナに身体を預けていた。  
   
「イイ恰好だねィ、チャイナ」  
「…ば…か、カ」  
   
声を上げてチャイナに呼び掛けてみる。焦点の定まらない目で、それでも必死に俺を見ようとする姿に自然と笑みが零れた。  
   
「…人の話聞いてた?餓鬼んちょは家に帰んなって言ってんだけど」  
「はい、ですからお目当ての玩具持って直ぐに帰らせて頂きやすんで、」  
――ご心配なく。とポーカーフェイスを保ちつつ、変な刺激を与えぬ様充分注意を払って言葉を交わす。  
恐らく此の男は、己よりも弱者にはそれ程興味を持ちはしないタイプの男だ。  
悔しいが戦闘と相成れば十中八九歯が立ちはしないであろう。先刻吹き飛ばして来た下っ端の夜兎とは殺気も何も違い過ぎる。  
   
「何ソレ?その言い方、まるで神楽が君の玩具みたいに聞こえるんだけど?」  
「その通りでさァ」  
「寝言は寝て言うモンだよ糞餓鬼が。夜兎の女が人間なんかの玩具だって?笑わせんな」  
「そんな大層なモンじゃねェ。ただ、チャイナが俺の玩具ってだけの話でさァ。」  
   
「……理解ってないネ」  
「あぁぁあッ!!!!!」  
   
チッ、と舌打ちが聞こえたと思った瞬間、オンナの、チャイナの喘ぎ声が狭い室内に響く。  
視線を少し下げて見ると、何時の間にか取り出したらしい自分自身でチャイナを責め立てる目の前の男。  
   
「神楽は、おれのだ」  
   
どうやら俺は賭けに勝ったらしい。  
あの儘戦闘に入ったら、間違い無く俺は負けてお前は勝っていただろうに。  
   
わざわざ負ける方の試合を選んでくれた春雨の団長様にこっそりと感謝をしつつ、チャイナへととびきりの笑顔を送り付けた。  
 
――――――――――――   
恐らくソレはこんな状況下で笑っていられる俺に対しての疑問。チャイナは俺を可笑しな物でも見つけたかの様な目付きで見つめてくる。  
嗚呼、何如してこうも俺のサディズムを擽るのが巧いのか。  
   
「春雨に居ると、さ」  
「ぁ…ッ!」  
「…?」  
「君達みたいな警察に見つかるとヤバいモノとか、結構手に…入ってね」  
「うあっ!ぁあ…ッ!!」  
「…へェ」  
「君がそうやって余裕見せてられるのって、所詮は感情に縋った曖昧な核心のお陰、なんだろうけど…」  
ゆるゆると腰を動かしながら喋る男チャイナは、傍から見れば所謂『顔色一つ変えない』状態。けれどもその視線の動きや喋り方から伺える微かながらの興奮は、チャイナとのセックスにしっかりと感じている証拠であり。  
そんな余裕無い高揚した状態で此の俺と対峙する男の無謀さに内心拍手を送りつつ、恥じらいを総て曝け出して喘ぐチャイナを見やり目で愉しんだ。  
「その感情だって、操作出来ちゃうクスリもあるんだヨ」  
「惚れ薬…とは違うんですかィ?」  
「似た様なモンかな?そんな柔な代物じゃなくて、本当にヤバいおクスリなんだけどね」  
   
聞いた事はあるし、趣味やら何やらの範囲でそう言った類の道具に関しては人並み外れた知識を持っている俺にとって、別段驚く程の情報では無い。  
仮にソレをチャイナに使われてチャイナが男に惚れたとしても、そう成ったチャイナを如何にして調教し直そうかと云う愉しみが沸くだけで俺からしたら大して痛くも痒くも無い話なのだ。  
それにきっと此の男は勘違いをしている。俺とチャイナの間に存在する関係は、愛とか恋とかそう云った温ま湯の様な温度では済まされないのに。  
「チャイナ、」  
「!…っ、にアル…うふぅッ」  
「キモチイイ?」  
「ッ!!!!!!!」  
   
かっ、と瞳を見開いたかと思えば、その濃紺に泪を浮かべ始める彼女。  
表面張力を思い知る。零れ落ちてしまえばもっと綺麗なのに、それは中々崩れない儘。  
「…神楽?」  
「…がうアル!!ちがッ、…はぁっ…」  
「顔真っ赤にさして、ひーひー言ってアンアン腰振ってヨガって、ソコぐちゃぐちゃにしちまって。本当に」  
「や……、らめ、やぅ…っ」  
――淫乱なオンナだねィ、   
「ぁぁあぁぁあアアア!!!!!!!!」  
「!!」  
   
言葉を使って嬲ってやれば、忽ち意識をこちらに向けて呆気なく達してしまう。  
余程キツい締め付けだったのか、男チャイナの方は一瞬目を見開いていた。  
それにしても、と思う。 「……ひょっとしてアンタ、」  
「………何、」  
「――チャイナの、兄貴、ですかィ?」  
問い掛けを、彼は笑顔で肯定する。  
「…近親相姦、って知ってますかィ?」  
「勿論。濃い血で以てより強い獣を作る、子作りの方法論でショ?」  
「……、」   
   
どうやらヒトと夜兎とでは、考え方並びに血の造りがまるで違うモノらしい。人間同士での近親間の性交では逆に弱い仔が出来る。  
しかしならば。  
「……俺も夜兎に産まれたかったねィ」  
「何か言った?」  
「いや、別に」  
俺にだってあの人を幸せに出来る道が有ったかも知れないなんて。  
 
――――――――――――  
ある日、どうしてか俺は姉上を失った哀しみをチャイナに吐露してした。チャイナは俺を羨ましいと言った。  
「要らないって言われるより、心の中で優しく生き続けてくれる方が何億倍も救われるアル」  
――お前は幸せ者ネ、と。  
そう言って泣きながら笑うチャイナに、俺は救われると同時に少しの愛しさを持ってしまった。  
それが、擦れ違いのはじまり。  
   
ぐちゅ、と腰を振るチャイナの兄貴に見せ付ける様にして、俺は自身をチャイナの小さな口へと押し込んだ。   
「…ねぇちょっと、何してんの?」  
「フェラチオ」  
「ふ…むぅ…ッ、」  
「気分悪いんだけど。止めてくんない?」  
「あんたが退けば好いだけの話でさぁ。大体お兄さん、先刻イったんじゃないんですかィ?」  
「誰がお兄さん?生憎イっちゃいないからね。早く退けよ、でないと殺しちゃうぞ?」  
「…それはそれは、」  
「―――んっ!!!」  
「こえーよなァ、てめーの兄貴」  
お構いなし、と言った風にチャイナにフェラをさせる事を止めない俺に、男チャイナはそろそろ本気でご立腹なのが空気で理解る。  
ただ、そんな状況でも俺の、否、俺等の一番の興味は今現在己が愛でている少女であり。  
「――神楽ってば俺に殴られたいワケ?言ったばっかりだよネ、他の男の事最中に考えるなっ…て」  
「…あ、ァアアア!!」  
「心の狭いお人でさァ…」  
「あぁ、や、やめっ…、」  
「…神楽、そろそろ…イく、よ…ッ」  
「いっ…あ!!!!だめ、だめぇぇぇッ!!」  
「…オイオイ、」  
――ヤベーんじゃねぇの?なんて、そう思う間も無く。  
「かぐら、」  
「――…ッあぁぁあアアア!!!!!!!」  
口から俺の自身を解放したチャイナはクリを擦られた瞬間に、兄貴の方はその締め付けに因って、派手に身体を震わせた。  
「―…っ見てよ、オキタ君。神楽ってば、ヤラシーよね?」  
――こんなにぐちゃぐちゃにしちゃって。   
なんて、そう言ってチャイナを後ろから抱き抱える形で大きく脚を開かせて愛液塗れのソコを見せ付ける。その表情は何処か自慢気で。  
「や…、に、ちゃん…このカッコ…やーヨ、」  
「何で?見て貰えば良いじゃん、神楽の濡れ濡れマンコ」  
「や…ッ」  
そうして言葉で苛め抜く。大したサディストだ。俺の硝子の剣も痛め付けようとしているんだろう?  
けれども残念。  
「本当でさぁ。チャイナの乳首、ビンビンにおっ起ってますぜィ」  
「…や、み、見るな…ァッ」  
そんな程度じゃ俺は傷付きはしない。   
「つーかコッチもぴくぴくしてらぁ。アンタ、よもやあんだけド派手にイっといてまだ足りねェとか言うんじゃ無いですよねィ?」  
「や…、なァ」  
「……」  
「あーあ、こんなに濡らしちまって」  
「――ひぅッ!」  
チャイナのクリを舌先で突くと、彼女の身体はびくびくと震え上がって。その舌を膣内へとねじ込ませ愛液を啜れば、涙を散らして声を上げて暴れ狂う。  
「ひぅ…や、やめ、やぁッ!!」  
「チャイナ、キモチイイ?」  
「や、らめ、ら…め、うぁッ…!!!!?」  
あともう少し。  
ほんの少しの快楽でチャイナは絶頂へと達する事が出来ると云うギリギリで、俺は愛撫をピタリと止めた。  
そして目線はチャイナと、チャイナの兄貴へと向けてにやり。  
「上手にオネダリ、してみなせェ」  
「…ぅ、やぁッ」  
「……」  
幾ら愛が足りなかろうが、コイツは俺の玩具であってアンタにとっちゃイモウトなんだよ。  
そう思って哂い掛ければ、よくよく見ればそっくりな珊瑚色に目が行った。  
 
 

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